海外留学や海外MBAを目指すうえで重要なのは学校選び。
しかし、海外の学校を選ぶうえで、一つ大変なのは情報集めである。日本語の情報も少なく、イベントや学校説明会も気づいたら終わっていることも多い。
これは、そんな学校を選ぶ上で役に立つであろう情報、サイトを、学校ごとにまとめていくシリーズ、記念すべき第10弾。今日は、アメリカのウォートン(ペンシルベニア大学 MBA)を紹介する。
WEBページを行ったり来たりする手間や、有用な情報を探す手間が省け、本来やらなければならないことに時間が使えるようになれば幸いだ。
また、ここのページに漏れており、役に立つ情報があれば、ドシドシコメント欄に共有してほしい。
目次
ウォートンスクール(ペンシルベニア大学MBA)の概要
ウォートンスクールの基本情報
基本情報
- 正式名称:Wharton School of the University of Pennsylvania
- 公式HP:https://mba.wharton.upenn.edu/
- 所在地:3733 Spruce Street Philadelphia, PA 19104.6340
- 学生数:5,000名(学部生と大学院生の合計)
- 提供プログラム:2年制MBA、Executive MBA、PhD、Executive Education等
特徴
ペンシルベニア大学は、アメリカ合衆国のペンシルベニア州・フィラデルフィアにある私立大学で1740年に設立。アメリカ大学協会の創設メンバーの1つで、米国屈指の名門私立大学連合であるアイビー・リーグの1校でもある。
ペンシルバニア大学ウォートン校は、フィラデルフィアの実業家であるジョセフ・ウォートン(Joseph Wharton)の寄付により、1881年に設立された全米初のビジネススクール。
世界的に最も高い評価を受けるビジネススクールの一つであり、ファイナンスを中心に、マーケティングやマネージメント分野においても実用性の高いプログラムを提供している。
近年は、サンフランシスコ・キャンパスを開設するなど、アントレプレナーシップ分野にも注力している。
学費とクラスプロファイル
学費
- プログラム期間:20ヶ月(3.5カ月の夏季インターンシップを含む)
- 学費(2023年):1年目 $87,370、2年目 $85,370
クラスプロファイル
- 学生数(Full-time MBA):874名
- 女性比率:50%
- 留学生比率:31%
- 年齢層:-
- 平均勤続年数:5年
就職状況・平均給料
- 給与(中央値):$175,000
- サインオンボーナス(中央値):$30,000
- 卒業後の就職率:96.2%
- 卒業後の就職先:金融(38.6%)、コンサル(24.3%)、テクノロジー(16.9%)など
*出典:Facts & Figures Wharton MBA Class Profile、2023年8月時点
ウォートンのMBAランキング
#3 U.S. News Best Business Schools
#7 Bloomberg US B-Schools Ranking
#13 World University Rankings 2023 by subjects: business and economics
MBAカリキュラム
ウォートンスクールのMBAプログラムでは、2年間で19単位の取得が求められる。内訳は「必須科目:9.5単位、選択科目:4.5単位、専門科目:5単位」だ。
必須科目(Core Curriculum)
必須科目にはFixed CoreとFlexible Coreの2種類があり、Flexbile Coreは生徒一人ひとりのキャリアや興味に応じて、複数の選択肢の中から自分に合ったコースを選択できる。
- Leadership:
- 対話形式の授業を通じてチームワークやリーダーシップの発揮に必要なスキルを養う
- Marketing:
- マーケティング分析コンセプトやマーケティング手法を正しく理解して、セグメンテーションやターゲティング、ブランディングなどの意思決定で適切に活用できるスキルを習得する
- Microeconomics:
- 経営者として必要なミクロ経済学の基礎理論として需要と供給や消費者行動、市場価格と生産量などを学ぶ
- Microeconomics(Advanced):
- ミクロ経済学を企業経営における意思決定に活用できる具体的な方法を学習する(価格設定方針や移転価格、競合企業との取引戦略など)
- Statistics:
- データを扱う上で重要な統計手法である回帰分析と実験を理解する(最小二乗推定や検定と信頼区間、相関と自己相関、共線性、ランダム化など)
- Management Communication:
- 経営者に必須のコミュニケーションスキルとして、説得力があり質疑応答などにも柔軟に対応できるスピーキング力及びライティング力を養う
- Operations, Information, and Decisions:
- 「品質と生産性」「ビジネス分析」「イノベーション」「運用戦略」「実現テクノロジー」「経営上の意思決定」から選択
- Marketing:
- 「ダイナミックマーケティング戦略」「戦略的マーケティングシミュレーション」から選択
- Communication:
- 「即興演説やビジネスストーリーテリング要素」「クライシスコミュニケーション」「将来の起業家のための基礎」「起業家のためのコミュニケーション課題」「ビジネスリーダーのための説得力のあるライティング力」から選択
- Accounting:
- 「財務会計」「財務及び管理会計」から選択
- Corporate Finance:
- 「コーポレートファイナンス」「コーポレートファイナンス入門」から選択
- Macroeconomics:
- 「マクロ経済学」「マクロ経済学入門」から選択
- Management:
- 「既存企業マネジメント」「新興企業マネジメント」から選択
- Legal Studies & Business Ethics:
- 「グローバル経営における責任」「ビジネスにおける責任」「社会的責任と環境経営」から選択
選択科目(Electives)
選択科目では、ウォートン校内の10の学部に加えてペンシルベニア大学内にある11の他スクールから提供される幅広いジャンルのコースが200以上用意されている。
アドバイザーの協力を受けながら自分のゴールに向けた独自のカリキュラムを組むことができるだろう。
- Annenberg School for Communication
- Graduate School of Education
- Law School
- School of Arts and Sciences
- School of Dental Medicine
- School of Design
- School of Engineering and Applied Science
- School of Medicine
- School of Nursing
- School of Social Policy & Practice
- School of Veterinary Medicine
専門科目(Majors)
専門科目では21種類のコースが用意されていて、それぞれの専門分野に特化した知見を深められる。
また、約40%の生徒が2種類の専門科目を選択しており、自分の見聞を広げることも可能。
STEM認定のコースも9つと豊富に提供をしているのも特徴だ。
- Accounting
- Business Analytics (STEM)
- Business Economics and Public Policy (STEM)
- Business, Energy, Environment and Sustainability (STEM)
- Diversity, Equity & Inclusion
- Entrepreneurship & Innovation
- Environmental, Social and Governance Factors For Business (STEM)
- Finance (STEM)
- Health Care Management
- Individualized MBA Major
- Management
- Marketing
- Marketing and Operations (Joint Major)
- Multinational Management
- Operations, Information and Decisions (STEM)
- Organizational Effectiveness
- Quantitative Finance (STEM)
- Real Estate
- Social and Governance Factors for Business (STEM)
- Statistics (STEM)
- Strategic Management
参考:Wharton MBA Classes, Courses & Curriculum
ウォートンMBAに留学する理由
広範な分野を網羅したMBAカリキュラム
ファイナンスやアントレが有名なウォートンだが、学べるのはそれだけではない。200超の選択科目において、学びたい、強化したい分野に集中して選択することで、MBAの学位+ConcentrationのCertificateをもらうことができる。
さらに、ウォートンスクールが提供するMBAプログラムの枠を超えて、人文科学や法律、ヘルスケアなどビジネス分野以外のMBA学位も取得できる二重学位制も魅力の一つ。
今後関わりたい分野や将来像に合わせて、ウォートンには多くの選択肢があり、特定分野の学びを深めることができる。
圧倒的な就活実績
2022年度のCareer Reportを見ると、ウォートンの強さがわかる。
卒業生の24%はコンサル、39%は金融に就職し、給料の平均値はコンサルで175,000ドル(約2,450万円)、金融で173,513ドル(約2,4291万円)だ。その他の業界は若干給料は落ちるが、1,800万円〜2,000万円程度は目指せるだろう。
帰国後に投資銀行や戦略コンサルとして働きたい人にとって、ウォートンはベストな選択肢と言える。
また、最近ではウォートン出身でスタートアップで活躍している方々も多くいるようだ。
ラクスルのCFOからCEOとなった永見さんや、マネーフォワードの辻さん(CEO)、ミツモアの石川さん(CEO)、10Fの山田さん(CFO)などはウォートンのMBA出身。
VCやスタートアップで働きたいと思っている人にとっても、ウォートンは刺激的な学校になるだろう。
アメリカ就業のチャンス STEM OPT
専門科目のうち、BUSINESS ANALYTICSやSTATISTICSなど9つのいずれかを専攻することで、STEM OPTを得ることができる。
アメリカの大学院や大学院を卒業すると、1年間就業できるOPTというステータスがもらえるのだが、STEM Extentionを使うとその1年を3年に伸ばすことができるのだ。
OPTが1年しかないと、就労ビザ(H1B Visa)を申請するチャンスが2回しかないため、アメリカの現地企業も(すぐに帰るかもしれない)外人を雇うモチベーションが湧きずらいが、STEM専攻であれば長く働いてもらえることが期待できるため、雇用主も安心して内定が出せる。
ウォートンであれば、現地就職も希望すれば可能性が高いため、STEM OPTを利用してアメリカ残存のチャンスを掴むのも面白い。
ウォートンMBAの偏差値は?出願の難易度や入学条件
海外の大学には、偏差値とという概念がないため、出願の難易度は出願の要件から判断することになる。
MBAの難易度と出願要件
ウォートンスクールへの出願で必要なものは以下の通り。これはほとんどのMBA留学準備では同様となる。
このように、海外のMBA進学の難易度は、英語力や学力の証明など各種スコアの準備やエッセイ、インタビューなどの準備がハードルとなってくる。
- Background Info(個人情報)
- 275ドルのアプリケーションフィー
- エッセイ2通
- 成績証明書
- 推薦状2通
- GMAT又はGRE又はEA
- 英語試験スコア(TOEFLなど)
- 英文レジュメ
参考:Application & Admission Requirements、2023年8月時点
- 平均GPA:3.6
- GMAT平均スコア:728
- GRE平均スコア:Quant 162、Verbal 162
- TOEFL平均スコア:115
出願準備はTOEFL/IELTS対策から
留学経験や海外経験がない人にとって一番大切なのは、いつ留学したいかを明確に決めて、早めに英語試験の対策を始めることだろう。
帰国子女が数ヶ月で終わらせてしまうような対策に、海外経験のない日本人は2-3年かかってしまうことも多い。
英語試験はやり方を間違えなければ必ず成果を出せるもの。このサイトでは、MBA留学準備に必要な情報を網羅的に提供しているため、リンク先から学習方法などを参考に対策を始めてほしい。
出願の流れ
出願の流れは、英語試験等をクリアし関連書類の準備→出願→面接→合否、となる。
出願締切日は例年9月、1月、4月の3回に分かれており、今年のスケジュールは以下の通り。
- 1st round: September 6, 2023
- 2nd round: January 4, 2024
- 3rd round: April 2, 2024
スケジュールは毎年変わるため、入学方法の詳細は公式HPから確認しておこう。
エッセイ対策
ウォートンスクールで求められる2通のエッセイでは、MBAプログラムを提供するスクールと受講する生徒の間のギブアンドテイクの関係について問われる。
1つ目の質問は「ウォートンスクールが生徒に対して何ができるのか」、2つ目の質問は「生徒がウォートンスクールに対して何ができるのか」だ。
1つ目の質問では、自分が目指すキャリアを明示しつつその実現性とウォートンスクールの必要性を500字という限られた文字数で訴える必要がある。
特に必要性パートに説得力を持たせるためにも、ウォートンスクールが提供している様々なサービスやイベント、課外活動などを徹底的に理解しておこう。
How do you plan to use the Wharton MBA program to help you achieve your future professional goals? You might consider your past experience, short and long-term goals, and resources available at Wharton. (500 words)
2つ目の質問では、採用担当者に自分のことをできるだけ深く知ってもらうことで、ウォートンスクールにどのように貢献できるかイメージを明確に持ってもらえるはずだ。指定文字数の半分程度を使用して、自分の人生を通じて経験し学んできたことを簡潔かつ丁寧に表現しよう。
Taking into consideration your background – personal, professional, and/or academic – how do you plan to make specific, meaningful contributions to the Wharton community? (400 words)
また、ウォートンスクールのエッセイには任意項目として採用担当者が酌量すべき事情を記載する欄がある。GPAやGMAT・GREスコア、職歴など自分のプロフィールが他受験者に比べて劣っている場合、自分をアピールする場として活用できる。
Please use this space to share any additional information about yourself that cannot be found elsewhere in your application and that you would like to share with the Admissions Committee. This space can also be used to address any extenuating circumstances (e.g., unexplained gaps in work experience, choice of recommenders, inconsistent or questionable academic performance, areas of weakness, etc.) that you would like the Admissions Committee to consider. (500 words)
面接形式・質問集
ウォートンスクールの面接プロセスでは、10分間の個別面接に加えて、35分間のチームベースディスカッション(TBD)が採用されている。
TBDでは、与えられたお題に対してランダムに選ばれた4~6人単位のチームで議論をして、導き出された結論について簡単なプレゼンテーションを行う。
TBDを通じて、ウォートンスクールが重視しているチームワークに重要なコミュニケーションスキルやリーダーシップスキルなどを評価される。
- Tell me something about yourself, or Walk me through your resume.
- What are your short-term and long-term goals?
- Why MBA? or Why now? or Why an MBA at this stage of your career?
- What is your Plan B? in case your primary goal does not happen?
- What are your key strengths? Can you give some examples, please?
- What are your key weaknesses? Can you give some examples, please?
- How can you add value to the Class? or Why should we take you?
- Any reasons why we should not select you?
- Interests and Hobbies-related questions – why do you do it, what have you achieved/learned?
- Do you have any questions for us?
- Can you please tell me how international exchange students and schools are assigned?
- How club leadership is selected?
- Any other questions you may have in regards to the program.
出典:MiM-Essay: Wharton MBA Interview Questions: Tips & How to Handle Interview
ウォートンスクールMBA日本人向けの情報
日本人向けサイト
日本人留学ブログ一覧
- MinopuによるWharton MBA留学記(Class of 2021)
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- 珈琲男のWharton MBA留学記 (Class of 2010)
- Wharton MBA 2009 / フィラデルフィアでの日々 (Class of 2009)
- Wharton MBA 記 ~Carpe diem – 今を生きる~ (Class of 2009)
大学院、MBAイベント情報
https://mba.wharton.upenn.edu/events/
学校説明会イベント情報(in Japan)
MBAアイビーリーグ特集
終わりに
今回はウォートンスクールについて網羅的な解説をした。
情報は毎年変わるため、必ず最新の情報をHPで確認しよう。
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