米国公認会計士(USCPA)の就職先としてよく聞かれる『監査法人』。
いわゆる一般事業会社とは性質が異なることもあり、具体的な仕事内容についてはあまりイメージの湧かない方も多いのではないでしょうか。
今回は、実際にUSCPAを取得して監査法人へ転職した筆者の視点から、
- 監査法人の具体的な仕事内容や給与水準
- 未経験者でも就職可能か?
- 入所した後の苦労や克服方法など
以上についてご紹介していきます。
筆者について:エザキ豊
大学卒業後、働きながらUSCPAの学習を開始。科目合格者としてBIG4監査法人へ転職、その後全科目合格を達成。USCPA学習と監査法人で培った知識や海外移住経験を活かし、現在はライターとして活動中。
監修者:Ryo
大学大学中に日本の公認会計士試験に合格し、大手監査法人に勤めた後スタートアップでIPOや投資を経験。その後アメリカにMBA留学し、卒業後に現地の会計事務所に就職したことがキッカケでUSCPAの勉強を開始、アビタスを利用して約半年で全科目に合格しました
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目次
監査法人の仕事とは?
『監査法人』という名前の通り、主な仕事は『会計監査業務』です。
クライアントである事業会社の財務諸表を第三者の目線からチェックし、数字の正しさに『お墨付き』を与える仕事と考えてください。
すでにAUDを勉強されている方は、何となくイメージがつかめるかもしれませんね。
しかし、テキストに載っている内容だけでは、実際に何をしているのかまではよくわからないという方も多いと思います。
ここでは簡単に、監査法人での仕事についてご紹介します。
会計監査業務の流れ
会計監査は、大きく3つの段階に分かれます。
- 計画
- 実施
- 完了
1)計画
全体の監査計画を立てる段階です。
スケジュールの策定をはじめとして、重要性の基準値の決定、監査論点の洗い出し、スコーピング(どの勘定科目に対して手続を実施するのか)の検討など、監査の初期段階で決めておくべきことをここで決定します。
監査の成功を左右するほど重要かつ難しい手順であり、入所したばかりのスタッフが関与することはほとんどありません。
計画段階でのスタッフの主な仕事は、キックオフミーティングへの参加です。
ここで監査計画の内容をチームメンバーがしっかりと理解することで、次の2)実施をスムーズに進めることができるのです。
2)実施
1)で立てた計画に従い、実際の監査手続を行います。
AUDで習った、確認状・監査サンプリング・分析的手続などといった『監査』と聞いてイメージする通りの作業を行うのがこの段階です。
多くのスタッフがここから監査に参加し、各勘定ごとに手分けしてテストを進めていきます。
ここでの割り振りなども、計画段階で既に決められています。基本的には、全員が自分の割り振りを順調にこなせば、無事に監査が終わることになっています。
しかし時には思わぬ論点が飛び出すこともあり、なかなかスケジュール通りにはいかないのが現実です。
もしも手が空いたら、積極的に割り振り外の仕事を引き受けましょう。チームも助かりますし、自分の評価を上げることにも繋がります。
3)完了
実施した手続の結果を基に、監査の結論=意見をまとめる段階です。
監査手続において見つけ出した財務諸表の問題はここで全て修正され、最終確認がなされます。
全ての問題が解決し、財務諸表の内容についてクライアントとの合意が取れたら、チームリーダー(パートナー)により監査報告書へのサインがなされ、無事に監査終了となります。
この段階でスタッフができることはそれほど多くはないものの、最終分析や財務諸表のチェックなどといった重要な仕事は残っています。
最後まで気を抜かず、頑張ってやり遂げましょう。
簡単ではありますが、以上が監査の現場における主な流れです。
監査先の企業によってチームの規模は異なりますが、筆者が経験したことのある中堅規模の投資会社の場合、マネージャー1名・インチャージ(主査)1〜2名・スタッフ(アシスタントを含む)2〜4名で全ての手続をこなしていました。
「難しそう、自分にやれるのか」などと弱気になるかもしれませんが、心配することはありません。
初めて参加するメンバーには事前に丁寧なレクチャーがありますし、作業中にわからないことがあれば質問したっていいのです。
過去調書を見れば、テストの目的や手順は勿論、どんな文章を書けばいいかまでひと目でわかります。
監査はチームプレイですから、「1人で何でもこなせる能力」より「周りと協力し、スムーズに仕事を進める力」の方が重要です。
わかることもわからないことも積極的に共有し、チーム全体で監査を成功に導きましょう。
監査法人の給与水準・キャリア像
入所初年度の給与は?昇給は?
それまでのご自身のキャリアや法人・ポジションによっても変わるとは思いますが、筆者のいた某BIG4監査法人・金融監査部門でのケースをご紹介します。
USCPA科目合格で入所したため、まずは有期雇用契約でのスタートとなりました。
契約時の年収は約300万円で、みなし残業は含まれていません。
その代わり、残業や休日出勤は一切行わず勉強に集中できるという約束でした。
全科目合格を達成したタイミングで正式採用の契約を交わし、契約書で定められた年収はなんと約500万円まで一気に上がりました。
しかも繁忙期などは残業が多くなるため、実際に受け取る給与はその分だけ多かったです。
筆者は極力残業をしたくなかったのでそれほど増えませんでしたが、中には残業代だけでかなり稼いでいた人もいたようです……。
同年代の友人と比べてもかなり多くもらえていたので、USCPAを取って本当に良かったと思いました。
正式採用後、年に一回の昇進・昇給タイミングがあります。
職階は、アソシエイト・シニア・マネージャー……といった大きな枠の中で、さらにいくつかのレベルに分けられます。
良くも悪くもよほどのことがない限り、毎年1レベルずつ上がっていくイメージです。相当に優秀な人ならば、ダブルアップ(飛び級)することも珍しくありません。
反対に、あまりに評価が低いとステイ(滞留)することもありますが、筆者の周りで実際にステイを食らった人はあまりいなかったように思います。
アソシエイトからシニア、シニアからマネージャーへと上がる大きな昇進のタイミングでは、評価基準も少し厳しくなります。
勤続年数は長いのに、なかなかマネージャーへ上がれずにいるシニアは多いです。マネージャー以上となると給与は大幅にアップし、年収1000万円以上。
しかしながら、アソシエイト・シニアの内はハッキリ言って微々たる昇給率です。
そのため「マネージャーに上がれない」という理由で転職する道を選ぶ人もいるようです。
20代の人にとっては特に、監査法人の初任給は他と比べてもかなりの魅力だと思います。
そこから順調に給与が上がっていくかどうかは努力次第ですが、ゆくゆくは1000万、2000万プレーヤーも夢ではないと考えると、USCPA学習に対するモチベーションも高まるのではないでしょうか。
『監査法人=離職率が高い』!?
転職サイト等で「監査法人は離職率が高い」という情報を目にしたことのある方はいらっしゃるでしょうか。
いきなり暗い話をしてスミマセン……。しかし実際に、監査法人では年次の若い層の離職率が高いことが特徴です。
多くの人が入所3〜5年程度で退職し、異なる業種で活躍しています(筆者もそのうちの一人です)。
中には、監査法人はあくまで実務経験を積むための足掛かりと割り切り、入所当初から次のキャリアを見据えている人も少なくはないようです。
そんな話を耳にすると「ブラック?」「やりがいがない?」などと不安になる方もいるかもしれませんが、決してそういうわけではありません!
監査ももちろん楽しくやりがいのある仕事ですし、待遇や給与面も決して悪くないと思います。
しかし、監査を長く続けたいと思う人がそれほど多くないのには理由があるのです。
それは、監査という業務の性質と目的です。
まず監査業務とは基本的に、毎年同じような作業の繰り返しです。
監査先の企業ごと/年度ごとに特別な論点が飛び出すこともありますが、全体としてやるべきは法令に則った手続きを定められたスケジュールでこなすこと。
属人的な独創性や発想力よりも、いかに効率的に物事を進められるかが重視され、評価される世界です。
そのため、仕事をする上で「自分らしさ」を大事にしたいと思う人にとっては、少し窮屈に感じられるかもしれません。
また、監査の目的は企業ではなく投資家の利益です。
監査人の判断が必ずしもクライアントである企業にとって好ましいものであるとは限らず、開示一つを巡ってクライアントと戦わなくてはならない場面もままあります。
いわゆる『普通の仕事』では、目の前のお客さんのために仕事を頑張り、その結果お客さんから感謝してもらうことにやりがいを感じるという人が多いと思います。
しかし、監査の現場ではそうはいきません。
仕事を頑張れば頑張るほど、財務諸表の指摘事項を見つければ見つけるほど、クライアントにとっては『作業の手間』という負担が増えていきます。
指摘や確認をしつこく繰り返し「うるさい」「細かい」と嫌な顔をされることもしばしばです。
「何のためにやっているのか」というやりがいが目に見えにくいというのも、監査という仕事に対する好き嫌いが分かれるポイントのように思います。
他にも理由はあるのかもしれませんが、監査法人の離職率が高い要因は主にこの2点だと思います。
監査法人が悪いという話ではなく、仕事のスタンスに対するズレが原因のようですね。
一つの専門分野について知識と経験を深めたい・公益性の高い仕事をしたいという人にとっては、まさに天職と言えるでしょう。
その反対に、クリエイティブな仕事にチャレンジしてみたい・目の前のお客さんに感謝されたいという人は、ある程度のところで監査には見切りをつけ、別の職種へ移ることが多いようです。
監査法人から始まるキャリアプラン
上記のような事情を踏まえて、監査法人で働く人のキャリアについて紹介します。
筆者の周囲では、大きく分けて3通りの傾向に分かれていたように感じます。
- 監査法人でのキャリアを積み重ね、パートナーを目指す
- 一般事業会社の経理や内部監査、コンサルへの転職
- 独立開業(コンサル・税理士 他)
この中で一番多いのが、2)転職と3)独立でしょう。
公認会計士(USCPAを含む)の資格を持っており、監査法人での勤務経験がある人材は、特に一般事業会社の経理や内部監査では引く手あまたです。
上場会社の経理ならば当然、監査対応までする必要がありますので、監査の実務経験を持つ公認会計士は現場で大変重宝されます。
また、内部監査においても会計の専門家というアドバンテージは絶大です。
内部監査部門は社内の色々な部署から転属してきたメンバーで構成されていることが多く、会計に特化した視点から物事を見ることのできる人材は意外と少ないためです。
経理や内部監査狙いならば、監査法人出身者はかなり有利に転職活動を進めることができると思います。
コンサルティング会社もポピュラーな転職先の一つです。
会計士の場合、対応可能なコンサルティング分野は大変幅広く、財務・経営・M&A……など多岐にわたります。
監査法人での経験を踏まえて、自分はどの分野に強み・興味があるのかを見極めて転職先を決めるのがよいでしょう。
コンサルを目指す場合、転職/独立の前段階として、同じ法人のアドバイザリーやコンサル部門へ異動して経験を積んでから外へ出るというパターンも多いようです。
監査法人からのキャリアとしては税理士も人気ですが、USCPAホルダーにはあまり関係がないためここでは省略します。
このように、監査法人をスタートとしたキャリアプランには実に幅広い選択肢があることがわかります。
監査法人でしっかりと経験を積むことで、自分の強みを生かせる転職先が必ず見つかるはずです。
» 【保存版】USCPAでアメリカ就職をする5つの方法【経験者が解説】
人材育成制度を利用しよう
一つの法人で長く勤めるにせよ、更なるキャリアチェンジを見据えるにせよ、自分の将来について考え、スキルを磨くための機会は大いに活用すべきでしょう。
大手の法人では特に、人材育成制度が充実しています。
筆者のいた法人でも多くの制度がありましたが、中でも有益と感じたものを紹介します。
1)研修制度
とにかく研修が多く、閑散期でも暇になることはありませんでした。
受講が義務付けられている必須研修の他、希望制の研修も充実しています。
内容は基礎的な監査論の解説を始めとして、IT関連のワークショップ、法令・業界動向のアップデートなど多岐に渡り、必要に応じて、または興味本位で色々な分野について学べる機会を持てるところが良かったです。
ITツールやマーケティングといった内容の研修は監査以外でも役に立つ情報が多いので、退職後の現在でも糧となっています。
2)コーチング/メンター制度
マネージャーレベルの上司がコーチとして1人付き、仕事上の悩みやキャリアについて相談できる制度です。
今後のキャリアプランについて話し合うだけでなく、それに合った研修やジョブのポートフォリオを提案・紹介してもらうことも可能です。
入所したばかりのスタッフの場合、人事から一方的にアサインされるジョブ以外のことはほとんどわかりません。
交流があまり得意ではない人は特に、他にどのようなチームがあるのか、どんなジョブが存在するのかを知らず、やりたい仕事があってもチャンスを逃してしまう可能性があります。
そのような不利を、マネージャーの人脈や経験値でカバーできるのがコーチング制度です。
具体的にどういったジョブがあるのかわからなくても「こんな感じの仕事をしてみたい」というフワッとした話だけで、希望にマッチしたジョブを提案してもらうことも可能です。
筆者の場合、仕事で語学を生かしたいと思っていたため、海外案件を担当するマネージャーを積極的に紹介してもらいました。
その結果、興味のあるいくつかのチームにメンバーとして加わることができました。
このようにして、自分のキャリアプランに合った成長機会をスムーズに得ることのできる、とても理想的な制度だったと思います。
3)海外赴任制度と語学学習補助
筆者のいた部門では海外への人材派遣に力を入れており、毎年2〜5名程度が赴任していきました。行き先の多くは欧州・米国の現地法人であり、派遣期間は約2年です。
日本と異なるコミュニケーションや文化に触れて視野を広げること、また他拠点の様々なノウハウを日本へ持ち帰ることが大きな目的です。
筆者は残念ながら機会を得ませんでしたが、実際に赴任した人たちの話を聞くと「苦労するが得るものも大きい、行ってよかった」という感想が大多数でした。
この制度を目的として入所する人も少なくない分、競争率は高いですが、グローバル志向の方はチャレンジする価値があると思います。
併せて、語学力の向上を目的とした取り組みもありました。
年に一度の英語力テストが義務付けられている他、語学学校の学費補助などの制度が設けられています。
この補助制度を利用して、長期休暇中にフィリピン留学をした人もいるそうです。
語学力を維持・向上したい方は是非とも利用すべき制度でしょう。
USCPAの監査法人への就活
さて監査法人で働くイメージをなんとなく掴んでもらったところで、就活において気になる点についても少し触れたいと思います。
未経験者でも安心
基本的にどの法人も監査経験の有無を問わず募集しており、入所後の教育などフォローも充実しています。
なので、未経験だからといって不安に思うことは全くありません。
USCPAの強みを生かす
USCPAとして監査法人に就職したいのならば、やはりUSCPAならではの強みを生かしましょう。
具体的には英語力と、米国の法令やIFRSへの対応力の2点です。
クライアントである企業のグローバル化が進むにつれ、いわゆる『海外案件』も拡大しています。
筆者のいた金融業界部門では、特にその傾向が強くありました。
しかし、いざメンバーを集めようとしても、英語力や法令への馴染みのなさから躊躇してしまうスタッフは意外と多いのです。
そのような環境ですから、海外案件に対応できるスタッフは貴重な存在として引っ張りだこになります。
USCPA資格を持ち、海外案件に対する意欲をアピールすることは、就活における一つのアドバンテージになるはずです。
就職活動における具体的な戦略については、以前に記事を書いています。
ぜひ、そちらも参考にしてみてください。
ライバルはJCPA!USCPAの弱点と克服法について
日本国内のUSCPA保有者は年々増えてはいるものの、監査法人内ではまだまだ日本の公認会計士資格者(JCPA)の方が多い状況です。
仲間でありライバルとも呼べる同期入所の面々も、必然的にJCPAが多くなります。
同期と自分を比べてみてまず痛感したのは、USCPAであるが故のJCPAとの圧倒的な実力差でした。
ここでは筆者が実際に苦労した点と、それを克服するために取り組んだことを紹介します。
会計・監査や業界知識のブラッシュアップ
USCPA予備校の売り文句にもなっていますが、一般的に資格の取りやすさはUSCPA>JCPAと言われています。
その理由の一つは、USCPAでは広く浅い知識を試されるのに対し、JCPAは短答式でも論文式でも科目ごとに深い理解が求められ、勉強時間もUSCPAの2倍程度(3000時間程度)必要となることです。
そのため、特に財務会計や監査論などといった分野の理解については到底太刀打ちできないと感じる場面が多くありました。
この点については、今一度テキストを見返す・詳しく解説してある書籍を読むなどして知識のブラッシュアップを図りました。
筆者のいた法人では、オフィス内の共用書棚に関連書籍が豊富に揃えてあったため、頻繁に利用していました。
そういった設備がない場合には、上司や同期にオススメの書籍等を教えてもらうのも良いでしょう。
また、業界独自の法令や商流については、試験勉強だけではカバーできないことがほとんどです。
新たに学ぶべき事柄のためにも、継続的な学習習慣は試験合格後でも必須と言えるでしょう。
とにかく仕訳を切って切って切りまくれ
いざ監査が始まり、何よりも苦労したのが『仕訳を追えない』ことでした。
USCPAを勉強中の方ならわかるかと思いますが、テキストに載っている仕訳を見て覚えることはあれど、自ら仕訳を切る機会はほとんどありません。
仕訳の理屈はわかっていても、いざ自分で一から仕訳を切ってみろと言われると難しいと思います。
一方のJCPAは試験で仕訳を書かせることもあるため、しっかり勉強してきています。知識量はもちろんのこと、実務でも大きく差をつけられたのはこの点でした。
監査手続を進める上では、会計処理や数字の適切さをチェックするために仕訳の内容まで細かく見る場合があります。
- どの仕訳とどの仕訳が対応しているのか?
- 数字は合っているのか?
- 会計処理はこれで正しいのか?
それだけ見れば簡単なことのように思われるかもしれませんが、企業が一年かけて作成した膨大な会計データから、仕訳の知識なしに全てをチェックするのはとても難しいことです。
初めての会社監査でまず筆者がつまずいたのがここでした。
自分が必死に何時間もかけて特定した仕訳を、同期入所のJCPAがいとも容易く見つけ出しているのを目の当たりにして、何度悔しい思いをしたことか知れません。
筆者のとった単純な克服方法は、地道に仕訳を切ることでした。
担当するエリアの仕訳について、一つ一つ正しい仕訳を自分で切り直す癖をつけました(本格的に忙しくなってくると、そんな余裕はなくなってしまいましたが……)。
わざわざ仕訳を切り直す必要のない時までその作業をしていたため、はじめのうちは手続を終わらせるのにかなり時間がかかってしまいました。
しかし新人で担当エリアが少ないため時間的余裕はあること、また次年度以降に経験を活かせるというという大義名分でどうにかやり切ることができました。
これを一年も続ければ、仕訳を見つけるのがかなり上手になります。二年目からはそれほど時間を掛けずに手続を進めることができるようになりました。
全く仕訳がわからない・見当もつかないという方は、簿記の勉強をしてみるのもいいかもしれません。
3)リサーチ力を鍛える!
当然ながらUSCPAは、日本の法令について学習する機会はありません。
『ザイキ』『カンキホー』(※)と聞いてピンとくるUSCPA学習者さん、果たしてどれくらいいるでしょうか?
少なくとも入所当時の筆者は何が何やら、チンプンカンプンの暗号を聞いている気分でした。
(※財規=『財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則』の略称、監基報=『監査基準委員会報告書』の略称。それぞれ内容についてはぜひググってみてください)
監査の仕事はひたすらコツコツと財務諸表の数字に向き合うこと、というイメージがあるかもしれませんが、実は一日の大半を「調べ物」に費やします。
どんなことを調べるのかというと、一番は関連する法令や過去事例・他社事例です。会計処理や開示の適切性を確認するために、ネットや書籍を駆使してとにかく調べまくります。
JCPAは受験時、関連する法令の名称と内容を一通り履修済みであるため、比較的苦労は少ないようです。
それに対し「そもそも文献や法令の名称すらわからない!」という状態であるUSCPAは、この取っ掛かりでつまずくことになります。
この違いのせいで仕事の効率に大きな差が出てきてしまうことに気づき、筆者はかなり焦りました。
恥をしのんで逐一質問できれば話は早いのですが、忙しい時期に周囲の手を煩わせてばかりもいられません。
なるべく自力で解決するために意識していたのは、次の2点でした。
- 知らない言葉はすぐググる
チーム会議や普段の会話で耳慣れない言葉が出てきたら必ずメモし、会議後にまず『ググる』習慣をつけました。
どうしてもわからない場合は上司に尋ねるなどして、法令やクライアント情報についての知識を少しずつ増やしていきました。
- メールには全て目を通す
自分がCCメンバーとなっているメールのやりとりには必ず目を通すようにしていました。
自分の実作業には関係のない話題がほとんどであるため、短期的には時間の無駄にも見えるかもしれません。
しかし、
- 今、論点となっているポイント
- クライアントの抱える問題点
- 近々に対応しなければならない法令の変化
などといった重要なトピックが含まれていることがあり、監査の全体像を把握するために大変役立ちました。
また、ここで用語やクライアントの内部情報を知っておくことで、チーム会議で話題についていくことが少しずつできるようになりました。
この2点を心がけ、リサーチ力の元となるキーワードを収集していくことで、少しずつではありますがスムーズに仕事が回るようになりました。
最初は忙しさも手伝って辛い期間もありましたが、時間を費やすだけの効果はあったと思います。
監査はとにかくリサーチ力が命!です。
自分に合ったやり方を見つけ、リサーチ力をぜひ鍛えていってください。
最後に
USCPAである筆者の経験から、監査法人での働き方について紹介させていただきました。
イメージ通りだったという方も、意外な点があったと思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
記事では簡単にしか説明できませんでしたが、監査の仕事は知れば知るほど奥深く、やりがいを感じられるものです。
またグローバル化の進む社会で、海外の規制やクライアントに対応できるUSCPAはますます重宝されていくはずです。
この記事を通して、一人でも多くのUSCPA学習者が監査法人に興味を持ってくだされば幸いです。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
この記事はインターンのKazuによって編集されました。