留学を実現させるには様々な準備が必要である。
語学の勉強はもちろんのこと、学びたい分野や場所なども含めた学校選び、入学に向けた学校とのやり取りなどもしなければならない。
大変な道のりだが、それを乗り越えて実現させた留学はきっと実りあるものになるだろう。海外留学前の年金・健康保険・住民税に関わる手続きもそのひとつだ。
状況や考え方は一人ずつ違うため一概にこの方法が一番いいとは言えないが、手続きや制度についての情報はどうするのが一番自分に合った方法なのかを考える材料になるだろう。
留学中の年金・健康保険・住民税については、「海外転出届」を出すか出さないかで大きく対応が変わってくる。
それぞれの手続きで「海外転出届」を出す場合と出さない場合のメリットとデメリットを比べてみたいが、最初に「海外転出届」について説明したい。
目次
「海外転出届」とは
日本に住んでいる時、私たちの住民票はそれぞれの市区町村に登録されている。
「海外転出届」とは役所に海外で滞在することを届け出ることである。すなわち日本にある住民票を転出することである。
この届出を出すかどうかの目安は、海外滞在が1年以上かどうかだと言われているが、明確な決まりがあるわけではない。
市区町村によっては海外転出届を提出することを勧めているところもあるが、出すか出さないかの決定は個人にゆだねられている。
それでは、次に年金・健康保険・住民税それぞれにおいてこの「海外転出届」を出した場合と出さなかった場合はどのように異なるのだろうか。「海外転出届」は出すべきなのか。
年金
年金加入は国民の義務であるため、日本にいる場合には強制加入であり払わなくてはならない。
国民年金の保険料は月々16,340円で、1年で163,400円となり留学中には大きな出費である。それではどのようにすればいいのだろうか。
海外転出届を出す場合
海外転出届を出すと、国民年金の強制加入の義務がなくなる。すなわちその期間は保険料を納めなくてもよい。
その期間に年金を支払わなかった分、受け取れる老齢基礎年金は少なくなるが、この保険料を支払わなかった期間も、年金受給に必要な年数には数えられる(老齢基礎年金を受け取るには10年以上の保険料納付期間が必要)。
海外転出届を出し保険料を払っていないときになんらかの事情で、重い障害などが残ってしまった際には障害基礎年金の対象にはならない。
また、海外転出届を出しても、任意加入として保険料を支払い続けることは可能であり、追納をすることもできる。任意加入をした場合は、受給額は変わらず障害基礎年金の対象にもなる。
海外転出届を出さない場合
海外転出届を出さずに保険料を払い続けることになる。また条件に合うならば保険料免除制度というものもある。仕事を退職して留学するならば、失業者として免除制度が申請できる。
この免除制度を利用すれば保険料の支払いを免除でき、払っていない期間に障害が残っても、障害基礎年金の対象となる。
学生納付特例制度については、一部の日本分校を除き、海外の学校は対象にならない。免除制度については自分の状況に当てはまるものがないか、一度お住まいの役所に問い合わせてみるのが確実だろう。
国民健康保険
海外転出届を出した場合
国民健康保険は海外転出届を出すと入ることができず、保険料を払う必要がなくなる。しかし、日本に一時帰国した際の医療費は全額負担となるため高額になる。
日本に一時帰国の予定があるのか、その期間はどれくらいか、お得な旅行保険や留学保険に加入することで代用ができるのかどうかを考えて、どうするか決めるといいだろう。
海外転出届けを出さない場合
留学中も月々の保険料を払う必要がある。一時帰国などの際に保険を使って医療を受けることができる。また、申請すれば海外での医療費にも補助がでる。
しかし、これは日本国内で同様の怪我や病気をした時の治療費に換算されるため、海外の治療が高額だった場合は、十分にカバーされないので注意が必要だ。
また、扶養に入れば保険料免除で社会保険に加入できるので、住民票を転出しないならば家族の扶養に入れないか検討してみるのも選択肢の一つだろう。
住民税
住民税は前年の所得に応じて課せられる税である。前年に収入があるとその金額に応じた税が、無収入の時期であっても課せられる。
前年度の収入額によるが、住民税は年間で十数万にもなることが多く留学予算にも影響が出てくる金額である。
一方学生などで、前年度の収入がない場合はあまり気にしなくてもいい税金だろう。住民税についても海外転出届けを出した場合と出さなかった場合で違いを見ていきたい。
海外転出届を出した場合
その年の1月1日に住民票が日本になければ、その年は住民税を支払う必要がなくなる。
海外転出届けを出すといくことは住民票を日本から出すということなので、基本的には住民税は払う必要がない。
しかし、前年に収入があった場合、その収入のあった年度内までは住民税を払う必要がある。
海外転出届けを出さない場合
海外に滞在していても住民税を払う必要がある。住民税は前年度の収入に応じて、税金が決まっているのでその額にかかる金額を払う。
この税金は経済状況に応じて免除制度などもあるが、住民税に関してはその基準がかなり高く設定されている市町村が多い。
調べてみたい方は、一度近くの役所に適応される制度がないか確認してみるのが確実だろう。
ここで仮にAさんの例を出して、住民税について海外転出届を出した場合と出さなかった場合で、住民税にどのような変化があるのか比べてみたい。
住民税の額の計算は複雑なので給料明細を見ていただくか、勤め先があるならばそこで確認するのが良いが、この表では仮にAさんの収入と住民税を設定した。
Aさんの収入と住民税(2017年~2021年)
海外転出届けを出した場合 | 出さなかった場合 | ||
2017年 | 収入:300万円 | 住民税:13万円 | 13万円 |
2018年 | 収入;200万円(1) | 住民税:13万円 | 13万円 |
2019年 | 収入:0円 | 住民税:0円(2) | 11万円(3) |
2020年 | 収入:0円 | 住民税:0円 | 0円(4) |
2021年 | 収入:300万円 | 住民税:0円 | 0円 |
(1)2018年9月に留学をした、1月から8月までの収入である。
(2)2019年1月1日に住民票が日本にないため、払う必要がない。
(3)前年度分収入の200万円分の住民税がかかっている。
(4)前年度の収入がないため住民税は払う必要がない。
Aさんの場合2019年の11万円の税金分、海外転出届を出したほうが得である。住民税に関しては前年度の収入がある場合は海外転出届けを出すことで、十数万円の節約になることが多い。
まとめ
留学する際の年金・国民健康保険・住民税について見てきた。
単純に金額だけを考えれば1年以上の留学の場合は海外転出届けを提出した方が安くなる場合が多い。
しかし、家族の扶養に入れるのかどうか、障害基礎年金の対象にならない期間を作ることについてをどのように捉えるのか、海外医療保険や前年度の収入の有無など、考え方や状況はその人によって違う。
自分にとって最も納得でき、安心でき、そしてできるだけお金を無駄にしない方法を選択することがなにより重要である。
また手続きに必要な書類は取り寄せるのに時間がかかることもある。少なくとも1か月ほど前には動き出すのが賢明だろう。
【参考URL】
・日本年金機構 http://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140627-02.html
・全国健康保険協会 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3120/r138
このブログが動画になりました!ご視聴の程よろしくお願いいたします!