「実務の役にたって、更にキャリアアップまで目指すことができる資格」そんな資格はないかな、と探していらっしゃる方に、お勧めしたい資格がUSCPAです。
USCPAは、経理未経験の方にも取っつきやすく、現在経理業務に携わっている方は実務がより理解できるようになるなど、経理でキャリアを磨きたいと考えている方におすすめの資格です。
将来的には、世界に通用する会計の専門家として、外資系企業や大手監査法人等への就職・転職の可能性も秘めています。
筆者は、実際にUSCPAを取得した事で、海外案件の財務経理を担うポジションにつき、結果として大幅な給与アップを実現しました。
この記事では、このような筆者自身の経験に基づき、USCPAと経理の相性から、USCPA取得のメリット、USCPAを取得することで視野に入ってくるキャリアアップの機会までを、幅広く紹介したいと思います。
経理をこれから勉強しようとされている方から、既にある経理の経験を活かして更に上を目指したいと考える方まで、ぜひご参考にしていただけますと幸いです。
この記事の著者:Yoshi
仕事で海外の案件に係わったことから、USCPAに興味を持ち、30代後半から受験に挑戦。仕事と4人の育児に追われながらも、通勤等の隙間時間を活用して約2年で合格。その後、米国公認会計士、オーストラリア公認会計士として、複数の国の案件推進を財務経理の立場からサポート中。
監修者:Ryo
大学在学中に日本の公認会計士試験に合格し、大手監査法人に勤めた後スタートアップでIPOや投資を経験。その後アメリカにMBA留学し、卒業後に現地の会計事務所に就職したことがキッカケでUSCPAの勉強を開始、アビタスを利用して約半年で全科目に合格しました。
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経理の仕事とUSCPAの相性は抜群?
「経理未経験」の方にこそ、お勧めしたいUSCPA
自己啓発や、就職活動・転職活動に活かすために、これから経理の勉強をはじめようとされている方は、多くの会計関係の資格をみて、どれから手を付けたらよいか迷われている事と思います。
有名どころの日商簿記検定に始まり、資産運用の専門家であるファイナンシャルプランナー、税理士、公認会計士、USCPA(米国公認会計士)等、色々ありますが、その中で、初心者でも手を出しやすいのが、日商簿記検定の3級とUSCPAです。
意外に思われるかもしれませんが、USCPAは、プロの公認会計士の資格でありながらも、広く・浅く、の学習内容になっており、経理未経験の方でも、仕訳の基礎から学ぶことができます。
複雑な個別論点といったものは、多くは存在せず、基本的な知識を、抜けなく・漏れなく、幅広く学習させるのが、USCPAの資格なのです。
また、USCPAで学ぶのは、原則的に米国会計基準・IFRSですが、日本の会計基準にも通じる基礎的な知識も、体系的に学ぶことができます。
日商簿記検定の3級も同様に会計の基礎から学ぶことができるのですが、あくまで範囲は簿記に留まります。一方で、USCPAは、簿記にとどまらず、管理会計、監査論、税務会計、法律に至るまで学習範囲が及びます。
私は、日商簿記検定の3級、USCPA、両方学習したのですが、USCPAについては、もっと早い段階から取り組んでおくべきだったと考えています。
簿記の学習では、監査論等は扱わないため、実務で会計士監査に立ち会う時は、わけもわからず手探りで取り組んでいました。
しかし、USCPAを先に学んでおけば、会計士が財務諸表をチェックするプロセスはどうなっていて、どこをチェックするのか、理解した上で実務に臨むことができていただろう、と思います。
その点に鑑みると、USCPAは、日商簿記検定よりも、より幅広く経理の学習をされたい方に向いているといえるでしょう。
しかし、英語のテキストで0から学ぶのは、言語が違うこともあって、抵抗を感じる方もいるかもしれません。
そのような場合は、USCPAを扱っている大手予備校等を利用するといいでしょう。講義やテキストが日本語を使用しているところが多いので、まず日本語で会計の知識を頭にインプットすることができます。
「今、仕事で経理をしている方」は知識を大きく広げるチャンス
それでは、現在、経理の仕事をしている方にとって、USCPAの学習はどういった意味を持つのでしょうか?
実は、USCPAの学習では、「仕訳の確認」「固定資産の計上と減価償却」「残高試算表や月次決算」等、経理の実務と直接結びつく基礎的な論点を学ぶことができます。
実務の現場では、目の前で起こっている事象に対して、ひとつ、ひとつ、会計処理を検討していきます。なので、意図せずとも「狭く、深い」個別の論点に関する知識や経験は伸びていきます。
一方で、会計の包括的な知識は、実務では、なかなか身に着けることができません。
その点、 USCPAの学習範囲は、財務会計、管理会計、税務会計、監査論等をまんべんなくカバーしているので、会計全体の仕組みを理解し、実務に落とし込んでいく、その土台をつくることができるのです。
私の場合は、海外の案件を取り扱う部署に異動になった際、上司からUSCPAの取得を強く勧められたことがきっかけで、この資格に取り組むことになりました。
異動に伴って、チームのメンバーを総括する立場となり、担当者として伝票を計上するだけでなく、事業全体を財務会計の視点から把握し、経営層にアドバイスしていく必要がでてきたためです。
その観点からは、経理担当者としての自分の知識や視点を大きく広げてくれたのが、USCPAの学習であったと言えます。
「経理の熟練者」は知識の幅を更に広げてプロフェッショナルに
最後に、経理の仕事を長く続けているベテランの方にとっての、USCPAの学習を考えてみたいと思います。
ベテランの方にとって、USCPAは、既に理解している日本の会計基準の知識と比較して、米国会計基準やIFRSが、どういったルールで、その差異は何か、について学ぶ素晴らしい機会を提供してくれます。
つまり、USCPAの勉強を通して、米国会計基準・IFRSを習得し、既に会得している日本の会計基準と併せて、経理のトリリンガルを目指すことができるのです。
世界的な会計基準の収斂の流れを受け、今後は、IFRSの知識があることが、経理をリードする立場の人間にとって必要となってくると考えられています。
日本でも、企業のIFRS基準適用が可能となっており、2023年5月末時点で、上場企業268社が適用済・適用を発表しています。
私の会社でも、2020年代前半にIFRSを導入したのですが、ちょうどその導入検討を行っている際に、私もUSCPAを学習していました。
おかげで、私はUSCPAので得た知識を利用して、導入検討の議論に積極的にかかわっていく事ができ、結果として社内での評価つながりました。
ご自身のキャリアの更なる飛躍を目指すことを考えていらっしゃる方は、USCPAを検討してみてもいいかもしれません。
経理担当者がUSCPAを取得することの3つのメリット
メリット① 対外的な評価が、明らかに向上する
私が、USCPAを取得して、一番に感じたのは、職場や取引先とのビジネスの中で、明らかに私の評価が変わった、という点です。
USCPAは、アメリカの公認会計士とあって、世界的に通用する資格ですので、日本国内はもとより、海外においても高く評価されます。
例えば、私と同じ経理部門に配属された新入社員は、入社時点で既に統一CPA試験(Uniform CPA Examination)に合格していたのですが、その点が社内で高く評価され、入社後すぐに本社の会計を総括する部署に配属され、その専門性をもって、会社全体の財務経理に係わる課題解決に携わっていました。
私も、名刺にUSCPAと記載しているのですが、各国政府との交渉、海外の会計コンサルトの議論、民間企業との交渉の中で、資格について何度か問われたことがあります。
特に、海外子会社等での監査の現場においては、対監査法人との関係において、抜群の信頼感を発揮できます。お互いに公認会計士同士、共通の専門用語を使って話すことができるからです。
メリット② 経理の流れ全体を把握することで、仕事が楽になる
より、実務的な観点では、どうでしょうか?
実は、USCPAを取得する過程で、簿記一巡の手続きから、財務諸表監査の流れ、税務申告の流れ等、経理の一連の作業の流れを知ることができるので、仕事が、ずいぶんと楽に感じられるようになります。
自分が担っている仕事が、どういった仕事の流れの、どこに位置しているのかを把握できるため、落ち着いて、作業に取り組めるのです。
仕訳でチェックするべきポイントや、財務諸表を読み解く方法、監査で指摘が入りやすい箇所等をマスターすれば、短時間で仕事をこなせるようになるでしょう。
但し、USCPAの学習内容と比べて、経理の実務は、より個別論点を深く掘り下げる傾向にあります。
よって、 直面する証憑や、その背景にある事実に対して、どういった経理処理をするべきかは、会計監査六法を丁寧に読み解いたり、経理部門の同僚と仕訳を検討したりする作業が別途必要になりますので、その点は心に留め置いていただけますと幸いです。
メリット③ 給与アップを目指すことができる
なにより、最大のメリットとして挙げられるのが、給与アップです。
- 経理職でのキャリアアップ
経理部門で働く場合、会計士という立場ゆえに、主要なポジションにつくことができる機会が出てくると考えられます。企業によっては、学習に向けた独自の補助金を出していたり、資格取得後は、資格手当を出しているところもあります。
実際に、私も、会社の上司からUSCPAの資格を推奨され、30代後半ながら、資格取得に挑戦をしました。
その学習の過程において、現在自分が取り組んでいる仕事を、より包括的な見地から、また、専門的な見地から見ることができるようになり、特にその専門性が評価され、複数の海外案件を総括するポジションにつくことになりました。
これによって、前年と比較して、額面ベースで約200万円の給与アップにつながりました。
- 転職による給与UPのチャンスも
例えば、「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の年間平均給与は443万円ですが、USCPA取得者の転職先としてよく挙げられる大手会計事務所(従業員1,000人以上を目安)の場合、公認会計士・税理士の平均給与は861万円となり、およそ2倍の差があることがわかります。
また、同じくUSCPA取得者の転職先として射程に入ってくる外資系企業は、職種によって年収には大きな差異がありますが、世界的な大手人材紹介会社のMichael Pageが提供する日本での財務・経理ポジションの年間給与の求人は、500~1,400万円程度と比較的に高収入になっています。
このように、経理未経験もしくは民間企業の経理スタッフから、USCPA等、会計の専門家としての資格を取得し転職をすることで、大きな給与アップを狙うことができるのです。
参考:「令和3年分 民間給与実態統計調査」国税庁 長官官房 企画課:
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2021/pdf/002.pdf)
参考:「令和4年賃金構造基本統計調査」厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)
ここまで広がる!USCPAから始まるキャリアの可能性
企業内で経理のプロフェッショナルとして活躍
キャリアという観点からは、USCPAは、これから経理の勉強をしようと考えている方にとって、経理専門家としての道をひらく、その第一歩になると思います。
将来的には、日系もしくは外資系企業の経理部門で働くというキャリアが視野に入ってくるでしょう。
現在、既に経理の仕事についている人は、その所属する会社で、経理のプロフェッショナルとして、更なるキャリアを積んでいく事ができるでしょう。
どちらかといえば、日本の会計基準を学んでいる人が多い日系企業において、USCPAは、米国会計基準、IFRSをマスターしている貴重な存在となり、海外案件における経理処理や会計監査等において重宝されるでしょう。
また、USCPAには、会計の知識だけでなく、英語力も求められるため、「英語の読み書きもできる人材」として、海外とのビジネスが多い日本のグローバル企業での活躍が期待されそうです。
大手会計法人に就職・転職
もうひとつの、有力なキャリアパスとして、Big4と言われる世界の4大会計事務所(Deloitte Touche Tohmatsu、Ernst & Young、KPMG、PricewaterhouseCoopers)で、公認会計士として働くという道があります。
4大会計事務所では、本業である会計監査に留まらず、内部統制監査、税務コンサルティング、経営コンサルティングに至るまで幅広い仕事を行っています。
求人も常にあり、条件として、日本の公認会計士と並んでUSCPAを歓迎条件とするケースが多いです。
また、USCPAとしてライセンスを持っていなくても、「現在、USCPAの学習中である」、もしくは、「USCPAの統一CPA試験合格者だが実務経験が足りずにライセンスが取得できない」といった人も採用する傾向があるのも特徴です。
実際に、私が、転職活動をした際も、Big4で「現在、USCPAの学習中である」という条件で採用してくれる会計事務所がありました(結局、転職は見送りましたが。)。
「会計事務所で働きながら、実務経験も積んで、試験にも受かってもらえればいい」、というスタンスのようです。
USCPAとして登録されるには、会計事務所等で働いた経験が必須ですので、その観点からも、Big4としては、門戸を開いているのだと思われます。
相互承認制度を利用して、各国の会計士として活躍。将来は移住も。
最後に、相互承認制度を利用して、自分が興味を持っている国の公認会計士になるというキャリアパスがあります。
この相互承認制度は、USCPAを持っていることで、アメリカに加えて、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス(スコットランド)、アイルランド、南アフリカ、カナダ、メキシコでの公認会計士にもなることができるという制度です。
米国会計基準やIFRS等の、共通の会計基準を共有しているという観点から、これら8か国が協定を結んでいるのです。
海外で働く際に、一番の魅力となるのが、その給与水準の高さです。アメリカを例にとって確認してみましょう。
【アメリカと日本の公認会計士 平均年収の比較】
平均年収 | 為替 | 平均年収(円) | |
USCPA | 119,000($) | 140 | 16,660,000 |
公認会計士(日本) | 5,720,000(円) | 1 | 5,720,000 |
※ 平均年収には、ボーナスを含んでいない
※ 参考 「CPAs satisfied as average salary tops six figures」(AICPA)
https://cpaexamguy.com/cpa-salary-guide/
※ 参考「令和4年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
2017年にAICPA(米国公認会計士協会)が行った調査によれば、USCPAの平均年収はU$119,000(ボーナスは除く)となっています。1ドル=140円で計算すると、これは日本円で約1,670万円に相当します。
一方、日本の公認会計士の平均年収は、10人以上の企業に勤務している公認会計士の場合、572万円(ボーナスは除く)となっています。
つまり、アメリカでUSCPAとして働く場合、日本の公認会計士の平均年収の3倍程度の収入が望めるということです。
更に、各国の公認会計士として働くだけでなく、その国に移住して、やがては市民権/永住権を得るといったキャリアを描くこともできます。
例えば、オーストラリアにおいては、現地就労ビザ(TSSビザ)の職業要件のひとつになっており、更には永住権を取得するための職業のひとつでもあります。
私も、現に、仕事で扱う案件から、米国公認会計士とオーストラリアの公認会計士の2つの資格を有していますが、機会があれば、日本よりも給与水準が高く、生活しやすそうな、オーストラリアに移住したいと考えています。
海外への移住と、そこでのプロフェッショナルとしての活躍を目指しているのであれば、USCPAは、その入り口になることでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
このように、USCPAは、経理未経験の方から、実際に企業の経理部門で働かれている方、更には経理を長くやって来られた方にまで、広く成長の機会を与えてくれる、経理と非常に相性のいい資格です。
そこから、得られるメリットも、USCPAを名乗ることによる対外的な評価の向上、経理の実務における作業効率の上昇、更には、キャリア転換による給与アップ、と多く存在します。
そのキャリアパスも多様です。企業の中で経理のプロフェッショナルとして活躍をされる方、大手会計事務所に就職してプロの公認会計士として専門的な業務に携わる方、更には、アメリカ以外の国々の公認会計士となり、世界各国を股にかけて活躍することも現実になります。
このように、経理に興味を持っている方、経理に携わっている方に、大きなチャンスを与えてくれる資格がUSCPAなのです。
もし、興味を持たれましたら、ぜひ、挑戦してみてください。きっと、新しい自分の可能性が見えてくるはずです。