海外留学を目指す方が頭を悩ませる英語試験「TOEFL-iBT」。とりわけ点数を伸ばしづらいのが、「スピーキング」です。
東京生まれ、東京育ち、海外旅行も行ったことがなかった筆者も、最初のTOEFL-iBTのスピーキングで「2点」を叩き出した当事者です。
しかし、英会話に通わずとも、ポイントを押さえれば、確実にスピーキングの点数を上げることができます。
実際、筆者は半年間のスピーキング対策でTOEFL-iBTのスピーキングを「2点」から「24点」まで伸ばしました。
「スピーキングの対策をしたいけど、何からやればいいのかわからない!」
「英会話に通っているのに、全然点数が上がらない…」
この記事では、そんなスピーキング対策に悩む方のために、TOEFL-iBTのスピーキングの点数を、”短期間で”上げる学習方法をお伝えします。
この記事の著者:Yuta
非帰国子女。海外旅行もした事がないまま、いきなり1年間カナダに留学へ。塾や英会話に通わずに、TOEFL-iBTを56点から96点にまで伸ばした勉強方法や経験をお伝えします!
目次
TOEFLスピーキングテストの概要をつかもう
まず、試験対策として重要なのが、TOEFL-iBTスピーキング試験の概要を押さえることです。
TOEFL-iBTは2019年8月から問題形式を大幅に変更し、中でもスピーキング試験は大きく変化したと言われています。
ここでは、新形式のTOEFL-iBTスピーキング試験について詳しくお伝えしていきます。
問題形式と配点
TOEFL-iBTのスピーキング試験は、時間が17分で、30点満点のテストです。
大問は「Independent Task」が1つ、「Integrated Task」が3つの計4つで、それぞれの大問が0〜4点の5段階で評価され、大問の平均点が30点満点に換算されます。
換算方法は2019年まで公式サイトで公表されていたのですが、新形式に伴い現在は公表されていません。下記はあくまで換算の目安として参考にしてください。
- 平均4点 → 30点
- 平均3点 → 23点
- 平均2点 → 15点
- 平均1点 → 8点
試験の流れとしては、「Preparation Time」で自分の回答を考え、そして「Response Time」で自分の回答を録音します。
「Independent Task」の特徴:意見を述べる
「Independent Task」はTOEFL-iBTのスピーキング試験において最初に出題される大問です。試験内容は、与えられるお題に対して、自分の意見を述べることが求められます。
「Preparation Time」は15秒、「Response Time」は45秒です。
問題の傾向として、日常生活や一般的な二項対立の問題が多く出題されます。
- 友人と過ごすのには、「レストランやカフェ」か、「自宅」のどちらがいいか。
- リスクをとって新しいことへの挑戦をするのと、挑戦ではなく慎重さを取るのとでは姿勢としてどちらがいいか。
どちらかの立場を選び、理由や根拠を持って意見を述べることがポイントになります。
「Integrated Task」の特徴:要約・説明する
「Integrated Task」はTOEFL-iBTのスピーキング試験の後半3つに出題される大問です。
試験内容のパターンは「与えられた文章を読み、次にリスニングをしてから回答する」と「リスニングをしてから回答する」の2つです。
前者の傾向としては、大学の教科書や掲示板の内容を45秒で読解し、その教科書を扱った授業や掲示板についての学生の会話をリスニングします。
そして、「Preparation Time」が30秒与えられ、「Response Time」として60秒間リーディングやリスニングの要約を回答します。
後者の傾向としては、大学での授業内容をリスニングし、20秒の「Preparation Time」の後、60秒の「Response Time」で授業で教授が説明していた内容をもとに、特定のキーワードを説明することが求められます。
評価項目を得点別に解説
TOEFL-iBTのスピーキング試験の大問ごとの配点は、それぞれ4点です。採点基準は下記の4つになります
- 基準1)General Description(質問に対する、過不足のない回答)
- 基準2)Delivery(発音やテンポなど、回答の仕方)
- 基準3)Language Use(単語や文法など、回答の質の高さ)
- 基準4)Topic Development(回答の訴求力)
それでは、得点別にそれぞれの評価項目を見ていきましょう。
点数4)
- General Description:課題に対して、充分かつ一貫した主張を展開している。
- Delivery:回答(の発音)が一貫して明瞭で流暢である。
- Language Use:基本から高度な文法・構文を使いわけ、過不足のない表現ができ、聞き手の努力せずとも理解できる。
- Topic Development:課題に関連する情報を使い、主張を展開することができる。
点数3)
- General Description:課題に対して、若干の不足がある回答である。
- Delivery:若干発音やイントネーションが聞き取りづらく、聞き手に努力が必要なことがある。
- Language Use:若干不適切な語彙や文法があるが、聞き手の理解を妨げるほどではない。
- Topic Development:内容や主張において、若干完成度や正確性が足りない。
点数2)
- General Description:課題に関係のある回答だが、複数の情報が欠けていたり、間違いを含んでいる。
- Delivery:発音やイントネーションが聞き取りづらく、聞き手にかなりの努力を要する。
- Language Use:語彙や文法を十分に使いこなせず、表現が曖昧だったり、関連性がない内容になっている。
- Topic Development:重要な概念が抜け落ちていたり、理解不足が感じられる回答。
点数1)
- General Description:内容面でも、表現面でも、回答に不足が見られる。
- Delivery:発音やイントネーションに大きな問題があり、聞き手に相当な努力を要したり、努力しても理解できない。
- Language Use:話し手の語彙や文法が不足しており、回答ができない。単語だけ発言したり、短文で終わっている。
- Topic Development:回答に理解不足が見られ、間違いや曖昧な発言が見られる。
点数0)
- 回答の姿勢がない、またはトピックと関係のない回答をした。
日本人がスピーキングの点数を伸ばしにくい2つの理由
(出典:Test and Score Data Summary 2021)
「Test and Score Data Summary 2021」によると、日本人のスピーキングの平均点は30点満点中17点で、これはほぼ世界最低点です。
日本語の文章は、最後に動詞が置かれるなど、構造的に英語と大きく異なります。そのため、構造的に英語と似ている中国語・フランス語・ドイツ語の話者よりも先天的に日本人は不利な立場にあります。
そのほかに、これまでの英語学習にもスピーキングの点数を伸ばしにくい理由があるのです。
受験英語は”生きた”英語ではない
受験社会に生きてきた私たちが、これまで高校そして大学合格のために取り組んできた英語の勉強方法を振り返ってみましょう。
- 単語帳や熟語帳の右に書かれた日本語訳を赤シートで隠して、英単語や英熟語の日本語訳を必死で暗記してきませんでしたか?
- 英単語の発音やイントネーションはセンター試験の頻出問題だけさらっていませんか?
- 速読のために、CDは聴かずに英語長文をとりあえず音読してきませんでしたか?
- リスニングは聞き取れた英語を書き出して、後で見返しながら意味を推測していませんでしたか?
合格を目的とした受験英語では、こういったテクニカルな勉強方法が効率的で効果的でした。しかし、実社会では全く役に立ちません。
日本語で言いたいことを英語にするときは単語帳で培った英語から日本語の訳は活かせませんし、英語テキストを早く読み上げることができても、発音やイントネーションがめちゃくちゃでは相手に伝わりません。
TOEFL-iBTは自分の考えを相手に伝えるためのコミュニケーション英語力、いわば「生きた英語」のスキルを測定する試験です。
受験英語での勉強方法は全く歯が立たないことをしっかりと認識しましょう。
英語を日本語で覚えている
実は、そもそも受験で覚えた英語は実用的ではありません。なぜなら、英語で意見を伝える時に必ず日本語を媒介としているため、ネイティブと比べて時間がかかってしまうからです。
普通の日本人が外国人に英語で意見を述べようとした時に、
- 発言内容を日本語で考え
- 日本語を英単語に変換して
- 英文法を使って文章にして意見を伝えます。
しかし、ネイティブは
- 発言内容を英語で考え
- 相手に伝わるように文章にして意見を伝えます。
日本語を英語に変換する時間を省いた分、早いテンポでコミュニケーションができるのです。
ネイティブ対ネイティブの英語力を手本とするTOEFL-iBTのスピーキング試験では、日本語を英語に置換する時間は度外視されるのです。
筆者の留学先で出会った日本人ハーフのカナダ人は、両親と話すときは基本的に日本語なのですが、学校であったことは全て英語で話すそうです。
「英語で話すのに、英語で考えた方が早いじゃん」
なかなか日本で生まれ育った私たちには真似できない芸当ではありますが、海外で活きる英語は”英語で覚えた英語”なのです。
それでは、日本語で英語を覚えた私たちにはスピーキングを伸ばすことはできないのでしょうか。
そんなことはありません。
受験勉強で得た英語知識を、「英語」で捉え直すことで、非帰国子女でもTOEFL-iBTのスピーキングで点数を伸ばすことができます。
その秘密は参考書選びではなく、習慣や生活の工夫にあります。
参考書なし!非帰国子女が半年でスピーキング24点をマークした5つの対策方法
ここでは、実際に一度も海外にいったことがなかった私が、半年間でTOEFL-iBTのスピーキングで24点を獲得した5つの学習方法をお伝えします。
思考を英語で。生活を全て英語で過ごす
まずは、日本語で行なっている下記の生活行動を全て英語でやってみてください。
- ニュースを見て、思ったことを英語で言うようにする
- 料理を作ったり、風呂掃除の中で、ふと口をつく「独り言」を英語で言うようにする
- スポーツ中継を見て、「応援」や「愚痴」を英語で言うようにする
- 漫画を読みながら、感想を英語で考えてみる
実際にやってみると、最初は絶対に上手くいきません。そもそも英語が口から出てこないはずです。
まずは、英語を口ずさむことから慣れていきましょう。オススメは、何曲か洋楽を聴きながら無心になって歌うことです。
最初は歌詞を見ながら歌い、慣れてきたら何も見ずに口ずさんでみましょう。この時、日本語を使わずに英語の意味を捉えている自分に気づくはずです。
その後、日常生活を振り返って、電子辞書で身の回りの単語を英語に直してみましょう。
- 「優勝ってなんて言うんだっけ?」
- 「表彰台ってなんて言うんだっけ?」
- 「あれ、コーヒーを淹れるってなんて言えば?」
英文読解のための単語は知っていても、実は生活での英語を知らないことに気づくでしょう。
一度、辞書で確認した英単語は付箋に書き出して、そのもの自体に貼っていきましょう。
ものを見た時にすぐには英語が出てきません。これは、受験英語で英単語を見て、日本語を覚えていたことが原因です。
日常生活を通して英語で思考することで、普段よく触れるもの・ことを英語で捉え直すことができるのです。
外国人留学生に積極的に英語で話しかける
日本にいる外国人留学生に積極的に英語で話しかけてみましょう。
留学生と言っても、交換留学生のように英語力がある学生ではなく、日本語に興味があったり、すでに日本語が喋れる私費留学や一般入試で入学した外国人留学生のことです。
いきなり日本語がわからない交換留学生に英語で話しかけても、発音やイントネーションがままならない私たちの英語では会話が成り立たず、お互いに気まずいままで終わってしまいます。
一方、ある程度日本語がわかる留学生であれば、日本語で補足することで、こちらの意図が伝わり、発音やイントネーション、単語や文法を訂正してくれます。彼らは最強の英会話教師なのです。
ここで大事なのは、留学生側の要望にも答えることです。最強の「英会話教師」と表現しましたが、彼らはあなたに英語を教えに日本に留学している訳ではありません。
留学生の日本語の練習にも付き合ったり、”友達”としてカラオケに行ったり、温泉に行ったり、ゲームセンターに行ったり、日本語そして日本文化を教えることでお互いにWin-Winの関係を築いていきましょう。
外国人と一緒にBBCニュースを見る/愚痴り合う
普段の会話を外国人留学生とこなせるようになったら、少し硬いテーマについて語り合ってみましょう。
リスニング力もスピーキング力も同時に鍛えるためにおすすめなのは、BBCニュースを一緒に見ながら意見を言い合うことです。
政治、経済、国際情勢などBBCニュースは多様なジャンルを取り扱っており、語り合うネタの宝庫です。
TOEFL-iBTスピーキングの「Independent Task」を見据えて、留学生とは逆の立場から意見を展開してみましょう。
その際、注目すべきポイントが2つあります。
1つ目は、外国人留学生が英語で伝えた自分の意見に納得しているか、です。
納得していないということは、あなたの英語の意見に不備があると考えられます。
- 主張の根拠に無理があるのか?
- 英単語や構文が曖昧で何を言いたいのか伝わっていないのか?
- そもそも発音やイントネーションが伝わらず、聞き取れていないのか?
必ず、なぜ納得していないのかを留学生に尋ねて理由を確認してください。
なぜなら、そのままTOEFL-iBTのスピーキングテストを受ければ、同じように採点官が納得できず点数を下げられてしまうからです。
納得できない理由を事前に確認することで、スピーキングの点数アップのヒントを得られます。
2つ目は、外国人留学生の主張はどのような展開で広がったか、です。
これはまさに、TOEFL-iBTスピーキングテストの「正答」だからです。
- 意見を伝える動詞は何を使った?
- 根拠を述べる時、何という言葉から始めたのか?
- まとめはどのように切り出したか?
正答の型を身につけるチャンスです。
できれば、留学生に許可をとって、英語の討論を録音させてもらい、自分で字起こししてみましょう。
英語での意見のテンプレを身につけることもできますし、何より英語のリスニング力も鍛えられるので、一石二鳥です。
考えを伝えるテンプレを身につける
ここまで行えば、英語で考える地力は身についています。
さらに、TOEFL-iBTスピーキングテストで語彙力があるように見せるために、考えを伝えるテンプレートを覚えておきましょう。
意見を伝える、賛成・反対だと伝えるための効果的なテンプレは下記の通りです。
〜だと思う)
- The way I see things, 〜
- In my opinion, 〜
- I’m of the view that 〜
〜に賛成する)
- I’m for 〜
- I agree with 〜
- I’m in favor of 〜
〜に反対する)
- I’m against 〜
- I don’t support 〜
- I take objection to 〜
語彙も然りですが、主張の型も身につけておくと便利です。
- In my opinion, 〜.
- The first reason is 〜. For instance, 〜.
- The second reason is 〜. That is why 〜.
発音練習はSiri/Google アシスタントで
最後の仕上げとして、発音練習をスマホのSiri/Googleアシスタントで行なってみましょう。TOEFL-iBTのスピーキングテストはAIで採点されたのちに、人が微修正を行います。
TOEFL-iBTと同じようにAI言語処理を行うSiri/Googleアシスタントは、スピーキングテストの発音練習に最適なのです。
3−1の英語での生活行動をSiri/Googleアシスタントに聞き取らせてみましょう。自分が発音したものが意図した通りに判別されているか、要チェックです。
試験当日に活きる!得点を伸ばす3つのポイント
TOEFL-iBTは少し癖のあるテストなので、試験当日も気を抜いてはいけません。
試験本番に臨むにあたり、次の3つのポイントを意識することで点数を伸ばすことができます。
便利な言葉で会話のテンポを崩さない
与えられたテーマによっては「Preparation Time」では考えがまとまりきらずに、「Response Time」に突入してしまうことがあります。
スピーキングでは沈黙や言い澱みは減点対象なので、困った時には次の言葉で会話をつなぎ続けましょう。
- As you know, 〜:一般的な前提条件や知識を繰り返す
- I am talking about 〜:何について話すのかを明らかにする
- Actually, 〜:聞き手が意外と知らないことを伝える
- What I want to say is 〜:何を自分が伝えたいのか、より詳細に伝える
例え話で意見を具体的に
「Independent Task」では特に、話が抽象的になりがちです。
自分の立場を支える根拠が一般論で終始してしまうことが多いので、そこに自分の具体例や例え話を加えることで「Topic Development」の項目を強化することができます。
例え話を始める時に便利なフレーズは次の通りです。
- For instance, 〜
- Let me give you an example. 〜
- What if 〜
ダラダラ長くはNG!短文でたたみかけよう
本番で「And」を連発してダラダラと話すことはNGです。長文になると聞き手が話の切れ目を掴みづらくなり、「Language Use」の項目で減点されてしまいます。
日本語と同様、一文一義を意識して短文で意見を重ねることで相手に伝わりやすくなります。
さらに、接続語を効果的に使用することで文章同士の関係性を掴みやすくなります。
- Furthermore, 〜
- In addtion, 〜
- Moreover, 〜
- Besides, 〜
まとめ:しっかりと傾向を掴めば高得点も夢じゃない!
TOEFL-iBTは海外大学で英語で勉学を修めるために必要なスキルを測定する試験です。
スピーキングにおいて、専門家や文学者のような高度な語彙力や文法スキルは必要ありません。
日常生活を英語で捉えなおし、日常会話を英語でサクサクと話すことができれば、TOEFL-iBTのスピーキング攻略は難しくありません。
この記事はインターンのKazuによって編集されました。