USCPA(米国公認会計士)は、日本でも価値が急上昇している資格の1つ。
監査法人で8~10年ほどの勤務でマネージャーになることで、年収1,000万円〜が見えるだけでなく、会計×英語でグローバルにキャリアの幅が広がるのは魅力的だ。
こんな私も、USCPAを取得し、アメリカの監査法人で働く機会を得ることもできた。
しかし、受験を決意した2019年、USCPAはアメリカの試験で主な情報源は英語かつ、ネット上の情報は予備校が提供していることが多く、包括的・中立的な情報収集が難しかった。
この記事では、私がUSCPA受験にあたって集めてきた、USCPAの試験制度から受験資格、受験州の選び方、おすすめの予備校、合格までの最短距離を詰め込んだ。
みなさんがUSCPAについて知り、新たなキャリア構築を目指す一助になれば幸いだ。
この記事の著者:Ryo
初めまして!Ryoです。大学大学中に日本の公認会計士試験に合格し、大手監査法人に勤めた後スタートアップでIPOや投資を経験。その後アメリカにMBA留学し、卒業後に現地の会計事務所に就職したことがキッカケでUSCPAの勉強を開始、アビタスを利用して約半年で全科目に合格しました。
USCPAや英語学習に役立つYouTubeチャンネル始めました!!チャンネル登録よろしくお願いします!
USCPA(米国公認会計士)試験の概要
試験科目の概要
USCPA試験は4つの科目(うち1科目は選択科目)からなり、各科目は4時間、計16時間のテスト。大まかなセクション別の試験概要・出題比率は以下の通り。
必須科目
FARでは、日商簿記でいう商業簿記の範囲が出題。計算の難易度は簿記2級程度だが、簿記や日本の会計士試験では問われない公会計の比重も20%と高くなる。多くの日本人はFARを最初の科目として受験をすることになるだろう。
AUDは、監査をする上で必須の手続きやルールなどを学ぶ科目。日本の公認会計士と比べ、仕事で使うことを意識した実務的な問題が多い印象だ。暗記よりも理解が重要視され、コツを掴めば得意科目にすることができるはず。
REGでは、税法がメインの他、ビジネス法を学習。日本でも馴染みのないアメリカの所得税や法人税の計算や理論が出題される。試験での文章量が一番多く、高い英語リーディング力が必要だ。日本人は最後の科目として受験することが多い。
選択科目
2024年に制度変更され、もともと必須科目4科目だったUSCPA試験は、1科目が選択式となった。
選択科目では、以下の3科目から1つを選んで受験をすることになる。多くの日本の予備校は、管理会計がメインで対策のしやすいBARを推奨をしている。
- BAR(ビジネス分析と報告)
- ISC(情報システムとコントロール)
- TCP(税務コンプライアンスとプランニング)
後に記述するが、USCPA受験では出願州を選択する必要があるが、受験場所は出願州とは関係なく、日本でも受験することができる。どこで受けても試験内容は同じの統一試験だ。
また、USCPAは、科目合格制のため、一度に全ての科目を受験する必要はなく、科目ごとに土日を含むフレキシブルなスケジュールで受験をすることができるため、社会人でも学習がしやすい。
ちなみに、USCPAの科目合格の有効期限は18ヶ月のため、最初の科目を受験してから18ヶ月以内に全ての科目に合格をする必要がある。
問題出題形式
USCPA試験はコンピューターで受けるCBT(Computer Based Test)、出題形式には3つのタイプがあり、それぞれMC、TBSと呼ばれる。
MCは4択問題、TBSは総合問題として全ての科目で出題される。
TBSでは、Exhibitを見ながら必要な情報を探し、計算や答えを探していくのだが、Exhibitにはマーカーが引けたり、表をエクセルにコピーすることなども可能だ。
MCの例
TBSの例
出典:Practice with accessible CPA Exam Sample Tests
試験の流れ
全ての科目は5つのテストレットから構成され、最初の2つはMC、3~5はTBSという流れが基本だ。
それぞれのテストレットの間で試験をポーズすることはできるが、その間も試験時間は経過する。
3つ目のテストレットが完了した後に15分の休憩をすることが可能だ。その間に栄養補給やトイレ休憩をしておこう。
電卓・エクセル・メモ
また、テストはコンピューターで受験、PC上で電卓及びエクセルを使うことができ、試験会場によっては電卓を貸してもらうことも可能だ。ちなみに、自分の電卓を持ち込むことはできない。
計算用紙は紙と鉛筆が配布される。
日本受験の試験会場
日本では、東京と大阪のプロメトリック試験会場で受験をすることができる。
地方在住だと遠征をしなくてはならないため、若干不便とも言えるが、以前はアメリカまで遠征しないと受験できなかったため、日本受験できるのはありがたい。
ちなみに、アメリカ国内であれば全国300箇所以上に受験会場があり、割と家から近くでも会場が探せるはずだ。
私はUSCPA受験時にニュージャージーに住んでいたが、家から車で10分ほどの場所に会場があり、非常に便利に試験を受けることができた。
- 東京:御茶ノ水ソラシティ
〒101‐0062 東京都千代田区神田駿河台4‐6 御茶ノ水ソラシティ アカデミア5F
- 大阪:大阪中津試験会場
〒531‐0071 大阪府大阪市北区中津1‐11‐1 中津センタービル7F
受験日
2020年7月より、受験システムが変更となり、通年を通じていつでも試験を受験できるようになった。
各科目の年間受験回数にも制限がなく、1年に何度でも受験が可能だ。(受験結果発表後、約1ヶ月後に予約が可能となる。)
1年に何度も同じ科目を受けるのは現実的なプランとは言えないが、試験日程が決まっており、年間で受験できる回数が決まっている試験と比べると、本試験の精神的ストレスは少なくなる。
また、受験する科目の順番も自由に決めることができる。
受験料
USCPAの受験料の概算は以下の通りだ(私がアラスカ州で受験した受験料)。
学歴審査や出願料金は州によって若干異なることはあるが、大幅に増減することはない。
- 学歴審査:190~240ドル
- 出願料金:1回350ドル〜370ドルx4科目(1400ドル〜1480ドル)
- 国際試験追加料金:390ドル✖️4回 (最低1560ドル)
合計3300ドル〜
日本で受験するとなると、科目別の受験料金に加え、インターナショナルフィーが加算され、一科目受験するために750ドルがかかる。
» 【日本vs米国公認会計士】試験内容・キャリア・年収の真実
USCPA(米国公認会計士)試験の難易度
USPCAの合格点・合格率
合格率
参考:Uniform Certified Public Accountant Examination
USCPAの合格率は、各科目で概ね50%前後を推移している。BECの合格率は60%程度と一番高く、FARは四科目の中でも難易度が高い。
全体の合格率は年々上昇しており、直近の平均合格率は57.7%だ。
一方、これは全受験者における合格率であり、実は日本会場で受験した者の平均合格率は2019年で41.2%と若干低い傾向にある。
それでも、3人に1人以上合格できるUSCPAは、受かりやすい試験といっても過言ではないだろう。
合格点
USCPAの合格点は99点満点中75点以上とされている。一方で、この75点は、75%以上正解をするということを意味しているわけではない。
受験者全体の成績等から、標準偏差や調整が加えらた後の、調整後スコアが75%以上である必要がある。
75点を取得するための正答率は開示されていないが、感覚的には6−7割程度の正答率で合格点レベルには達するイメージではある。
合格に必要な勉強時間と期間
USCPAになるには、累計1000時間〜1500時間程度の勉強時間が必要だ。
この勉強時間を働きながら確保するには、どれぐらいの期間が必要だろうか?
1日平均3時間勉強時間が確保できれば、大体1年〜1年半程度。
1日平均2時間の勉強時間であれば、1年半から2年はかかるだろう。
日本の公認会計士との違い
公認会計士の場合はこれが3,000時間以上必要のため、日本の公認会計士の半分以下の時間で会計士資格を得ることができる。
公認会計士試験では、選択式の短答式試験の他、記述の論文式があり、暗記や深い理解度が求められる内容が多いので時間がかかるのだ。
また、年間を通じて、比較的柔軟に受験ができるUSCPAと異なり、公認会計士試験は年に決まった日時でしか受験できないため、精神的なストレスも非常に高い。
一方、USCPAと公認会計士で監査法人に就職した場合のキャリア・年収はマネージャーまでは差異がなく、30代前半で1,000万円は現実的のため、コスパ良くキャリア構築をすることができる。
ちなみに、私は予備校を利用したが、講義ビデオを見ずに問題集を繰り返し演習するやり方で勉強時間を削減し、6ヶ月(600-700時間程度)で全科目を合格することができた。
詳しい勉強方法はUSCPAに6ヶ月で合格した私が難易度・勉強時間やコツを伝授で解説をしているため参考にしてほしい。
USCPA(米国公認会計士)の受験資格、出願州
受験要件概要
USCPA受験には、受験要件を満たす必要がある。
この受験資格はアメリカの50の州によって異なり、❶大学卒、❷総取得単位数、❸ビジネス・会計単位数の3つの組み合わせによって定義されることが多い。
特定の州でライセンスが必要な場合は、その州の受験要件を満たして受験することも考えられるが、日本在住者がUSCPAを受験する場合は、ライセンス登録の州はどこでも良いことが想定される。
そのため、最短で合格を勝ち取るためには、出願のしやすい州で受験をして全科目合格することが望ましい。
おすすめの出願州と受験資格
以下、社会人や学生が受けやすい州をいくつか紹介する。特に希望の州がなければ、多くの予備校は以下の3つの中から受験州をおすすめするはずだ。
アラスカ州の受験要件
- 4年制大学の学位
- 会計15単位
コメント:大学卒の社会人であれば、幅広く認められる会計単位を15単位取得するだけで受験が可能。大学で取得した簿記等の単位も認められることが多い。
ニューヨーク州の受験要件
- 総取得単位120単位
- 4つの指定科目単位を取得(12単位)
コメント:受験にあたり学位は必要ないため、大学卒業前でも受験が可能。
一方で総取得単位の制限があり、大学4年までに受験するためには3年までに110単位以上程度を取得しておくことが望ましい。
グアムの受験要件
- 4年制大学の学位又は総取得単位120以上
- 会計24単位
- ビジネス24単位
- 18ヶ月以内の見込み受験が可能
コメント:見込みの受験が可能のため、大学を卒業していない段階や、単位取得中でも受験が可能。
一方で、取得しなければならない単位数も多く、初回の受験から18ヶ月以内に条件を満たす必要があるため、意外とバタバタしそうなイメージだ。
既に110単位以上の単位を得ている学生であれば、ニューヨーク受験(12単位追加取得)の方が総合的には楽になるかもしれない。
単位要件の確認・取得方法
受験にあたり、現在取得済みの単位要件(会計・ビジネス単位)を確認しよう。日本の大学で取得した会計・ビジネス関連の単位も利用することができる。
下記を目安に、自分でも概ねの取得済みの単位数を計算することができる。
会計単位:
Accounting(会計)・Auditing(監査)・Financial Statement(財務諸表)・Financial Reporting(財務報告)・Tax Accounting(税)・Cost Accounting(原価計算)・Managerial Accounting(管理会計)など
ビジネス単位:
Advertising(広告)・Bank(銀行)・Business(ビジネス)・Commerce(商業)・Commercial(商業)・Corporation(会社)・Economy(経済)・Economics(経済学)・Economic(経済の)の付く単位・Enterprise(企業)・Exchange(為替)・Finance(財務)・Financial(財務の)の付く科目・Fund(基金)・Insurance(保険)・Labor(労働)・Money(通貨)・Management(経営)・Marketing(市場での売買)・Securities(証券)・Statistics(統計学)・Trade(貿易)・Transportation(輸送)など
ちなみに、経済学部卒の私はビジネス単位は足りていたが、会計単位は4単位ほどしか取っておらず、追加の単位取得が必要であった。
足りない単位は、後述する米国公認会計士の専門予備校に通うことで、追加コストはかかるが比較的簡単に取得することができるため安心しよう。
出願州/ライセンス登録する州は重要?
アメリカ国外でUSCPAとして働くことを考えているのであれば、出願州やライセンス登録する州は実務的には重要ではないと考える
なぜなら、基本的にレジュメや履歴書に出願州やライセンス登録州を記載することはないからだ。USCPA(2021)といったように、資格と合格年次等を記載することになるだろう。
また、ライセンス登録に関しても州ごとに要件が異なるが、ほとんどの場合監査の実務要件が必要であり、上長のUSCPA資格者による実務経験の証明、アメリカ在住などが求められることがあり、ライセンス登録のハードルが高い州も多い。
そのため、多くの日本人資格保有者は、ライセンス登録しやすいワシントン州でUSCPA登録をしている。
ワシントン州では、監査以外でも経理など幅広い実務経験が認められ、直接の上長ではなくてもライセンスを持った州の会計士であれば実務経験の証明ができ、予備校でのライセンス取得サポートもしてもらえる。
アラスカやニューヨーク、グアムなど、出願しやすい州でまずは合格し、合格実績をワシントン州にトランスファーした上でライセンス登録をするのが日本人にとっては一般的な戦略だ。
また、ほとんどの場合は該当しないと思うが、アメリカの監査法人でパートナーとして監査報告書にサインをする場合は、クライアントの拠点がある州でライセンス登録が必要だったり、特定の州で会計事務所を開業する場合は、その州のライセンスが必要になる。
どこの州でライセンス取得をしたいかどうかが明確な場合は、出願州もライセンス登録する州にすることがおすすめだ。
例えば、アメリカ在住で特定の州の監査法人で働くことが決まっている場合は、当初より働く州の受験要件を満たしてから受験〜ライセンスを取得することで、ライセンストランスファー等の余計な手間を省くことができる。
USCPA(米国公認会計士)の予備校
USCPA予備校比較
米国公認会計士の受験勉強は予備校を利用することで効率的に進めることができる。日本でメジャーな予備校は以下の4つ。
予備校 | 特徴 |
アビタス | 合格者数累計4,400人超のUSCPA専門予備校。オリジナル教材、日本語テキストや解説が充実。 |
TAC | 資格対策の総合予備校。公認会計士、簿記、USCPA等の他、多くの資格試験対策を提供。USCPAコースはBeckerと連携。 |
CPA | 後発のUSCPA予備校。費用は最安値。 |
予備校利用で単位取得が容易に
特に、受験資格を得るための会計・ビジネス単位が足りない人が多いことが想定され、この単位取得が予備校を利用することで簡単に取ることができる。
オンラインで単位取得も可能、かつ、単位取得試験の難易度も低いため受験要件を満たすことは容易だ。
それぞれの学校の費用感は、取得する単位数にもよるが、50万円(15単位取得想定)〜80万円(48単位取得想定)となる。
予備校を選ぶ際には、料金だけでなく、教材や単位取得のし易さ、通信・通学どちらが良いか等総合的に勘案して決定しよう。
独学か予備校か
また、アメリカの有名教材のBeckerやRogersを利用して独学をすることも考えられるが、この場合単位は自力で取得する必要があり割高になりやすく、また英語のみで勉強することとなるのはデメリットだ。
私は3つの専門予備校を比較し、最終的にアビタスを利用することにした。決めてはアビタスの紹介記事にまとめている。
ちなみに、私が利用したアビタスは紹介で特典が得られるため、必要な際は下記から声をかけていただければ幸いだ。
- 模擬試験1セット無料追加(約24,000円相当)
入会者全員に1セットついている模擬試験だが、紹介の特典として、
※科目は、必須科目のFAR/AUD/
- USCPA用語集無料付与
通常の入会者にはついていない用語集を無料で付与。会計や監査に関する専門用語を瞬時に検索し、
※関連科目の表示は旧試験制度に準拠だが、
終わりに
USCPAは、日本の監査法人やBig4へに就職に有利になるだけでなく、経営、IT、会計の知識、そしてその英語力の証明として、事業会社でも重宝され、経理や内部監査、経営企画等で働く人にも役に立つ資格。
また、日本国外やグローバルに働きたい人にもUSCPAはおすすめだ。海外の会計事務所や監査法人で働くチャンスも掴みやすい。
日本の会計士と比べると日本での知名度はまだ低く米国公認会計士は「意味ない」「使えない」と言ったネガティブなことをいう人もいるが、そういう人は決まって資格を持っていない人だ。
USCPAの「活かし方」は自分次第で無限大。国際資格で開ける可能性にチャレンジしてみよう!