海外の大学院やMBAプログラムへの進学を目指すとき、多くの人が最初に直面する壁が試験選びである。
「GREとGMAT Focus Edition、どちらを受ければ良いのだろうか?」
「GMATの新形式では、どのスキルが求められるのか?」
「自分の得意分野を活かせる試験はどちらなのか?」
このような疑問は、日本人の大学生や若手社会人の間でも頻繁に聞かれる悩みである。
本記事では、GREとGMATの違いや特徴を詳しく解説し、あなたにとって最適な試験を選ぶ手助けをしていく。
それでは、まずは両試験の基本情報から見ていこう。
GREとGMATとは?基礎情報を押さえよう
海外の大学院やビジネススクールへの進学を目指す際、GREとGMATは避けて通れない重要な試験である。
それぞれの試験には独自の特徴や目的があり、自分の目標や得意分野に合わせて選ぶことが成功への第一歩となる。
GREとは何か
GRE(Graduate Record Examination)は、アメリカやカナダを中心とする大学院(修士・博士課程)への出願で広く利用される試験である。
教育試験サービス(ETS)が運営し、以下の3つのセクションで構成されている。
セクション | 内容 | スコア範囲 |
---|---|---|
Analytical Writing | 2つの作文課題(Issue Task と Argument Task)を通じて論理的思考力と表現力を評価する。 | 0〜6点(0.5点刻み) |
Verbal Reasoning | 読解力、語彙力、批判的思考力を問う問題が出題される。複雑な文章を理解する能力が求められる。 | 130〜170点(1点刻み) |
Quantitative Reasoning | 数学的なリテラシーやデータ解釈能力を問う問題が中心。基礎的な算数、代数、幾何、データ分析が出題される。 | 130〜170点(1点刻み) |
GREは一般的に理工学・社会科学・人文学など幅広い分野の大学院進学希望者を対象とする。
特に、統計学や経済学を専攻する場合にはGREが必須となることが多い。
GMATとは何か?
GMAT(Graduate Management Admission Test)は、主にビジネススクール(MBAプログラム)への出願で利用される試験である。
新形式の「GMAT Focus Edition」は、従来の形式から大幅に変更され、ビジネススキルをより実務的に評価する試験として進化している。
以下は、新形式の試験内容である。
セクション | 内容 | スコア範囲 |
---|---|---|
Quantitative Reasoning | 数学的リテラシーとデータ分析能力を問う。基本的な算数や代数、統計に関する問題が出題される。 | 60〜90点(1点刻み) |
Verbal Reasoning | 英語の読解力、批判的思考力、論理的な推論力を評価。ビジネス文脈での意思決定能力が問われる。 | 60〜90点(1点刻み) |
Data Insights | データセットを解析し、ビジネス上の意思決定を行う能力を評価。複数のデータソースを比較し、結論を導くスキルを測定。 | 60〜90点(1点刻み) |
新形式では、従来のIntegrated Reasoningセクションが新しいData Insightsセクションに統合され、データ解析能力の重要性がさらに強調されている。
GREとGMATの違い
GREとGMATは、それぞれ異なる進学先や学問領域に対応している。以下の表で、その違いを整理した。
項目 | GRE | GMAT(Focus Edition) |
---|---|---|
対象分野 | 文系、理系、社会科学系の大学院全般 | MBAや経営学関連の大学院専用 |
試験目的 | 学問的基礎力の評価 | ビジネス環境での意思決定力と論理的思考力の評価 |
進学先 | 大学院(経済学、統計学、心理学など) | MBAプログラム、ビジネススクール |
試験の難易度の特徴 | 語彙力が非常に重要。数学は中学〜高校レベルが中心 | データ解析力とロジカルシンキングが問われる設問が多い |
受験回数の制限 | 1年間に5回まで。 | 1年間に5回まで。 |
一方で、最近のビジネススクールは、ほとんどGREのスコアを認めるようになってきた。
GREを認めるMBAプログラムはETSのHPで確認できる。
地域別利用傾向
地域によってGREとGMATの利用状況は異なり、受験戦略を立てる際に考慮すべき重要なポイントである。
地域 | GREの受け入れ状況 | GMATの受け入れ状況 |
---|---|---|
北米 | MBAを含む多くのプログラムで受け入れられる | GMATも広く利用されるがGREも増加傾向 |
イギリス | 一部のMBAプログラムで受け入れられる | トップスクールではGMATが推奨される |
ヨーロッパ | 代替スコアとして受け入れられることが多い | ビジネススクールではGMATが高評価される |
GREとGMATの点数換算
海外大学院やMBAプログラムに出願する際、GREスコアとGMATスコアをどのように比較すればよいのか迷う人も多い。
ETSが提供する「GRE Comparison Tool for Business Schools」を使えば、GREスコアをGMATスコアに簡単に換算できる。
点数換算の仕組み: このツールは、GRE Verbal ReasoningとQuantitative Reasoningの合計スコア(260〜340点)を、GMATスコア(200〜800点)の範囲に換算する。
換算例: 以下はGREスコアとGMATスコアの一例を示した表である。
GREスコア | GMATスコア(換算値) |
---|---|
330 | 730 |
325 | 710 |
318 | 660 |
310 | 580 |
300 | 470 |
試験の難易度比較|GRE vs GMAT
単語力:GREは膨大な語彙が求められる
GREは、試験のVerbal Reasoningセクションで高度な単語力を求める試験である。
特に、GREでは学術的な文章を理解するための専門的かつ難解な単語が多く出題されるため、受験者は10,000語以上の語彙力を必要とすることが一般的だ。
一方、GMATは実務的なビジネス英語の理解力が問われるため、求められる語彙はGREよりも少ない。
ただし、GMATでは文法の理解力や文章構造の把握が重要なため、語彙が少なくても他のスキルがあれば対応できる。
試験 | 必要な語彙数(目安) | 特徴 |
---|---|---|
GRE | 10,000~12,000語 | 高度でマニアックな学術的単語が頻出 |
GMAT | 7,000~8,000語 | 実用的なビジネス英語が中心 |
リーディング:GREは文章構造が複雑?
GREのリーディングでは、人文学、社会科学、自然科学など幅広い分野から出題される。
特に自然科学の文章では専門的な用語や複雑な構造が含まれるため、内容理解に時間がかかることが多い。
一方、GMATのリーディングはビジネスや経済関連の文章が中心であり、文章構造が比較的シンプルなため、事前知識がなくても解きやすい傾向がある。
試験 | リーディングの特徴 |
---|---|
GRE | 幅広い学問分野の文章が出題され、専門用語が多い |
GMAT | ビジネスや経済に関連した文章が中心で、論理構造がシンプル |
数学:GMATのほうが難易度が高い?
GREとGMATの数学セクションは、Quantitative Reasoning(GRE)とQuantitative(GMAT)という名称で出題されるが、試験の難易度と範囲に違いがある。
GREの数学の問題は中学校レベルの内容が中心であり、基礎的な計算能力があれば対応できる。ただし、英語での数式表現に慣れていないとミスをする可能性がある。
GMATの数学セクションは高度なロジックやデータ分析能力が求められるため、問題の難易度がGREよりも高い。
また、GMATではData Sufficiencyという独自の問題形式があり、これが日本人受験者には難関とされている。
試験 | 数学の範囲 | 難易度 |
---|---|---|
GRE | 中学レベルの数学 | 基礎レベル |
GMAT | 高度なロジックやデータ分析 | 上級レベル |
論理的思考力:GMATの求めるロジック
GMATはCritical ReasoningやIntegrated Reasoningといったセクションで、高度な論理的思考力を求めている。
これに対し、GREでは主に文章理解に基づいた推論問題が中心であり、論理的な文章構造を把握できれば対応可能である。
試験 | ロジックの要求度 |
---|---|
GRE | 推論問題が中心で文章理解がカギ |
GMAT | 複雑なデータ分析や論理問題が含まれる |
GMATとGREの選び方|自分に合った試験を見つける方法
海外大学院やMBAへの進学を目指す際、GMATとGREのどちらを受験するかは、自分の得意分野や進学の目標に応じた戦略が必要である。
作文が苦手ならGMAT?
GREには「Issue Task」と「Argument Task」という2種類の作文課題が含まれており、どちらも高度な論理展開と文章構成力が求められる。
一方、新形式のGMAT Focus Editionでは、作文(AWA)が完全に廃止されたため、作文が苦手な受験者にはGMATが選びやすい試験となった。
試験別の作文の有無
試験 | 作文の有無 | 特徴 |
---|---|---|
GRE | 必須(2種類) | 幅広い意見形成力と構成力が必要 |
GMAT | なし | 作文が不要、他のセクションに集中可能 |
単語に時間をかけられないならGMAT?
GREは特にVerbalセクションで膨大な単語力が求められ、難解な語彙が頻出する。
一方、GMATでは単語よりも論理力やデータ解析能力が重視されるため、単語暗記に割ける時間が限られている受験者にはGMATの方が負担が軽い。
試験別の語彙力要求度
試験 | 単語量の要求度 | 特徴 |
---|---|---|
GRE | 非常に高い | 10,000~12,000語以上の暗記が推奨される |
GMAT | 中程度 | 基本的な語彙力とロジカルな文章理解が重要 |
数学やロジックに自信がないならGRE?
数学やロジックが苦手な場合、GREが適している可能性が高い。
GREのQuantitativeセクションは中学レベルの数学が中心であり、計算ミスを減らすことに集中できる。
一方、GMATでは高度なロジカルシンキングや複雑な分析が求められ、特にFocus Editionではデータ解釈セクション(Data Insights)が新たに追加されている。
試験別の数学・ロジックの難易度
試験 | 数学の難易度 | ロジックの難易度 |
---|---|---|
GRE | 中程度 | 高校レベルの基礎数学問題が中心 |
GMAT | 高い | 高度な分析力とデータ処理能力が必要 |
専攻が未定ならGREをまず受験?
GREはMBAだけでなく、幅広い専攻分野や大学院プログラムでスコアが利用可能である。
そのため、専攻や進学先がまだ明確でない場合にはGREを受験する方が選択肢を広げやすい。
一方、GMATはビジネス関連プログラムに特化しており、MBA進学を確実に目指す場合にはGMATが適している。
終わりに
GREとGMATは、海外大学院やMBA進学のための重要な試験であり、それぞれに特徴や求められるスキルが異なる。
本記事では、試験の基礎情報から点数換算、試験難易度の比較、試験選びのポイントまで、詳しく解説した。
どちらの試験を選ぶにしても、しっかりとした準備と計画が必要である。
特に、GMAT Focus Editionの新形式に対応した学習や、GRE特有の語彙力強化など、試験の特性に合わせた対策が求められる。
どちらの試験を選ぶか迷った場合は、自分の得意分野やキャリアプランに合わせて慎重に判断しよう。
人生で7回って書いてあって一瞬焦りましたけど、何回でも受けられますよ。
ただ7回受けるような人はあまりいないとは思いますけど。それでも1年に5回までみたいです。
https://gre.economist.com/gre-advice/gre-overview/retaking-gre/when-retake-gre
ご指摘ありがとう!
GMATは人生の回数制限があるのけど、GREはないのだね。ミスリーディングして申し訳ない。
読解力が低く暗記もロジックも苦手な場合はGMATとGREどちらにすべきでしょうか。
GMAT/GREどちらも手を出しましたが、ブレイクスルーがなく八方塞がりです。。。
何とか今年スコアメイクして受験したいので、アドバイスお願いします。
暗記苦手とロジック苦手の話だと、暗記は努力すればなんとかなるけど、ロジカルシンキングは思考回路の問題で、短期間の努力で変えられるものではないと思う。
そもそも「読解力が低い」というのはTOEFL/IELTSのリーディング何点レベルなのかな?
場合によっては、GRE/GMAT対策よりまず根本的な英語力を上げる必要があるかもしれないね。
IELTS Reading7.5です。
IELTSのリーディング7.5であれば、英文法で困るということはそこまでなさそうだね。
やはり、時間をかければなんとかなる単語力にかけて、GREに絞った方が点数は伸びやすいのではないのかなぁ。
単語に合わせて、洋書や英文ニュースの多読を1日1-2時間行い、実践的な読解力を培うことも必要かと!