


アメリカの大学へ進学を希望している人なら『SAT(エスエーティ)』という単語を耳にしたことがあるかもしれない。
SATはアメリカの共通試験で、受験者の学力を測る基準として多くの米大学で取り入れられている。日本のセンター試験のように、アメリカではかなりメジャーな試験だ。
しかし、日本ではSATについてあまり知られておらず、TOEFLと違って日本人向けに作られた参考書はほとんど無い。
そのため、日本からアメリカの大学を受験しようとしている人の中には、SAT対策を何からはじめていいのか分からないという人もいるだろう。
本記事では、誰でも一から徹底的にSAT対策ができるよう、科目別にSATの勉強法を紹介する。
SATには、『Reading Test』『Writing and Language Test』『Math Test』の三種類があるのだが、今回注目するのは『Reading Test』と『Writing and Language Test』の対策方法だ。
この記事の著者:Hideki
こんにちは。現役大学生のHidekiです。高校生の時に英語を本格的に勉強し始めて、卒業前にアメリカの大学を受験し、合格しました。やはり、幼い頃に特別な英語教育を受けていたわけでもないので、受験は結構大変でした。しかし、同時に挑戦したからこそ経験できたことも多々あります。私はそのような経験を通して、みなさんの英語学習や大学受験に少しでも役立つような情報を発信していきたい思っています。


『Reading Test』対策変

『Reading Test』は日本人受験者にとって最大の敵といえる。
SATはアメリカの受験生向けに作られているテストであるため、そもそも語学力の面で日本人にとっては不利なテストである。
そして、SAT三教科の中で日本人とネイティブとの差が一番大きく出てしまうのが『Reading Test』だ。
『Reading Test』に挑戦するために必要なもの
『Reading Test』は、日本でいう現代文の問題のように、読解力が試されるテストだ。
そして、英語の問題を読解するために求められる能力は多岐にわたる。まずはこのテストにはどんな力が必要なのかを知ろう。

語彙力
まず必要になるのは語彙力だ。単語の意味が分からなければ読めるものも読めない。
速読力
次に必要なのが速読力。制限時間内に問題を一問でも多く解くためには、文章が速く読めなければならない。
読解力
そしてもちろん最後に読解力だ。この力は実際に問題を解くことでついてくる。
リーディングテストの形式を知る

『Reading Test』は、五つほどの長文のパッセージと52問の問題で構成されるテストで、制限時間65分とかなり長時間にわたる試験だ。問題はそれぞれ全て四択になっている。
大まかな形式としては、一つのパッセージに関して複数の問題が用意されており、それらの問題を現代文の定期テストの要領で読解していく。
問題の内容は様々だが、単語の意味を答える問題や、パッセージの趣旨を回答する問題など、どのパッセージでも頻繁に訊かれるような問題もある。
また、これに加えてグラフや表を使った読解問題も出題されることがある。

対策1:語彙力の向上は必須

さて、本格的な『Reading Test』の勉強に入っていきたいところだが、その前にどうしても語彙力アップという事前準備が必要だ。語彙力がないと、文章の意味が分からず、勉強しても成績が伸びにくい。
語彙力の目安
目安としては、英検準一級レベルの単語力は身につけておきたい。それができれば、SATの問題もある程度は理解できるようになる。もちろんそれ以上あれば尚のことだ。
単語帳を肌身離さず持参する
とにかく単語帳は常に見れるようにしておこう。学生なら学校の休み時間や通学時間など、たくさん空き時間が見つけられるはず。
普段の勉強時間は多読の勉強などに使いたいので、できるだけ隙間時間を有効活用して、何度も単語帳をさらっておきたい。おすすめ単語帳は以下の通り。


対策2:多読と速読の勉強
語彙力アップと並行して進めたいのが、多読と速読の勉強だ。

多読
多読とは、本をたくさん読むこと。読解問題を解く前に、英語の文章を読むことに慣れておく必要がある。まずは自分の英語レベルよりも少し下の本から挑戦し、徐々にレベルをあげていこう。

速読
速読とは、本を速く読むこと。アメリカ人の文字を読む速さは、平均的に200 wpm(=単語 / 分)から250 wpmと言われている。
まずは易しめの洋書で自分の読む速さを計測し、それより少し高めに目標を設定しよう。この繰り返しで速読ができるようになってくる。
コツは同じ部分を読み返さないこと。ペンなどで読む部分をなぞりながら読むと、読み返す癖を矯正できる。

対策3:参考書を使って読解問題を解く

語彙力がついてきて、多読と速読も進んできたら、次は読解問題に挑戦しよう。『Reading Test』においては、ここからが本当の勝負になる。
まずはTOEFLの教材で小手調べ

読解問題に挑戦するといっても、いきなりSATの教材を使って勉強すると、内容が難しすぎて勉強にならなかったり、自信をなくしてしまったりする可能性がある。
まずはSATよりも簡単な、留学生向けに作られた英語の試験『TOEFL』のリーディングに挑戦してみよう。TOEFLの教材なら書店にいけば必ず売っているので、良さげなものを選んで勉強開始だ。
TOEFLの良いところは、単語のレベルが比較的簡単なのと、日本語の解説がついてくるところだ。
最初の方は、はじめて触る読解問題に圧倒されてしまうかもしれない。そのため、解いていて意味がわかり、解説も理解しやすいTOEFLの参考書は、SATの予行演習として適している。

SAT用の参考書に挑戦する

TOEFLで自信がついてきたら、次はいよいよSATの『Reading Test』用に作られた参考書を使ってみよう。
SAT用の参考書については、アメリカの『Kaplan』『Barron’s』『The Princeton Review』などの出版社が出している参考書を使う。
大きな書店なら、SAT関連の本が置かれている場合もあるが、そうでない場合もAmazonを使えば簡単に手に入れることができる。
- Kaplan
Kaplan Evidence-Based Reading, Writing, and Essay Workbook for the New SAT
- Barron’s
Barron’s Reading Workbook for the NEW SAT
- The Princeton Review
まずは一周することを目標に
SATのリーディングは難しい。しかし、参考書を一周すれば、だいたいどんな問題が出題されるのかはわかってくる。
ほとんどの参考書には、一つ一つの例題に対して細かい解説もついているので、それらをしっかり読み切ろう。
練習問題にも挑戦
参考書を読破したところで、練習問題に移る。多くの参考書には、試験と同じ形式に作られたリーディングの問題集が付属している。これを使って自分がSATのレベルにどれだけついていけるのか試してみよう。
テスト自体は一時間を超える長いものなので、一つのパッセージごとに休みをおいて、丸付けをしても良いかもしれない。まずは、とにかく全ての問題に触ることを目標として挑戦してみよう。
『Reading Test』の問題を解くコツ3つ
SATのリーディングの問題には、解く上でコツがいくつかある。最後にそのコツを学んでいこう。

最初の数行で向き不向きを確認

これは、練習というよりも、本番で特に使いたいコツだ。『Reading Test』で出題されるパッセージの内容には、どうしても向き不向きがある。
例えば、物語よりも説明文が得意という人もいれば、科学的な話題に関しては滅法強いが、政治的な内容は苦手という人もいる。
そして、一般的に向いているパッセージに関する問題の方が、向いていない方よりも速く解け、正答率も上がる。
制限時間が限られている中で少しでも高い得点を得るためには、最初に多少時間を割いても得意なパッセージを見つけだすことが大切だ。
具体的な方法としては、まずパッセージの冒頭数行を読み、大まかな内容を確認。
そして次のパッセージに移動し、同じことを繰り返す。作業が終了したら、読んだ中で、最も自分が得意そうなものから順に解いていこう。

パッセージを読む前に問題を確認

二つめのコツは、パッセージを読み始める前に設問を確認することだ。
特に注目すべきは、行数に指定のある問題。具体的には「X行目の “XXX” という単語の意味は何か?」や「X行目からY行目までの文章にはどのような役割があるか?」のような質問だ。
これらの問題は、指定された行数の周辺に答えが隠されている場合がほとんどだ。まずは最初の問題を解くのに何行くらい読まなければいけないのか確認し、パッセージを読み始めよう。
また、問題はパッセージの流れに沿って作られているので、パッセージを読みきってから問題を解くのではなく、読んでは解いての繰り返しで最後までいく方が効率が良い。

回答の根拠となる部分を見つける

最後のコツは、パッセージの中に隠された、問題に対する答えを探し出すことだ。
『Reading Test』で出題される四つの選択肢は、一見どれも正解のように見える。現代文の問題でも、「これは出題者の思考を理解しないと解けない問題じゃないのか?」と思ってしまうことはないだろうか。
しかし、出題者にしか分からない問題は、『Reading Test』には存在しない。全ての答えの裏には必ず根拠となる部分がパッセージ中にある。出題者は、その部分をうまく言い換えて、受験者を惑わせているだけなのだ。
これを理解したら、問題を解くときは、根拠に当たる部分を探し出すことに専念しよう。選択肢の中で、パッセージとは言い方が違うが、内容は一致しているものこそが答えだ。
答えに該当する一行ないし数行をパッセージの中から見つけることができれば、自分は理解できているのだという自信にもなる。また、そこに印を入れておくと、見直すときにも役に立つので良い。

まとめ
『Reading Test』はSATの中で、日本人にとって最難関の教科であり、そのために攻略法の説明も『Writing and Language Test』や『Math Test』のときよりかなり長くなってしまった。
正直リーディングに関しては日本人が圧倒的に不利で、他の科目で差をつける方が楽だ。
しかし、大学は受験者の英語力のレベルを『Reading Test』の結果を通して評価する。少しでも高い得点があげられるよう、できるところまで勉強し切って本番に臨みたい。
『Writing and Language Test』対策編
『Writing and Language Test』を勉強する上での心構え

『Writing and Language Test』は、英語の文法についてのテストだ。
普通に考えれば、生まれてからずっと英語を使ってきたアメリカ人の方が断然有利なテストに思えるだろう。しかし、文法に関しては日本人に全く勝ち目がないわけではない。
文法とは、いわば英語という言語を使うための正式ルールであり、このルールを完璧に覚えていれば、語彙力が多少低くとも点数が取れるのだ。
そしてこのルールを覚えることは、語彙力をあげることに比べればかなり容易だと言える。
加えて覚えておいてほしいのが、アメリカ人は英語の文法について完璧に理解しているわけではないということだ。
日本人の中で、日本語の文法を完全に理解している人はどれほどいるだろうか。残念ながら、ほとんどの人は文法的に間違った言葉遣いをしている。
これと同じで、アメリカ人だって英語の文法をはじめから理解しているわけでははない。むしろ日本人の方が、学校の英語学習において文法を重視してきた分、文法について詳しかったりするのだ。
以上のことから、文法は数学ほどでないにしても日本人が得点を稼ぎやすい分野であることを理解しておこう。そして、アメリカ人にも負けないのだという心構えで勉強していきたい。

ライティングテストの形式を知る

『Writing and Language Test』の内容は、かなりシンプルだ。テストには、いくつかの長文のパッセージが載せられていて、一つ一つのパッセージには至るところに下線が引かれている。
基本的にはこの下線が引かれた部分に関して、文法上合っているか間違っているか、また間違っているならどのように修正すれば良いかを答える。
問題は全て四択で、ほとんどの場合、選択肢の一つ目は “NO CHANGE(修正しなくて良い)” で、二つ目以降は修正したバージョンの答えが示されている。
このような形式の問題がほとんどを占めるのだが、少し応用的な問題も数題出題される。
例えば、「二つの文をくっ付けて一つの文にしたとき、最も適切なものはどれか?」という問題や、「作者が以下の文章を付け加えるべきかについて悩んでいるのだが、作者は足すべきか否か? また、その理由は?」という問題だ。
このような問題については、基本の簡単な問題に慣れてから対策を進めれば良い。
対策1:文法書を使って基礎的な文法を復習

日本では、中学卒業までに、一部を除くほとんどの英語文法を勉強することになっている。
そのため、中学校でしっかり勉強していれば、文法の勉強ではそれほど目新しいものを学ぶことはない。
ただし、漏れている部分があるのも確かなので、まずは定番の文法書を使って一から復習していこう。「総合英語Forest」など、定番のものでOK!文法書を一周することができたら、とりあえずは一つ目のステップはクリアだ。

対策2:参考書で感覚を鍛える5ステップ
文法を一通り覚えたら、次は早速参考書を使って勉強していこう。

ステップ1:参考書を選ぶ
参考書については、残念ながら日本では作られていないので、アメリカの『Kaplan』『Barron’s』『The Princeton Review』などの出版社が出している参考書を使う。
大きな書店なら、SAT関連の本が置かれている場合もあるが、そうでない場合も、Amazonを使えば簡単に手に入れることができる。
- Kaplan
Kaplan Evidence-Based Reading, Writing, and Essay Workbook for the New SAT
- Barron’s
- The Princeton Review
ステップ2:参考書のドリルを一周する
どの参考書でも、基本的にはドリル形式になっていて、まず最初に特定の種類の問題に関して説明があり、そのあとにそれに関連した練習問題が出題される。
まずは説明を理解し、問題を解き進めていこう。この段階では、問題の傾向を掴むことを優先し、分からない部分があれば理解できるまでしっかり読み込もう。
ドリルの最後に出題される問題に関しては、それぞれに解説がついている可能性が高いので、解いたあと必ず解説を読むようにしたい。
実際に問題に触れ、どこがなぜ間違っている(合っている)のかを知ることで、問題を解く感覚がついてくる。
ステップ3:試験を想定した練習問題に挑戦する

参考書を一周したら、次は試験問題に挑戦する。おそらく巻末に数回分の試験問題が付属されているので、それを使うと良い。
試験問題を解くときは、ストップウォッチで時間を計っておこう。
試験が終わったあとに、自分が1問にどれくらい時間をかけているのかや、あとどれくらい早く解かなければいけないのかを計算しておけば、それが次の目標を立てる上での目安となる。
問題を解き終わったらもちろん丸付けをするのだが、これで終わりではない。むしろ、ここからが重要だ。
ステップ4:解いた問題を分析する

丸付けをしただけでは、そこでの成長はあまり見込めない。試験問題自体はただの腕試しに過ぎないのだ。丸付けが終わったら、解いた問題を分析していこう。
分析とは具体的には、正解を知った上で、残りの三つの選択肢がなぜ間違っているのかについて考えることだ。ノートがあれば、一つ一つの選択肢について、「XXの部分が文法的に正しくないから間違い」というように記していくと尚良いだろう。
できれば解いたときに合っていた問題もしっかり分析してほしい。
この作業はかなり地道だが、やっているうちに問題の傾向が掴めるので、本番で問題を読んだとき、瞬時に正誤を判断できるようになる。コツコツと続けていこう。
ステップ5:本番前は公式の問題で

本番前の勉強には、SATを主催する『College Board』が作った公式の試験問題「The Official SAT」を使いたい。
他の出版社が出版している問題は、それぞれ癖があったり、公式と難易度が若干違ったりするからだ。
本番前に公式の問題に触れておくと、本番でより実力を発揮しやすくなる。公式の問題は、College Boardが出版している本を買うか、College Boardのホームページからダウンロードすることで手に入れられるので、ぜひ試してほしい。
対策3:本番の想定をする
参考書をいくつかこなし、感覚を掴めてきたら、本番を想定して作戦を立てていこう。

自分のルールを作る
自分の中で本番でのルールを決めておくと、テストに落ち着いて冷静に臨むことができる。テスト形式はすでにわかっているので、本番どのように解いていくかを先に決めておこう。
例えば、「X秒考えて分からなければ飛ばす」や「この種類の問題は後回しにする」といった感じだ。
これがあると、一つの問題にズルズルと無駄に時間をかけてしまうことを防ぎ、時間をより効率よく使うことができる。
また、テスト中に自分のペースが早いか遅いかを見極めるために、「X問目を解き終わった時点でX分経過なら順調」といった目安を作っておくと良い。これによって、自分が急いだ方が良いのか、余裕を持っていけるのかがわかる。
他にも、問題によっては全部終わったあとにもう一度見直したいものや、難しいので最後に回したいものが出てくるはずだが、これにもルールを作っておこう。「解けなかった問題にはマル印をつけ、見直したい問題には三角印をつける」といった具合だ。
このように、本番で迷いそうなことがあれば、あらかじめ自分の中でルールを設定し、効率よく問題を解ききれるようにしておこう。

まとめ
『Writing and Language Test』の勉強は、数をこなせば確実に実力もついてくる。アメリカ人の受験生にも勝つとの意気込みで、着実に勉強していこう。




せめてKhan Academyの情報ぐらい載せようよ…アフィリエイト第一で参考書買わせようとして、本当に有益な情報を載せないのはどうかと思います。
Khan Academyは別の記事で紹介されてるよ。
ここで載っている参考書や勉強法は、著者の個人の経験に基づいたもので、全て網羅しているわけではない。
良いものはより多くの人に使って欲しいけど、まずは著者の経験を尊重する方針だね。