米国公認会計士の勉強をするか迷っている方に、
- USCPAと簿記どちらを勉強すべき?
- USCPAより先に簿記を取得すべき?
といった質問を受けることがある。
簿記3級〜1級、USCPAの両方を持っている私だが、経験からすると簿記よりもUSCPAを取得した方がキャリアの幅が広がると思っている。
また、USCPAと簿記は目的が異なる試験のため、比較自体が意味をなさないと感じることもある。
今回は、これらの会計資格がどのようにキャリアに生かせるのか、そしてどの資格を取るべきなのか、考えていこう。
この記事の著者:Ryo
初めまして!Ryoです。大学大学中に日本の公認会計士試験に合格し、大手監査法人に勤めた後スタートアップでIPOや投資を経験。その後アメリカにMBA留学し、卒業後に現地の会計事務所に就職したことがキッカケでUSCPAの勉強を開始、アビタスを利用して約半年で全科目に合格しました。
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【難易度比較】USCPA vs 簿記1級 vs 簿記2級
USCPAと日商簿記の難易度比較表
異なる試験の難易度を横比較することは困難ではあるが、日商簿記からUSCPA・公認会計士試験全ての試験を受けた感覚も含め、勉強時間や難易度をまとめてみた。
資格 | USCPA | 簿記2級 | 簿記1級 | 公認会計士 |
合格率 | 各科目50% | 約30% | 約10% | 約10% |
範囲 | FAR(財務会計)、AUD(監査)、BEC(管理会計・IT)、REG(法律・税務) | 工業簿記・商業簿記 | 省略 | |
試験時間 | 4時間✖️4科目 | 1時間✖️2科目 | 2時間✖️2科目 | 省略 |
勉強時間 | 1000〜1500時間 | 200-300時間 | 500~800時間 | 3000時間-4000時間 |
難易度(※) | B | D | A | S |
(S→A→B→C→Dの順で難しい。)
合格率で日商簿記とUSCPAを比較
合格率を比較すると、USCPAは各科目で50%程度と比較的高いが、簿記1級や公認会計士は合格率も10%程度と10人に1人しか受からない。
- 公認会計士、簿記1級:約10%
- 簿記2級:約30%
- USCPA:約50%
ただ、USCPAと簿記や公認会計士試験は全く異なる試験のため、合格率だけで比較することでは正しい難易度を測ることはできない。
例えば、日商簿記は受験費用も安く、受験要件もないため、誰でもいつでも気軽に受けることができる試験である。
一方で、USCPAは受験要件が厳しく、大卒や一定の単位要件をクリアしないと受験さえできない。さらに、USCPAは受験費用が100万円〜をこえることも普通のため、受験には大きな覚悟が必要となってくる。
数千円で受験ができる簿記とは異なり、USCPAを日本で受験するためにには1科目で10万円以上かかるため、気軽に数を打てるような値段設定ではないのだ。
勉強時間で日商簿記とUSCPAを比較
次に勉強時間で日商簿記とUSCPAの難易度を比較してみよう。
- 公認会計士:3000時間-4000時間
- USCPA:1000〜1500時間
- 簿記1級:500~800時間
- 簿記2級:200-300時間
簿記2級は、1日2-3時間の学習を数ヶ月継続することで合格レベルに達するが、簿記1級やUSCPAは決して簡単ではなく、多くの時間の投資が必要になる。
勉強時間は、合格率よりも試験のボリュームや難易度を正しく表していそうだ。
簿記1級・USCPA・公認会計士ホルダーが難易度を比較
簿記1級、USCPA、公認会計士試験の全てに合格した私が主観的な難易度を比較すると、こちらの通りとなった。
- 公認会計士:S
- 簿記1級:A
- USCPA:B
- 簿記2級:C
公認会計士が一番難しいのはご想像の通りだが、USCPAよりも簿記1級の方が難易度が高い評価となった。
簿記1級は高い計算力が求められ、中途半端に勉強をしてもなかなか合格ができないが、USCPAは各科目レベルで考えると、そこまで強度の高い勉強をしなくても合格レベルに持って来れるイメージがある。
全科目合格をするとなると、簿記1級よりもUSCPAの方が難易度が高いとは思うが、各科目で考えるとUSCPAは簿記1級よりも受かりやすい試験と言えるだろう。
【キャリア比較】USCPA vs 簿記1級 vs 簿記2級
日商簿記2級のキャリア効果
簿記1級まで取得した私がいうのもなんだが、簿記は資格としてはキャリアアップやキャリアチェンジにあまりプラスにならないと考える。
東証1部上場企業の経理責任者として採用活動をしていた頃も、簿記2級を持っているかどうかは特段考慮しておらず、前職の実務経験を主に見ており、経理実務や開示の経験があることを評価していた。
新卒で経理志望!であれば良いが、簿記2級は難しい試験ではないので、2級を取得しても転職でアピールにはならないことを覚えておこう。
しかし、社会人としての最低限必要な財務諸表の知識を得るためには、簿記2級は悪くはない資格だと考える。
銀行員などは新卒の研修で簿記2級までは必須と言われていたり、一般教養としての簿記3級・2級の取得は悪くない。転職活動に関係なく、会計に関わる仕事をしているものが簿記を取得すると知識的にプラスにはなる。
簿記2級までは直接キャリアには結びつかない自己研鑽のような性質(TOEICで言うと700点ぐらい)と考えるのが現実的だろう。
日商簿記1級のキャリア効果
経理を主としたキャリアを構築するのであれば、1級であれば一目置かれる存在になる。
もちろん、公認会計士や税理士には敵わないのだが、簿記1級はかなり努力を要する資格のため、特に若手の経理であれば評価されるはず。
日系企業の経理部で生きていくことを決めたのであれば、1級の取得をすることはプラスになるはずだ。さらに、会計事務所などでの職も得やすくなるかもしれない。
一方で、簿記1級は経理以外の仕事には応用の効かない細かい知識も多い。より幅の広いキャリアに資格を生かしたい気持ちがあれば、公認会計士やUSCPAの方が使い勝手が良いと考える。
USCPAのキャリア効果
簿記とUSCPAが比較されることが多いが、その難易度や合格率と比較して、USCPAのキャリアへのインパクトは高いと考える。
グローバル展開していない日系企業の経理であれば簿記の方が役に立つだろうが、USCPAであれば、経理だけでなく、監査業務、内部監査、財務アドバイザリー、経営企画、海外勤務など、会計に関わる様々なキャリアへ繋がる可能性が出てくる。
キャリアチェンジやキャリアの幅を広げるのであれば、できるだけ早いタイミングで資格を取得して新たなチャンスを探ることがおすすめだ。特に大学生のうちに、USCPAに合格しておくことで周りと差別化でき、就職活動で有利に働くだろう。
私の場合は、USCPAを勉強・取得したことでアメリカで働くチャンスを得ることができたり、国際的な信頼性をあげることができた。
簿記1級・USCPA・公認会計士ホルダーがキャリア効果を比較
ちなみに、私は大学生の時に簿記1級→公認会計士に合格し、社会人になってからUSCPAに合格した。
大学生の頃はUSCPAという資格の存在を知らなかったが、そのコスパや将来英語を使って仕事をしたい、海外で働いてみたいという希望があれば、簿記に費やした時間でUSCPAの勉強をしていた方が長期的なキャリアには繋がったかもしれない。
また、日本では公認会計士の方が知名度が高いことは事実あるが、キャリアの構築方法によってはUSCPAの方が役に立つこともあるだろう。
例えば、外資系の事業会社への就職だったり、財務アドバイザリー、海外勤務や海外就職であれば公認会計士よりもUSCPAの方が役に立つ。
必要な勉強時間やキャリアへのインパクトを検討し、自分が望む将来に繋がるような資格を勉強したいところだ。
どっちを受けるべき?簿記 vs USCPA
以下、状況別のおすすめの資格を簡単にまとめてみたので参考にして欲しい。
日商簿記2級がおすすめの人
- 大学生で将来何がやりたいかわからないが、何か資格にチャレンジしたい
- 英語が全くできないが経理・会計の仕事に興味がある
- 国内の会社の経理に配属されており、転職は考えていないが知識を深めていきたい
簿記はあくまで国内の資格のため、(かつての私もそうだったが)英語に関わりたくない人にはUSCPAよりも簿記が良いだろう。
一般教養としての簿記や会計の知識がつき、特に国内の経理職を目指すのであれば、取得しておいて損はない資格となる。
また、経理以外の仕事についている人にとっても、簿記を学習することで得た教養はどこかで役に立つことがあるかもしれない。
日商簿記1級がおすすめの人
- すでに簿記2級を持っており、さらに専門性を高めたい
- 日系企業の経理職一本で考えている
- USCPAを持っており、公認会計士に負けない会計知識をつけたい
簿記1級にチャレンジしたい人は、すでに簿記2級やUSCPAに合格しているのではないだろうか?
簿記2級を持っており、特定の職種の専門性を高めたり、経理職のステップのアップのために簿記1級を取ることは悪くなりだろう。
また、USCPA取得者で、監査法人に転職が決まっている/すでに働いている方で、周りの公認会計士と比較して仕訳力や会計知識に不安がある場合、簿記1級を勉強することで不安は少なくなるはずだ。
USCPAがおすすめの人
- 英語を使った仕事や海外勤務に興味がある
- 監査を中心に、経理・経営企画・内部監査等キャリアの幅を広げたい
- まだ将来何をやりたいかぼんやりしているが、専門性をつけておきたい
- 英語が得意でプラスアルファの資格が取りたい
英語に抵抗感がないのであれば、USCPAはとてもコスパの良い資格だ。
資格を取ることだけで、将来のキャリアが約束されるわけではないが、得られるチャンスが増えることは間違いない。
公認会計士かUSCPAどちらを取るべきか悩んでいる人も、リンク先の記事をチェックして欲しい。
USCPA受験に簿記2級は必要?
USCPAに受験にあたり、簿記2級を勉強すべきか?と聞かれることがある。
この質問に対する私の回答は、「必ずしも必要はない」ということだ。
もともと簿記2級を持っていれば、会計の基礎知識が役に立つが、USCPAの勉強を開始するにあたり、わざわざ簿記を取得してからUSCPAの勉強をするのは遠回りと考える。
簿記3級・2級に合格するためには、300-400時間程度の勉強時間は必要であり、簿記を勉強したところでUSCPAの勉強時間が少なくなるわけではない。また、300-400時間あれば、量の少ないUSCPAの科目(BECやAUD)は、会計初心者でも余裕を持って合格できる。
USCPAの最短合格を目指すのであれば、USCPAの勉強をすることが最大の近道であるし、その過程で合格に必要な会計の知識は得ることになる。
ちなみに、USCPAの計算問題は簿記2級の難易度と同様と言われることがあるが、あまり意味のない比較だとは思っている。
USCPAに合格したところで、簿記2級の勉強は別にしなければならないし、簿記2級に合格したところで、USCPAの計算問題を全てカバーできるわけではない。
それぞれの試験のためにある程度の時間をかけて勉強しないと、どちらも合格はできない試験だ。
そのため、私の意見としては、資格を受ける目的を明確にすることが大切だと感じる。
まとめ
今回は、よくある質問を深掘りしてきた。
- USCPAと簿記どちらを勉強すべき?
- USCPAより先に簿記を取得すべき?
将来どのようなキャリア像を描いているのかを考えてみると、自ずとどちらの資格を受験すべきかの答えが出てくるはず。
是非、ご自身の将来を深く考えるきっかけにして、どちらの資格を勉強すべきか考えてみよう!
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