これをご覧になっている皆様の中には、今の会社の現状には満足しているので、すぐに転職することは考えてはいないが、中長期的視点でのキャリアアップや業務範囲の拡大を目指している、といった方も多いのではないかと思います。
一方、10年後、20年後を考えると、将来管理職で活躍できるポジションが少なそうといった不安や、自身が希望しない人事異動の可能性により、やりたい仕事をいつまで続けられるかわからない、など、様々な悩みがあるのではないかとも思います。
この記事では、USCPAがあれば、どういった社内での活用可能性があるのか、周囲の見る目がどう変わるのか、などについて、イメージをつかんでいただくことを目指したいと思います。
この記事の著者:COCOA
業務上会計知識が必要だったことがきっかけでUSCPAへの興味を持ち、本格的に勉強を開始。平日早朝と土日を勉強時間に充てる形で、約2年で全科目に合格。合格後はリスクアドバイザリー業務に従事し、その後、企業内部でのリスク管理態勢整備業務を経験。
監修者:Ryo
大学大学中に日本の公認会計士試験に合格し、大手監査法人に勤めた後スタートアップでIPOや投資を経験。その後アメリカにMBA留学し、卒業後に現地の会計事務所に就職したことがキッカケでUSCPAの勉強を開始、アビタスを利用して約半年で全科目に合格しました
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目次
USCPAを活かしやすい一般企業・事業会社のイメージ
米国公認会計士の資格がもっとも活かしやすいのは外資系企業となり、P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザーのような米国を本拠とする企業や、Nestle、ユニリーバ、ロレアルのような欧州を本拠とする企業が代表的な例となります。
外資系企業にとっては、USCPA=日本企業における日本の公認会計士、のようなイメージとなり、特に海外スタッフなどにアピールしやすいといえます。
一方で、日系企業ではUSCPAが活かしにくい、ということでもありません。業務内容にUSCPAとの親和性が高い業務であれば、資格の取得により、業務の幅が広がったり、そこから社内でのキャリアップにつながる可能性もあります。
以下は就職四季報が2019年に実施した、企業の海外勤務者比率についての調査結果ですが、一つの参考として、海外勤務者比率が高い企業の方がグローバル意識が高く、かつ、将来的な海外勤務の可能性が高いといえます。
社名 | 海外勤務者比率 |
JETRO | 39.7% |
商船三井 | 27.8% |
東洋エンジニアリング | 23.2% |
国際石油開発帝石 | 22.7% |
JICA | 22.2% |
豊田通商 | 21.9% |
住友商事 | 21.3% |
日揮 | 20.9% |
三菱商事 | 20.6% |
丸紅 | 20.4% |
三井物産 | 20.3% |
川崎汽船 | 19.1% |
伊藤忠丸紅鉄鋼 | 18.8% |
メタルワン | 18.4% |
双日 | 16.7% |
日本郵船 | 15.0% |
伊藤忠商事 | 14.9% |
郵船ロジスティクス | 14.7% |
YKK | 14.7% |
近鉄エクスプレス | 14.4% |
長瀬産業 | 14.1% |
旭硝子 | 13.1% |
ジーテクト | 13.0% |
兼松 | 12.8% |
東レ | 12.3% |
日本電産 | 12.0% |
トヨタ紡織 | 11.9% |
JFE商事 | 11.9% |
阪急阪神エクスプレス | 11.3% |
ミネベアミツミ | 11.0% |
出典:https://surat.jp/kaigai-shushoku-tenshoku/work-abroad-company/
日系企業においては、特に会計・財務系の業務であれば、大部分の役職員がUSCPAとの関連性やメリットを理解しやすいでしょう。
企画、業務推進・支援部署においてUSCPAが活かせる可能性としては、高度な業績管理や管理会計、企画力といった点が想定されます。
USCPAを活かしやすい業務内容
企業の中で、以下のような業務内容でUSCPAを活かしやすいと考えられます。
- 会計、財務系業務
会計系の資格ということで、最も活かしやすい業務としてイメージがつくのは、会計処理や、財務会計ということになると思います。
また、下記の計数管理とも関連しますが、管理会計の分野でもUSCPAやその勉強内容を活かしやすくなります。
例えば、以前はビジネス推進部門で活躍していた人が、USCPA合格をきっかけに、財務部門でのキャリア構築を実現している例も見られます。
- 企画、業務推進・支援部署(計数管理を行う部署)
これらの部署においては、経営計画、予算・実績の計数管理、業務実績管理などの分野で知識を活かしやすくなります。
- 営業部門
お客様の財務内容の分析、提案内容に関するメリットを数字で合理的に示す場合などで、USCPAの知識を活かしやすくなります。
したがって、汎用性の高い商品の営業ではなく、ソリューション提案型の営業において、特にUSCPAが活かしやすくなるものと考えられます。
例えば、金融機関の商品開発部門・投資銀行部門においては、商品やソリューション導入に伴う会計処理の検討が重要となり、日本の公認会計士やUSCPAを積極的に採用する企業も存在します。
更に、お客様が米国会計基準を適用している場合には、USCPAの資格が重宝されることも多くなります。
- 内部統制部門
内部監査部門、コンプライアンス部門等においても、USCPAが活かしやすくなるものと考えられます。一方で、コンプライアンス業務は法務との親和性が強いことから、法律バックグラウンドを重視する企業も多く存在しています。
コンプライアンス業務におけるUSCPAの強みとしては、統制ルールの設計や検証手法を理解している、ということになりますので、高度な統制ルールが必要になる大企業の方が、よりUSCPAを活かしやすいと言えます。また、AUDの知識を強く活かしやすい部門といえます。
ちなみに筆者の場合は、USCPAへの合格により、内部統制への深い知識を身に着け、監査法人でのリスクアドバイザリー業務に大きく活かすことができました。
社内での昇進、高評価に!米国公認会計士の活かし方4選
ここでは、USCPAを取得すると、金銭面や、社内でのプロモーション・評価へどう影響するか、といった、ややリアルなポイントについて整理してみます。
実費負担制度
多くの会社では、USCPA級の資格に合格した場合、受験料の(一部)負担、更新費用の負担などの制度が存在しており(充実している会社の場合には両方)、金銭面でのサポートを得られる可能性があります。
たとえば、ある監査法人の場合には、USCPAの資格更新費用については全額法人負担となっています。また、USCPA合格時に、合格までにかかった予備校費用や受験費用の数割を支払う、といった制度を持っている企業も存在します。
また、企業からの負担ではありませんが、雇用保険に1年以上加入している場合には、厚生労働省の一般教育訓練給付制度※を利用することが可能です。
これにより、予備校のUSCPA対策コースの受講で、費用の20%もしくは10万円の高い方までが負担されますので、効果的に活用することも重要です。
※すでに給付を受けたことがある場合には、前回の支給から3年以上雇用保険に加入していることが必要
自己啓発目標での加点
多くの会社では、人事評価の際に業績達成度だけではなく、自己啓発目標が加味されています。
基本的には、業績達成度の割合が高く、自己啓発目標については形式的であることも多いと思いますが(皆様も年末の人事評価の際に、本を読んだり、指定の研修を受けた、といった形ばかりの達成を記入することが多いのではないかと思います。。。)、USCPA級の試験に合格することで、大幅な加点(少なくとも満点評価)が期待できます。
ちなみに、私の場合はUSCPAに合格した際、自己啓発目標は満点評価を得るとともに、業績への貢献が高い資格取得として、能力評価にもプラスの評価を得ました。
また、科目合格の段階であっても、同様に自己啓発目標としては大幅な加点が期待できます。
業務範囲の拡大と評価への反映
USCPAに合格することで、「会計」「財務」というキーワードと関連していれば、とにかく色々な相談が増えます。USCPAを持っているという噂を聞きつけて、これまで業務上関連のなかった社員から相談を受けることも多くなります。
例えば、ビジネス推進サイドで業務を行っている人であっても、様々な会計処理の相談を受けたりし、ミドルオフィスの社員と話す機会が増える、といったことも起こります。
これまで取り組んでいた業務の範囲を超えて、様々な業務に接する機会が増え、視野も広がるものと考えられます。
周りからの目としても、「守備範囲」が広い人材としての評価が上昇する可能性が高く、また、ネットワークが広がることにより、キャリアパスの幅が広がったり、プロモーションの推薦を取りやすくなるといったメリットも十分に期待できます。
専門性の発揮
上記のUSCPAを活かしやすい業務内容において、高い専門性を示すことにより、組織からの信頼が高まり、ひいては業務遂行関連の高い評価、プロモーションにつながる可能性も存在します。
ここで、認識しておくべきポイントとしては、USCPAを保有していることで、即評価が高まるということではなく、USCPAを活かして、業務上の信頼を得ることにより評価やプロモーションにつながる、ということです。
また、評価やプロモーションの議論とも関連しますが、USCPAを突破していることにより、会計関連の専門的な業務や、英語関連業務への対応可能性を認められ、海外駐在につながる可能性もあるものと考えられます。
特に海外拠点では、少数のスタッフで多くの業務をこなすことが求められる場合が多く、専門性とともに、業務の守備範囲が広くなっている場合には、適応可能性は高いといえます。
キャリアアップに!USCPA取得の副次的な効果
USCPAを取得することにより、上記のような「表向き」のメリットだけではなく、周りの見る目が変わったりすることにより、副次的な効果も様々生まれます。いくつか代表的なものは以下のとおりです。
議論の説得力が増す
特に若い方であれば、上司や先輩から、これまで意見へ相手にされなかったといった経験も多いのではないかと思います。
しかし、USCPAを取得することによって、会計・内部統制など専門的な領域については、「専門家」のコメントとして受け止められるようなります。これにより、特に権威に弱い人に対しては、議論の説得力が高まります。
USCPA合格者が、「USGAAPの条文上このようなルールになっているから」という説明を添えることにより、ほぼ異論を挟まれなくなるような状況も発生します。
もちろん、相手が権威に弱いからといって、資格にあぐらをかいて議論を常に押し込もうとするのではなく、絶対にゆずれない議論の際に少し資格の力を借りて説得する、ぐらいの活用方法がよいのかもしれません。
会計関連の相談が増える
上でも触れましたが、「会計」「財務」というキーワードと関連していれば、とにかく色々な相談が増えます。
相談の中には、自身の専門外の内容も多く含まれ、試行錯誤することも多くなると思いますが、得意不得意は、監査法人の会計士であっても存在しています。したがって、専門外のことを聞かれてもあまり戸惑わないことが重要といえます。
例えば、私の場合には、それまで業務経験がなかったM&Aに関する会計処理の相談を受け、四苦八苦しました。
当然ながら、その場では即答できなかったのですが、M&A会計を理解するいい機会という思いもあり、取り扱いを調べ、回答することで、同僚のお役にも立ちながら、自分自身の知識を高められた印象を持っています。
むしろ、専門外のことを聞かれた際に、少し調べて回答してあげることによって、新たな業務の視野やネットワークを構築する手段として活用する、ぐらいの心構えの持ち方がよいと考えます。
グローバル人材というイメージの定着
USCPAを取得することにより、一定の英語力を持っているという印象を与えることができ、「とりあえず対応できそうなので、任せてみよう」といった形でグローバル業務を優先的に割り当てられるケースもあります。
また、海外子会社と業務を行っている場合、USCPAを保有していることで、信頼が高まります。
その信頼により、海外メンバーと円滑に業務を行えるようになることで、グローバルな業務が可能な人材、というイメージを周囲に定着させる、という好循環も期待できます。
USCPAを社内で活かす上で大切なこと
これまでご覧いただいた内容とも重なりますが、USCPAを活かして、今の会社で活躍していくという前提にたって、重要なポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
人間関係の構築や、コミュニケーション力向上のために利用する
USCPAを取得することにより、間違いなく会社内で相談を受ける機会は増加します。こうした機会を有効活用して、社内で強力な人間関係を構築し、充実した業務を行っていくことが非常に重要です。
昨今では、監査法人の昇格についても、結局コミュニケーション力などがポイントになっており、企業に勤務しているのであればなおさら、知識の取得や向上だけでなく、コミュニケーションやネットワーク向上のために資格を有効に活用すべきと考えられます。
資格保有者が、知識レベルの少し劣る人に、見下したような対応をすることも、これまで少なからず存在していましたが、お客様や相談を受ける相手方から安心して信頼される存在でなければ、「面倒臭い相手」として逆に敬遠されることにもなりかねません。
あくまで、資格をビジネスを進めるためのツールとして活用するため、コミュニケーション能力やネットワーク構築能力が今後さらに重要になるものと考えます。
積極的に多様な業務に携わる
上記とも関連しますが、様々な相談を受ける機会が増え、なかにはこれまで経験したことのない分野の内容も含まれると考えられます。
こうした場合にも、あまり戸惑ったりすることなく挑戦を続けていくことで、今まで気づかなかった新しい強みを得たり、海外勤務を含めた新たな業務のチャンスも回ってくるものと考えられます。
おわりに
USCPAは非常に汎用性の高い資格であり、現状転職の意向がなかったとしても、資格を活かして社内で活躍していくことが可能です。
また、中長期的に転職も視野に入れたキャリアアップを図る際にも大きな強みになり、いわば「つぶしの効く」資格です。
ご覧頂いた多くの皆様にとって、今回の記事がUSCPAを目指すきっかけになれば、大変うれしく思います。