TOEFL-iBTといえば、留学を目指す大学生や、そして海外駐在やMBA取得を目指すビジネスマンに立ちはだかる、難しい英語試験です。
近年、英語教育への人気から、大学受験を目指す高校生にとっても、推薦選抜などにおいて受験必須になってきています。
しかし、受験した方はわかると思いますが、日本人にとって得点を伸ばしづらいテストです。
「留学においてTOEFLが受験必須らしいけど、どんな試験内容なの?」
「TOEFLを初めて受験したけど、手も足も出ず散々な結果だった…」
そんな疑問や悩みを持っている方は、まずはTOEFLの問題形式の特徴をしっかりと把握することから始めましょう。
この記事ではTOEFLの試験内容や問題形式の特徴、そして問題の解き方のポイントをお伝えしていきます。
この記事の著者:Yuta
非帰国子女。海外旅行もした事がないまま、いきなり1年間カナダに留学へ。塾や英会話に通わずに、TOEFL-iBTを56点から96点にまで伸ばした勉強方法や経験をお伝えします!
目次
TOEFL iBTのテスト内容をつかもう
とりあえず模擬試験を受け、練習問題を一通り済ませてTOEFL本番に臨もうとしていませんか?
試験を攻略するにあたって重要なことは、「TOEFLで測定されるスキルは何なのか」、「試験時間はどれくらいなのか」、「満点は何点なのか」、テスト内容をしっかりと押さえることです。
初めてTOEFLを受ける方や、点数が伸び悩んでいる方は、まずはTOEFL試験の内容を掴むことから始めましょう。
テストの内容と特徴
TOEFL-iBTは、ETSという団体(実はTOEICも同じ団体が運営しています)によって制作・運営されている英語試験です。
TOEICが日本で考案され設立されたのに対して、TOEFL-iBTはアメリカで制作された試験で、世界160ヶ国以上の国の1万1500を超える大学やその他教育機関で英語力を証明する資格として使用されています。
アメリカやカナダなどの英語圏はもちろんのこと、非英語圏への留学選抜試験において、英語力の証明としてTOEFL-iBTスコアの提示が求められます。
さらに、外資系企業の就活において、「TOEFL-iBT95点以上」のように応募条件として設定されます。
そのため、留学を目指す学生や社会人、そして外資系企業や海外就職を目指す方にとっては、必須の試験になります。
TOEFL-iBTの特徴として、Reading・Listening・Speaking・Writingの4項目別に個人の英語スキルを測定します。
それぞれ30点満点で評価される、合計120点満点の試験です。
試験時間は約3時間で、Reading・Listeningの順で試験を行ったのちに10分間の休憩が与えられ、Speaking・Writingの順に試験が続きます。
これまでは全国のETSに認可された外部会場での受験が必須でしたが、昨今のコロナ禍により自宅のPCからも受験することができるようになりました。
TOEFL-iBTは年間60回以上実施されていますが、地方では認可会場が少なく、隔週での実施だったり、予約状況が逼迫することが多いです。
必ず、事前に最寄りの会場を確認し、早めに予約をすることをおすすめします。
受験料は245ドル(約2万8千円)ですが、受験日の7日以内での予約では285ドルになります。
直前での予約では、手数料がかかってしまうため、早めの予約を心がけましょう。
目的別のスコア目標
留学を目指す方は、まずは合計80点のスコアを目指しましょう。
コミュニティカレッジ(日本で言う短大のようなもの)は60点以上が目安になりますが、4年制大学を目指す方は選択肢の幅を考えると、80点は欲しいところです。
ちなみに、「Test and Score Data Summary 」によると、TOEFL-iBTを受験した日本人の平均点は73点です。
下記の表は、目的別のスコア目標です。ご自身がTOEFL-iBTのスコアを使う目的を鑑みて、目標設定の参考にしてください。
目的 | TOEFL-iBTスコア |
コミュニティカレッジ留学(1年以上) | 50〜60 |
4年制大学への留学(1年以上) | 70〜80 |
4年制一流大学への留学(1年以上) | 90〜 |
就活での資格 | 90〜 |
MBA取得 | 100〜 |
新形式と旧形式の違いとは?
実は、今私たちが受けているTOEFL-iBTは新形式のテストです。TOEFL-iBTは2019年8月に試験時間・問題数が変更されました。
TOEFLに初めて取り組む方や久しぶりにTOEFLを受験して、思うように点数が伸びない方は、まずは自分の練習問題の発行年月を確認し、新形式に対応しているか確認しましょう。
試験時間は旧形式においては、約4時間30分とかなり長い試験でしたが、新形式は約2時間とかなり短縮されました。
セクション | 制限時間 | 問題 | 課題 |
---|---|---|---|
Reading | 35 分 | 20 問 | アカデミックな長文読解問題(1パッセージ約700語)。自然/環境科学、 社会科学、芸術、人文学、教育など幅広い分野の教養科目を題材に出題。 |
Listening | 36 分 | 28 問 | 大学の講義とキャンパス内での対話の2種類で構成された問題。幅広い分野の教養科目を題材とした講義(1題あたり3-5分の音声)と、教授と学生、大学職員と学生、学生同士などの対話(1題あたり約3分の音声)あり |
Speaking | 16 分 | 4 課題 | 授業やキャンパス内で起こり得る場面を想定した問題。身近なトピックについて意見を述べたり、読んだり聞いたりした内容を要約して話す。 |
Writing | 29 分 | 2 課題 | アカデミックな場面において自分の考えを明確に構成立てて、制限時間内にまとめる英語力を測定。キーボードにタイピングして回答。 |
Writing以外は全体的に問題数や設問数が減っています。ReadingとListeningは旧形式・新形式関わらず、ダミー問題と呼ばれる試験結果に影響しない問題が出題されます。
これは、運営団体のETSが試験結果に関する統計を取るために、稀に出題されると言われています。
新形式のReading・Listeningにおいて、それぞれダミー問題があるときは、4題出題されると覚えておきましょう。
ダミーがスコアへの影響がないとはいえ、どの問題がダミーなのか本番中に判別することは困難なため、全ての問題に全力で取り組んでください。
上記の表からもわかるように、新形式は旧形式に比べて問題数が削減されているため、集中力を維持して問題に取り掛かりやすいです。
一方で、問題一つ一つの配点が大きくなり、少しのミスが点数に与える影響が大きくなりました。
大学受験の英語に慣れている方は、解けるものを正確に解く解法が身についているかもしれませんが、TOEFL-iBTの新形式においては全ての問題を1つ1つ正確に解くことを意識してください。
TOEFLの問題形式「リーディング編」
「Test and Score Data Summary」によると、Readingセクションの日本人平均点は30点満点中19点です。
この点数はListeningと並んで4セクションの中で最も高い点数であり、日本人にとって得点源としやすいセクションと言えます。
まずは、TOEFL-iBTを受験すると最初に取り掛かることになる、Readingについて問題形式と解法のポイントをお伝えしていきます。
長文読解の特徴と問題の傾向
Readingセクションは、54〜72分という試験時間で、700文字程度の長文読解を3〜4題解く必要があります。
それぞれの文章題には10のマーク形式の設問が設けられており、単語の意味・文章の要約などが問われます。
長文読解は海外大学の授業で使用される教科書の内容を模したものになっているため、トピックはアカデミックな内容が多いです。
TOEFL-iBTのReadingで取り扱われるトピックとして多いものは次の通りです。
- ビジネス
- 経済学
- 生物学
- 地学
- 政治学
- 世界史
アカデミックなトピックですが、難易度が高い用語(ネイティブでも知らないような単語)は注釈が用意されているため、比較的取り組みやすい内容になっています。
大学受験の知識で対応可能?文章の難易度
(出典:TOEFL-iBT Reading Practice Sets)
文章の難易度は一般的な海外大学1年生の教科書レベルです。
そのため、国立大学や難関私立の大学受験を乗り越えた学生にとっては難易度は高くありません。
特に、1題あたり1000文字近い長文読解が求められる東京外国語大学の英語試験や、極端に難易度の高い専門用語が各所に散りばめられている早稲田大学の英語試験を突破した学生にとっては、むしろTOEFL-iBTのReadingの方が簡単に感じるレベルです。
上記の画像はETSが提供している「TOEFL-iBT Reading Practice Sets」から抜粋した文章です。
一度、実際に読んでみてください。全体的にセンター試験よりは単語の難易度が高くなっていますが、単語帳で見かけたことがある英単語が多いことに気づいたはずです。
一般的な単語帳の中級〜上級の単語で構成され、ところどころに上級を超えた専門用語が記載されていますが、必ず「(単語)is〜」のように、文章中でより容易な単語や概念で定義されています。
TOEFL-iBTのReadingは大学受験にしっかりと向き合っていれば十分に高得点(もしくは満点)を狙えるセクションです。
日本人にとって大きな得点源になるため、大学受験で使用した単語帳の中級〜上級のセクションをしっかりとさらっておきましょう。
リーディングの点数を上げる!効率的な解き方
(出典:TOEFL-iBT Reading Practice Sets)
TOEFL-iBTのReadingの長文読解は、文章を読む前に最初に設問を読んでおきましょう。
試験時間は1題あたり、英文読解および設問を解くのに18分しかかけることができません。
最初に10分かけて文章を読んで、残り8分で設問を10個解くことになります。
しかし、設問を確認せずに文章を読んでしまうと、自分の注目したポイントから離れた設問があると、もう一度文章を読み返すことになります。
なおざりに1回文章を読むのではなく、事前に設問をチェックした上で文章のどのポイントに注目して読解すればいいのか、指針を持った上で英文読解に取り掛かることで効率的に読解することができます。
また、設問を最初にさらっておくことで、英文のトピックを事前に把握することができ、文章の内容が頭の中に入ってきやすくなります。
TOEFLの問題形式「リスニング編」
続いては、Readingの後2番目のセクションとして試験が行われるListeningについてです。
ListeningもReadingと同じく日本人の平均点が30点満点中19点と得点源になりやすいセクションです。
しかし、問題の特徴をしっかりと把握しなければ、得点を伸ばすことが難しい分野でもあります。
リスニングの特徴と問題の傾向
TOEFL-iBTのListeningでは、大学の授業のワンシーンについての問題が3〜4題、学生同士の会話が2〜3題の合計5〜7題の会話が出題されます。
大学の授業の問題に関しては、およそ5分の会話を聞く一方で、学生の会話は約2分になります。
学生の会話は日常会話で使用する英単語が多く、センター試験の延長線上の内容で、比較的聞きやすい傾向にあります。
しかし、大学の授業の問題については、専門用語が会話の中で使用されるため、難易度が高くなります。
イメージとしては、授業の風景を切り取った東京大学の二次試験におけるリスニング試験に近いです。
なぜ難しい?TOEICとの大きな違い
TOEFL-iBTのListeningが難しい理由としては、専門用語が多用されることにあります。
また、教授が生徒に対してアカデミックな内容を説明している様子をヒヤリングする必要があるため、トピック自体理解することが難しいです。
よく比較対象として挙げられるTOEICのListeningとは比べものにならないほど難易度が高いです。
TOEICでは、ビジネスのワンシーンをヒヤリングするため日常で使用する英単語が出題されます。
しかし、TOEFL-iBTのListeningは、海外大学の授業シーンです。
本来であれば、手元に教科書があって文章を読みながら理解できる内容をListeningのみで理解させようとしているため、難易度が非常に高いのです(一部問題では、英文を読解した上でListeningするものもあります)。
全部聞き取るのは無理!リスニングの内容を効率的に聞き取るには?
(出典:TOEFL-iBT Listening Practice Sets)
大学受験においては、Listeningが始まる前に、設問を確認してトピックを掴むことでListeningしやすくする方法があります。
しかし、TOEFL-iBTのListeningにおいては、Listeningが終わった後に設問が出題されるため、問題を先読みすることができません。
TOEFL-iBTのListeningは大学の授業を切り取ったものが多いと先述しました。つまり、アカデミックなトピックに関する、キーワードやキーコンセプトを大学の教授が生徒に説明しているシーンということです。
そのため、キーワードとキーコンセプトを抑えれば、十分に問題を解くことができます。何度も繰り返されている言葉がキーワードなので、各シーンで頻出の英単語に注目しましょう。
聞き取ることができなくても、カタカナでなんとなく書き出してみてください。
TOEFLの問題形式「スピーキング編」
TOEFL-iBTのSpeakingセクションは、Listeningの後、休憩を挟んで試験が実施されます。Speakingは英会話に馴染みのない日本人にとって最大の関門です。
実際に、日本人の平均点も30点満点中17点と、4セクション中で最も低い点数になっています。さらに言えば、実は日本人のSpeakingの平均点は世界最低点となっています。
留学や海外在住の経験がなく、初めてTOEFL-iBTに挑戦する方にとって、Speakingセクションで”どれだけ点数を落とさないか”が高得点獲得の課題になってきます。
スピーキングの特徴と問題の傾向
TOEFL-iBTのSpeakingは、試験時間が17分で、大問が4つのテストになります。
このうち、3つが大学の教科書の抜粋資料を読解し、授業のシーンを聞き取った上で授業内容を自分で要約して回答するタイプと、大学での授業内容を聞き取り、授業で教授が説明していた内容をもとに、特定のキーワードを説明するタイプの2つのタイプがあります。
もう1つは二項対立の短文を読解したのち、自分の立場を決め、一方の観点からメリットや理由を回答するものになります。
英検の面接対策と大違い?日本人のスピーキングが壊滅的なわけ
「TOEFL-iBTのSpeakingは初めてだけど、英検2級の面接では高得点だったし、大丈夫でしょ!」と思っている方、はっきり申し上げると英検の英語面接とTOEFL-iBTのSpeakingは難易度が比べものになりません。
英検の面接試験では、日本に滞在する外国人が受験者の英語を1対1で聞き取り、英語の内容を評価します。
一方で、TOEFL-iBTのSpeakingは最初にAIが回答を評価したのち、世界各地の試験官がAI評価の妥当性を判断して修正します。
つまり、英検は日本人の英語に慣れた外国人によって評価されるため、発音がどれほど客観的に評価されるのか不明瞭なのです。
英検の面接試験で高得点でも、TOEFLのSpeakingを思うように進められなかった方は、発音がクリアではなく日本人特有のカタカナっぽい発音になってしまい、内容がはっきりと相手に伝わっていない可能性があります。
スピーキングを上達させる最短の方法
TOEFL-iBTのSpeakingに向き合うことで英会話のスキルを向上させることができます。
しかし、この記事を読まれている方はそもそも英会話を含めた英語力を向上させるために留学に行きたい、そして留学に行くためにTOEFLのスコアが必要である方が多いと思います。
本格的なSpeakingスキルは留学中に身につけるとして、TOEFL-iBTのSpeakingは「テンプレートを駆使して英会話の型を身につけて」得点を伸ばしましょう。
TOEFL-iBTのSpeakingでは、下記のテンプレートで意見を表明するように心がけてください。
- I think 〜. 私は〜だと思います、のように主張を最初に述べる。
- The First reason why I insist is 〜. 最初の理由としては〜、のように最初の理由を述べる。
- Secondly, 〜. 二つ目は〜、のように2つ目の理由を述べる。
- This is why 〜. そのため〜、のように最後に主張のまとめを行う。
1〜4を通じて意識して欲しいのが、淀みなくスムーズに回答することです。言い澱みや不自然な間は減点対象になっています。
また、1と4は別の表現で主張を展開し、語彙力や表現力の広さをアピールするように心がけましょう。
TOEFLの問題形式「ライティング編」
最後に試験が行われるWritingは、苦手な方も多いと思いますが、ReadingやListeningに次いで点数を稼ぎやすいセクションです。日本人のWritingの平均得点は18点となっています。
大学受験や高校推薦入試などで英語の小論文に触れる機会も多いため、すでにTOEFL-iBTのWritingの下地は出来上がっている方が多いのです。
ここでは、Writing試験の特徴と点数を伸ばすポイントをお伝えしていきます。
ライティングの特徴と問題の傾向
TOEFL-iBTのWritingは、試験時間は50分で大問は2つです。
Task1は、20分で英文を読解し、リスニングした内容を150〜220文字で要約する問題が出題されます。
Task2は、30分で設問に対して自分の意見を300文字で記述する問題になります。
前者の問題に馴染みがない方が多いと思いますが、”要約”です。
そのため、長文読解やリスニングで出てきた単語や英文法、英熟語を言い換えて記述すればいいのです。
後者は受験で培ってきたライティングスキルを発揮できる問題になります。
英語の小論文の対策で対応できる?TOEFLライティングで点数を上げるには
TOEFL-iBTのWritingと大学受験の英語小論文が評価するスキルは同方向であり、片方を対策することでもう片方の点数も伸ばすことが可能です。
Writingも乱暴な言い方をしてしまえば、Speakingと同じような型で主張を展開すればいいのです。しかし、それでは表現がネイティブの小学生〜中学生レベルになってしまい点数が伸び悩みます。
Writingの点数が伸び悩んでいる方は次の項目を見直してください。
- 動詞や英熟語で同じ表現を多用していないか?
- 短文を重ねていないか?
- 理由や主張の後の具体例が的外れになっていないか?
まとめ
TOEFL-iBTは実用的な英語スキルを評価するため、難易度が高くなっています。
英検やTOEICに比べて、SpeakingやWritingがネイティブレベルで評価されるため、点数が伸び悩みやすいです。
しかし、表現力の幅を広げ、多彩な英単語・英熟語で記載することで非帰国子女でも点数を伸ばすことができます。
いたずらに練習問題を解くのではなく、重要なのは知識のインプットです。点数に悩んだら、英単語・英文法・英熟語を学び直して精度を高めることを意識しましょう。