貴方は脳内で変換無しに直接英語で思考できますか?多くの日本人には難しい話でしょう。
そんな方々に向けて、日本人がどの様にしたら綺麗かつアメリカの大学でも通用するレポートや論文を書けるようになるかの基礎をご紹介していきます。
著者について:おかゆ
日本生まれ日本育ち、高校卒業後単身アメリカに留学し6年間英語圏で生活していました。様々なことを学び感動も後悔もたくさんありました。そんな私の経験をこれから留学しようとしている方や英語を本格的に勉強したいと思っている方にお届けしたいと思います。
目次
日本語と英語論文の違い
最初にスタートラインに立つ前の意識として、今まで日本語で書いてきたレポートの書き方は基本的に忘れてください。
英語の論文と日本語の論文では大前提から大きく違います。重要なポイントは四個です。
- 一人称を使わない
- 自分の主張は最初に明確に述べる
- 引用には最新の注意を払う
- 難しい日本語で考えない
主語で一人称の使われているレポートはアメリカでは稚拙とみなされます。例え自身の主張を書く際も”I think–”などと言った始め方はご法度です。
引用については後述で詳しく述べますが日本とは比べ物にならないくらい厳しいことだけは意識してください。
最後にこれはアドバイス程のことですが、文を考えるときは極力簡単な日本語で考えてください。
学術論文らしい難しい単語や表現を含んだ文章を英語にしようとすると無駄に時間を消費してします。さて、これらを念頭に始めていきましょう。
英語のレポートを書き始める前に
論文の書き始めにいきなりパソコンに向かうのでなく紙とペンを用意してトピックに関してどんなことでもよいので思いつくことを英語で書き出してみましょう。
これをBrainstorm(ブレインストーム)と言います。そしてその中から書きやすいテーマを見つけ、その根拠となる情報探しそれを精査します。
書きたいテーマでも引用する情報の質や量によっては諦めて別のものを選びましょう。
テーマを決定したらトピックに対して命題文を作成しましょう。
この命題文はThesis statement(シーシス ステイトメント)と呼ばれ論文の大黒柱、つまり要旨です。そして全ての主張したいことを要約しなくてはなりません。
主張とその根拠を可能な限り詰め込みます。例えばトピックが下記のものだとします。
What is the cause of the high rate of obesity in the United States?
これに対して車社会がが原因で根拠は運動量の減少と簡単にファストフードを買いに行けてしまうことと運転中にジュースを飲んでしまうことだとして論文を書くことに決めます。
それに際して命題文を作ると下記の様になります。
黄色が命題(テーマ)で、青がそれぞれ根拠①根拠②根拠③となります。この様に一文に全てを要約します。
そして英文を書くことに慣れている方であれば、引用情報の精査が終わり命題文が完成した時点で論文の作成の50%が終わったと言えます。
それほどに英語の論文において命題文は重要な一文なのです。
そして本文を書き始める前に論文のフォーマットの確認をしましょう。
英語の論文やレポートを提出するにあたって教授や学校から論文の規格を説明されますがいずれも複数の公的な規格から選ばれ指定されます。
段落の区切り方や余白、行間の広さから書体さえも指定になりますので必ず規格通りに書いてください。
教授によっては規格が違うと受け付けてさえもらえません。少なくとも減点対象になることは間違いないです。
英語論文・レポートの書き方
全体の構成の作成
論文の全体の構成は以下の様になります。
- 導入、主張
- 根拠①
- 根拠②
- 根拠③
- 結論、まとめ
長い論文ではイントロダクションと主張を別々の段落にしたり一つの根拠に二つ以上の段落を使うこともありますが、基礎段階においては各項目一段落にまとめて作成するのが良いと思います。
そして順番も大事です。命題文に書いた順番通りに根拠の段落を並べてください。また、根拠の中でも特に自信のあるものは最初に書いたほうが評価は高くなります。
多くの教授は先頭の内容が凡庸であると後半を流し読みしてします傾向にあるようです。さらに理想としては各根拠段落は同じくらいの文章量であることが好ましいです。
根拠①と③で倍近くも量に差があると、やはり③は無理やりこじつけたのかと悪い印象を与えてしまいます。そして多くは一つの論文で根拠は二つか三つが一般的な量になります。
各段落の作成
導入段落
書き出しの肝は二箇所です。一つは言わずもがな命題文です。そしてもう一つは最初の一文になります。
論文の基礎を学んでいるレベルであれば文章は固く堅実に書いたほうが良いことは明白ですがこれだけは例外です。
論文の最初の一文をHook(フック)と呼びます。いわば釣り針です。いかに独創的で人々の目を引くような書き出しを作れるかに全力を注いでください。また上記のトピックを例にあげます。
A “The United States of America is the country that has one of the highest rates of obesity in the world.”
アメリカは世界でも有数の肥満大国である。
B ”Have you felt people in the developed countries as Europe and Asia are skinnier than people around you?”
ヨーロッパやアジアの先進国の人ってアメリカ人より細いと感じたことはありませんか?
いかがでしょうか?
述べている内容は大差ないですが、受け止め方もだいぶ変わりますよね。Aはただ事実を述べているのに対して、Bでは読み手に問いかけつつアメリカ人に肥満が多いことを指摘しています。
これはアメリカ人が採点者もしくは読者であると意識した上での例です。読者が誰かを考えて問いかけるというのは非常に有効な書き始め方です。この書き出しで読み手に一考させた時点でこちらの勝ちです。
そして命題文に繋げます。ここではまだ自分の主張はせずトピックに対する一般的な事実やなぜHookを思ったのか等の内容が好ましいです。
また今回の命題に至る動機もよく書かれます。自身の経験や環境、社会問題ばどから思い至った様に書けると自然に動機に重みを持たせることができます。
もし厳しければ多少創作でも構いません。自身の体験談や意思の背景を証明するように言われることなんてないですからね。自然さを意識しましょう。一般論と自身の動機などで二つエピソードを用意できれば十分です。その後が本番です。
お待たせいたしました。命題文の出番です。先程の命題分を上記のものとしっかりと繋げて主張しましょう。命題文を書いたらこの段落は終了です。
根拠段落
ここからは肉付けになります。ここでも主張、根拠、結論の順は変わらず重要です。まず第一文目でしっかりとなにについて述べるのかを書きます。
上記の例から”decreasing amount of walk”について書くとします。今回は例として段落そのものを一つ書いて例として説明したいと思います。
①では” decreasing amount walk”を詳しく述べています。そして②で引用です。主張が正しいことを証明、サポートしてくれる文章を第三者の論述から転記します。
可能であれば③に続く様に一つの段落に二つ以上の引用があることが好ましいです。
引用についてはこの例文を使って後述で詳しくご説明いたします。そして④では引用した情報の精査、言い換えを行います。これにより引用と自身の論文に繋がりを持たせなぜこの文を引用したのかを説明します。
根拠の段落においては④が非常に大事です。この部分がぼんやりしてしまうと根拠の段落がただの引用文の塊になってしまいます。
そして最後に⑤でまとめをします。一見①とは述べている内容が離れているように見えますが⑤は引用を含め段落の総括をしつ命題に繋がる内容を述べています。
ただまとめるだけではなく命題に繋がっていることを意識して書きましょう。
加えて”In conlusion”という表現はまとめると、と言った意味で論文において「大事なことを言いますよ」という意思表示でもあります。
同じ意味の”To conclude”という表現と共にまとめの文章には積極的に使用してください。
結論段落
結論の段落は三つの要素から構成されます。総括、命題、締めになります。総括では根拠の段落の総まとめを行います。
今回の例でしたら以下のような感じになるかと思います。
In conclusion, automobile society makes a huge impact on American’s health by changing their lifestyle.
次に命題が控えていますのでここは完結に済ませます。ここでは必ずと言っていいほど”In conlusion”を使用します。そしてその命題ですが導入と全く同じことは言いません。
この様に言い回しだけを変えて同じ順番で同じことを言います。少々難しいことに聞こえますが上の様に命題と根拠をそれぞれ単体で見て一つずつ表現を変えていけば恐るるに足らぬことです。
そして終わりの文章ですが、ここでは主に貴方の願いや今後の課題等を書いていきます。
今回の内容ならばより健康的に過ごすために車社会から脱却するためにこうしたらよいのではないか、といった内容で締めくくります。
以上が各段落の構成内容となります。まとめるとHookで読者の気を引き命題を明記し充実した議論と引用で根拠を示しそれをまとめもう一度命題を言い直し締める、という流れになります。
もしも課題となるレポートや小論文が引用を必要としないものであればこの時点で完成となりますね。あとは文の精査のみとなりますので下記の引用部分は飛ばして良い論文とはを読んでください。
引用の書き方
英語の論文において他者の意見の引用方法は二通り存在します。
一つは上記の段落の例にあるような直接引用でQuotation(クオーテーション)と呼ばれ文や表現をそのまま論文に組み込みます。
もう一つはParaphrase(パラフレイズ)というもので言うなれば言い換え引用です。
いずれの方法にしろ出典の明記無しや引用方法の失敗をすると例え悪意がなくともPlagiarism(プレイジャリズム)という違反行為とみなされます。
その場合少なくともその論文は0点になり多くはクラス自体が落第です。厳しい学校ではその学期に取っているクラス全てが落第になり、繰り返したり悪質と判断されれば退学になります。
また、チェックも大変厳しくなっています。有名なところですとTurnitin.comというサイトがありネット上の全ての英文と提出された論文を照らし合わせし類似度を表示します。そして多くの学校はこれをこのようなシステムを採用しています。
繰り返しになりますが決して悪意がなくともPlagiarismと判断されればお終いです。しかし引用なくして論文はかけません。最新の注意を払って出典してください。
引用の仕方もフォーマットによって違います。基本は同じですが細部に違いがありますのでこちらも確認してから始めてください。なお、下記の説明はMLA形式になります。
Quotation
上記の段落内のサンプルと共に見ていきましょう。もちろんこの引用は創作です。
まず著書名、論文名、記事のタイトル(黄色部分)と著者のフルネーム(オレンジ部分)を明記します。タイトルの大文字、小文字までしっかりとコピーしてください。
そして今回はNotesという単語を使いましたがSaysやStatesなど著者の意見だとわかる単語であればなんでも大丈夫ですが例え古い記述であっても現在系で書いてください。
その後”(ダブルクオーテーションマーク)で引用文を囲みます。
なお引用文(水色部分)の中にも”が存在する場合は’(シングルクオーテーションマーク)に置き換えます。最後の(3)はページ数を意味します。もしもページ数記載のないネット記事の場合は不要です。
もしも同じ著書から再度参照する際はタイトルは不要で著書の名前は姓名のみで大丈夫です。しかしページ数は同じだとしても記載してください。
上記の例のように直後に再び引用するならば代名詞を使っても構いませんが途中に別の著者の引用が入ったり段落を跨いだ場合は名前をかいてください。
Quotationは簡単ですね。ルールさえ守れば何も考えずに使用できます。
Paraphrase
引用の本番はここからです。Paraphraseとは言い換え、すなわち他者の意見を自分の言葉に置き換えて論文に組み込む方法です。
気を付けなければならないのは完全に文章は別物にしなければならないが意味は一切変えてはならないという点です。
サンプルをあげてみましょう。
The average of the total distance of the walk of Americans in a day is less than 20% of the average of Asians.
この文章を二通りにParaphraseしてみます。
The standard amount of the walk of Americans per day is fewer than 20% of the standard of Asians.
The average Asian’s daily walking amount is more than 80% of American’s.
いかがでしょうか?一文目は単語を入れ替えたのみのもので二文目は表現を大きく変えています。しかし、得られる情報は同じ物になります。
今回は数字が例になっているので比較的簡単ではありますがこれをもっと情緒的で長い文章となるとQuotationとは比べ物にならないほど時間がかかります。ですのでParaphrase練習はしっかりとする必要があります。
事実アメリカで高校生レベルのライティングのクラスでは論文の構成を勉強した後すぐにParaphraseの練習を延々とします。
アメリカで語学留学するレベルの方でもParaphraseには大変苦戦します。しかしこればかりは論理を知っていても実践で覚えていくほかないのです。
なぜこのような言い換えをする必要があるかというと引用だらけでは論文がまるで他者の文章のようになってしまうからです。
加えて先程の照らし合わせ等をした際に類似度が高くなり良くても酷評、悪ければ受け付けてもらえなくなる恐れがあるからです。
そしてこれを文に組み込む際もQuotationと同様に著者、タイトルの明記が必要ですがクオーテーションマークを付ける必要はありません。むしろ付けてはいけません。
Work Credit Page(参考文献)
論文の巻末にQuotation、Paraphraseに関係なく、リファレンスした参考文献の情報をまとめたページを作らなくてはなりません。
基本は著者名、タイトル、発行元、ページ、発行年月日となりネット上の記事であればそのURLと閲覧した日付も必要となります。例に沿って説明いたします。
Foeflibt, Taro. “Why Asians Are Looks so Young in Their Lifetime.” The New Year Times, 23 April 2019,
www………. Accessed 19 June 2020.
少々込み複雑な説明を一気にしますが今は軽くとりあえず目を通す程度に読んでみてください。理由は後ほど判明します。
まず著者名です。英語圏では名前、名字の順が一般的ですがここにおいては名字、名前の順になり間をコンマで区切ります。そしてピリオドを一度打ちます。
続いてクオーテーションマークでタイトルを囲み、同じくピリオドを打ちます。
その後、発行元になります。新聞であれば新聞社の名前、本や雑誌であれば発行元の会社名を記載します。少しわかりにくいのですがここのみ字が斜体になっています。
英語では斜体をItalic(イタリック)と呼び区分のために必要な作業です。もしウェブサイトであればサイト名を記載してください。そしてここにはコンマを打ちます。
まれに個人ブログや単体の記事で大元となるサイト名がない場合がありますがその場合は省略して結構です。
しかし、そのようなサイトの場合、参考文献としての信憑性に欠けるためそもそも論文の根拠としては不適切な場合が多いため避けたほうが懸命でしょう。
次に発行年月日を日付、月、年の順に記載し月は数字ではなくアルファベットで書きます。
最後にURLのコピーと閲覧日を同様の手法で記載したら完了です。
そしてもしも一つの情報内で改行の必要がある場合はまとめて改行し、改行するさいはスペースを開ける必要があります。
上記であれば発行日の後に大きく余白がありますがURLがその行内に収まらないと仮定して改行しスペースを打ち込んで記載する形にしています。
さて、きっと皆さん訳がわからず混乱しているでしょうが安心してください。
昨今では著者とタイトルを入力するとこの記載を作成してくれるサイトが存在し、多くの教授はそれを認知した上で使用については特に制限を設けていません。
しかし、ルールを知っているのといないのでは大きな違いがあります。特に作成されたものも100%正しい訳ではありませんので自身の目で確かめる必要がありますのでぜひ覚えてください。
良い英語の論文とは
長くなりましたがお付き合いいただきありがとうございます。
最後にアメリカの大学で数々の論文やレポートを書いてきた私からアドヴァイスを少々失礼します。三つだけお聞きください。
適切な単語、表現を使おう
英語に敬語は存在しませんが口語と文語は存在します。わかりやすい例をあげるとDon’tです。
中学校の最初に習う表現ですが正確にはDo notですよね。Don’tは文語としては不適切ですので避けましょう。
また同じ意味の単語でも使い分けが必要です。Reallyも馴染み深い単語ですがこれはカジュアルな表現なので論文ではDefinitelyなどのよりフォーマルな単語がふさわしいです。
同じ単語の繰り返しを避けよう
これは日本語でも同じですが同一の単語や言い回しを何度も繰り返し見かけるとすごく単調な文章に見えてしまいますよね。
なので可能な限り最低でも同じ段落内では一度使用した表現は避けましょう。
例外はキーワードです。自分が主張した一番重きを置いている単語はむしろ積極的に使用した方が良いです。
接続語をマスターしよう
接続語のない文章はポエムの様になってしまい論文としては幼稚に見えます。一文が短すぎれば繋げ、長すぎれば分断する作業も大事です。
ここでは紹介しきれない程の種類の接続語が存在しその繋ぎ方も何通りもあります。全部覚えても損はありません。
むしろ覚えられたら日常会話も知的に聞こえますし相手の意図を理解しやすくなります。
これで以上となります。ここで紹介したことは基礎の基礎ですがこれだけできれば当面は問題ありません。あとは練習あるのみです。
Good luck to you! I believe you all can be nice writers.