大学院留学は語学留学や交換留学と違ってハードルが高いと思っていませんか?
大学院留学に関する情報が少ないことは事実ではありますが、きちんと準備をすることで叶えることができます!
この記事では筆者の経験をもとにオランダ大学院に焦点を当て、留学準備の全体の流れから必要書類等手続き面までご紹介します。
この記事の著者:ここ
その後国際協力の世界にのめり込み、国内で社会人経験を積んだ後、2020年よりオランダのエラスムス大学へ留学。エラスムス大学にて国際開発学を学び、現在は海外の日本大使館にて勤務。
目次
海外の大学・大学院の選び方 ~私がオランダの大学院を選んだ理由~
海外の大学・大学院選びのポイント
大学院留学は短くても1年、長くて2年かかります。
周りの友人が仕事に励んでいる中、なんで一人で遠く離れたところで頑張っているんだろう?と、気持ちが揺らいでしまうかもしれません。
わざわざ時間とお金をかけて海外の大学院に進学するので、目的を明確に、モチベーションを高く保ち、しっかり勉強に専念できるようにしましょう。
ロールモデルを見つける
自分が学びたい、あるいは現在働いている分野の専門誌やLinkedin(ビジネス用ソーシャルメディア)を活用して、自分が将来つきたい仕事に従事している人がどの大学で何を専攻していたのかを参考にすると、イメージが膨らんできます。
研究者向きか実践者向きか
大学院の中にはより研究に特化したプログラムと実践者向けに構成されたプログラムがあります。
一つの調べ方として「Research」というワードが多いのか、「Practical」と言いうワードが多いのかで、そのプログラムの傾向が分かるかと思います。
ちなみに私は大学を探すのに、study portalというウェブサイトを使いました。このウェブサイトでは専攻分野ごとに世界中の修士課程を検索することができるのでおすすめです!
誰と学びたいか
特に人文社会系のコースではディスカッションが多く、教授だけでなくクラスメートから学ぶこともたくさんあります。
コースの説明にはどんなバックグラウンドを持つ人に向いているのか、卒業後の進路状況はどうかといった情報が記載されています。これを読めばどんな人と学ぶことになるのかイメージを持つことができると思います。
筆者がオランダのエラスムス大学を選んだ理由
私の場合は国際協力や開発という分野でキャリアを積むにあたって修士号を持っていた方が選択の幅が広がること、学位と共に英語力をつける、という一石二鳥を狙って大学院進学を選びました。
ロールモデルの見つけ方
筆者の場合は「国際協力ジャーナル」や「国際機関人事センター」等が主催するキャリアセミナーに参加し、国際機関や外務省、JICA、NGOにて働く人がどんなキャリアを積んで今のポジションに着いたのかを研究しました。
例えば、調べてみると多くの人がイギリスのSussex大学やEast Anglia大学の開発学部で教育開発や開発経済を学んでいたことが分かりました。一方で、開発学にこだわらず、教育、経済といった分野を専門的に学ぶべく、それぞれの分野で有名な大学で修士号を取得し、国際協力の分野で活躍している人もいました。
筆者の場合は「開発とは?」という初歩からのスタートだったので、「開発学部」のある大学を探し、その中でも「子供の安全保障」や「教育開発」を学ぶことができる大学を絞り、最終的にイギリスのEast Anglia大学とオランダのErasmus大学を受験しました。
研究者向きか実践者向きかを考える
大学選びの過程では研究者向きか実践者向きか?という点も着目しました。
具体的に筆者の専門分野である開発学で言えば、研究思考の大学は、「今起きている開発課題はなぜ起きているのか?そもそもなぜ、それが課題なのか」を理論に基づいて考えていくという哲学的な側面も持ち合わせていました。
この考え方は現在仕事に取り組む中でも社会課題がなぜ起きているのか、何が問題なのかを紐解いていく上で活かされています。
一方で、私の大学は「どう解決していくのか?」という問いには答えてくれませんでした。
例えばイギリスのManchester大学開発学部ではプロポーザルの書き方やプロジェクトマネジメントについて学ぶコースがあったりと実務で使うようなテクニックを学ぶことができるため、具体的に業務で使うであろう知識やテクニックを身に着けたい場合はより実践的な大学が向いていると思います。
誰と学ぶかを考える
筆者の場合は幸い出願したEast Anglia大学とErasmus大学どちらも合格することができ、最後までどちらに進学するか迷いましたが、誰と学ぶか?が決め手となりました。
オランダの多様性のおかげか、オランダのErasmus大学は留学生が特に多く、特に開発学部ではいわゆる開発途上国といわれる国からの国費留学生が7割以上でした。
ディスカッションでは実際に紛争を経験したクラスメイトや、国連機関にてローカルスタッフとして働く人のローカルスタッフならではの経験談を聞くことができ、そんな経験豊富なクラスメイトと教授のディスカッションは大変面白く、論文を読むだけでは得られない視野を身につけることができました。
East Anglia大学の開発学部は毎年大学ランキングでも上位に入る程の人気校で定評ですが、日本人をはじめ、中国や韓国の学生が多く、また開発途上国のエリート層の学生が多いと聞き、より多様な考え方に触れたいと思った私は最終的に学生の多様性に定評のあるEramus大学に決めました。
筆者のケースはあくまで一例であり、何を何のために学ぶのか、目的は人それぞれだと思いますので、目的を明確化し、大学選びを進めるとスムーズに選定できると思います。
非英語圏のオランダ大学院へ留学する魅力
留学と言うと、一般的には英語圏を視野に入れると思いますが、非英語圏の国であっても英語で開講している修士課程はたくさんあります。
その中でもこの記事ではオランダに焦点を当て、オランダ留学の魅力を紹介していきます。
移民が多く外国人に寛容
オランダでは他の国にルーツを持つ人や留学生が多く、色んな人を見かけます。
特に首都のアムステルダムではオランダ語よりも英語を耳にすることが多いくらい国際色豊かで、外国人に対しても優しいです。
カフェや公共交通機関もオランダ語と英語表記であることが多く快適に生活することができます。
筆者の場合は前項でも記載しましたが、イギリスの大学と迷っていました。
しかし、最終的にオランダのリベラルな側面、例えばLGBTQフレンドリーであったり、アフリカやアジアにルーツを持つ人に対しても分け隔てなく差別が少ない点もオランダを選ぶ一つの理由となりました。
英語が第二言語のため非ネイティブの引け目を感じにくい
オランダ人は非英語圏の中で最も英語が上手な人として知られています。
しかし、そんな彼らも英語ネイティブではなく、頑張って勉強した経験があるため、どんなアクセントでも優しく聞いてくれ、英語に対するコンプレックスを感じにくいと思いました。
また、アクセントがあまりないので、聞き取りやすいのが特徴です。
大学院教育の質が高い
オランダの高等教育は専門職大学と研究大学に分かれます。日本の4年制大学を卒業後に修士号を取得するために大学院進学を検討している人であれば、ほとんどの場合が後者の研究大学を選ぶことになります。
余談ですが、日本の大学の看護学部や教育学部にあたるものは専門職大学にあたり、看護師、教師になりたい人はこちらへ進みます。一方で学問的な研究を深めたい人は後者の研究大学へ進学します。
よって研究に対する意欲が強く、また研究大学へ入学するには一定の成績を高校で修める必要があることから、必然と大学に通う学生の学力も高いです。実際に世界の大学ランキングでオランダの主要大学の7校が100位以内にランクインしています(出典:Times Higher Education)。
オランダの有名大学と学費の目安
オランダの代表的な大学
総合大学で特に文系科目で有名なのはアムステルダム大学、ユトレヒト大学、一方で理系ではデルフト工科大学、アイントフォーヘン大学です。
繰り返しになりますが、オランダの大学はどれも安定してレベルが高いため、オランダ人はあまり大学間のランキングを気にしておらず、家からの通いやすさや研究分野で選んでいます。自分が学びたいコースや教授を中心に選びましょう。
アムステルダム大学
首都にあるアムステルダム大学は社会学に強い大学で大学ランキングにおいてもオランダで一番評価が高い大学です(学部によっては多少の順位の変動あり)。
欧州のエリートネットワークであるヨーロッパ研究大学連盟の一員でもあり、人文科学分野の研究で一目をおかれる存在です。
ユトレヒト大学
1636年に設立された歴史ある大学で、文系の学部に加えて、物理学やコンピュータ・サイエンス等を含む科学系の分野でも高評価を得ており、ノーベル物理学や天文学受賞者を何人も輩出している伝統ある大学です。
デルフト工科大学
科学技術分野において毎年、大学ランキング20位前後に付けている工科大学で、宇宙工学や応用科学等科学技術分野に特化した大学で、医療家電で有名なメーカー、Philipsの創業者の母校でもあります。
科学技術分野においてはこの他Eindhoven(アイントホーフェン)工科大学もデルフト工科大学と並んで評価の高い大学です。
ライデン大学
ライデン大学はオランダ最古の大学で1575年に設立されました。シーボルトが研究していた大学でもあり、世界で最初に日本学科が設置されるなど、日本とゆかりのある大学です。文科系の科目が有名で文化人類学などユニークな学問が学べるのも特徴です。
オランダ大学院の学費・生活費の目安
オランダ大学院の学費は専攻分野や期間によってことなりますが、15,000~19,000ユーロほどになります。
大学によっては入学の3か月前までに学費を振り込む人は少し減額されたりと様々な奨学金制度を設けています。早めに確認して申し込める奨学金は積極的に申し込むことをおススメします。
筆者の場合はこの他、学生保険代に年間800ユーロ程度かかった他、月々の生活費は家賃を含めて1200ユーロかかりました。
生活費は物件や街によってかなり変わってきますので、大学選びの際は学生寮の有無も確認すると良いでしょう。
オランダ大学院の受験難易度や入学条件
オランダ大学院受験の難易度
さて、ここからは具体的に私が留学した時の準備です。
オランダのみならず、海外の大学院の出願難易度は、一般的にその出願要件や必要な英語力のスコア等から判断します。
次項でも触れていますが、まずは大学院の出願要件を確認することがスタートです。
現時点の英語力にもよりますが、英語スコアの準備に半年〜1年以上かかるケースもあり、一般的な日本人にとっては試験対策が一番時間がかかるポイントになります。
また、英語スコアの他に、エッセイや推薦状が必要となってくるため、上司や大学教授への依頼や説得力のあるストーリ作りなどもハードルとなるでしょう。
具体的な準備を始める前は難しいかと思うかもしれませんが、まずは英語試験対策からスタートし、1つ1つの要件をクリアしていくことで、確実に大学院留学は近くなります。
TOEFL/IELTS等の英語スコアの確認
英語スコアにおいては、ほとんどの大学がIELTS6.5点以上、もしくはTOEFLで同等のスコアの提出を求められます。
一方でアムステルダム大学等一部の大学ではIELTS7.0を求められます。
特にIELTSは自分で文章を書いたり、面接でも長時間、論理的に話す必要があり、TOEIC等の選択式テストとは異なります。
筆者の場合はゼロからのスタートで、仕事と並行して準備をしていたので、出願の二年前からIELTS対策に取り組み始めました。
出願スケジュールの確認
試験は書類審査であることがほとんどです。入学前年の秋頃から募集がかかり、5月頃を締め切りとしています。
早い方が良いかどうかは大学のキャパシティにもよりますが、それよりも近年オランダでは住宅が不足しており、家探しにとても時間がかかることから、早めの出願をお勧めします。
出願の際には必ず応募要件を確認しましょう。
もし大学院で学ぶことと大学で学んだことに関連性がなければ受験資格を満たしていないとみなされるかもしれません。
関連がなくても関連する社会人経験があればそれで良しとするところもあるので、前もって学士での専攻分野が大学院入学の要件を満たしているかどうかアドミッションオフィスに確認しましょう。
エッセイ、推薦状の準備
学部卒業後すぐに留学する人であれば、何を研究してきて、志望大学で何を勉強したいのかを中心に志望動機で述べます。
社会人であれば学部時代の研究領域、社会人経験と大学院での研究に関連性があれば、それも時系列に並べると良いでしょう。
必ず大学・学部名を記載し、何を達成したいのか、コースの内容に沿ったものを作成しましょう。筆者はA4に1ページにまとめましたが2ページ書いたという人もいました。
推薦書は1通~3通です。筆者の場合は3通必要だったので、大学のゼミの教授、前職の上司2名に書いてもらいました。
出願専用のウェブサイトにPDFでアップロードすることになりますが、それぞれ必ず直筆のサインを入れてもらい、可能であれば大学や会社のロゴを入れてもらいましょう。
筆者の場合は推薦書を依頼する人の手間にならないよう、自分で作成した案文を推薦者に送り、必要に応じて加筆修正してもらうようにしました。
推薦書には日本人特有の謙虚さは不要で、自分が達成してきたことを謙遜せず、しっかりアピールすることをお勧めします。
また、可能であれば推薦書であっても他の大学との使いまわしするのではなく、文中で出願先の大学名やコース名にふれることにより、その大学への志望度を印象づけることができます。
留学エージェントについて
筆者はイギリス留学も視野に入れていたため、イギリス留学をサポートしてくれるエージェントに登録していました。
留学フェアや志望動機・推薦書の書き方等指導してくれ、また出願までのスケジュールも管理してくれたので、とても助かりました。
ちなみに筆者はbeoという大学・大学院留学のサポートを得意としているエージェントにお世話になりました。
ただ、オランダの大学出願には対応しておらず、出願手続きは全て自分で行うため、英語に自信がある友達に一緒に確認してもらいながら出願すると安心かもしれません。不明な点があれば直接大学に問い合わせると、丁寧に対応してくれるところがほとんどです。
筆者の場合は先にエージェントのカウンセラーの方と一緒にイギリスの大学への出願をすることで、流れをつかんだ後にオランダの大学へ出願しました。
ヨーロッパという土地柄か、出願方法はよく似ていたので困ることはありませんでしたが、英語が得意な友達と一緒に確認しつつ、分からないところがあればアドミニストレーションの担当者にZoomで面談を依頼し、疑問を解決しました。
大学院への出願から合格発表までの流れ
専用ページで必要書類をアップロード
ほとんどの大学がstudielinkというシステムにアカウントを作成して、個人情報、経歴等を入力していき、出願に必要な書類をアップロードしていく、という流れになります。
結果発表までの日数について
出願から結果発表までは数週間〜数ヶ月かかります。
年末年始等、ホリデーシーズンにかぶってしまうと全てがスローペースになるので、前もって祝日を確認しつつ、早めに提出しましょう。
筆者はメールにて合格の通知を受け取りました。
Conditional Offer (条件付き合格)について
合格にはUnconditional Offer(無条件合格)とConditional Offer (条件付き合格)があります。
前者はもちろん合格なので手放して喜んで大丈夫です。
後者は言葉通りconditionが課せられており、そのconditionを達成すれば合格になります。
筆者の場合は出願時にIELTSのスコア取得をしていなかったので、期限(出願期限であることが多い)までに提出すれば入学を許可します、という主旨の通知を受け取りました。
オランダ大学院合格後の手続きについて
部屋探し
前述しましたが、現在オランダは物件不足に陥っており、筆者が滞在している間にもたくさんの留学生の方が賃貸物件が見つからず、Airbnbに数か月仮滞在せざるを得ない状況でした。
オランダではオランダに在住する人に社会保障番号が割り当てられており、これがないと医療をはじめ、様々な公共サービスや補助を受けることができず、また滞在許可証も受け取ることができません。
この社会保障番号は賃貸契約書を元に居住する市役所にて住民登録をすることで初めて発行できますので、物件探しの際は必ず、住居登録可能(registration)な物件を探しましょう。
なお、オランダでは学生寮の他普通のアパートに複数名でシェア(キッチン・トイレ)することが多く、家賃は350~600ユーロ程度(街による)が学生の相場です。
近年では住宅難に付け込んだ詐欺も多いので、家探しの際は不用意に個人情報を提供したり、不審なお金の要求には十分注意してください。
滞在許可について
滞在許可については大学が学生の代わりに申請をします。
そのために必要な情報を大学指定のウェブシステムから登録していき、最後に大学に学費・生活費等(1年分)を振り込むことでそれを担保とし、大学が最終的に申請をします。
滞在許可の承認は大学からメールで通知されるので、そのレターと家の契約書を持って市役所にて住所登録をします(電話番号も必要)。
住所登録完了後、移民局にて指紋の提出をすると、数週間後に滞在許可証(ID)が発行されるので取りに行き、完了となります。
学費と生活費の送金
前述の通り、学費と1年分の生活費は大学に送金し、オランダで銀行口座を開設後に1年分の生活費が大学から送金されるというシステムでした。
ただし、オランダで銀行口座を開くには滞在許可証や住民登録等が必要な場合があり、口座開設までに時間がかかることから、日本の口座からキャッシングできるようにキャッシングカードを作る、現金を少し多めに持っていくなど準備をしておくとスムーズに生活がはじめられます。
まとめ
本記事では大学院準備について時系列にまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
こうしてみるとなんだか大変で難しいことのようにも見えるかもしれませんが、半年かけて一つずつ順序をおって進めていけば誰でも必ず留学することができます。
たくさんの選択肢があり、コスト面、時間の面でもハードルが高いようにも見えますが、自分の興味のある分野にどっぷりつかって勉強に専念するという時間は一生のうちでも貴重ですし、コストについても奨学金等を視野に入れることで可能性も広がってくると思います。
もう一度勉強しなおしたい、キャリアアップしたい、留学したい!といった思いを秘めているみなさん、思い切って大学院留学という選択肢を検討してみませんか?