海外でのMBA取得を考えている方に向けて、各国のMBAプログラムの特徴を紹介するシリーズ。本日は「イギリスのMBA」をご紹介します。 イギリスの大学はほとんどが国立の研究型大学のため、英国政府の管理のもと教育の品質が厳しく管理されています。 そのため、イギリスのMBAは国際的な評価が高い教育が受けられることで知られており、世界中から多くの留学生が集まる人気の留学先です。 今回は、そんなイギリスMBAの特徴から、ランキング、学費、入学基準まで、詳しく解説していきたいと思います! アメリカではMBAは基本的に2年制ですが、イギリスでは1年制のプログラムが一般的です。 短期間でMBAが取得できるため、休職期間を最小限に抑えながらキャリアアップが可能です。また、授業料や滞在費も節約できるというメリットもあります。 なお、例外的に、ロンドン・ビジネス・スクールやマンチェスター・ビジネス・スクールでは2年制のMBAプログラムを提供しています。この2年制のプログラムでは、交換留学の機会があることが特徴です。 イギリスの経営大学院はほぼ全てが国立で、教育の質が英国政府によって管理されています。 具体的には、QAA(Quality Assurance Agency for Higher Education/高等教育質保証機構)と呼ばれる外部評価団体が、その評価指標に則り、評価し管理して高等教育の質と水準を維持しています。 そのため、イギリスのMBAは国際的にも高い評価を得ています。 「内閣府 平成30年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)」を見ると、「ビジネススクールの質「各国経営者による評価」の項目でスイスに次ぐ評価を獲得しています。 《参照:内閣府 平成30年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)》 また、イギリスには、3大外部認証機関(米国のAACSB International、英国AMBA 、欧州のEQUIS)の全てから認証を受けている「トリプルクラウン校」の称号を持つビジネススクールの数が世界で最も多く存在しています。 2024年10月時点で、世界にあるトリプルクラウン校は135校(世界のビジネススクール全体の1%未満)で、そのうち26校がイギリスのビジネススクールです。 《参照:トリプルクラウン校のリスト 》 イギリスのMBAは、留学生比率が9割を超える学校がほとんどです。 かつての大英帝国の名残ともいえますが、ヨーロッパ、インド、アジア、そしてイギリス連邦から、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が集まります。 留学生比率が3~6割程度とされるアメリカのMBAと比較しても、イギリスのMBAではさまざまな国の留学生と関わる機会が豊富にあると言えるでしょう。特に、コンサルティングプロジェクトでは、多国籍チームで協働する経験ができるのが魅力です。 卒業後には同級生たちとの国際的なネットワークが築けるため、ビジネスパートナーとして活用することで新たなビジネスチャンスやキャリアの広がりも得られるかもしれません。 なお、イギリスでは、留学生は大学・大学院を卒業すると2年間の卒業ビザ(Graduate visa)が取得できるので、卒業後2年間はイギリスで働くことができます。 企業もビザ代を支払う必要がないので留学生をインターンとして積極的に採用するケースは多いです。これにより、国際的なキャリアをスタートするチャンスが広がります。 イギリスの高等教育(大学や大学院)では、自主学習が重視される傾向があり、MBAにおいても学生は授業の前に本や教材を読んで理論をしっかりと学びます。 授業はそれを補完する形で行われ、ディスカッションやビジネスプロジェクトなどを通して、実践力を磨いていきます。 試験はマークシート式ではなくエッセイ形式が主流です。また、卒業時には修士論文の提出が必須とされているのが、他国のMBAと大きく異なる点です(イギリスのMBAでも、修士論文に代わってコンサルティングプロジェクトを選択できる場合もあります。)。 このように、実践力はもちろんのこと、内容を理解して分析するスキルや、自分の考えを論理的にまとめるスキルを養うことを重視しているのが、イギリスMBAのプログラムの特徴と言えるでしょう。 ここまでの解説で触れた点を中心に、アメリカのMBAと比較して表にまとめてみました。 質が統一されていて国際的にも評価が高い教育を、短期間で費用を抑えながら受けることができるというのは、イギリスMBAのメリットです。 下表は、QSグローバルMBAランキング(2025年)とFT MBA ランキング(2024年)のランキングトップ校をピックアップして、出願に必要な資格をまとめたものです。 《参照 FT MBA 2024年ランキング》 TOEFLiBTのスコアは100以上(IELTSは7.0以上)を要件としている大学が多いです。 ちなみにアメリカのビジネススクールの場合、ランキングトップ10に入る学校ではTOEFL iBTのスコア100以上が求められますが、それ以外の上位校では80以上のスコアで入学できる学校も多く存在します。 上述のとおり、イギリスのMBAでは、「教材を読み、理解し、自分でまとめる、そしてエッセイを書く」ということを重視しているので、アメリカに比べると英語力が求められています。 イギリスのMBAでは、トップ校であってもそれほどGMATの必須スコアは高くありません。 ランキングトップ校の場合、実際の入学者の平均スコアは700近いですが、最低スコアは600または最低スコアを明記していないところが多く、アメリカほどは重視していないことがわかります。 またGMAT必須としない学校もあります。例えばエジンバラ大学、リーズ大学、ダーラム大学などです。 ほとんどの大学が3年間の就労経験を必要としています。 GPAの基準は、ほどんどが3.3以上です。 通常、イギリスのMBAではショートリストされた後にZoomなどでの入学面談があります。私の経験では、面談の時に将来のゴール、今までの経験についてしっかりと聞かれた覚えがあります。 イギリスのMBAは、多くの学校が9月にスタートします。ただし、ロンドン・ビジネス・スクールやベイズ・ビジネス・スクールは8月に始まるなど、例外もあります。 イギリスのビジネススクールの場合の出願開始は8月〜10月で、出願期限は3月~5月が一般的ですが、その後のZoom面談やvisa取得のことを考えると、早めに出願することが奨励されます。 ちなみに、学校によっては出願締め切りを複数回設けており、早めのラウンドで出願する方が奨学金を獲得できる可能性が高くなります。 下表は、上記で紹介したランキング上位校の学費・総費用の目安です。 総額で一番高いのはロンドンビジネススクールで£140.44(2,800万円程度)、ジャッジ、インペリアル、サイードの上位3校は、£100,000(2,000万円弱)、そして他の学校は £60,000〜£80,000(1,200万円〜1,600万円程度)となっています。 ※1ポンド=199.37円計算 《参照:各大学のHPより抜粋》 イギリスにもオンラインでMBAを提供している大学が複数あります(下表は上位校のオンラインMBAリスト)。 オンラインMBAの学費は通学型と比較して低い傾向にあり、渡航費や生活費がかからないため、総費用を大幅に削減できます。仕事を辞めずに学位を取得できるのも大きなメリットです。 なお、イギリスの多くのMBAプログラムは1年で修了するのに対し、オンライン形式では2年から3年かかる場合が多いため、取得までの期間は長くなります。 また、ビジネスプロジェクトにおいて多国籍チームでディスカッションをしたり協働したりする醍醐味を味わうことが難しくなる点がデメリットと言えるでしょう。 イギリスのMBAはほとんどの上位校に奨学金があることも魅力です。 ほとんどのイギリスのビジネススクールでは、奨学金に応募しなくても、出願時に奨学金提供の対象になるかが判断され、選ばれた場合には、合格と同時に連絡があります。 ここでは、特に奨学金の多い上位校をピックアップして、日本人も対象になる奨学金を一部紹介します。 48 の奨学金があり、日本人が受給できるものが複数あります。 《参照:ロンドンビジネススクール奨学金》 《参照:サイードビジネススクール奨学金》 *The Skoll 奨学金には、追加のエッセイをMBA出願時に提出する必要があります。 《参照:ケンブリッジ大学 ジャッジ・ビジネススクール奨学金》 本記事では、イギリスMBAの特徴やメリット、ランキング、学費、入学基準などについてまとめました。 イギリスのMBAは、国際的にも評価が高い教育が受けられることで知られており、また、短期間(1年)で取得できるため時間や費用の節約の効果もあります。 また、アメリカなどと比べてGMATのスコアが重視されない傾向にあるという点は、GMATスコアに自信がない方、GMATなしで受験したい方には魅力のある選択肢と言えるでしょう。 本記事が、皆さんの挑戦の手助けになれば幸いです! イギリスのMBAの特徴とメリット
短期間(1年)でMBAが取得できる
教育の質が認定された学校が多く、国際的な評価が得られる
卒業後に国際的なネットワークと現地就職のチャンスが得られる
理論をしっかり学んだうえで実践力をつけるプログラム
参考:イギリスMBAとアメリカMBAの違いの比較表
イギリス アメリカ 留学期間 1年がほとんど 2年がほとんど 国立・私立 国立(ほぼ) 私立がメイン 品質認定 トリプル認定が多い
QAAで管理AACSBのみ 学校数 100 2,000 留学生率 90%以上 30-60% 授業料(目安) 770万円〜2,350万円 1,400万円〜2,750万円 総費用(目安) 1,200万円〜2,800万円 2,250万円〜4,000万円 修士論文 あり なし イギリスMBAのランキングトップ10校と入学の難易度
イギリスMBA大学別の難易度比較表
QS ランキング(2025) FT ランキング(2024) 期間 GMAT平均(最低) TOEFL iBT(最低) GPA 就労経験 クラスサイズ ロンドンビジネススクール 1(5) 1 (8) 2年 700 (600) 100 3.3 3年 487 ジャッジビジネススクール
( ケンブリッジ)2(7) 3 (29) 1年 697 (640) 110 3.5 2 年 244 インペリアルカレッジ・ビジネススクール 3 (18) 4(39) 1年 666 (600) 100 3.5 3年 76 サイード・ビジネス・スクール
( オックスフォード)4 (19) 2(26) 1年 680 (650) 110 3.5 2年 348 ウォーリック・ビジネス・スクール 5(30) 6(60) 1年 670 100 3.3 3年 115 アライアンス・マンチェスタービジネススクール 6(47) 5(46) 2年 650 90 3.3 3年 110 エディンバラ大学ビジネススクール 7(58) 10(92) 1年 (600) 100 3.3 3年 103 クランスフィールド経営大学 8 (68) 9 (80) 1年 680 (600) 100 3.0 3年 60 リーズ大学ビジネススクール 9(72) NA 1年 (600) 88 3.0 3年 64 ダーラム大学ビジネススクール 10 (101-110) 8(78) 1年 650 (600) 102 3.3 3年 128 ベイズ・ビジネス・スクール (UCL) 11(111-120) 7 (68) 1年 654 (600) 100 3.3 3年 150 イギリスMBAの入学要件
英語要件(TOEFL/IELTS)
GMAT
就労経験
GPA
その他
イギリスMBAの出願スケジュール
イギリスMBA取得に必要な費用
イギリスMBA取得に必要の目安
期間 学費 (2025年入学) 教材・
施設費家賃・
食費生活費
交通費合計 ロンドンビジネススクール 15, 18, 21ヶ月 £115,000 £360 £21,600 £3,480 £140,440 ジャッジビジネススクール
( ケンブリッジ)12ヶ月 £74,000 £19,020 £93,020 インペリアルカレッジ・ビジネススクール 12ヶ月 £73,000 £16,827 £4,343 £94,170 サイード・ビジネス・スクール
( オックスフォード)12ヶ月 £83,770 £24,420 £108,190 ウォーリック・ビジネス・スクール 12ヶ月 £57,500 £711 £14,882 £3,797 £76,890 アライアンス・マンチェスタービジネススクール 15-18ヶ月 £49,000 £19,800 £68800 エディンバラ大学ビジネススクール 12ヶ月 £43,300 £400 £18,850 £62,550 クランスフィールド経営大学 12ヶ月 £46,405 £16,800 £5,100 £68,305 リーズ大学ビジネススクール 12ヶ月 £38,750 £11,700 £5,928 £56,378 ダーラム大学ビジネススクール 12ヶ月 £40,000 £14,400 £9,012 £63,412 ベイズ・ビジネス・スクール (UCL) 12ヶ月 £50,400 £21,000 £6,840 £78,240 費用を安く抑えたいならオンラインMBAという選択肢も
インペリアルカレッジ・ビジネススクール ・1月または9月始まり
・期間:21/24/32ヶ月
・授業料:£50,500ウォーリック・ビジネス・スクール ・1月または6月始まり
・期間: 2年
・授業料:£41,500エディンバラ大学ビジネススクール ・3月始まり
・期間:2年9ヶ月
・授業料:£36,000ダーラム大学ビジネススクール ・4月、9月始まり
・期間:2年
・授業料:£32,000ベイズ・ビジネス・スクール (UCL) ・2月始まり
・期間:2年
・授業料:£33,600イギリスMBA留学の奨学金について
ロンドンビジネススクール(LBS)
奨学金名 概要 金額 数量 London Business School Fund Scholarship ロンドンビジネススクールによって支給される奨学金 授業料100%まで 複数 SARI Foundation Trust Scholarship 全MBA生徒対象 授業料100% 1名 Mary Ferreira Scholarship 全MBA生徒対象 授業料50%まで 1名 MSc19(1985) Scholarship 全MBA生徒対象 授業料50%まで 1名 Forté Foundation Fellowships 女性への奨学金 £45,000まで 複数 Carlsson Family Scholarship 女性への奨学金 £20,000 1名 The 30% Club Scholarship MBA 女性への奨学金 授業料50%まで 1名 産業特定奨学金 エネルギー、エンジニアリング、エンターテイメント、ヘルスケア、奢侈品、金融、テクノロジーなどの産業 授業料50%まで 複数 オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクール
奨学金名 概要 金額 数量 The Skoll 奨学金* Said Skoll Centre for Social Entrepreneurshipが提供する奨学金 100%の授業料と生活費の奨学金 4人 Oxford Saïd Future Leaders Scholarships ビジネスクールの奨学金 £40,000まで 50人 Saïd Business School Foundation Scholarships ビジネスクールの奨学金 £30,000まで 50人 Forté Fellowships for Women 女性への奨学金 £30,000まで 3人 インペリアル・カレッジ・ビジネス・スクール
奨学金名 概要 金額 数量 Imperial Excellence Scholarship 学校からの奨学金 £25,000まで 複数 Dean’s Impact Scholarship 起業、テクノロジーと革新、サステイナビリティ、社会的影響、リーダーシップの分野に影響のある人に与える学校からの奨学金 £30,000 複数 Forté Fellowships for Women 女性への奨学金 授業料の半額まで 複数 ケンブリッジ大学 ジャッジ・ビジネススクール
奨学金名 概要 金額 数量 Cambridge MBA Scholarship for Professional Impact キャリアに永続的な影響の与えられる学生対象の学校からの奨学金 £45,000まで 4人 Cambridge MBA Scholarship for Entrepreneurship 学校からのスタートアップ経験者への奨学金 £30,000まで 3人 Cambridge MBA Scholarship for Technology テクノロジー革新の分野で働いている人向けの奨学金 £30,000まで 3人 The Cambridge Judge Dean’s Scholarship for Outstanding Academic Achievement 学校からの成績優秀者への奨学金 (GMAT及び大学の成績) £15,000まで 3人 Forté Foundation Fellowship 女性への奨学金 £45,000まで 4人 まとめ
イギリスのMBAとは?特徴・ランキングから学費・入学基準まで
最近、イギリスのMBAについて調べてみたんだけど、アメリカだけじゃなくてイギリスもすごく魅力的だね。
おっ、イギリスMBAに興味を持ったのかい?1年で取得できるのがポイントだよね!
その通り!イギリスのMBAはほとんどが国立大学のビジネススクールだから、教育の質がしっかり管理されていて、国際的な評価も高いんだ。特にトリプルクラウン認定を持つ学校が多いのも特徴だよ。
へぇ~、そんなに質が高いんだね!卒業後のネットワークとか、イギリスで働くチャンスもありそうだし、真剣に考えようかな。
今回は、イギリスのMBAについて、特徴やメリット、ランキング、費用まで、詳しく解説していくよ!
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財団の奨学金情報はこちらの記事で紹介しているよ!
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