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「海外の大学に進学する理由は?」と聞かれたとき、「グローバルな環境で学びたい」「専門性の高い分野を極めたい」「日本の大学よりも柔軟な教育スタイルが魅力的」といった答えが思い浮かぶかもしれません。
確かにこれらは大きな理由の一つですが、実際には一人ひとりの価値観や経験によって、選ぶ理由は大きく異なります。
「今の受験制度が合わない」「将来は海外で働きたい」「日本の大学では学べない分野がある」——このような考えから、海外進学を選択する人が増えています。
しかし、進学を決める過程では「本当に海外の大学が自分に合っているのか?」「日本の大学と何が違うのか?」と悩むことも多いでしょう。
また、保護者や周囲の人々に「なぜ海外なの?」と聞かれ、言葉に詰まることもあるかもしれません。
そこで本記事では、「海外進学を選ぶ理由」について、実際の体験談を交えながら深掘りしていきます。
目次
日本の大学 vs 海外の大学|授業スタイル・学び方の違い
海外進学を考える際には、日本の大学との違いを理解することが重要です。
ここでは、学習環境、入試制度、卒業の難易度の3つの観点から比較していきます。
学習環境の違い
日本の大学では、大人数の講義形式が一般的であり、試験やレポートの成績で評価されることが多いです。
特に1・2年次は一般教養科目が中心となり、受動的な学びになりがちです。
一方、海外の大学ではディスカッションやリサーチを重視し、学生が主体的に学ぶ環境が整っています。
授業の多くは「講義+ディスカッション形式」で行われ、学生が積極的に発言し、議論を交わすことが求められます。
また、日本では入学時に専攻(学部)を決めるのが一般的ですが、アメリカやカナダでは入学後に専攻を決められるため、幅広い分野を学びながら自分の進路を考えることができます。
リベラルアーツ系の大学では、学問の垣根を超えて自由に学ぶことが可能です。
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入試制度の違い
日本の大学は、共通テストや一般入試が中心で、学力試験の点数が合否を大きく左右します。
特に国公立大学では、共通テスト+二次試験の対策が必須であり、高校3年間の大半を受験勉強に費やすケースが多いです。
一方、海外の大学では、エッセイや推薦状、課外活動、GPA(高校の成績)などを総合的に評価し、試験の点数だけでなく、個人の能力や経験が重視されます。
特にアメリカの大学では、「多面的な評価」を行うため、学業成績だけでなくリーダーシップ経験やボランティア活動も重要な要素となります。
イギリスやオーストラリアでは、日本と同様に学力試験(A-LevelやIB、SATなど)が求められることもありますが、エッセイや面接が重視されるケースが多いです。
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入試の難易度と卒業の厳しさ
日本の大学は「入るのが難しく、卒業は比較的容易」
日本の大学は、「入試重視」の制度を採用しており、入学の時点で厳しい選抜が行われます。
特に国公立大学では、共通テストや二次試験で高得点を取ることが求められ、浪人してでも受験に挑戦する学生も少なくありません。
しかし、一度合格すれば、授業の出席や試験で一定の成績を取ることで卒業できるケースが多いです。
日本の大学では合格した学生のほとんどが卒業するのに対し、アメリカの大学では卒業率が60%程度にとどまることが多いです。
海外の大学は「入るのは比較的容易だが、卒業が難しい」
海外の大学では、「継続的な学習」が求められるため、卒業するのが難しいのが特徴です。
GPA(成績)の基準を満たさなければ退学になることもあり、厳しい評価基準が課されます。
例えば、アメリカの大学では、毎週のリーディング課題が100ページ以上あることも珍しくなく、プレゼンやレポートの提出も頻繁に求められます。
また、学期ごとの成績管理が厳しく、GPAが一定以下になると奨学金を打ち切られたり、留年・退学のリスクがあるため、常に高いモチベーションで学び続ける必要があります。
その結果、アメリカの4年制大学の卒業率は約60%(NSCRC統計2023)であり、日本の大学と比べると卒業が難しいことが分かります。
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海外進学を決めた日本人学生のリアルな体験談
海外進学を考える理由は人それぞれです。
学びたい分野やキャリアの目標、価値観によって選択肢が変わるため、一概に「海外大学のほうが良い」とは言えません。
ここでは、実際に海外進学を選んだ日本人学生の事例を紹介し、多様な背景や動機を見ていきます。
グローバルな環境で学びたい(Aさん・高校3年生)
Aさんは小さい頃から海外旅行が好きで、異文化への興味を持っていました。
日本の大学よりも、多様な国籍の学生と一緒に学べる環境を求めて、カナダの大学へ進学することを決めました。
進学先: カナダの大学(人文学専攻)
決め手: 英語+フランス語が学べる環境、国際色豊かなキャンパス「世界中から集まる学生と一緒に学びながら、異なる価値観や考え方を理解できるのが魅力でした。」
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日本の教育に窮屈さを感じた(Bさん・現役大学生)
Bさんは、高校時代から環境問題に関心がありましたが、日本の大学では専攻変更が難しく、学びの自由度が低いと感じていました。
そのため、サステナビリティ学が充実しているオランダの大学へ進学しました。
進学先: オランダの大学(サステナビリティ学)
決め手: 入学後に専攻を決められるシステム、研究に力を入れている大学「日本の大学は一度決めた専攻を変えにくいですが、オランダでは幅広い分野を学びながら自分の興味を深めることができます。」
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スポーツを続けながら学びたい(Cさん・高校生アスリート)
Cさんは、高校でバスケットボールを続けていましたが、日本の大学ではプロを目指すと学業との両立が難しいと感じていました。
一方、アメリカの大学にはスポーツ奨学金制度があり、競技を続けながら学ぶことができます。
進学先: アメリカの大学(スポーツマネジメント)
決め手: スポーツ奨学金制度、大学リーグでの競技機会「アメリカの大学なら、学びながら競技を続けられる環境が整っていて、将来的にスポーツ業界でのキャリアにもつながると思いました。」
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海外で働くことを視野に入れている(Dさん・社会人留学)
Dさんは、日本の大学を卒業後、外資系企業で働きたいと考えていました。
しかし、日本の大学を出てから海外で就職するのはハードルが高いと感じ、オーストラリアの大学へ進学することを決めました。
進学先: オーストラリアの大学(国際関係学)
決め手: 卒業後に現地で働けるビザ制度、インターンの機会が豊富「海外の大学を卒業すれば、現地の企業に就職しやすくなり、グローバルなキャリアを築くチャンスが広がります。」
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日本の受験制度が合わなかった(Eさん・浪人生)
Eさんは高校時代、受験勉強に苦しんでいました。
しかし、海外の大学はエッセイや課外活動などを総合的に評価するため、日本の受験制度よりも自分の強みを活かせると感じ、マレーシアの大学へ進学しました。
進学先: マレーシアの大学(心理学)
決め手: 試験成績だけでなく、推薦状やエッセイが評価される入試制度「学力試験だけでは測れない能力を評価してくれる海外の入試制度は、自分に合っていると感じました。」
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海外進学を選ぶ5つの理由とメリット
海外進学を考える理由は人それぞれですが、近年、実際に海外の大学を選ぶ日本人学生は増えています。
「世界で活躍できるスキルを身につけたい」「自分のやりたいことを追求できる環境で学びたい」「日本の大学の制度が自分には合わなかった」など、海外進学を決める背景にはさまざまな理由があります。
学びたい分野を本気で学べる環境がある
「せっかく大学に行くなら、本気で学びたいことを深く追求したい!」
海外の大学では、リサーチや実践的な学びを重視し、専門分野を深く掘り下げることができます。
特に、最先端の研究が進む分野では、海外の大学が圧倒的に強いことも多いです。
例えば、環境問題、AI、データサイエンス、宇宙工学などは、欧米の大学がリードしている分野。
こうした領域で世界トップクラスの教授や研究機関と学べるのは、海外大学ならではの魅力です。
- 自分の興味を追求したい人
- 最先端の研究・実践的な学びを経験したい人
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受験のプレッシャーが少なく、努力が評価される
「日本の受験制度では、試験の点数がすべて…それが自分には合わなかった。」
海外の大学は、日本のような一発勝負の受験ではなく、エッセイや課外活動、成績の積み重ねを評価するケースが多いです。
「試験の点数だけで評価されない」のが、海外進学を選ぶ理由の一つになっています。
- 受験勉強が合わなかった人
- 自分の個性や経験を評価してほしい人
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多様な人との出会いが、自分の視野を広げてくれる
「日本を飛び出して、新しい価値観に触れたい!」
海外の大学は、世界中から学生が集まる多国籍な環境です。
異なる文化や価値観の中で生活することで、視野が広がり、新しい考え方を学ぶ機会が増えます。
- 新しい環境でチャレンジしたい人
- グローバルな視点を身につけたい人
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日本ではできない経験が、未来のキャリアにつながる
「海外で勉強すること自体が、キャリアの武器になる!」
海外大学では、インターンシップやプロジェクト型の授業が充実しており、実際の企業や研究機関と連携しながら学ぶことができます。
特に、アメリカやカナダ、オーストラリアでは、大学在学中に企業で働く機会が豊富です。
- 学びながら実践経験を積みたい人
- 海外での就職も視野に入れている人
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「英語を使う」環境に身を置くことで、英語が本当に話せるようになる
「英語を勉強してるのに、話せるようにならない…それなら、英語を使う環境に飛び込むしかない!」
日本にいるだけでは、英語を話す機会は限られています。
しかし、海外の大学では、授業も友人との会話もすべて英語。「学ぶ」のではなく、「使う」ことで、英語力が飛躍的に伸びるのです。
- 英語を本気で伸ばしたい人
- 将来、英語を使う仕事に就きたい人
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海外進学のデメリットと対策
海外進学には多くのメリットがありますが、一方で日本の大学に進学する場合と比べて負担やリスクもあります。
「学費が高すぎる…」「文化や生活環境に馴染めるか不安」「英語についていける自信がない」など、実際に海外進学を考える人の多くが抱える悩みです。
しかし、こうしたハードルも、事前に対策を考えておけば乗り越えられることがほとんど。ここでは、海外進学を検討する際に知っておくべき3つのデメリットとその解決策を詳しく解説します。
学費の高さ – 費用の捻出が最大のハードル?
海外の大学は、日本の大学と比べて学費が高額になるケースが多いです。
例えば、アメリカの私立大学の年間学費は約300〜600万円、イギリスやオーストラリアでも200〜400万円が一般的です(OECD, 2023)。
また、寮費や生活費を含めると、年間の総費用はさらに増えます。
国 | 学費(年間) | 生活費(年間) | 合計費用 |
---|---|---|---|
アメリカ(私立) | 400〜700万円 | 200〜300万円 | 600〜1,000万円 |
イギリス | 250〜450万円 | 150〜250万円 | 400〜700万円 |
オーストラリア | 250〜400万円 | 150〜250万円 | 400〜650万円 |
カナダ | 200〜350万円 | 150〜220万円 | 350〜570万円 |
ドイツ(公立) | ほぼ無料 | 120〜180万円 | 120〜180万円 |
- 奨学金を活用する
日本政府(JASSO)、民間団体、大学独自の奨学金制度を利用すれば、学費や生活費の負担を大幅に軽減できます。特に、成績優秀者向けの奨学金では学費全額免除や生活費補助を受けられるケースも。
- 学費の安い国を選ぶ
実は、ヨーロッパの国公立大学は学費が無料または格安な場合も。
・ドイツ、フランス、スウェーデン → 国公立大学はほぼ無料
・オランダ、台湾、マレーシア → 年間100万円前後で通える大学も
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文化・生活環境の違い – 事前の準備で不安を減らせる!
海外では、日本とは異なる文化や価値観の中で生活することになります。
特に、食事、気候、治安、医療制度の違いに戸惑う学生も少なくありません。
また、ホームシックになりやすい人にとっては、日本を離れること自体が大きなハードルになります。
- 渡航前に生活情報を調べる
住むエリアの治安、物価、医療機関、交通機関などをリサーチし、安心して生活できる環境を整える。
→ 「現地の日本人ブログ」や「SNSの留学生グループ」が役立つ!
- 現地の日本人コミュニティを活用する
留学先に日本人向けのサークルやLINEグループがあれば、困ったときに相談できる仲間ができる。
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言語の壁 – 英語力向上の準備が必要
海外大学では、授業、レポート、プレゼン、日常生活のすべてが英語になります。
そのため、入学時の英語力が不足していると、授業についていくのが難しくなる場合があります。
- 事前にIELTS・TOEFL対策を徹底する
海外大学の入学要件として、TOEFL iBT 80〜100点、IELTS 6.5〜7.5が求められることが多い。
→ 早めに英語対策を始め、スピーキングやリスニングの実践練習を積んでおく!
- 現地のESL(英語補講クラス)を活用する
留学生向けにアカデミック英語のサポートプログラムが用意されている大学も多い。
→ 「授業についていけない…」と感じたら、すぐに相談しよう!
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日本の高校生・保護者が知っておくべき海外進学の準備
海外の大学に進学するためには、日本の大学とは異なる出願プロセスや求められるスキルを理解し、計画的に準備を進めることが重要です。
特に、学力・英語力、受験プロセス、費用と奨学金の3つのポイントを押さえておくことで、よりスムーズに進学を進めることができます。
必要な学力・英語力を確認する
海外の大学では、入試の一発勝負ではなく、高校の成績(GPA)、英語力、課外活動、エッセイ、推薦状などを総合的に評価するため、早めの準備が必要です。
英語力の目安
一般的に、海外大学では以下のような英語力が求められます。
国 | 一般的な英語要件 | 条件付き合格 / パスウェイプログラム |
---|---|---|
アメリカ | TOEFL iBT 80〜100 | 60〜79でもESL(英語補講)を受講すれば入学可能 |
イギリス | IELTS 6.5〜7.5 | 5.5〜6.0でファンデーションコース受講後に進学可 |
カナダ | IELTS 6.5 / TOEFL iBT 80〜100 | 5.5〜6.0でパスウェイプログラム経由の進学可 |
オーストラリア | IELTS 6.0〜7.0 | 5.5〜6.0で大学付属の英語コースを受講 |
条件付き合格・パスウェイプログラムとは?
英語スコアが足りない場合でも、「条件付き合格」として、大学付属の英語コース(ESL)やファンデーションコースを修了すれば正規入学できる制度があります。
例えば、IELTS 5.5の学生が、6か月間のパスウェイプログラムを修了し、正規コースに編入するといった流れです。
受験プロセスとスケジュール
海外大学の出願は、日本の大学入試とは異なり、1年以上前から準備を始めるのが一般的です。
特に、エッセイや推薦状の準備には時間がかかるため、早めの計画が重要です。
海外大学の出願スケジュール(例:アメリカ・イギリス)
時期 | やること |
---|---|
高校1〜2年生 | 学校の成績を向上、英語試験の対策開始 |
高校3年生(4月〜6月) | 志望大学の選定、エッセイ作成開始 |
高校3年生(8月〜10月) | TOEFL・IELTS受験、推薦状の依頼 |
高校3年生(10月〜12月) | 出願(アメリカは11〜1月、イギリスは10月〜1月) |
高校3年生(2月〜4月) | 合格発表、進学先決定 |
費用と奨学金情報
海外大学は学費が高額なケースが多いため、奨学金や経済的な支援制度を活用することが大切です。
また、近年の円安(2023〜2024年)により、海外大学の学費はさらに負担が大きくなっています。
海外大学の年間費用の目安(2024年・円換算)
国 | 学費(年間) | 生活費(年間) | 合計費用 |
---|---|---|---|
アメリカ(私立) | 400〜700万円 | 200〜300万円 | 600〜1,000万円 |
イギリス | 250〜450万円 | 150〜250万円 | 400〜700万円 |
オーストラリア | 250〜400万円 | 150〜250万円 | 400〜650万円 |
カナダ | 200〜350万円 | 150〜220万円 | 350〜570万円 |
ドイツ(公立) | ほぼ無料 | 120〜180万円 | 120〜180万円 |
円安の影響
以前は年間300万円程度だったアメリカの州立大学の学費が、2024年時点では円安の影響で400万円以上に上昇しているケースもあります。
そのため、学費の安い国や奨学金制度を活用することが重要です。
- JASSO(日本学生支援機構) – 返済不要の給付型奨学金もあり
- 柳井正財団(ユニクロ) – アメリカの大学向けに授業料・生活費全額支援
- 伊藤国際教育交流財団 – 留学資金をサポートする日本の奨学金
- 各大学の奨学金 – 海外大学によっては留学生向けの学費免除プログラムがある
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終わりに
「海外進学は自分にとって本当に合っているのか?」 その答えを見つけるために、まずは情報収集を進め、具体的な準備を始めてみてください。
留学説明会への参加や海外大学の公式サイトのチェック、実際に海外大学に進学した先輩の体験談を聞くことも大いに役立ちます。
海外進学は簡単な道ではありませんが、その分、多くの学びや成長の機会が得られる貴重な経験になります。
自分の目標や価値観に合った進路を選び、ぜひ後悔のない選択をしてください。
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