推薦状はその名の通り自分を推薦してくれる人が、大学院に対して送る書類で、オーストラリアやニュージーランドを除く海外大学院の進学には推薦状が必要です。
普段の生活の中では推薦書を必要とする機会は滅多にないので、誰にどのような内容を書いてもらうのかわからない人も多いと思います。
そこで今回は、推薦状の基本に加え、提出するまでのポイントをご紹介します。
著者について:SIM(シム)
過去に二度の長期留学(オーストラリア・イギリス)をしました。留学前にTOEIC 900、IELTS 7.0取得。趣味は旅で去年はヨーロッパ周遊をし、今年はアジアを中心に回るのが目標です。
目次
海外大学院留学で必要な推薦状とは?
推薦状とは?
推薦状とは、他者が自分を推薦する内容を、通常A4用紙1枚分(字数にすると約500語以下)にまとめたものです。
志望する大学にもよりますが、通常二人以上からの推薦状が必要となり、特にカナダの大学院では教育水準が高いということもあり3枚必要なことが多いです。
進学先によっては必要がない、あるいは1枚で良いとするところもありますが、一般的に二枚必要だと思ってもらって構いません。
基本的に提出先の大学院で使われている言語で書く必要がありますので、多くの場合英語で提出する必要があります。
出願時に一緒に提出するPS(Personal Statement)では長所を自己申告し、GPAでは自身の成績を数値として客観的に評価することはできますが、性格や人間性はなかなか客観的に評価することは難しいです。
そこで推薦状によって推薦者から自分の性格や取り組みに対する姿勢を評価してもらいます。
試験の点数で評価されるアジア地域と異なり、人を総合的に判断する文化の欧米では、他者からの評価も非常に重きを置かれているので、推薦状が合否を左右するほどの重要な書類とも言えます。
選考上の位置付け
次にアドミッションの立場から考えてみましょう。学生募集のシーズンに世界中から選考書類が集まるとしたら平均何人分の資料を読まなければならないでしょうか。
驚くことに、人気大学では一人で一カ月に何千人の書類を読むと言われいるため、手元にある選考書類のうち丁寧に読むべき資料かどうかは最初の5,6分で判断すると言われています。
では最初の5,6分間で、選考委員会の人は何に注目するのか見てみましょう。一般的に以下の項目に注目すると言われています。
- CVからこの学生の職歴/研究歴を見る
- 成績表をざっと目を通し、知識レベルを掴む
- 標準化テスト(TOEFL/IELTS、GMAT/GRE)を見て、英語力と学力のレベルを把握
- 2~3通の推薦状からこの学生の特徴をイメージする
つまり、最初の選考の中で、あなたの推薦状にかける時間は、約一分ほどしかないということになります。このような状況ため、推薦状はいかに簡潔に且つ印象的であるかが肝要になります。
誰に推薦状を書いてもらう?
大学の教授
誰から推薦書を書いてもらうのか、一番のメインは大学の先生がそれに当たります。
特に自分の研究内容や性格等、様々な側面で自分を知っている人の方が好ましいので、お世話になった教授やゼミの先生にお願いすると良いでしょう。
また、誰に推薦してもらうのかも非常に重要な要素となりますので、その先生の肩書もできるだけ上の方が良いです。
例えば、必要な2枚の書類のうち両方とも「非常勤講師」からいただいた推薦状では評価が下がってしまうのが現状です。
非常勤講師よりも、准教授、准教授よりも教授といったように肩書きが上であればその推薦状の印象も良くなります。
一人が複数の肩書きをもっていることもあります。例えば、その学校では准教授であっても、ある学会の中では権威ある人なのかもしれません。見た目の良い方の肩書で推薦状を書いてもらうのが良いでしょう。
私の場合、二人の先生から推薦状をいただきました。
そのうち一人は私の大学では非常勤講師であり他の学校では准教授だった方だったので、肩書きは、その大学の准教授として書いていただきました。
もう一人の方は当時大学の准教授であり異文化間コミュニケーション学会のトップでしたので、両方とも書いてもらいました。
もし推薦者候補が複数人いる場合は、自身が専攻したい科目に近い専門を持つ方からいただくと良いでしょう。
例えばマーケティングを専攻したい場合、哲学の教授から推薦書をいただくよりも、経済学の准教授からいただいた方が専攻と一貫性がありますのでそちらの方が好ましいと思われます。
とはいえ、推薦状を書いてくれるほど親しい先生は限られてくると思うので、迷ったら難しいことは考えずに親しい順で良いと思われます。
会社の上司
また、推薦状は教育機関からのみならず会社からのも受け付けています。たとえば数年の社会経験がある人の場合は、会社の上司からいただくことも可能です。
会社からの推薦状も可としている学校では多くの場合最低一枚は教育機関から、もう一枚は会社からとしているところが多いです。
MBAなどビジネス系の大学院に進学したい場合は、基本的に会社からの推薦状が必要になり、これがMBAの学生には社会経験がある理由の一つになります。
学校によって規定は様々なので志望校が決まり次第できるだけ早く確認しましょう。
会社からの推薦状は、最低3年~5年間正社員として勤務した会社が好ましく、チームリーダーよりも部長以上の方からいただくの印象が良いです。
外部団体の代表者等
もし課外活動を積極的に行っているのならば、その団体の代表者から推薦状をもらうこともできます。
例えば、環境保全に関するボランティアを数年やっていた場合、その代表から推薦状をもらうことはそれに関係した分野で非常に有利に働きます。
また、2枚とも異なる団体・機関からもらうことで、自分の活動範囲の広さをアピールすることにもつながります。
私の知り合いの中には総理大臣から推薦書をもらっている人もおり、それだけで差別化することができます。
もう一度これまで自分が活動してきた中でそれにあたる人がいないか思い出してみましょう。
推薦状のフォーマット(書き方)とテンプレート(例文)
では、いったい何を推薦状に書いて貰えばいいのでしょうか。一般的に以下の内容を聞かれることが多いです。
- How long and in what capacity have you known the applicant?
- What is your assessment of the applicant’s intellectual ability?
- What is your opinion of the applicant’s motivation towards and suitability for a career in the chosen field of study?
- What do you consider the most outstanding characteristics of the applicant?
- What are the major weaknesses of the applicant?
- Any additional statements you may wish to make concerning the applicant’s capacity for pursuing the program indicated above?
要約すると選考委員会の人は、「推薦者が応募者をどのくらい知り、どのように評価しているのか」を知りたいようです。具体的にどのような内容を書けばいいのか以下にまとめましたので見ていきましょう。
冒頭
宛名
最もよく使われる冒頭の呼称は下記となります。
- Dear Admission officer,
- Dear Sir or Madam,
- To whom it may concern,
自己紹介・被推薦者との関係
一段落目は、下記の例文で始めるのが簡潔で無難です。
- It is a pleasure to recommend ……
- I am very happy to have this opportunity to recommend ……
- At the request of xxx, my former student in the XXX University, I am pleased ……
- I’m very glad to learn that XXX is applying for your Master/Ph.D program…
- I deem it a great pleasure to recommend XXX, an outstanding student in XX and XX, for admission to your PH.D/Master of……
- As his XX, I deem it a great pleasure to recommend XXX, the very top student among XX students of his class, and an excellent young researcher leader in our group……
もし推薦者に知名度があったり要職を務めている場合は、ここに簡単な自己紹介を付け加えてもらうと尚目を引くことができるでしょう。
推薦者がどこの機関に所属するものなのか、地位はどのくらいのものなのかなど簡単に自己紹介をしてもらい、その上で応募者(自分)との関係を説明してもらいます。
文字数に制限がありますのであまり詳しく書かなくていいとは思いますが、先にも述べたように肩書きは重要なのでもれなく書いてもらうようにしましょう。
本文
受験者のパフォーマンスについて総評してもらいます。特にフォーマットはありませんが、字数も限られていますので本文は1~2段でまとめるとよろしいでしょう。
本文は主に、なぜあなたがこの専攻/研究科/ビジネススクールに適格であるのか、どのような強みを持っていることを説明します。ではどのような強みをアピールすればいいのでしょうか。
どのような人柄・人間性か
先にも述べたように、GPAはこれまでの成績を数値化し客観的にしたものですが、一方推薦書はその人の性格や人間性など数値化できないような性質のものをアピールする場になります。
- 「この学生は根性ある」
- 「この学生のコミュニケーション力が優れている」
- 「この学生は高い問題解決力を持っている」
といった月並みの褒め言葉だけでは、選考委員会の心を動かすことは難しいでしょう。
具体的に、どういったエピソードに基づいてその人が素晴らしいのかを説明しなければなりません。
私がお願いした推薦書の例文を挙げると、
- 「私のゼミでは毎週異なるテーマを取り上げるが、彼は常に積極的に発言をし、ディスカッションを活発化させる中心人物だった。」
- 「毎回授業最前列に座り、熱心に講義を聞き、疑問点があれば積極的に質問をする好奇心旺盛な人」
といったような実体験に基づいて性格や人柄を推薦する内容を書いていただきました。
経験をもとに、人となりを積極的に書いてもらいましょう。
志望の専攻やビジネススクールの特徴によってアピールする強みは変わりますが、一般的には「専門知識」「問題解決能力」「リーダーシップ」「協調性」「責任感」「洞察力」などについて書いてもらうといいでしょう。
また、推薦状2枚はそれぞれ別の強みが書かれている方が好ましいです。
具体的にどのような成績を残したか
また、具体的にどのような成績・成果を残したのかを書いてもらうことも重要です。私の場合は以下のような実績を書いてもらいました。
「この学生は卒業論文に〇〇をテーマに異文化コミュニケーション論の視点から論文を書き、非常に優れた洞察と、新しい観点での考察のためAAの成績を与えた。彼は私がこれまで受け持ってきた学生の論文の中で上位10%の成績をおさめている。」(ゼミの先生)
「期末テストに〇〇という課題を与えたが、彼の解答は私が教えるメディア論を包括的に理解しているに値するものであり、普段の授業での姿勢も加味した上でAAを与えた。」(外部の先生)
このように何をテーマにどのような視点から論文を執筆し、結果としてどのような成績を残したのかが書かれています。
AAといった情報はGPAからわかることではありますが、どのようにしてそのような点数を取ったのか、背景を可視化することによってそのAAという評価を裏付けします。
この他にもMBAのようなビジネス系の大学院に進学する予定であれば、業務実績や仕事に取り組む姿勢や責任感などに関することが書かれていると良いでしょう。
まとめ
推薦コメント
最後に以下の例文を参考に、応募者(自分)を強くする推薦するコメントを入れましょう。
- Therefore, I highly recommend (name) without any reservation for admission to your graduate program. Your kind/serious consideration of his/her application would be most appreciated.
- I am thus pleased to give my full support and recommendation to (name)’s application for admission to your school. If any further information is required, please feel free to contact me.
- I am pleased to provide XX with my highest recommendation. He will be an asset to the Law School at XX as he has been for us. I would be delighted if I could work with XX again in the future.
- I have worked with many students over the course of my career, and I find XX to be really special. He possesses a rare combination of analytical rigor, gracefully incisive writing skills, and original scholarly ideas. I look forward to witnessing the impact she will have in the years ahead.
挨拶
最後は以下のような言葉で締めます。
- Yours,
- Best wishes,
- Sincerely,
- Best regards,
推薦者の情報
一番最後に以下の推薦者の情報を入れて完成です。
- 推薦者のサイン(手書き)
- 推薦者のフルネーム
- 推薦者の肩書(Title)
- 推薦者の勤務先、
- 勤務先の連絡先(電話・メールアドレス)
推薦状サンプルを入手
このサイトでは推薦状のサンプルを数十選まとめてあるため、興味のある人は下記から入手してほしいです。
全ての推薦状はここで説明した書き方に沿っているわけではなく、また、受験者の状況によって参考になるサンプルは異なってくるため、吟味しながら使ってみましょう。
推薦状を書く・依頼する際の注意点
とにかくポジティブな内容
日本人には慣れないことではありますが、とにかくポジティブなワードで書かれている必要があり、譲歩といった謙虚さを表す文章は入れる必要はありません。例えば、
この学生は口数は少ないものの、発言には常に深い考察が含まれている。
といった文章も、推薦文の場合は前半部分は必要ありません。
この学生の発言には常に深い考察が含まれており、ディスカッションにおいて常に新しい視点を与えてくれる。
くらいのポジティブさでいいと思います。少し言い過ぎかと思うくらいでも英語にしてみると意外と聞こえが良いものとなります。
とはいえ、推薦状は応募者だけでなく、推薦者への評価でもあります。
もし推薦状に書かれた内容と応募者の実際の能力に大きく乖離があるとすれば、推薦者のみならず、その会社や教育機関の信頼性も落ちてしまうでしょう。
あくまでも事実であり、誇張がない範囲で最大限ポジティブな内容になるようにしましょう。
かなり時間がかかる上に準備期間が短い
推薦状を依頼するにあたり、注意点がいくつかあります。一つ目は非常に時間がかかるということです。
ゼミの教授や会社の上司などにはもちろん本職の作業があります。いくら自分にとって優先順位が高いことでも、学生に推薦状を書くことは彼らにとって優先順位が非常に低い作業です。
隙間時間にやる作業である上に、先に挙げたような要点を盛り込まなければならなく、そして英語で書かなければいけないので、書く側からするとかなりの負担になります。
実際に私も推薦状をお願いしてから翻訳まで一式揃えるまでに3ヶ月近くかかったのを覚えています。
また、使いまわせるような推薦書というのは正式な文書において失礼にあたるので、宛名に「(The) University of 〇〇」と大学院ごとに個別で用意してもらわなければなりません。
したがって志望校が定まってからでないと推薦書は頼めないため、志望校が決まってからは尚更早め早めの準備が必要です。
出願するたびに推薦状をお願いすると煩わしいので、ある程度志望校とコースが決まったら出願するしないにかかわらずまとめて書いてもらいましょう。
推薦者が英語を話せない時
推薦状の一つの難関は英語で書かなければいけないと言うことです。
多少の英語を話せる人は多くても、推薦状をかけるほどの英語力を持った人はなかなかいません。私が推薦状を依頼した一人の先生も英語が全くできませんでした。
私の場合は、日本語で推薦状をお願いして、それを私自身で翻訳、最後にオーストラリア人の友人に校正してもらうことでなんとかなりました。
テストと違い、書類と言うものは誤字脱字のない完璧なものでなくてはなりませんので、ネイティブチェックは必須です。
身の回りにそのような人がいなければ留学エージェントや翻訳サービスを利用することを強くお勧めします。こちらも時間がかかりますので、できるだけ早めにお願いすると良いでしょう。
推薦者本人が提出する
上記の通り、推薦状を書いてもらうにはかなりの時間がかかるため、推薦者によっては最後の承認以外は全部自分で代わりに書いてくれと言う人もいるでしょう。
自分で書いた内容を確認・承認してもらう分には問題はないと思いますが、それを自分で印刷・提出することはできません。
一つは推薦状にはレターヘッドと呼ばれる企業や教育機関のロゴやシンボルマーク、連絡先を推薦状の上部に添える必要があるからです。
それを自分で作成することはできず、推薦者が所属する会社や機関が指定する形式の用紙で印刷される必要があります。もう一つは推薦者本人の署名が必要だからです。
これらは書類に偽りがないと証明するものなので、必ず本人から直接受け取らなければなりません。
推薦者があまりいない時
ほとんどの場合大学院進学には推薦状が必須となりますが、どうしても推薦者がいない場合は以下の方法で試してみましょう。
推薦状なしの大学院を探す
いくつかの例外は除いて、オーストラリアやニュージーランドの大学院では基本的に推薦状なしで良いので、推薦人がいないからといって進学を諦めることはありません。
北米やヨーロッパ地域の大学院ではあまり聞いたことはありませんが、特にアメリカには多くの教育機関がありますので、推薦状が必要ない大学院もあるかもしれません。
その場合、あまり教育水準が高くない、あるいはあまり有名ではない大学院となってしまうことを覚悟することも前提となります。
志望校に相談してみる
お世話になっていた教授が引退し、連絡が全く取れないことや亡くなられたなどやむを得ない場合もあります。そのときは志望校に率直に相談してみましょう。
もし運が良ければ一枚分免除といった待遇も受けられるかもしれません。
社会経験を積んでから進学する
先にも述べたように、推薦状は会社の上司からももらったものでも提出できます。
もし推薦者が全くいないようであれば一旦会社に就職して、数年働いた上で信頼できる上司からいただくのも一つの手段と言えます。
ただし2枚とも会社からの推薦状でいいのかは教育機関によって異なりますので確認が必要です。
おわりに
いかがだったでしょうか。推薦状は頼める人が少ない上に英語で書かなければならず、さらに準備期間も短い書類の一つで非常に厄介です。
もし大学院進学を決めたらできるだけ早く準備を始めましょう。総括すると以下のような流れになります。
- 志望校決定(複数)
- 推薦人を探す
- 推薦状を書いてもらう
- 推薦状を翻訳
- 推薦状を印刷
- 署名
- 提出
ありがとうございました。
ボリューム満点な資料集、どうして無料なのですか?
資料集にあるものは、私たちが留学準備・試験対策の際、海外のサイトから集めてきた資料。
資料収集にかなり時間をかけたけど、お金はかけていなかったので、日本の学習者にも無料で提供することになった。
今後もこの資料集をどんどん充実させていきたいので、みんなもいい学習資料を見つけたら共有して欲しい!