アメリカの大学を受験する場合、早くから準備しなければいけないのがSAT対策です。
今回は、SAT Englishのコンポーネントの一つであるReadingの概要と勉強法を、実際にアメリカ大学受験やSAT受験を経験した筆者の立場から詳しく解説します。
この記事の著者:Tani
日本の高校から海外に2年間留学し、アメリカの大学受験を経験。IELTS Academic8.0、SAT 1480点。2022年秋より、全米トップ5のリベラルアーツカレッジに進学。
監修者:ウメンシャン
日中英のトリリンガル・言語オタク。英語圏留学経験なしからIELTS8.0、TOEFL104、GRE322。コロンビア大学・ペンシルバニア大学・ニューヨーク大学・メルボルン大学教育大学院に合格実績を持つ。慶應義塾大学大学院卒。1児の母。
目次
SATについて
新SAT(Digital SAT)の概要
SATはアメリカの大学受験の際に各大学に提出する試験です。数学(Math)と英語(Reading and Writing) の2科目(各セクションに2つのモジュール)からなり、各800点、合計1600点満点です。
近年はSAT Optional のポリシー(SATの点数を任意とし、合否に影響を与えないようにするポリシー)の大学も増えてきていますが、やはり多くの大学では依然として重要な評価項目に含まれています。
SATで高得点を残すことができれば、アドミッション・オフィサーにも良い印象を与えられます。
主な変更点
・紙試験からデジタルに
・試験時間3時間→2時間14分に短縮
・問題文の長さが短くなり、問題数も減少
・Mathセクション全体で電卓の使用可能
SAT Readingの概要
英語には、WritingとReadingがあります。Writingは英文法に関する問題が主要なのに対して、Readingはその名前の通り読解がメイン。
文章を正確に、かつ時間をかけずに読み解いていく力が求められるため、多くの人が一番苦労するセクションです。
今回はSAT公式の練習問題(SAT Practice Test 1)から問題を引用しつつ、問題の傾向と有効な対策法について紹介していきます。
問題内容
新SAT(Digital SAT)のReading では、54問の読解問題を64分で解きます。全て25から150ワード程度の文章を読んで回答。
文章を読む時間も含め、1問あたりに費やすことのできる時間は多くて1分程度と時間的な制約も大きい試験です。
実際に一回分解いてみるとわかりますが、IELTSやTOEFLの読解と同じような感覚・スピードでやっていると、絶対に間に合いません。
Readingの難しさは内容の高度さにもありますが、それと同等以上に時間的制約にもあります。
文章の種類
Readingで与えられる文章は、Literature(文学)、Science(科学)、History/Social studies(歴史と社会科学)、Humanities(人文科学)の4種類があります。
こちらは「文学」に属する文書の例。
偶然にも日本を舞台にした小説です。小説の難易度もその時々で変わりますが、こちらの文章は比較的読みやすい部類に入ると思います。
一方でこちらは科学を題材にした文章の一例。DNAについての文章で、データに関する図表も添えられています。
4種類の中で一般的に一番難しいと言われているのが「文学」と「歴史」の文章。逆に難易度が低めとされているのが「(自然)科学」と「人文・社会科学」の文章です。
科学や社会科学の内容は日本語で持っている知識から内容を類推することができ、比較的簡単です。
それに対して、文学作品を読み解いていく場合は事前知識なしで文章の内容を理解する必要があります。
また史実を元にした歴史関係の文章であってもアメリカ史を取り扱っていることが多いため、背景知識が少なく、文章のテーマを掴みづらい場合が多くなります。
また、分野関係なく以下のように2つの異なる文章が与えられることがあります。こちらでは、社会科学に関する二つの異なる作者による文章が出題されています。
2つの異なる文章が出題される意図としては、両者の主張を比較し、共通点、相違点を問う点です。
問題の種類
文章の種類がある程度決まっているのと同様に、SAT Readingの問題の種類もある程度固定されています。
内容理解
内容理解問題は、Readingセクションで最も基本的な問題です。こちらでは文章中で起こった事柄について最も適当なものがどれか問われています。
また説明文的な文章の場合は、著者の主張を尋ねられます。下の画像の問題は、社会科学や科学に関する文章では最も頻繁に出てくるタイプの問題です。
さらに一歩進んで、解答への根拠となる部分を抜き出させるような問題もあります。
こちらでは、問9で内容理解に関する基本的な問題を出し、その上で問10でその答えへの根拠となる部分を選ばせています。
語彙
文章中で使われる語彙の意味を尋ねられることがあります。
語彙の意味と言っても辞書に出てくるような意味をそのまま答えれば良いのではなく、与えられた文脈に即した意味を汲み取って選ぶ必要があります。
文学分析
内容理解から一歩進んで、文章を文学的に分析するような問題も頻繁に出題されます。例えばこちらでは、作者の描写技法について問われています。
作者・著者の意図
特定の表現や文章の組み立てについての作者の正しい意図を選ぶ問題も出題されます。
こちらの問題では、著者がその他の研究者の研究に触れている意図を尋ねています。
SAT Readingで高得点を取るための2つのコツ
高度な語彙
SAT Readingの語彙は非常に高度です。文学作品に出てくるような表現(感情表現など)はもちろん、科学雑誌などに出てくる専門語彙についても覚えておく必要があります。
例えばこちらのパラグラフ。SATで使われた文章の最初の一文ですが、生物学の教科書に出てくるような専門的な語彙が多く使われています。
こちらの段落に出てくるような英単語すべての意味を完璧に覚えるのは非常に難しいはず。
最低限一般的な語彙(chemical formula, molecule, alternation など)はしっかりと覚え、専門的な語彙(pyrimidines など)は文脈から、あるいは普段のリーディングからある程度のどのようなタイプの語彙であるのかの推測(何かの物質なんだろうな…といった推測)できるようにしておく必要があります。
文章の読み方
文章を読んでいると、途中で分からない語彙が出てくることがあります。1つや2つなら無視して読み進めても内容理解に支障はきたさないのですが、そのような語彙が連続して現れてしまうと文章の内容が全くわからなくなってしまうかもしれません。
そういった場合に分からない箇所でずっと詰まっているのは時間の無駄。
少し考えてみて分かりそうでなければすぐに次の文章に移る、または問題文をチェックしてみるのがおすすめ。文章中で何を言っているのかわからなくても、問題文を見ればヒントになることが多くあります。
例えばこちらの問題。どれが答えなのかはまだ分かりませんが、AからDの選択肢の中に必ず問題に対する答えがあるのは分かります。
文章の内容が全く見当もつかない場合、こういった問題の選択肢の中にヒントがある場合が多いのです。
使うことのできる時間が限られている中いかに効率的に文章を読むか、問題を解いていくかが重要となってきます。
Readingは単語の丸暗記などその場しのぎの対策が活きる試験ではありません。 過去問や練習問題を繰り返しといていくだけでなく、多読・精読・語彙の習得を通じて、英語力を総合的に上げていくような勉強法が必要となります。 SAT Readingのためにも、SAT WritingやTOEFL/IELTSのためにも、遠回りに見えつつも最も長期的に効果があるのは英文をたくさん読むことです。 特にSAT Readingを対策したいのであれば、よりアカデミックなテーマを題材とした文章を読みましょう。 よりSAT Reading対策に特化するのであれば「社会科学」「科学」「歴史」などのテーマに即した文章を読み込むこともお勧めします。 文章の読み方は人それぞれですが、SAT Readingでは「速く、かつ正確に文章を読む力」が求められます。 一度文章を読んで、その時に分からない語彙をメモ。知らなかった語彙を調べ上げて、もう一度内容を理解できるようになるまで何回も読んでいく。このやり方がおすすめです。 実際に過去問を解き始める前に、ある程度SAT Readingで頻出の単語やSATレベルの単語を覚えておくことをお勧めします。Writingと異なり、単語の大部分が分からないと練習の意味も薄くなってしまいます。 語彙の覚え方として一番定着が早いのは、読んだ文章に出てきた語彙から順番に覚えていくというもの。 先ほど紹介したいくつかの英文の題材を読み、分からなかった語彙をメモし、それを順に覚えていくというやり方です。実際の文脈と合わせて覚えられるのが特徴です。 ただし、このやり方では時間的な効率が悪いのも事実。SATに頻出の単語を特にピックアップして覚えていくのであれば、SAT用の単語帳・単語まとめサイト・QuizletやAnkiのSAT用フラッシュカードなどを活用しましょう。 SAT 関連単語の日本語情報はかなり少なく、多くが英語のソースになってしまいますが問題はありません。 SATで日本語訳が聞かれることは当然ありませんので、SATレベルの単語は英語で覚えてしまうのがおすすめです(IELTS 7.0/TOEFL 100程度の英語力があれば日本語を介さなくてもスムーズに単語学習が進むと思います)。 また、英語で覚えていくのが大変な場合、まずはTOEFLやIELTSレベルの単語をマスターしましょう(SATの準備も順番的にはTOEFLやIELTSの後がおすすめ)。 SAT Practice Test は、SATを運営するCollege Boardというアメリカの団体が無料でネット上に公開しているSATの過去問題集です。 PDFで配信されており、ダウンロードして自由に使うことができます。 SAT Practice Test は、合計8回分あります。Practice Test 1 から順に解いていきましょう。 知らない語彙は解いていくたびにメモし、解き終わった後にすぐに調べられるようにします。 Readingでは、やはり数をこなすことが重要になります。SAT Practice Testを早々に解き終えてしまった場合は、市販の練習本を活用しましょう。 「Barron’s Writing Workbook」がおすすめです。 ただし、非公式の過去問なので、過度な期待は禁物。メインはやはり過去問集で、サブとしてSAT練習本を活用するのがおすすめです。 メインとしては量が少なく活用しづらいですが、SAT Practice Test を本格的に解いていく前のウォーミングアップとしておすすめなのが、Khan Academy の練習問題です。 Readingであれば、このようにテーマ別に4つの文章が公開されています。ボリュームとしては通常の試験1回分の80%ほどですが、練習としては十分すぎる量です。解答の解説も非常に詳しいので、おすすめ。 SAT対策はIELTSやTOEFL対策を終えて、ある程度まとまった勉強時間が取れ、かつ英語力の基礎がついてきた段階からゆっくりと勉強を始めていくのがおすすめ。勉強方法は残された時間にもよりますが、筆者自身のスケジュールを少し紹介します。 本来であればもう少し早くから準備しておくほうが良いですが、結局のところはいかにどれだけ集中して単語を覚え、過去問を解いたかがとられます。 可能であればSATの単語だけはなるべく早い段階から準備をし、最後の1・2ヶ月で過去問を仕上げて行くやり方がおすすめです。 SAT Reading は扱われる文章の語彙も量も多く、WritingやMathと比べるとより高度な英語力が求められます。 SATは1500点を目標とする人が多いと思いますが、その場合はMathで800点とWritingで満点に近い高得点、Readingで最低限の点数を取り、English全体で800点満点中700点を狙う戦略となるでしょう。 つまり、Readingで満点近くを取ろうとする必要はなくても、他の科目の足を引っ張らない程度は確保しておかなければいけないということ。 語彙の習得にも、英語のアカデミックな文章に慣れるのにも相当の時間を要します。しっかりと前もって準備しておくことをおすすめします。 SAT Readingの5つの勉強法
英文をたくさん読む
語彙を覚える
SAT Practice Test
SAT練習本
Khan Academy
SAT対策のスケジュール感
まとめ