この記事の著者
Masa
京都大学大学院卒。有名進学塾で中学受験の数学講師を約6年務め、多くの受験生を有名進学校に送り込む。不動産ベンチャーで不動産ファイナンスを経験した後、現在、アメリカにてMBA取得中。
目次
日本人にとってのGMAT Math
GMATで700点を超えるために
多くの日本人は、Verbalの点が中々上がらないので、Mathは49点~51点を目指している。特に、700点以上を目指す場合は、よほどのことがない限り、Math50点以上はマストだ。
GMATの受験回数は限られている&GMATの勉強にかけれる時間は限られているので、Mathで安定的に50点以上が取れる状態に早期に持って行き、Verbalが(誤解を恐れずに言うとまぐれでもよいので)良い点が取れるのを待つ、というのがベーシックな戦略になる。
逆に言うと、Verbalで折角良い点を取ったとしても、Mathでコケると、本当につらい。Verbalの点数はブレることが多く、次回の本試験で同じ良い点数が取れるとは限らないからだ。
受験生の多くは、Mathの勉強に割ける時間が圧倒的に少ないが、Mathの点数が安定しない人(=Mathで安定的に49点以上が取れない人)ほど、「まず、Mathを完成させるべし」というのが、GMATで700点を超えるための王道の成功法となる。
問題点
しかし、ここで問題なのは、Mathで安定的に49点以上を取るということは、ある人にとっては、予想以上に簡単ではないことだ。
インターネットでよく見かけるGMAT700点を超えた人のMathスコアは49~51点であり、「Math対策はマスアカを数回やった程度」の人も多い。そのため、「Mathは簡単なんだ」という意識で勉強をおろそかにしてしまう人が多いはずだ。
その結果、Mathの点数が伸び悩み、折角Verbalでそれないの点数が取れても、トータルで高得点を狙うのが難しくなる。
Mathは効率良く、手軽にぱぱっと終わらせたい、と皆思うものだが、そう簡単にはいかないケースもあることを念頭に入れておこう。
特に、「ぱぱっと終わらせる」ことに成功した人ほど、海外MBAに行ける可能性が高まるため、ネット上には「苦労した」人の情報が少ない。
ネット情報の裏には、「苦労して諦めた」人が多数いることにもっと注意を払うべし。そういう人の情報はネットには出てこないのだ。
GREという選択肢
話はそれるが、どうしてもMathができないなら、早々にGREに路線変更するというのもアリだ。
GREのMathはGMATよりも格段に優しくなる。一方で、単語の暗記量が多くなるなど、GREにはGRE特有の難点があるため、どちらが自分に合っているのかの見極めが大事になってくる。
以下の記事が参考になるだろう。
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どっちを受けるべき?GRE、GMAT徹底比較
Mathに時間をかけて対策すべき人、そうでない人
定量的な判断軸
Prepで点数が取れない人
ほとんどMathの対策をせず、又は、マスアカをざっと1周した程度で、Prepで47点・48点が取れる人は、Mathに苦労しない可能性が高い。
逆に、この状態で45点程度しか取れないような人は、Mathに想像以上に苦労する可能性がある。Verbalに本格的に取り組む前に、まずMathに集中するくらいのタイムスケジュールと時間の投資が必要だ。
本番で点数が取れない人
既にGMATの受験経験者で、Mathの点数が伸びていない人は注意が必要。
特に、「Prepはそこそこできる(難しいとは思わないor良い点数が取れる)が、本番では点数が取れない」と思っている人や、良かれと思って友達に「本番はPrepより難しいよ」とアドバイスしている人などは要注意!
本番とPrepはほぼ同じレベルと言って良い。
本番とPrepにレベルの違いを感じるなら、別のところに根本的な点数が上がらない理由があって、その根本原因を見逃している可能性がある。
定性的な判断軸
中学受験の経験
中学受験で難関校に受験経験がある人、小学生の時に塾で算数にがっつり取り組んでいた人は、Mathで高得点を取る可能性が高い。
中学受験の算数の範囲とGMATのMathの範囲は、不等式や絶対値などの中学受験の範囲内の部分は除いて、一致する範囲も多い。また、一致する場合は、中学受験の方がはるかにレベルが高く、中学受験の経験者は数学的に考える訓練が十分できている。
このような受験生は、解き方の引き出しをたくさん持っており、GMATのMathに比較的たやすく順応できる。
理系又は二次試験で数学を受験した人
大学受験で理系だった、又は二次試験で数学を受験した人も比較的、Mathで高得点を取る可能性が高い。
しかし、人によってはもちろん苦労する場合もあるため、自分が苦労する側の人間なのか、そうではないのか、早急に見極める必要がある。
帰国子女
帰国子女者は要注意。アメリカ人がGMATで700点を取るためのMathの目標は47点と聞いており、アメリカ式の数学教育を受けた人にはMathができない人が多数いる。
一方、英語はできるため、Verbalで点数を稼ぐことはできるかもしれない。
小括
GMAT Mathで高得点が取れない6つの原因
点数が取れない理由は、人それぞれ。
自分の場合、どのケースに該当するのか理解することが、高得点を取るための第一歩になる。
よくあるケースを下にまとめてみた。一つづつ見ていこう。
- 戦略・戦術不足
- 英語力不足
- 時間不足
- ケアレスミス
- プレッシャー
- 引き出し不足
戦術・戦略不足
Mathで高得点を取るための戦略・戦術が自分の中できちんと確立されていない。
Verbalで多くの人がやっていることを、Mathではやれていない人が多い。Mathが得意な人は、ひたすら解くだけでも50点くらい取れてしまうため、特別の戦略は必要ないかもしれない。
しかし、数学が苦手なら、闇雲に問題演習をして全て正解を目指すのではなく、自分なりの戦略・戦術を考え抜くべきだ。
例えば、
- あなたは解けない問題に出会ったとき、何分までは考えてOKか自分の基準を持っていますか?
- あなたは目標点を達成するために、何問程度なら前半で間違っても良いなどの基準を持っていますか?
- あなたはミスを減らすために何か工夫をしていますか?
戦略、戦術の立て方については、他の機会に詳しく話したい。
英語力不足
問題文の英語が分からない。
まず、数学用語の英語を知らない場合がある。これはきちんと勉強していないと、そもそも問題文が理解できない。ここでつまずく人はほぼいないはずだが、勉強や用語暗記が甘い人がいる。
また、英語力が低く、問題文が正しく理解できない、読むのに時間がかかってしまうというケースがある。英語力は即効性のある対策がないため、時間をかけて地道な努力が必要だ。ベーシックな読解力の向上は、こちらの記事が参考になるだろう。
例えば、助動詞(couldなど)の使い方で、答えが変わる場合があるので、そういった細かい単語のニュアンスにも注意が必要だ。
時間不足
問題を解く時間が足りない。
Verbal程ではないにせよ、Mathも1問2分弱で問題をどんどん解いていかないといけないので、ハード。本番で分からない問題に出会い、3分4分と時間をかけてしまうと、精神的にも辛い。その後の問題を解く際にも影響が出てくる。
大学受験で言うと、GMATのMathは「センター試験」に近い。問題はそんなに難しくないが、スピーディーにミスなく解くことが求められる。
ここでいう、「難しい」問題とは、1問あたり、1時間や2時間かかる(場合によっては数日・数か月かかる)問題のことで、GMATでは出題されない。
なぜ時間が足りないのか?
少し注意が必要なのは、「時間が足りない」というのは表面的な原因であることが多い。「なぜ自分は時間が足りないのか?」を突き詰めて考える必要がある。
例えば、時間が足りない理由には以下のような原因が考えられる。
- 問題文を読む・理解するのに時間がかかる
- 練習量が足りないので、反射的に手が動かない
- 練習量が足りないので、計算が遅い
- 解き方の引き出しが少ない・使えない・組み合わせれない(⑥で後述)
- 精神的に動揺した際に、問題を解くのとは関係のないことを色々考えてしまっている
- DS(Data Sufficiency)の練習不足。例えば、最後まで答えを出す必要がないのに、出してしまっている
ケアレスミス
ミスなく問題を解けない。
これは、数学が比較的得意な人でも、結構陥りやすいポイントだ。問題はそんなに難しくないが、時間が限られているので、ミスしてしまう。或いは、細かい英語のニュアンスを見逃してしまい、ミスしてしまう、などなど。
「ミスなく問題を解くにはどうすればよいのか」に関して、人によってパターンが違うと思うが、その人に合ったやり方で対策が必要だ。
例えば、時間に余裕がある人は、少しゆっくり目に(落ち着いて)解く、など。しかし、(上述の通り)時間管理は表面的な原因であることが多く、根本的な原因が他にあることが多いため注意が必要だ。
プレッシャー
精神面で平静を保てない。
短い時間で正確に問題を解いていかないため、1問でも分からない問題が出てきてつまずいたり、精神的にダメージを受けてしまい、その後、平常心で問題を解くことができなくなる。
最初の10問でつまずくと、「もう無理なのか?」のような雑念が湧き、後で集中できなくなったりする。特に、①の戦略・戦術がきちんと定まっていないと、本番で迷う。
戦略を立て、わからなかった場合の自分ルールを徹底することで、不必要な雑念を消し、落ち着いて問題に取り組めるようにしよう。
引き出し不足
自分の持っている解き方の引き出しが少ない・使えない。
GMATのMathレベルの問題であれば、どんな問題でも、解き方には王道的なやり方が何パターンか存在する。ここでいう「引き出し」とは、問題の解き方・やり方とほぼ同義だ。
Mathに苦労しない人は、「あ、この問題は、こうやって、こうやったら、答えが出るな」とか「多分、こうやって、こうやったらたら、答えに繋がるヒントなどが出てくるな」みたいなことが、問題を読んだ瞬間、見えてくる。
多くのMathで苦労する人は、この「引き出し」が少ないことが原因で、問題が解けないケースが多い。
また、「引き出し」は持っているが、問題を解く際に、その「引き出し」を使えば解けることに気が付かないこともある。
さらに、難しい問題はいくつかの「引き出し」を組み合わせるため、単発では「引き出し」を使いこなせるが、複数の組み合わせで「引き出し」を使う場合には、頭がフリーズしてしまうケースがある。
なぜ引き出しが使えないのか
[引き出し」がうまく使えない原因は、ある問題を解き、答え合わせをして、解答解説を理解したというサイクルを回した際、具体→抽象のサイクルが回せていないということだ。つまり、その問題の数字を変えた問題程度なら解けるが、解き方について一般化・抽象化できていないため、他の問題について適応できない人が多い。
話はそれるが、前回の「Mathに時間をかけるべきか?」の判断基準で、「中学受験の経験者は、Mathで高得点を取る可能性が高い」と言ったのは、この「引き出し」をたくさん持っていて・適切な場面で使えて・組み合わせることもできる人が、中学受験の経験者には多いからだ。
というのも、小学生の学習指導要領では、「方程式」が入っていないため、中学受験の問題は、「自分の頭で考える」問題がたくさん出題される。
そして、そういう問題をドリル形式で大量に解いているという経験がベースにある。
逆にそういう経験がないまま、「方程式」を習ってしまうと、「答えを一旦、xとおいて、式を立て、機械的に答え(=x)を出す」という「自分の頭で考えない」やり方で問題が解けてしまうため、考えているつもりでも考えていないような人が出てきてしまう。
そういった人は、応用がきかないので、苦労する。
小括
原因・弱点別6つの対策
戦略・戦術不足
Mathで高得点を取るための戦略・戦術が自分の中できちんと確立されていない場合、時間を取って、自分なりの戦略・戦術を立案する必要がある。
例えば、
- そもそも自分は目標点は何点なのか?
- 現状の自分のフェアな実力は何点なのか?
- 目標点と実力のGAPは何点で、どれくらいの「差」があるのか?GAPを埋めるためには、どの程度の正答率が必要なのか?何問程度間違えれるのか?
- そのGAPを埋めるために、どういった自分なりの戦略・戦術が取れるか?
英語力不足
問題文の英語が分からない場合、マスアカや予備校のテキストで数学用語を押さえる必要がある。英語力の養成には時間がかかるので、注意が必要。
ただし、TOEFL/IELTSのReadingやVerbalの勉強と併用が可能なので、Mathの英語読解力を上げるような対策は特段不要と考える。
時間不足
前も話した通り、「時間が足りない」というのは実は表面的な原因であることが多い。「なぜ自分は時間が足りないのか?」を突き詰めて考える必要がある。
時間不足の原因例(再掲)
- 問題文を読む・理解するのに時間がかかる
- 練習量が足りないので、反射的に手が動かない
- 練習量が足りないので、計算が遅い
- 解き方の引き出しが少ない・使えない・組み合わせれない(⑥で後述)
- 精神的に動揺した際に、問題を解くのとは関係のないことを色々考えてしまっている
- DS(Data Sufficiency)の練習不足。例えば、最後まで答えを出す必要がないのに、出してしまっている
ケアレスミス
ミスなく問題を解けないというのも、表面的な原因だ。「なぜ自分はミスをするのか?」を考える必要がある。例えば、以下のような原因が考えられる。根本的な原因を知った上で対策が必要だ。
ケアレスミスの原因例
- 精神面で追い詰められている
- 時間的なプレッシャーがあって、焦る
- 時間的なプレッシャーがあって、乱暴に問題を解いている
- 問題文を正しく理解できていない。例えば、英語の細かいニュアンスを誤読している等
- 計算間違いが多い
- そもそも簡単な問題をミスなく解くことが苦手
プレッシャー
精神面で平静を保てない。
まず、①で自分なりの戦略・戦術を立てることによって、試験中になるべく平静を保てるような環境作りは重要だ。一方で、自分なりの戦略・戦術を立てたとしても、自分の思い通りにいかないことは多々ある。
そういったことがあることを事前に想定しながら、ある程度の「諦めや開き直り」が本番中には必要になってくる。
また、失敗を実際に経験することで、人は少しずつ強くなっていくものである。
例えば、自分の中で「1問あたりにかける時間は、3分」とルールを決めたとする。しかし、いざ本番になって、3分経っても解けない時、「本当に捨ててよいのかと?」必ずと言って良いほど迷いが生じるだろう。
それくらい、「問題を捨てる」という行為を取るのには、勇気が必要だ。
例えば、その問題が最初の5問で起こった場合や、中盤だとしてもそれまでがスムーズに進み、少し余裕がある場合など。「もう1分時間をかけると解けるかも?」と欲も湧いてくる。
正解はないが、そんな場合どうするのか?というのは、想定しきれないし、想定していたとしても、頭でシミュレーションするのと実際に本試験で体験するのは全く異なる。
こういうことは、実際の本番を受けて体験し、そして時には失敗することで、自分なりの学び・気づきを得ることで強くなっていくケースが多い。
引き出し不足
自分の持っている解き方の引き出しが少ない・使えない。
この場合、まず、
- 解き方の引き出しが少ないのか
- 持っているけど使えないのか
- 単発では使えるけど組み合わせれないのか
自分はどのステージにいるのかを認識する必要がある。
その場合も、不等式では引き出しが少ない、図形では引き出しが組み合わせれないなど、分野によってそのステージが異なることが多い。
(1) 引き出しが少ない場合
簡単な問題を題材に、まずはどんな引き出しがあるのかを理解すべき。引き出しについては、マスアカや予備校のテキストに大体網羅されている。その際、必ず手を動かして、自分で解いてみることが大事。答えや解説だけを見て、分かった気にならないこと。
「数学の公式」も引き出しの一つだが、「なぜその公式が成り立つのか」まで理解する。これは、いわゆる数学公式の証明にあたるが、こうやって考え抜くことが数学力の養成に繋がる。Mathで点が取れない人ほど、このステップを省略する傾向にある。
例えば、君は以下の問いに答えることができるだろうか?
- 三角形や台形、平行四辺形の面積の公式は、なぜ成り立つのか説明できますか?
- そもそも、なぜ長方形の面積は、「縦×横」なのでしょうか?
- なぜ多角形(n角形とします)の対角線の数の公式は、「n(n-3)/2」なのでしょうか?
- ピタゴラスの定理(直角三角形の三辺の長さを、a<b<cとしたとき、a^2+b^2=c^2が成り立つ)を証明できますか?
(2) 引き出しが使えない場合
引き出しを理解した後は、簡単な問題をドリル形式で大量に解いて、自分の体に染み込ませることが大事。ここを、「自分の体に染み込ませる」のではなく「暗記」に頼っていると、危険。
「暗記」に頼ると、忘れてしまった場合、途端に問題が解けなくなる。体に染み込ませるまで練習することで、反射的に手が動くようにする必要がある。
また、全ステップで、公式を暗記せずに、公式の証明ができるようになるまで考え抜いていると、例え公式を忘れてしまっていても自分で公式を作り出せるようになっているので、多少時間がかかったとしても問題を解くことができる。
(3) 引き出しが組み合わせれない場合
ここで初めて、応用問題を反復演習する必要が出てくる。ある程度の量をこなすことも重要だが、大事なのは、質と量の掛け算。
ここで言う「質」とは、「答えが出たらそれでOK」ではなく、「一言で言えば、この問題のポイントは何か?」を毎回考え、そのポイントを必ず「言語化」することだ。
「何が理解できていれば、この問題が解けるのか」又は「何が理解できなかったから、この問題が解けなかったのか」を考え抜くことが大事になってくる。
他のアプローチとしては、「自分が先生になった場合、自分のような数学が苦手な人に対してどうやって教えるか?」を考えてみるのも一助になる。
教師の視点から考えることで、単に問題を解くだけでなく、その問題の重要な点が何かまで考えることが可能になる。
できれば、声に出して模擬授業をしてみるとさらに良い。言語に発することで、頭の中であいまいだったことがクリアになる。
「勉強仲間に教え合う」というのも効果がある。やってみると分かるが、分かっているつもりでも、言語化できないことはたくさんある。
単に大量の問題を解いて、〇×をつけるだけ、解説を読んで理解した気になっているだけでは、学びが少なく「引き出し」を使いこなせるようになるのは難しいだろう。
小括
最後に