IELTS(Academic)のライティングは、他の3技能と比べて、特に難易度が高いことが知られています。
アカデミックな世界で通用するような英文を書く力が求められているのが理由です。
今回は、IELTSのライティングで7.5を獲得した筆者が、主にライティングのバンドが5から6で伸び悩んでいる方に向けて、ライティング・Task1の勉強法・対策法を紹介していきます。
この記事の著者:Tani
日本の高校から海外に2年間留学し、アメリカの大学受験を経験。IELTS Academic8.0、SAT1480点。2022年秋より、全米トップ5のリベラルアーツカレッジに進学。
目次
IELTSライティング タスク1の概要
IELTSのタスク1は、以下のような内容となっています。与えられた図表を分かりやすく英文で説明する力が求められます。
さらに長いエッセイを書く必要のあるタスク2と比べるとやや難易度は低くなっており、配点もタスク2の半分となっています。
- 内容:グラフや図表の描写
- 文字数:150字以上
- 時間:20分
タスク1の問題例
タスク1では、折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、表、ダイアグラム、地図の6種類の中から1つ、もしくは2つ以上の組み合わせが出題されます。
与えられたグラフの情報を要約し、説明するのがタスク1の内容です。
棒グラフ | 棒グラフで与えられた複数のデータを比較します。 年度ごとの変化を観測する時系列データ、または異なるカテゴリのデータを比較する場合があります。 |
円グラフ | 円グラフで与えられたデータを比較します。 基本的には何かの内訳のデータ(エネルギー消費量の内訳など)で、異なる地点や年度に取られた複数のデータを比較します。 |
折れ線グラフ | 折れ線グラフで与えられたデータを描写します。 多くの場合は時系列データで、時間と値の関係を明らかにする必要があります。複数の折れ線が与えられるケースがほとんどです。 |
表 | 表で与えられたデータを比較します。 複数の列・行があるため、こちらも複雑なデータを分かりやすく説明する力が求められます。 |
ダイアグラム | ダイアグラムでは、何かを製造する工程を説明するケースがほとんどです。 例えば石油の製造過程のダイアグラムなど。何かを比較しなければいけないことはまれで、基本的には順番通りに1つ目の工程、2つ目の工程、3つ目の工程…とまとめていきます。 |
地図 | 近年では地図の出題も見られます。多くの場合、2枚程度の地図が与えられて、過去の地図と現在の地図の比較、または現在の地図と将来の地図の比較をします。 地図は地域全体を含んだものであるときもあれば、学校の整備計画など、狭い範囲の地図が使われることもあります。グラフや表などとは少し異なる表現方法が求められます。 |
TASK1高得点のために重要なこと
IELTSのライティングで高得点を獲得するためには、自分がいかに英語での作文に精通しているのかを示す必要があります。
それは結局のところは、どれだけ語彙や文法に多様性があり、場に即した適切な、かつ複雑なものを使うことができるのか、ということです。
そのためのポイントは、文章全体の中での総合的な「情報量」を多くすること。
「情報量」とは、文字通り文章の持つ情報量ですが、ライティングの文脈では「試験官へのアピールの質と量」です。
つまり、語彙と文法の高度さと豊富さ、そして適切な量のデータを抽出し、適切な方法で描写することができる、ということを試験官にアピールすることができる文章を書くことが大切になります。
例えば、日本とイギリスの失業率の比較に関する問題を想定してみましょう。情報量の低い文章とは、以下のような表現を繰り返すことです。
よくある例文に見えますが、こういった文章は情報量が少なく、試験官へのアピールが皆無です。
何かアカデミックな語彙を使っているわけでもなければ、複雑な構文を使っているわけでもありません。
ただただデータを羅列しているだけの文章と言ってよく、一文だけならまだしも、このような文章を何回も続けて使用するのはおすすめできません
それに対して、より情報量の多い文章とは、以下のような文章を指します。
上の文章ではまずデータの参照元に「According to」というフレーズを使って言及したうえで、単にbe動詞を使ってデータを描写するのではなく「Exceed」という動詞を使っています。
それに対してさらに後方から関係代名詞のWhichと比較級を使って、日本のデータとの比較をしています。
つまり、この一文だけでも
- According to というフレーズを正しく使えること
- Exceedという動詞を使ってデータを正確に描写できること
- whichを使って英文にさらに詳しい説明を加えられること
- 比較級を使ってデータの比較ができること
をアピールできています。
もちろん闇雲に情報量を増やし続けることがプラスになるわけではありませんが、文章に新たな要素を追加していくことで、情報量は増やせます。
例えば単に9%というのではなく、approximately 9% といえば、それだけで高度なボキャブラリーがあることをアピールできます。
こういった回りくどい表現は実際の文章ではあまり好まれませんし、IELTSのライティングであってもやりすぎは禁物です。
ただし、よく考えてみると多くのアカデミックな文章はこのような体裁であるというのも事実。
IELTSでも、如何に自分が自然に英文を組み立てられるのかを示すために、まずはシンプルな、情報量のない文章からは脱却していく必要があります。
IELTSライティング タスク1のテンプレート
6種類も図表があると少し難しく感じてしまいますが、実際には書かなければいけないことは絞られています。
全体の構成
TASK 1 は大きく分けると以下の4つになります。
|
導入文は、図表が何を表しているかを端的に説明する文章です。導入文を一から作るのは大変なので。問題文を少しアレンジして作るのがおすすめです。
それに対してボディ(ボディ1とボディ2)では、必ずしも与えられたすべてのデータを網羅しなければいけないというわけではありません。
重要な情報を抜き出して、分かりやすい「比較」をするのがおすすめです。
サンプル例題
例えば「現在のエネルギー消費量内訳」と「過去のエネルギー消費量内訳」を比べた円グラフが出題されたのであれば、
- 現在と過去を比較して何が増えたのか
- 何が減ったのか
- 何が変わっていないのか
など、なるべくシンプルに2つのデータを比較することを目指します。
例として、有名なIELTS対策サイト(https://www.english-exam.org/)で公開されているサンプル問題の1つを見てみましょう。
Summarise the information by selecting and reporting the main features and make comparisons where relevant.
上の例題では、4か国からギリシャへの観光客のレジャー活動についてのグラフが添付されています。与えられたタスクは、棒グラフの内容を完全に説明することです。
導入文
導入文を一文か二文、エッセイの最初に置き、「データが何を示しているのか」を端的に説明します。導入文を書くにあたって手助けになるのが、問題文です。
問題文:The chart shows the average number of hours each day that Chinese, American, Turkish and Brazilian tourists spent doing leisure activities while on holiday in Greece in August 2019.
この問題文を直接コピー・ペーストするのは、もちろん減点対象。それぞれの表現を少しずつ変えることで、オリジナリティのある導入文になります。
また、問題文をアレンジしただけでは物足りないと感じた場合は、もう少し詳しい情報を付け加えることもできます。
導入文の作り方の例
変更前(問題文のまま) | 変更後 |
The chart shows… | The bar chart illustrates |
The average number of hours each day that Chinese, American, Turkish and Brazilian tourists spent doing leisure activities | how many hours tourists from four different locations, China, the United States, Turkey, and Brazil, spent on various leisure activities |
(追加)The activities include going to the beach, reading books, and visiting tourist attractions |
最終的にはこのような導入文ができあがります。最大で50字程度となり、丁度よい長さです。
The bar chart illustrates how many hours tourists from four different locations, China, the United States, Turkey, and Brazil, spent on various leisure activities while on holiday in Greece in August 2019. The activities include going to the beach, reading books, and visiting tourist attractions.
導入文を作る時は、先ほど触れたように、「情報量」を意識することが大切です。
どのような図表を問題としているのか、いつのデータなのか、どこのデータなのか、などの重要な情報について触れ、そのために学術的な文章において適切な語彙と文法を用います。
上の導入文では、例えば最初の一文を見ただけでも、受験生がしっかりと問題文の内容を別の表現で言い換えられていることが伝わり、それだけでも試験官に良い印象を与えられるでしょう。
ボディ
導入文が書きあがったら、次は早速データを描写していきます。
ただただ特徴を羅列していくだけではいけないので、先ほど少し触れたように、どんなデータであっても、分かりやすく「比較」をしていくのがおすすめです。
これは、書く内容が分かりやすいのももちろんですが、それ以上にただただデータを羅列するよりも意味のある言及ができる点、そして比較をしていく中で様々な構文を用いることができる点、が大きいです。
比較をするうえで最も分かりやすいのは、「時間の変化」や「場所の変化」など。
2000年のデータと2010年のデータの比較であったり、日本のデータとアメリカのデータの比較などは、簡単に思いつくでしょう。
仮に時間や場所の分類がそもそもなかったり、あまりそれぞれで大きな違いが見られなかったりして、時間や場所の比較が上手くいかないようなケースでも、ほとんどの場合はうまい比較のポイントを探すことができます。
注目すべきは、英語で「Anomaly」と呼ばれるような、例外的に大きかったり、小さかったりするデータ。
もっと簡単に言えば、1対1の比較ができないような場合であっても、データ①として全体的な傾向に注目し、データ②としてそれに反する傾向(例外)に言及すれば、どんなデータでも簡単に比較ができてしまいます。
つまり、ボディの基本的な構造はこんな感じになります。
- ボディ1:データ①+例(50~100字)
- ボディ2:データ①と正反対のデータ②+例(50~100字)
その中でも、具体的には以下の3つのボディパラグラフの書き方について考えることができ、最も情報量が増やせそうなものを選びます(情報量=文章量ではないことに注意)。
ボディ1:時間1(例:XX年のデータについて)
ボディ2:時間2(例:YY年のデータについて)
ボディ1:場所1(例:XX国でのデータについて)
ボディ2:場所2(例:YY国でのデータについて)
ボディ1:傾向1(例:全体的な傾向)
ボディ2:傾向2(例:例外的な傾向)
ここで、例題をもう一度見てみましょう。
データが3×4の12種類あり、場所による上手い比較は難しそうですが、そんな場合でも何か抜き出たデータに注目してあげればよいわけです。
そこでデータを注意深く見てみると、全体に共通の傾向として、visiting placesの時間は少なめであるということが言えそうです(データ①)。
そして、それに対する例外として、At the beachとreading booksが人気のケースもある、という点について言及できます(データ②)。
例としては特に特徴的であるデータ(例えば中国人観光客のReading booksなど)に絞って書き、それ以外については「ほどほど」の描写でOK。
すべての具体的な数字を網羅するというよりも、
- 「同様の傾向がある」
- 「半分少ない」
- 「2倍以上ある」
などの表現を中心に、補足的に実際のデータに言及します。
ボディAの例 | Regardless of their origins, tourists spent the least time on visiting places. Chinese tourists, in particular, only spent one hour on visiting places, while tourists from other surveyed countries showed similar trends between two to three hours. |
ボディBの例 | On the other hand, most time is spent on either going to the beach or reading books. Chinese tourists, for example, spent a total of eight hours reading books, which is five hours longer than the time they spent at the beach. Brazilian tourists, however, are reported to have spent a relatively longer six hours at the beach, which is as twice the time spent on by Chinese tourists. Tourists from the US and Turkey spent a reasonable amount of time both going to the beach and reading books around four to five hours per day. |
ボディAの例文を見てみましょう。まずは一行、全体的な傾向の一つを書きます。
そのうえで、それを裏付ける具体例として中国人観光客の例を具体的な数字とともに挙げ、それ以外の国からの観光客の数字についても軽く触れます。
具体的なデータについては中国人観光客の例ですでに触れられているため、その他の観光客のデータについては “showed similar trends between two to three hours” など、別の表現を使った方が効果的です。
その一方で、ボディBではボディAとは全く正反対のデータに言及します。
ここでも特に著しい中国人観光客の例について具体的な数字とともに言及します。
ここでも、表現力の幅を広げる意味で、’five hours longer than the time they spent at the beach” など、少し内容を付け加えることができます。
結論
結論は必須ではありませんが、あれば文章全体が締まってみえるでしょう。
All in all, tourists from different origins enjoyed different types of leisure activities. |
テンプレートの応用の仕方
テンプレート、というよりここまで紹介してきた大まかな文章の構成は、棒グラフだけでなく、他の様々な図表パターンでも応用可能です。
重要なのは、何か比較対象を見つけること。何を比較したいのかさえ決めてしまえば、あとは簡単です。
それに対して、一部のダイアグラムなど、単一のデータの時系列的な変化をテーマにしている図表の場合は少し工夫が必要です。
例えば何かの工程を説明しているダイアグラムであれば
- 導入文ー手順1ー手順2-手順3-結論
のように、示されている通りの順で書いていくのが自然です(複数の工程を比較している場合を除きます)。
逆に、それ以外のケースであれば基本的には比較を見つける方法で対応可能。時系列的変化を示す折れ線グラフであっても、やはり
- 導入文ー全体的な傾向(右肩上がり?右肩下がり?)ーそれに反する傾向ー結論
といった感じでOK。
地図であれば
- 導入文ー過去/現在の説明ー現在/未来の説明ー結論
など、こちらもきれいに比較の形がとれるはずです。
タスク1で用いることのできる表現
ライティングでは、最終的には「いくら語彙を知っているか」が重要になってきます。
以下は、アカデミックな文章で使われるような適切な語彙の一例です。
同じような日本語の意味を持つ単語であっても、実際のライティングでは何回も同じ単語を続けて使うわけにはいきません(語彙力のなさをアピールしているようなものです)。
棒グラフや円グラフなど、固有の単語については仕方がありませんが、よく使う動詞や副詞については、複数表現を覚えておくのがおすすめです。
そのために、何か一つの語彙を覚えたら、「<語彙> synonyms」と検索を掛けてみるのがおすすめ。
Synonymは同義語という意味なので、例えば「increase synonyms」と調べてみると、このようにずらりとincreaseと似たような意味を持つ単語が出てきます。
このようにして、少しずつ語彙の幅を広げていきます。
導入文で使える表現
棒グラフ | Bar chart |
円グラフ | Pie chart |
折れ線グラフ | Line graph |
表 | Table |
地図 | Map, development plan, future floor plan など |
ダイアグラム | Diagram, flow diagram, process diagram, flow chart, など |
表現する・描写する | Show, illustrate, depict, describe など |
データを描写する表現
増える | Rise, grow, increase など |
減る | Decrease, decline, fall など |
変動する | Fluctuate |
横這いである | Level off |
二倍になる | Double |
三倍になる | Triple |
占める | Account for |
急激に | Rapidly, dramatically, exponentially |
ゆっくりと | Slowly, gradually, steadily |
文章を始める・繋げる表現
○○に関して | In regard to, to regard with, regarding, concerning, with respect to など |
その一方で | On the other hand, in opposition, meanwhile, to the contrary, instead など |
具体的には/例えば | For example, for instance, specifically など |
まとめると | Overall, to conclude, all in all, last but not least など |
IELTSライティング タスク1の勉強法と参考書
表現力アップのため、単語・表現を覚える
ライティングで高得点を取るためには、まず最初に定番の単語や表現を覚えなければなりません。
「○○が増える」「○○が二倍になる」などの表現に慣れるためには、こちらのような、Writing対策のテキストを買うのがおすすめです。
Improve Your IELTS Writing Skills
まったくライティングの基礎がない状態では、データを描写するにあたっての語彙量は限られていますし、単語だけを覚えようとしてもなかなか実際の文章の中で使えるようにはなりません。
ライティングにまだ慣れていないという方は、こういったIELTS対策専用のテキストを一冊購入してみるのがおすすめです。
こちらの「Improve Your IELTS Writing Skills」ではライティングで使える表現を順番に少しづつ学びつつ、実際の文章に対して適切な動詞や副詞を穴埋めしていく形式になっています。
これだけで高得点をすぐに狙うことができるわけではありませんが、ライティングの基礎が全くない状態からある程度のレベルに上げるのを手助けしてくれる、そんなテキストです。
Target Band 7
「Target Band 7」は、IELTS-Blogを運営するSimone先生による参考書です。
長年IELTSを指導してきた経験から、高得点を狙える文章構成・表現やテクニック等も学べる一冊となっています。7.0を目指す人以外にもぜひ取っていただきたいテキストです。
過去問・練習問題を解く
ある程度ライティングの表現に慣れてきたら、次はどんどんとライティングの問題を解いていきましょう。
ライティング用の問題はIELTSの公式過去問が一番のおすすめですが、買いそろえるのは大変。先ほど紹介したようなIELTS対策のWebサイトで紹介されているような問題でもOK。
こちらで取り上げられているようなライティングの問題を自分でどんどん解てみて、それを模範解答と比べて、ということになるわけですが、ここでも自力で全てやるか、添削サービスを用いるかは、悩ましいところ。
なお、筆者はライティングの添削は一切お願いせずに本番を受けました。
自分の解答を見て何度も振り返る、というよりも模範回答を何度も写して手になじませていく、写経のような勉強をしていたのが理由です。
つまり、
- 問題を解く
- 模範解答を見る
- 模範解答を写経する+使えそうな表現をメモして覚える
- 問題を解く(別のジャンルから選ぶ)
を繰り返していきます。
毎回写経をして、使えそうな表現をメモ(というよりも暗記)しているので、回数をこなすごとに自分の書く文章が少しづつ模範解答に近づいていっているのが感じ取れます。
このような勉強法がメインだったのであまり添削の必要性は感じませんでしたが、やはりそれでも文法上の疑問があることはあるでしょう。
そういったときの解決策はいくつかあり、
- シンプルにGoogleで検索する(英語での検索も選択肢)
- 合っているか分からない文章を打ち込んで、ヒットするか調べる
- たくさんヒットしたら合っている可能性大(それぞれのサイトでの使用例も吟味する)
- まったくヒットしなかったら、不自然な用法である可能性大
- HiNative(ネイティブに質問できるサービス)を利用して英語母語話者に質問する
など。もちろんこれらのやり方にはデメリットがあり、いずれにせよIELTSに特化した解決策ではない、ということです。
英作文の経験がある人や、ある程度英語で文章を書くことに慣れている人はこの程度で基本的にはOK。
ただし、ライティングに挑戦するのが全くの初めて、などという方はこれだけでは心細いと思うので、IELTSのライティング専門の添削サービスを利用するのも手です。
まとめ
ライティングのタスク1は、タスク2と比べて配点は低いですが、確実に高スコアを狙っていきたいエリアです。しっかりと準備をして臨みましょう。