私にとって、IELTSというテストは怪物級に手こずったシロモノであり、ネット情報では「TOEFLより簡単」という評価が定着していた為、当初油断し過ぎた結果、攻略まで1年半を要してしまった。
IELTSは日本での歴史が浅く、受験生が本当に有益な情報を手にすることが難しいと感じており、筆者の受験長期化もそれが一因だと思われる。
ネットには信憑性の怪しい情報が飛び交っているのに加え、どこまで知見を蓄えているか怪しい有象無象の受験予備校が「対策講座」を喧伝し受験生を惑わせる。
そのような中で、失敗を繰り返しながらIELTSの森を彷徨い、20数回の受験の中である程度確度の高い情報とノウハウを得るに至ったので、もったいぶらずに全て公開したい。
迷える受験生の一助になり、無駄な時間と金の浪費が少しでも減れば幸いである。
目次
IELTSとは?
私は、MBA受験の為、出願書類の一つとして求められる英語力証明としてこの試験を受験する必要があった。
一般的にはTOEFLのほうがよく知られているが、IELTSはイギリス発祥の為、欧州ではほぼ全ての学校がIELTSのスコアを受け付けているおり、欧州MBAを目指す私はIELTS受験を選択した。
MBAの場合は、一般的にOverall 6.5~7.5が最低限必要。つまり、Overall7.5さえ取れば英語力を原因として受験できない大学は無くなる為、ここが一つの山となる。
このIELTS7.5であるが、IELTS7.5を設定している学校の多くが、TOEFLの要求水準を105~110に設定している為、「このTOEFLの点数をクリアするよりは、まだマシ」という噂が広まったことで、TOEFLからIELTSに”逃げる”受験生が急増しているという状況。
だが、このIELTS7.5も決して簡単ではないことを、受験生諸氏は予め覚悟頂きたい。
» 参考:IELTSはTOEFLより簡単? 難易度比較と違い解説、スコア換算表
私も、TOEFLを2回ほど受験した感覚から、TOEFL 105点を獲得するよりも容易であることは同意するものの、それはTOEFL 105点が難し過ぎるからであって、私のような純ジャパにとってはIELTS7.5も十二分に高い壁なのである。では、IELTSの何が難しいか?
筆者が考えるに、SpeakingとWritingにおける「採点のVolatility」である。
出来たと思った回の点数がひどく悪かったり、逆も沢山ある。
IELTS事務局から採点基準は公開されており、その基準に則って採点されているらしいのだが、正直、その基準に照らして、なぜあの回のスコアが悪いのか/この回のスコアが良いのか、という点が理解不能なのである。
このテストを受け続けた筆者の感覚からすれば、各採点官によってスコアに相当ブレのでるテストである。
どんな採点官でも文句なしに良い点の出せる本当の実力がある人々はさて置き、そうでない一般の受験生はIELTSのこういった「気まぐれさ」と闘わなければならない。
» 参考:IELTSバンドスコア徹底解説 〜英語力レベルと留学への道〜
筆者の受験記録
私は恥ずかしながら、7.5を獲得するまでに合計計21回IELTSを受けている。
最終的なセクションスコアは、L 7.5 R 8.5 W 7.5 S 6.5でTotal 7.5。特に、writingとspeakingに手を焼いてきた・・。ちなみに、勉強開始時点の英語力はTOEIC860点程度。
最速でIELTS7.5を出すために
21回目の7.5はまぐれに過ぎず、甚だ僭越ではあるものの、無駄に豊富な受験経験から以下の示唆は提示できる。
また、Overallの点数は四捨五入の切り上げとなる為、Overall7.5の為には、4科目のAverageで7.25、計29点を取得する必要がある。
ReadingとListening併せて16点以上出す力をつける。
R+Lが16点以上であれば、W+Sで13点を取ればよい。経験上、並みの純JapaneseがW+Sで14点取るのは結構厳しい。上述の「採点の気まぐれ」も手伝い、あまりW+Sの点数に期待すべきでない。
その点、ReadingとListeningは正解/不正解が明確であるため、点数を見込みやすい。
早めに試験日程を抑え、受験回数を確保する。
IELTSの予約は、6~7週間前に一杯になっていることが多い。
試験日5週間前以降は試験キャンセルができない為、幸運にも早々にスコアが出た場合は1~2回無駄銭を払う羽目になるが、スコアを出さなければならない期限が決まっている方にはお薦めだ。
IELTS対策 Reading
Readingについて重要なことは、①速読力をつけること、②IELTS問題形式に慣れること の二つだと考える。
書いてみると余りにありふれたものだが、この二点をどこまで突き詰めてやるか肝心だ。
速読力をつける
ここでいう速読力とは、「一文一文内容を理解しつつも高速で読む」力であり、ザっと読んでザっと理解すると言うことではない。
単語力の増強
ある程度までは単語力=速読力となるため、まずは単語力の養成を最初の一歩としてお勧めしたい。
色々な方が仰っていることだが、有名なTOEFL3800のレベル3迄を全て暗記することで十分と思う。
大量の英文を読み込み、読解スピードを向上させる
英文読解のスピードを妨げるモノの一つに「文構造が掴みづらい」というのが有る。
主語が分からない/この単語は動詞の過去形なのか、それとも前の名詞を修飾する過去分詞なのか分からない/ この現在分詞の主語が分からない、等。
この点については、先ずは基本的な文法事項をしっかり押さえ、どんな複雑な文章が来ても時間をかければ訳せるように、知識の整理をするのが良いと思う。
その上で、その文法知識が自然に高速で出てくるよう英語で書かれた文章をとにかく読みまる。
量を読み込むことによって、文構造や内容について「あたり」つけることが出来るようになり、結果として少ない労力で文構造を把握することが出来るようになるのである。
» 【初心者向け】英語多読のためのおすすめ洋書10選【入門編】
IELTSの形式に慣れる
いくらテスト形式に若干の癖があるとはいえ、一番重要なのは①の速読力をつけることであることは覚えておいて欲しい。
Not Given
Readingを若干難しくさせているのが、文章の内容理解を問う問題で、Yes/Noに加えてNot Givenという選択肢が存在することである。
要は、文章内の情報でYes/Noを言い切れない、というのであればこの選択肢を選ぶ。
どういった場合にこの選択肢になるか、公式問題集等で感触を確かめておくことをお勧めしたい。
原則として、明確な根拠を問題文から引っ張ってくることが出来なければ「Not Given」で間違いない。
時間感覚
経験上、全3パッセージの中では一番最後が難しく、回答し切る為には25~28分ほど必要があった為、第2パッセージ終了時点で32~35分経過になるように心がけた。
難易度は必ずしも第1パッセージ<第2パッセージとは成らないので留意が必要。公式問題集を解き、この辺りの時間感覚を身に着けて頂きたい。
その他
個人的に以下を実践した。
先ず設問をざっと読み、あたりを付けながら問題文を読む。特に有効なのは「各研究者の持論を選択せよ」といったような問題で、問題文に研究者の名前が出てくるたびに鉛筆で○を付けたりとか。
問題文を読み進めながら設問を同時に解いく。イメージ的には、先ず1~2パラを読んで、設問の中で慎重に回答できるものがないか探し、あれば回答する。
» 34日でIELTSリーディングを5.5から7.5に上げた勉強方法
IELTS対策 Listening
Listeningについて、私は元来非常に不得意であった。耳が慣れてくる迄に一定の時間を要する為、期限が決まっている方は早めに対応頂きたい。
IELTSのListeningで高得点を取るには、以下要素を満たす必要がある。
- 音が聞き取れていること
- 聞き取れた音を英語として認識し、意味を取れること
- 聞き取れない部分について、脳内で情報を補完し意味をとれること
- IELTSのTipsを知り対応出来ること
①音が聞き取れているか
まずは、言語としてではなく音として確りと聞き取れているか。「発音出来ない音は聞き取れない」と良く言われるが、相当部分これは当たっていると思う。
実際、「英語耳」を使ったり、フィリピンの英会話学校で発音のトレーニング積んだ結果、飛躍的に音を捉えやすくなった。
但し下記②&③とも表裏一体であり、英語の知識が増えるにつれて自然と「聞こえてくる」音も増加する。
②聞き取れた音を英語として認識し、意味を取れること
これは、例え音が聞こえたとしても、Listeningする内容がスクリプト等の文字に起こされた形になった場合に、それを音声と同じ速さで読んで理解できる英語力がなければ聞き取りは叶わない。
従い奇妙に聞こえるが、先ずは一定の速読能力を付ける必要がある。
このの段階のトレーニングとして、シャドウイングが最も効果的であったと感じる。口で追いかけながら理解できるようになるまで、Scientific Americanやofficial問題集を只管にやっていた。
③聞き取れない部分について、脳内で情報を補完し意味をとれること
日本語でもそうだが、我々は実は聞こえていない音を脳内で補完し、聞こえてきた内容の意味を取っている。英語でも同様に、nativeといえども一言一句の全ての音節を聞き取れている訳ではない。
この脳内補完は、ある意味「予測辞書」のようなものだが、これは当該言語に関する豊富な知識を要する。多くの文章に触れ「この文脈ならここの場所に、この単語がはいる筈だ」といった様な処理を瞬時に行っているのである。
夢のない話だが、脳内に大量の英文データベースを作る必要ある為、これも相応の時間を要す。
④IELTSのTipsを知り対応出来ること
私の考えるIELTSのTipsは以下の通り。
- とにかく先読み
先に設問を読んでから問題を聴くのと、そうでないのとでは天地の開きがあるので、必死に先読みすべき。当該部分の問題文が放送されていない時は、常に先読みする。
本件とも関連するが、考えても直ぐわからない問題、聴き逃してしまった問題は、勇気をもって切り捨てるべき。
ここで時間を浪費すると、先読みの時間を削られてしまい、さらに深い傷を負う事請け合いだ。時間を掛けて正答率が上がるわけでも無し。
- スペリング
スペリングは意外に鬼門になってくる、
私は、自分にとって紛らわしい単語/書いてみたら間違えた単語をpick upして書けるように練習することを心がけた。
- 公式問題集をやり込む
Readingの回でも述べたが、IELTSの参考書としてofficial問題集に替わるものはない。音声のスピード/イントネーション/設問の作り方など、当然ながら本番に近い。
筆者は、これらの音声をiphoneで1.4倍速にして聞き、本番で音声がゆっくり感じられるようにした。
上記対策で、当初5.5であったスコアは最大8.0まで伸びた
役立ちTIPS
「ネット上にあまり出回っていない情報(=私が足で集めた情報)」にフォーカスして、有益そうなものをお伝えししたい。
- テストの予約が埋まっていて、どうしても直近でテストを受ける必要あらば韓国で受験すべし
- Writing対策でUK plusに期待し過ぎてはいけない
- Writing Task1の多様化へ対策
- テストの予約が埋まっていて、どうしても直近でテストを受ける必要あらば韓国で受験すべし
アプリケーションの〆切が迫ってるのに、IELTSのサイトを開いたらもうテスト日程空席がない!ヤバい!という状況は誰しも経験すると思う。そこで私は韓国での受験をお勧めしたい。
何故なら、韓国では、テストの申し込み締め切りが「一週間前」かつ「テスト一週間前でも結構席が空いてる」のだ。
日本だと〆切が「五週間前」かつ「激込みで実際は二ヵ月前くらいに申し込まないと空いていない」ので、これは天と地の差。
注意点としては以下の通り。
- 登録には韓国の携帯電話番号が要る。日本で韓国のSIMを買えるのでそれを利用されたし。東京だと大久保や新宿で購入可能。
- speaking試験の日程が、writing試験終了時に発表される。ただ、多くはwriting試験当日か翌日に設定される模様。writing試験は土曜日になることが多いので、金曜日休みをとって三連休にして韓国に行けば十分対応できるだろう。なお、事前に「writing試験当日に設定してくれ」とお願いすればその様になる可能性もある為、予約時にダメ元で事務局に頼んでみる(メールする)のも良いかもしれない。
- 試験は日本と同じく午前8時くらいから始めるので、試験会場近くの宿を手配されたし。
- Writing対策でUK plusに期待し過ぎてはいけない
IELTSの大きな関門の一つが摩訶不思議なwritingだが、ネットで検索すると「UK plus(以下U社)」なる英語学校のwriting通信講座が大人気で評価も高い。
筆者もこれを利用したが、これで「7.0」を取ることは難しい。「6.0」迄なら対応できるかもしれないが、期待し過ぎてはいけない。
少々ネガティブな内容で申し訳ないが、こういった評価を書くこともフェアな競争を維持する為に必要だし、何より必死に勉強している受験生に有益である為記載したい。
- Task achievement/ Task response(問いにどれだけ的確に回答しているか)
- Coherence and cohesion(論理と言葉の繋がりが的確か)
- Lexical resource(語彙が豊富か)
- Grammatical range and accuracy(文法が的確かつ多様か)
の4つであり、各項目で1~9までスコアが付きその平均がwritingのスコアになる。
U社の通信講座も、こちらが提出した答案に対して上記4項目のスコアを付けたうえで返却してくれる。
ここからが問題なのだが、U社からは「何故そのスコアなのか」「具体的にどの箇所をどの様に変えたら、例えば7.5や8を貰えるのか」について解説がない。
質問をしても、要領を得た回答はなく、「早く次の回答を送ってこい」の一点張りであった。
- 公式問題集は中国でまとめ買い
IELTS対策として、全ての方が公式問題集を買われると思うが、日本で買うと一冊6000円くらいして高い。中国であれば一冊1200円くらいで、内容は全く同一である。
筆者はvol.1~vol.9を中国でまとめ買いした。大きな書店であれば大抵置いているので、身近に中国旅行もしくは出張に行かれる方がいれば、是非ついでに買ってきてもらうよう頼んでみても良いかもしれない。
- Writing Task1の多様化へ対策
Wiringは、Task1のグラフ問題でテンプレートを使いやすいので、比較的取り組みやすく、稼ぎ所にしていた方が多いと思うが、昨今問題が多様化してきており、グラフ問題の頻度が下がってきている。
例えば「チーズを製造するプロセス」や「ある土地の10年間の変化」について図を参照して書け、といったものが多く出題され始めた。多くの問題形式に触れ、対策を講じる必要がある。
※この記事は、こちらのブログを参考にしてアレンジしたものになります。