海外の大学に進学するという目標を持ったとき、最初に「何をどう準備すればいいのか」と戸惑う方は多いのではないでしょうか。
特に、教育制度や出願プロセスが日本と大きく異なるため、情報収集や計画を立てる際に迷うことも少なくありません。
例えば、アメリカの大学は日本と同様に4年制が主流で、入学後に専攻を選べる柔軟なシステムを採用しています。一方、イギリスやオーストラリアなどでは、大学は3年制が一般的で、入学時に専攻を決める必要があります。
このように、国ごとに進学ルートや入学条件が大きく異なるため、志望する国の特徴を早めに把握することが重要です。
この記事では、海外大学の進学方法や出願条件、国ごとの入試システムについて解説します。
それでは、まずは教育制度の違いから見ていきましょう。
海外大学の入試システムと基本情報
一言に海外大学進学と言っても、留学先の教育制度よって出願資格、進学ルート、卒業までの期間などが大きく異なります。
そのため、それぞれの国の特徴をしっかりと把握したうえで自分に合った留学先を見定めることが大切です。
海外大学の入試制度を比較すると『アメリカ式』と『イギリス式』の2つが主流です。ここではその違いを見ていきましょう。
アメリカ式とイギリス式の教育制度比較
項目 | アメリカ式(アメリカ、カナダ) | イギリス式(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ各国) |
---|---|---|
学位取得期間 | 4年間 | 3年間 |
カリキュラムの特徴 | 幅広い教養科目を履修しながら学び、専攻を決定する柔軟なシステム | 専門分野に特化したカリキュラムが中心。一般教養科目はなし |
専攻の決定時期 | 入学後に決定(2年次までに選択) | 入学時に決定(変更不可の場合が多い) |
進学ルート | 直接出願が可能 | 多くの場合、ファウンデーションコースを経由 |
学位取得までの期間の違い
国によって学位(学士号)取得までの年数が異なります。アメリカ式カリキュラムの大学は日本と同じく基本的に4年制ですが、イギリス式カリキュラムの大学は3年制です。
■4年制大学(アメリカ、カナダなど)
通常4年間の学部課程を修了すると学士号 (Bachelor’s degree) が授与されます。
4年制の大学では、1・2年次で一般教養科目を中心に履修します。
2年次の終わりまで専攻を選択する必要がないため、時間をかけて幅広くいろいろな分野に親しみながら自分が進むべき道を見つけ出し、3・4年次から専攻の専門課程へ進むことができます。
■3年制大学(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ各国など)
通常3年間の学部課程を修了すると学士号 (Bachelor’s degree) が授与されます。さらに1年間、 即戦力をつけるためのインターンシッププログラムを提供している大学も多くあります。
3年制の大学では一般教養課程のような授業がなく、1年次からすぐに専門科目の履修が始まります。
入学時に選択した特定分野の知識や実践的なスキルの習得を中心に学ぶこととなり、途中で専攻を変更することはできません。
将来の目標や就きたい職業が明確な方にとって魅力的な教育制度となっています。
海外大学の出願資格と進学ルートの概要
国や大学によって海外大学の出願条件や進学方法が異なります。以下に、一般的な要件をまとめます。
項目 | アメリカ式 | イギリス式 |
---|---|---|
出願資格 | 高校卒業資格があれば直接出願可能 | 高校卒業資格に加え、ファウンデーションコース修了や特定の国際資格(IB、A-Levelなど)が必要 |
進学準備コース | 必要なし | ファウンデーションコースやディプロマコースが一般的 |
英語力の証明 | TOEFL iBTまたはIELTSスコアが必要 | TOEFL iBTまたはIELTSスコアが必要 |
その他の要件 | SATやACT(大学による)、エッセイ、推薦状 | パーソナルステートメント、推薦状、履歴書 |
出願資格のポイント
アメリカ式の大学では、ほとんどの場合、日本の高校卒業資格があれば直接出願が可能です。
一方で、イギリス式やオーストラリアの大学では、大学1年次に相当する学力を持つことが求められるため、ファウンデーションコースの受講が必要です。
進学準備コースの活用
イギリスやオーストラリアの大学進学を目指す場合、ファウンデーションコースを経由するのが一般的です。
このコースでは、英語力や専門分野の基礎知識を養うことができ、進学後の成功に向けた準備を整えます。
出願資格と進学ルートの概要
国や大学によって出願資格や進学ルートが異なります。
海外大学の入試制度の比較(アメリカ式とイギリス式)
項目 | アメリカ式(アメリカ、カナダ) | イギリス式(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ各国) |
---|---|---|
出願資格 | 日本の高校卒業資格もしくは同等の資格で直接出願が可能 | 高校卒業資格に加え、ファウンデーションコース修了や国際資格(IB、A-Levelなど)が必要 |
進学準備コース | 不要 | ファウンデーションコースやディプロマコースが一般的 |
英語力の証明 | TOEFL iBTまたはIELTSスコアが必要 | TOEFL iBTまたはIELTSスコアが必要 |
その他の要件 | SATやACT(大学による)、エッセイ、推薦状 | パーソナルステートメント、推薦状、履歴書 |
アメリカ式の出願資格と進学ルート
出願資格
アメリカの大学では、日本の高校卒業資格があれば直接出願が可能です。これは日本の教育制度がアメリカの高校卒業資格と同等と認定されているためです。
例: 高校卒業後、TOEFL iBTスコア80点以上とSATスコアを提出してカリフォルニア大学やニューヨーク大学などに出願。
進学準備コースの必要性
不要。ただし、英語力や学業成績が出願要件を満たしていない場合、条件付き入学(Conditional Admission)として、語学学校で英語を学んだ後に本課程へ進むルートもあります。
例: テキサス大学のPathway Programでは、TOEFL 70点未満の学生向けに英語準備プログラムを提供。
イギリス式の出願資格と進学ルート
出願資格
イギリスの大学は日本の高校卒業資格だけでは直接出願が難しい場合があります。
多くの大学は、A-Levelや国際バカロレア(IB)といった国際資格を求めています。または、ファウンデーションコースを修了することが一般的です。
例: オックスフォード大学では、A-Level 3科目(A*AA)またはIB総得点38以上が必要。
進学準備コースの活用
ファウンデーションコースは、英語力と学術的スキルを補完するための1年間のプログラムです。
このコースを修了することで、イギリス式の教育基準を満たし、大学進学への道が開けます。
例: ロンドン大学キングスカレッジのファウンデーションコースでは、TOEFL iBT 70点以上が入学要件。
国際資格を活用した直接出願について
国際的に認められている教育カリキュラムを修了し、資格を取得している場合は直接出願が可能です。
「国際バカロレア(International Baccalaureate: IB)」と「ケンブリッジ国際カリキュラム(Cambridge International Education)」は、国際的に広く通用する大学出願資格として知られています。
国際資格 | 概要 |
---|---|
国際バカロレア (IB) | スイスの国際教育プログラム。幅広い教科を履修し、IBディプロマ (IBDP) を取得。英語圏以外の国でも出願資格として認められる場合が多いです。 |
ケンブリッジ国際カリキュラム(A-Level) | イギリスの高校生向け教育カリキュラム。特にイギリスやオーストラリアの大学で広く利用されています。一部の大学では特定の科目の成績が必須です。 |
APプログラム | アメリカの高校生向け大学レベルの科目。出願資格だけでなく単位認定の際にも有利になります。 |
この他、国際バカロレアやケンブリッジ国際カリキュラムに並ぶ海外の大学出願資格として認められるものに「APプログラム (Avanced Placement)」があります。
これはアメリカの非営利団体College Boardが開発したもので、高校在学中に大学レベルの科目を履修することができるカリキュラムのこと。
複数科目を積み上げることによって出願資格として認める大学や入学後の履修単位として認定する大学もあります。
海外大学の入試条件と受験方法
出願に必要な書類や準備内容は多岐にわたり、大学の入学審査において大きな影響を与えるため、事前にしっかりと準備を整える必要があります。
入試の必要書類(成績、英語力、課外活動)
学業成績
成績証明書: 高校の学業成績は、海外大学進学における重要な審査基準です。GPAを重視する大学も多いため、早い段階から高い成績を維持することが求められます。
標準化テスト(SAT/ACT):アメリカの大学では、SATやACTのスコアが必要となる場合があります。特に名門大学では高得点が求められることが多いですが、一部の大学ではこれらのスコア提出を任意(Test-Optional)としている場合もあります。
推薦状: 高校の教師や指導者からの推薦状は、学業や人間性を評価する重要な書類です。具体的なエピソードを交えた推薦状を依頼しましょう。
表彰・特別な実績: 学校内外での表彰やコンテストの受賞歴もプラス評価につながります。特に、学問やリーダーシップ、社会貢献活動などでの表彰がある場合は、出願書類に詳細を記載し、推薦状に言及してもらうと効果的です。
TOEFL iBTまたはIELTS: ほとんどの大学で英語力証明として必須です。一般的な目標スコアは以下の通りです。 英語学習の準備: 試験対策だけでなく、エッセイやインタビューで使える表現力を磨くことも重要です。 内容: アメリカやカナダの大学では、課外活動(ボランティア、部活動、インターンシップなど)が審査に含まれる場合があります。 準備方法: 学校外での活動やプロジェクトに積極的に参加し、自分の興味や志望分野に関連する実績を積み重ねましょう。 エッセイ: アメリカの大学では、個性や目標をアピールするエッセイが合否を左右することがあります。学校や専攻に合った具体例を用い、大学で実現したいことを明確に伝えることが重要です。 志望動機書: イギリスやオーストラリアでは、学業目標や将来のキャリアビジョンを記したパーソナルステートメントが求められることがあります。 ここからはさらに具体的に、留学先としておすすめ9ヶ国をピックアップして入学条件を詳しく紹介していきます。 (注)出願に必要となる書類は、各国の大学によって異なります、また海外の大学では学部(専攻コース)ごとに入学要件が定められているため、ご自身が進学を希望する学部の入学要件を確認するようにしてください。各大学の「International Application」「Entry Requirements」というキーワードで検索してみましょう。 日本人の留学先として常に高い人気を誇るアメリカ。 公立・私立を合わせて約3,000の4年制大学があり、ランキングトップクラスの大学も多くあります。 総合大学から単科大学までさまざまなタイプの大学があり、日本にはない学部も多数存在します。 学びの選択肢が多いという点も大きなメリットです。 アメリカ(北米)の大学は日本と同様に4年制です。 1・2年次で一般教養科目を中心に履修し、3・4年次から専攻の専門課程へ進みます。 日本の高校卒業もしくは同等の資格があれば誰でも直接出願が可能です。 出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。 アメリカの大学の入学審査において最終学校の成績は最も重視される項目の1つですが、学業成績以外にも、提出した書類をもとに人間性・個性・将来性・熱意など、さまざまな観点から出願者を評価します。 また、アメリカの各大学には独自の入学基準やポリシーがあります。出願書類から受験生の人物像や適性などを見極め、大学側が「求める人物像」に合致しているか否かなど、総合的な判断で合否を決定します。 カナダは日本人に人気の留学先です。 治安が良く、住みやすい都市ランキングでよく名を連ねる都市が多くあります。日本と同じように四季があり、気候の面でも住みやすい国です。 また、カナダにある大学の多くは公立なので、高い教育水準が保たれているという点もメリットです。 カナダの大学は日本と同様に4年制です。 1・2年次で一般教養科目を中心に履修し、3・4年次から専攻の専門課程へ進みます。 日本の高校卒業もしくは同等の資格があれば誰でも直接出願が可能です。 出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。 カナダの大学は多くがマンモス校であるため、入学要件さえ満たしていれば合格率は比較的高い傾向にあります。 アメリカ同様に書類審査で合否を決めますが、入学審査において人物評価も大きく含まれるアメリカの大学に対して、カナダの大学では高校の成績の審査比重が高めです。 SATやACTといった共通テストのスコアの提出は任意となっている大学がほとんどです。 オックスフォード大学やケンブリッジ大学などの数々の名門大学を有するイギリス。 伝統がある国で、質の高い教育を受けることができます。 ファッションや音楽、スポーツなど、さまざまな分野で世界をけん引する国でもあり、イギリスならではの文化に触れることができるのも大きなメリットです。 イギリスでは5歳から16歳までが義務教育となり、大学進学を目指す場合はさらに2年かけて「A-Level」と呼ばれる共通テストを受験します。 この段階で、大学での授業に必要なアカデミックなスキルや専攻に応じた基礎知識を身につけるため、イギリスの大学は一般教養課程がなく、1年目から専門課程がスタートする3年制のカリキュラムとなっています(専攻コースにより異なる場合あり)。 教育制度の違いから、日本の高校のカリキュラムを修了しただけではイギリスの大学の出願資格を満たさないため、ファウンデーションコース(約1年間)と呼ばれる学士課程の準備コースと受講した後に、大学に入学するルートが一般的です。 ただし、大学が認める入学資格と同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は、高校卒業後に直接出願することが可能です。 出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。 ・高校卒業証明書 イギリス大学の入学審査は、高校での成績と英語力をもとに入学の合否判定が行われます。 大学の学部(専攻コース)ごとに定められた成績や英語力を満たしていることが基本の入学要件。これら要件を満たすことで合格となる可能性が高まることからも、イギリスでは審査の際に学業成績を重点に置いていると言われています。 上述のファウンデーションコース(大学進学準備コース)を経由する場合は、一定の成績を修めてコースを修了することで大学の学士課程へ進学することができます。 ファウンデーションコース入学のための特別な試験はなく、高校の成績証明書と公式の英語テストのスコアを提出して審査されます。 ただし、ファウンデーションコースへの入学にもある程度の英語力が求められるため、英語力が不足している場合は、語学学校等で英語コースを受講することも可能です。 オーストラリアの大学は教育水準が高く、オーストラリアの学位はアメリカやイギリスの学位と同等に世界で認められています。 気候や住みやすさも人気のポイント。移民が多く、多様な文化を体験できるのも特徴です。 オーストラリアの教育システムでは、高校の最終学年までに日本の大学1~2年生にあたる一般教養課程を修了しているため、大学は3年制です(専攻コースにより異なる場合あり)。 大学課程では専門分野の科目のみを履修します。 日本の高校では一般教養課程を履修しないため、大学に出願する前にギャップを埋めるための準備過程である「ファンデーションコース」または「ディプロマコース」※(約1年間)を受講する必要があります。 ただし、大学が認める入学資格と同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は、高校卒業後に直接出願することが可能です。 ※ ディプロマコースとは、大学で専攻する科目の基礎知識など大学1年次と同等の内容を学ぶコースのこと。一定の成績を修めて修了することで単位数を取得でき、取得した単位を大学に移行して大学2年次に編入することが可能(編入する学部や成績によって認められる単位数が変わる場合あり)となります。 ディプロマコースはファンデーションコースと比較し、大学での就学期間を1年ほど短くすることができるというメリットがありますが、入学に必要な高校の成績や英語力が高く設定されています。 また、全ての大学または専攻でディプロマコースが開講されているわけではないため、進路を決める前に大学公式サイトでよく調べることが必要です。 出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。英語力
課外活動
エッセイと志望動機書
国別に異なる出願条件
国・地域 主な入試条件 進学準備のポイント アメリカ – 高校卒業資格
– TOEFL iBT 80点以上またはIELTS 6.0以上
– SATまたはACT(大学による)
– エッセイ・推薦状・課外活動– 総合的な審査を行うため、成績以外にも課外活動やエッセイで個性をアピールすることが重要。 イギリス – 高校卒業資格に加え、ファウンデーションコース修了またはA-Level
– IELTS 6.0以上
– パーソナルステートメント・推薦状– 高校時代から専攻分野に関連する活動や実績を積み、志望動機を明確にすることが大切。 カナダ – 高校卒業資格
– TOEFL iBT 80点以上またはIELTS 6.0以上
– 推薦状・課外活動(大学による)– 学業成績を重視する大学が多いため、高校の成績を安定的に維持することが求められる。 オーストラリア – 高校卒業資格に加え、ファウンデーションコース修了
– TOEFL iBT 79点以上またはIELTS 6.0以上
– 推薦状(大学による)– ファウンデーションコースで大学進学に必要なスキルと英語力を身につけ、良い成績で修了することが目標。 ヨーロッパ各国 – 高校卒業資格に加え、大学1年次修了またはIB/A-Level
– TOEFL iBTまたはIELTSスコア
– 専攻によって追加の要件あり– 専攻分野に応じて事前に必要な知識やスキルを確認し、高校の成績やスコアでそれを証明することが重要。 海外大学進学に人気の9か国の入学条件を解説
9か国の比較表(概要)
国 教育制度 出願資格 特徴 アメリカ 4年制 高校卒業資格 学問分野・大学の選択肢が豊富 カナダ 4年制 高校卒業資格 高い教育水準と多文化環境 イギリス 3年制 高校卒業+準備コース 専門特化型の教育システム オーストラリア 3年制 高校卒業+準備コース 大学間の単位移行が可能 ニュージーランド 3年制 高校卒業+準備コース 自然豊かな教育環境 オランダ 3年制 高校卒業+準備コース 英語で学べるコースが豊富 ドイツ 3年制 高校卒業+共通テスト 学費が無料または安価 フランス 3年制 高校卒業+準備コース 多言語環境と文化体験 アイルランド 3年制 高校卒業+準備コース IT分野の強みと多文化環境 アメリカの大学
■アメリカの教育制度
■出願資格と進学ルート
■入学審査
カナダの大学
■カナダの教育制度
■出願資格と進学ルート
■入学審査
イギリスの大学
■イギリスの教育制度
■出願資格と進学ルート
■入学審査
・成績証明書
・英語能力試験のスコア(TOEFL iBT、IELTSなど)
・パーソナルステイトメント
・推薦状
・履歴書オーストラリアの大学
■オーストラリアの教育制度
■出願資格と進学ルート
■入学審査
オーストラリアの大学の入学審査では、成績や英語能力テストのスコアといった数値を重視する傾向にあるため、最終学歴の成績は合格率を測る重要な目安となります。
日本の高校を卒業したばかりの留学生はファンデーションコースまたはディプロマコースからのスタートとなるため、高校卒業時にまず必要なのはこの準備課程に入学するための成績と英語力。
ファンデーションコースでは、オーストラリアの大学で必要となる英語や学習スキルを習得し、一定の成績を修めてコースを修了することで大学の学士課程へ進学することが可能となります。
ニュージーランドの大学
大学の数は大くありませんが、多くの大学がランキング上位に名を連ねており、質の高い教育を受けることができます。
都市圏と自然が近い環境も魅力で、休日にはアウトドアアクティビティなども楽しむこともできます。
■ニュージーランドの教育制度
ニュージーランドの教育システムはイギリス、オーストラリアと近く、大学は3年制です。一般教養科目を履修する期間はほぼなく、入学後すぐに専攻科目の専門的な学習が始まります。
■出願資格と進学ルート
日本の高校ではニュージーランドの高校と異なり、学部に関連する概論や一般教養、大学の授業に必要となるアカデミックスキルを身につける教育がされていません。
そのため日本の一般的な高校からの留学生は、ファンデーションコースを選択し、学部の本科コースに備えるケースがほとんどとなります。
ただし、大学が認める入学資格と同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は、高校を卒業後に直接出願することが可能です。
■入学審査
出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。
- 高校卒業証明書
- 成績証明書
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBT、IELTSなど)
- パーソナルステイトメントまたは推薦状(大学による)
ニュージーランドでは学力試験等は実査されず、すべて書類審査となります。
ニュージーランドへ留学する際の入学基準は主にアカデミック力(学業)、英語力の2つ。大学や学部によって入学要件は異なりますが、高校での成績を重視する傾向にあります。
アカデミック、英語のいずれかが不足している場合は「Conditional Offer(条件付き入学許可)」が発行され、足りない部分をクリアした時点で合格となる制度もありますが、日本の高校を卒業したばかりの留学生は、ファンデーションコースからのスタートが一般的。
成績面では日本の高校を卒業していればほぼ問題ありませんが、規定の英語力は必須となります。
オランダの大学
オランダは、9割以上の人が英語を話せるというほど英語が浸透している国で、他のヨーロッパ諸国と比較しても英語で学べるコースが豊富に用意されています。
大学の学費は日本とほとんど変わらず、費用面でのメリットも大きい留学先です。
■オランダの教育制度
オランダの教育制度では高校卒業までに大学での基礎科目を履修してしまうため、大学は入学直後から各専攻に分かれて専門分野を学ぶところからスタートする3年制のカリキュラムとなってます(専攻コースにより異なる場合あり)。
■出願資格と進学ルート
日本の高校を卒業後にオランダの大学へ進学する場合、高校までの教育制度のギャップがあるため直接入学は難しく、多くの日本人学生はファンデーションコース(約1年間)から学部課程への進学を目指します。
大学によっては、ファンデーションコースを提供していない大学もあるため、進学を希望する際には大学が定める出願資格(日本の大学1年次修了など)を満たす必要があります。
ただし、大学が認める入学資格と同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は、日本の高校を卒業後に直接出願することが可能です。
■入学審査
出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。
- 高校卒業証明書
- 成績証明書
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBT、IELTSなど)・
- 志望動機書
- 推薦状
- 履歴書
- 数学力証明(該当学部・コースのみ)
- 大学の在学証明書
- 大学1年次の成績証明書
アメリカの大学では人物評価も大きく含まれるのに対して、オランダのほとんどの大学は成績の審査比重が重くなっているため、高校3年間でできるだけ高い成績を維持する必要があります。
また、ほとんどの大学では数学に関する要件が課されているのも特徴です。
ファウンデーションコース(大学進学準備コース)の入学試験は設けられていませんが、誰でも入学できるというわけではなく、準備コースに入学できるだけの要件(成績と英語力)を満たすことが求められます。
※ 日本の大学1年次を修了後に出願する際には、大学での成績を含めた全ての入学要件を満たす必要があります。
ドイツの大学
ドイツ留学の魅力は、なんといってもそのコスパ。
ドイツの大学はほとんどが国公立大学であり、原則として学費が無料です。
公用語はドイツ語ですが、英語だけで学べるコースを提供している大学もあります。他の欧米諸国と比べてると治安が良く、安心して生活できるのもメリットです。
■ドイツの教育制度
ドイツでは、日本の高校にあたるギムナジウム11~12年生の2年間で、日本の大学1年次に学ぶ一般教養課程レベルのカリキュラムを学習します。
そのため、一般的に大学は入学直後から専門科目の履修が始まり、通常3年間で卒業することが可能です(専攻コースにより異なる場合あり)。
小学校4年生以降に通う学校の種類によって将来の進路が大きく変わるドイツの教育制度。
大学進学希望者は、8年または9年制のギムナジウムと呼ばれる学進学準備学校へ進学し、修了時にアビトゥーア (Abitur) と呼ばれる大学進学のための資格試験を受験することで、大学入学申請資格 (HZB) を取得することができます。
■出願資格と進学ルート
日本の高校を卒業後にドイツの大学へ出願する場合、アビトゥーアと同等とされる日本の大学入学共通テストを受験し、一定以上の成績(62 %以上)を修めて、希望する大学に出願する資格があるという証明をする必要があります。
また、大学が認める入学資格と同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は高校を卒業後に直接出願することが可能です。
■入学審査
出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。
- 高校卒業証明書
- 大学入学共通テストの結果
- 成績証明書
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBT、IELTSなど)
- 志望動機書
- 推薦状
- 履歴書
ドイツの大学の入学審査では、大学へ進学するための資格試験Abiturの結果(日本の大学入学共通テストの結果)とその他の書類より合否を決定します。
なお、出願の際に必要となる科目は大学や学部により異なるため、必要科目を確認して受験対策をすることが大切です。
フランスの大学
フランスは教育水準の高さや文化の豊かさ、ヨーロッパの各地域へのアクセスの良さなどを理由に世界中から多くの留学生が集まる国です。
フランス語は世界中の多くの国で話されているため、英仏日のトリリンガルを目指すことで卒業後の選択肢も広がりそうです。
他の英語圏の留学先と比較して学費が低めであることも魅力です。
■フランスの教育制度
高校卒業までに一般教養課程を修了しているフランスの大学では、入学後すぐに専門課程が始まり卒業までの期間は3年間です(専攻コースにより異なる場合あり)。
フランスの高校では、志望する大学の専攻に沿った科目を履修し、卒業時に統一国家試験であるフランスバカロレアを受験します。
フランスバカロレアは国際バカロレア (IB)とは異なり、フランス国内での卒業認定試験のこと。合格することで大学出願の資格を取得できます。
■出願資格と進学ルート
フランスバカロレアと同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は、日本の高校を卒業後に直接出願することが可能です。
一般的な日本の高校を卒業後にフランスの大学への進学を志望する際には、大学が定める出願資格(日本の大学1年次修了など)を満たす必要があります。
一方、大学によってはファンデーションコース経由での入学を許可している場合や、日本の高校卒業資格をフランスバカロレアと同等とみなし直接出願が可能※となる場合があります。詳細は各大学へお問い合わせください。
※ 参考大学:KEDGE Business School
■入学審査
出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。
- 高校卒業証明書
- 成績証明書
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBT、IELTSなど)
- 履歴書
- 推薦状
- フランス語能力試験(大学、学科による)
フランスの大学の合否決定は主に書類審査で行われ、大学によっては面接を課している場合があります。
アイルランドの大学
アイルランドではアイルランド語に加えて英語が公用語になっており、街中では英語が日常的に使用されています。
教育水準が高い国で、ヨーロッパの中も大学の進学率はトップクラスです。
特にITなどの分野において強みを持っており、一流IT企業の拠点も多く有しています。
最近人気を高めている留学先ですが日本からの留学生比率はまだまだ低く、人とは違った留学体験ができるでしょう。
■アイルランドの教育制度
アイルランドの高校では、卒業時点で日本の大学1年次に相当する一般教養課程を修了しているため、1年次から1つの専門分野に特化した勉強を始める大学は3年制です(専攻コースにより異なる場合あり)。
■出願資格と進学ルート
教育制度の違いから、日本の高校を卒業したあとにアイルランドの大学へ進学する場合、多くの日本人留学生は約1年間のファンデーションコースという大学進学準備コースの履修が必要となります。
ただし、大学が認める入学資格と同等の国際資格を取得し要件を満たしている場合は、日本の高校を卒業後に直接出願することが可能です。
■入学審査
出願時に必要となる主な書類は下記のとおりです。
- 高校卒業証明書
- 成績証明書
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBT、IELTSなど)
- 志望動機書
- 推薦状
- 履歴書
一発勝負の学力試験が主流の日本と大きく異なり、アイルランドの大学の入学制度は出願時に願書と共に提出する書類の審査によって入学者を選抜。
希望する大学の学部の専攻コースが定める入学要件を満たすことで合格する可能性が高くなります。
日本の高校を卒業した場合、教育制度の違いからすぐにアイルランドの大学に進学できないため、大学進学準備コース(ファンデーションコース)を受講することが一般的。
まずはこの準備過程に入学するための入学要件(成績と英語力)を満たすことが必要です。必要な英語力は、プログラムや受講期間によって異なりますが、IELTS4.5~5.5とされています。
海外大学進学ルートの選択肢
これまで、国による教育制度の違いにより出願要件や進学ルートなどが異なるということを解説してきました。
最後に、海外の大学に進学する3つのルートをまとめます。
直接進学以外にもさまざまな選択肢がありますので、どの国の大学にどのような方法で進学するのか、早めに計画を立てて対策を進めるようにしましょう!
進学方法 | 対象国 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
高校卒業後に直接進学 | アメリカ、カナダなど | 時間と費用の節約、スムーズに進学可能 | 要件が厳しい |
ファンデーションコースを経由 | イギリス、オーストラリアなど | 現地の教育制度に慣れやすい | 時間・費用が追加で必要 |
コミュニティカレッジから編入 | アメリカ、カナダ | 費用が安く進学の柔軟性が高い | 編入先選びが成績に左右される |
方法① 高校卒業後、直接進学する
最もシンプルなのは、高校卒業後、そのまま海外の大学に出願して進学するルートです。
高校の成績やTOEFLやIELTSのスコアなど、大学が規定する書類を期日までにそろえて手続きをします。
一般的に求められる具体的な書類は上述のとおりですが、細かい条件は大学によって異なりますので、早めにリサーチして準備を進めるようにしましょう。
方法② ファウンデーションコース経由で進学する
2つ目は、大学進学準備コースとも呼ばれるファウンデーションコースを経由するルートです。
高校の成績やTOEFLやIELTSなどのスコアなどの提出が必要ですが、直接入学と比べると基準が低いので、直接入学の要件を満たせない、入学後に備えたい方におすすめです。
約1年間のコースで語学力を磨き、一般教養や大学生活で必要な知識を身につけたうえで、大学の学部に進学することができます。
イギリスやオーストラリアなど、一般的な日本の高校からの直接進学が認められない国でも、このファウンデーションコースを経由することで学部に進学することが可能です。
方法③ コミュニティカレッジ経由で進学する
3つ目は、コミュニティカレッジを経由するルートです。
コミュニティカレッジは2年制の大学で日本でいう短期大学です。入学難易度が低くて費用も抑えられるため、このルートを選択する留学生も多くいます。
日本の大学と同様の単位制度を採用していて、規定の単位が貯まれば短期間で大学に編入可能です。
日本やその他の国で取得した単位も換算できるので、日本の大学に在学している方にとってはメリットが多いルートと言えるでしょう。
海外大学進学に関するよくある質問
高校の成績(GPA)はどのくらい必要ですか?
海外大学では、高校の成績(GPA)が重要な審査基準となります。
一般的には、GPA 3.0以上(5段階評価で4.0以上)が求められることが多いですが、トップ大学では3.5以上が推奨されます。
成績以外の活動が評価されるアメリカの大学では、多少の成績不足を課外活動や推薦状で補える場合もあります。
海外大学に必要な英語スコアはどれくらいですか?
出願時に必要な英語スコアの目安は以下の通りです:
- TOEFL iBT: 一般的な大学で80~90点以上、名門大学では100点以上。
- IELTS: 一般的な大学で6.0~6.5以上、名門大学では7.0以上。
なお、スコアは志望校や学部によって異なるため、出願先の公式サイトで確認することをおすすめします。
課外活動はどの程度重要ですか?
課外活動の重要性は、アメリカやカナダの大学で特に高いです。ボランティア、部活動、インターンシップ、コンペティションなど、自分の興味や志望分野に関連する活動が高評価につながります。
一方で、イギリスやオーストラリアの大学では、学業成績や専攻分野に直結する活動(研究プロジェクト、学術的コンペなど)が重視される傾向にあります。
課外活動が少ない場合でも出願できますか?
課外活動が少なくても、学業成績や英語スコア、エッセイなど他の要素で高い評価を得られる場合、合格の可能性は十分にあります。
特にイギリスやオーストラリアの大学では、課外活動よりも学業成績や英語力が重視されるため、他の要件をしっかりと満たすことが重要です。
最後に
ここまでの説明で、留学する国によって教育制度や出願資格などが大きく異なるということをおわかりいただけたのではないでしょうか。
留学先として人気の国々では、より多くの学生に留学の機会を提供できるよう、教育制度の異なる国からの留学生のための進学ルートを整えています。
まずは国ごとに異なる出願資格や進学できるルートを正しく把握し、自分が学びたいこと、経験したいことを実現できる国または大学を選びましょう。