今では、USCPA(米国公認会計士)をコスパの良い資格だと信仰している私も、実は、大学生の際に日本の公認会計士に受かった直後こう思うことはあった。
- 日本にいるのにUSCPAになっても意味ないのでは?
- 日本で働くにはアメリカの会計士資格は使えないのでは?
- 日本の会計士の難易度が高いからUSCPAに逃げているのでは?
まだ、社会人経験のない若造が考えそうなことだ。しかし、こうやって社会人経験を積み重ねたあと、考え方が変わった。
今回は、日本の公認会計士・USCPAの両方に合格し、日米の監査法人での勤務経験もある私が、USCPAの「無駄」「意味ない」「使えない」議論に切り込んでいきたい。
皆さんが資格取得やキャリアを検討する際ご参考になれば幸いだ。
この記事の著者:Ryo
初めまして!Ryoです。大学大学中に日本の公認会計士試験に合格し、大手監査法人に勤めた後スタートアップでIPOや投資を経験。その後アメリカにMBA留学し、卒業後に現地の会計事務所に就職したことがキッカケでUSCPAの勉強を開始、アビタスを利用して約半年で全科目に合格しました。
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目次
意味ない?使えない?USCPA(米国公認会計士)5つの誤解
世の中には色々な資格があるが、USCPAほど一部の人に「意味ない」「使えない」と言われることがある資格は珍しいのではないかと感じる。
ここでは、なぜUSCPAが無駄だと言われることがあるのか、経験を元に考えてきたい。
誤解1:米国公認会計士試験の難易度が低い、よってレベルが低い
米国公認会計士の試験の合格率は比較的高く、各科目で50%前後である。
日本の会計資格の簿記3級の合格率は30%であることを踏まえると。「USCPAは簿記3級よりも簡単なの?」の勘違いが生じ、そんな資格をとっても無駄だと思われている可能性はある。
また、日本の公認会計士試験の合格率約10%との比較で、50%の合格率のUSCPAはレベルが低い資格だと思われているのではないだろうか。
誤解分析
そもそも、簿記とUSCPAの合格率を比較するのはナンセンスだ。簿記は受験資格の制限がなく、誰でも受けられる。
一方で、米国公認会計士は受験要件があり、大学卒(ほとんどの州)+一定以上の会計単位を取得していなければ、受験をすることができない。
つまり、簿記3級に合格できた人は、そもそもUSCPAの受験資格を持っていない可能性もあるため、「USCPAは簿記3級より簡単」という主張は意味をなさない。
さらに、簿記は1万円以下の投資で受験をすることができるので、誰でも気軽に受けられ、準備せずに受けて不合格になっても痛くも痒くもない。それが合格率を下げた可能性もある。
USCPAは受験費用・予備校代で80万円〜110万円ほどかかることが一般的で、受験生の合格への決意や勉強の真剣度は簿記と桁違いであろう。
こうやって、受験生母集団の質、受験に対する決意がUSCPA受験生の方が圧倒的に高いため、合格率を比べただけで、難易度が低いとはいえない。
では、日本の公認会計士試験と比べるとどうだろう?
USCPAの50%の合格率はあくまで1科目に過ぎず、確率的に全科目を一発で合格するとなると6.25%と、日本の会計士(約10%)によりも低くなる。
日本と米国の会計士試験両方を受験した私の感覚からしても、USCPAは決して簡単な試験ではなく、一定以上の学習をしないと合格はできないと感じた。
もちろん、日本の公認会計士試験は1回で全科目を受験しなければならず、ストレスは多かったが、USCPAは受験スケジュールがフレキシブルで一科目ずつ受けることができるので、その点は精神的なストレスは少なく済んだ。
誤解2:USCPAになっても監査法人に就職できない
次は、日本の公認会計士は監査業務をすることができるが、USCPAは日本での独占業務がなく、監査をすることができないと勘違いされていることから、USCPAは無駄と言われる説だ。
誤解分析:
実は、監査という仕事自体はUSCPAでも問題なく日本で行うことができる。しかも監査法人でのマネージャーまでのキャリアや給料は、日本の公認会計士と違いはない。
また、BIG4の監査法人も積極的にUSCPAの中途採用をしている印象だ。
日本基準とUSGAAPは違いはほとんどなく、監査の全体像も日米で変わりがないため、USCPAまたは公認会計士でも合格後、実務をやりながら学ぶことになる。
また、USCPAは国内企業の監査よりも、グローバル企業の監査で英語対応に期待されている感覚はある。
一方で、日本でパートナーとして監査報告書にサインができるのは、日本の公認会計士のみ。そのため、USCPAで監査法人パートナーになることは比較的ハードルが高い。
とはいえ、日本の公認会計士も10年で9割は監査法人を退職する中で、パートナーを目指しているものはほとんどおらず、私も2年ほどで監査法人を退職、それ以降は独占業務は全く活かしていない・・。
若い頃は経験の差が横比較で見えないため、資格は有能さを見せる1つのスパイスになるが、歳を重ねてくると資格よりも経験がキャリア上大切になってくる。
以下の記事記事は、未経験・USCPA科目合格から監査法人への転職を果たした方法を公開しているので、是非参考にしてほしい。
誤解3:USCPAの知名度が低いので取っても意味ない
USCPAの知名度は、公認会計士と比べると日本では低いのは事実のため、それがUSCPAが意味ない・使えないと言われている1つの理由ではあるだろう。
確かに、知識のない日本人にUSCPAと言っても、なんのことか通じなかった経験はある。(アメリカの公認会計士というと通じる)
また、伝統的な日本企業において、特に年配の方々はUSCPAよりも公認会計士を尊敬する傾向は強いだろう。
誤解分析
どの資格でも、上手く生かせることができれば、デメリットや、意味ないことなんてない。逆に、活用しなければ、どの資格を取っても意味がないだろう。
例えば、米国公認会計士が日系企業で評価されないなら、評価してくれる外資系企業に就職するのであれば良い。
私がアメリカにいた際には、JCPA(Japanese CPA)よりもCPA(USCPA)がクライアント先に信頼されていたのは確かだ。私はそれもあって、グローバルに評価されやすいUSCPAを受験することにした。
どの資格をとっても、国、会社や職種によって評価される、されないという状況は起こりうる。
であれば、評価される環境や会社で資格を生かす道を探そう。評価されないシチュエーションであえて戦う必要は全くない。
誤解4:USCPAの資格があっても仕事に役に立たない
日本で米国公認会計士としてキャリアをスタートすると、「USCPAは使えない」「知識がない」「日本では役に立たない」と陰口を言われることはあるだろう。
米国公認会計士試験は日本の会計士試験に比べると、実務重視なので理論を深く突き詰める試験ではない。そのため、知識面では日本の公認会計士より劣ってしまうこともあるかもしれない。
誤解分析
前述したように、日本基準とUSGAAPは違いはほとんどなく、監査の全体像も日米で変わりがないため、USCPAで勉強した知識は日本で通用しないことは、まずない。
また、監査実務については、日本の会計士試験よりもUSCPAの方が実務レベルの出題が多く、試験内容が監査フィールドですぐに使えそうなフォーマットになっていると感じた。
公認会計士試験はアカデミックな内容になっており、知識を深めることはできるが、実務は全くのゼロからスタートだ。
公認会計士とUSCPAが新卒で同時期にスタートするのであれば、最初にやる業務は単純作業・雑務であることが多く、実務上差が出るようなことはほとんどないはず。
日米の監査法人で働いた身からすると、監査実務はそれを日本語でやるか英語でやるかの違いで、内容の差異はほとんどない。
知識面で比べられてしまうことはあるため、日本の監査法人に勤務する場合、他の会計士以上に知識のキャッチアップを行いたい。
誤解5:会計未経験者の転職には使えない
会計未経験者がUSCPAに合格したとしても、キャリアチェンジをすることは難しいと言われることがある。これは正しい場合と、正しくない場合がある。
誤解分析
新卒を除き、キャリアというものは連続性があるもので、過去との繋がりの中で資格(USCPAも公認会計士も)が活かせるかどうかが決まってくる。
経理や経営企画、内部監査等に従事している人が、USCPAを取る場合はキャリアアップに繋がることは間違いない。
一方、チャリアチェンジの転職で、今までのキャリアとは全く関係のないフィールドに行く場合は、若手であればあるほど資格の価値を出していける。
新卒や20台前半で、USCPAを獲得することは、未経験からBig4の監査法人やコンサルへ転職への一歩を踏み出せるはずだ。
つまり、10年間会計に一切関係ない仕事をしていた人が、30代〜40代でUSCPA/公認会計士をとったとしてもキャリアアップには繋がらないどころか、キャリアチェンジも難易度は高くなっていく。
ご自身の今のキャリアと、今後の方向性で、資格が活かせるかどうかは慎重に検討しよう。
会計未経験での転職が完全に無理ということはない。明確な意思と決意があれば、少しスタートが遅れても可能性はある。私も利用したUSCPA予備校アビタスでも、未経験からの転職事例をいくつか掲載している。
ちなみに、未経験から監査法人へ転職する場合、他の新卒と同位置からスタートすることになるため、ゼロからスタートする覚悟を持つことと、社会人経験者として他の新卒入社との差を出せるようにすることが重要だ。
余談:簿記一級 vs USCPA
余談ではあるが、簿記1級(合格率10%前後)とUSCPAであれば、キャリア上プラスになるのは間違いなくUSCPAだろう。
簿記一級は一生日系の経理マンで人生を終える予定であれば、ある程度評価はされる資格ではあるが、キャリアアップには繋がりにくい。
一方でUSCPAは経理職はもちろん、監査法人、コンサルや外資系企業、海外勤務等、キャリアの幅が広くなる。
英語にある程度の自信があれば、USCPAの学習をおすすめしたい。
終わりに:USCPAは無駄!と言われたら?
USCPAなんて「意味ない」「使えない」と言われると、自分の選択が正しいのかどうか、色々な不安に襲われることもあるだろう。
私も、日本で築いてきたキャリアを捨て、海外留学や海外就職をする中で、「失敗する」「無駄だ」という人にはたくさんあってきた。
しかし、キャリアや自分の人生に責任を持つのは最終的には自分自身のみ、他人はあなたの人生になんて興味がないのだ。
自分の選択を信じ、それを正解にしていくのは、他人ではなく自分自身の努力でしかないのだと思う。
「就職できない」「役に立たない」という人に会った時には、そういう人を見返すために確実に合格を勝ち取り、それをキャリアに活かせるように試行錯誤をして成功をすれば良い。
人生、真っ直ぐの成功のレールに乗るより、アップダウンをしながら、悔しい思いを乗り越えながら、目標に向かった方が楽しいはずだ!
皆さんのUSCPA合格、そしてキャリアでの活躍を心から応援している!
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