海外の大学への留学を目指す!と決めた多くの学生が進学する留学先として人気を誇る国「アメリカ」と「イギリス」。
両国とも、世界大学ランキングに名を連ねるいわゆる名門大学も多いことから、日本からだけではなく世界中の留学生が進学を目指しています。
「アメリカ」への留学は、日本の高校を卒業予定であれば出願することができ、卒業後は日本の大学へ進学する際と同様にそのまま進学することができます。
でも、もし「イギリス」への留学を決めた場合はどうでしょうか。
ここで、イギリスの大学留学についていろいろと調べていくと目にする「ファンデーションコース」という文字。一体何?と疑問に思う人もいると思います。
今回の記事ではイギリス留学を目指したいけど、何から調べたらいいのかさえもわからない、という高校生のみなさんのために少しでもお役に立てるよう、イギリス留学に必要な「ファウンデーションコース」について、また、その後の学部入学までの流れについてお話をさせていだきます。
筆者紹介:Antieやや
タイ在住。語学力を生かし現地でボランティア活動を中心に毎日を過ごす。バンコクでインターナショナルスクールを卒業し、現在イギリスの大学で心理学とマーケティングを学ぶ息子あり。
目次
イギリスと日本の教育制度の違い
日本の高校を卒業してからイギリスの大学へ留学する場合、なぜ「ファウンデーションコース」を受けなくてはいけないのか、まずはイギリスの教育制度について理解しておきましょう。
イギリスの義務教育と教育制度
イギリスの義務教育(Compulsory Education)の年齢は5歳から16歳でしたが、2016年から18歳までとなっています。下記は、イギリスの教育制度を示した表です。
https://ukguardianship.com/uk-education-system-state-public-schools/ より引用
このように、イギリスの教育制度では、小、中、高と3つに分かれているという点では日本の教育制度と同じです。しかし内容をよく見てみると、
- 5歳から11歳(Year 1 から Year 6)は Primary School/Education
- 11歳から16歳(Year 7からYear 11)はSecondarySchool/Education
- 17歳から18歳(Year 12からYear 13)は Six Form/Further Education
となっており、日本の教育制度とは異なっていることがわかります。
では、日本の高校からイギリスの大学へ進学する際に、なぜ「ファウンデーションコース」を受講しなくてはならないのかその理由にも関わってくる、中等教育と高等教育の仕組みをもう少し詳しく見てみましょう。
GCSEとは
GCSEとは、General Certificate of Secondary Education の略で、14歳から16歳(Year 10 から Year 11)までの生徒を対象にしたイギリスのナショナルカリキュラムの一部です。
この2年間のコースの最後に受ける全国統一試験も含まれており、この試験の結果は将来の大学受験にも大きな影響を与える重要な試験となっています。
そのためこの学年の多くの生徒たちは、大きなストレスを抱えてこの時期を過ごすこととなります。
試験の結果は、Grade 9 (最高)から Grade1(最低)の範囲で 評価され、あまりに点数が低いとUngraded(評価なし)となってしまいます。
多くの大学のコースでは、 Grade 4(またはそれ以上) が5つ(5教科)必要とされており、これらの入学条件は大学により異なります。
アメリカの大学留学の入学基準は、成績、SATやACTのスコア、推薦状、エッセイだけではなく、それぞれの大学の教育方針により独自の入学基準があるため、ある1つの要素で合否を決めるのではなく、いろいろな要素を考慮して総合的に合否を判断します。
そのためアメリカの入学基準は、日本人である私たちにとってわかりにくいものとなっていますが、イギリスの場合、グレードが全てと言っても過言ではないため、このGCSEの試験結果は後に極めて重要なポイントとなる可能性があるのです。
Sixth Form(シックスフォーム)とは
GCSEの試験を終了し、その後大学進学を目指すためには「Sixth Form(シックスフォーム)」 と呼ばれる、2年間の教育課程へ進むこととなります。
この課程では、イギリスの大学入学資格として認められている全国統一試験、A-level(Aレベル)のための授業が行われ、
- 1年目の終わりに AS( Advanced Subsidiary Level)
- 2年目の終わりに A2( Advanced Level General Certificate of Education)
の試験を受け、2年間のAレベルを終了すると大学への受験となります。
イギリスの大学は3年制で、一般教養課程はありません。そして、自分が選択した学部入学となるため、より専門的な分野のみを学ぶことになります。
そのためイギリスの学生は、大学進学を決めた時から自分が何を学びたいのかを考え、日本の学生よりも早い段階で進学したい分野を決めます。
そして、その専門分野に合わせた大学進学コースが「Sixth Form(シックスフォーム) 」と呼ばれる2年間(16歳から18歳)となります。
英語、数学、サイエンス(生物、科学、物理)は必修科目となりますが、その他の教科は、その後の大学進学を見据え、幅広い教科の中から自分で選択し、集中して専門的に勉強します。
つまり、この2年間の大学準備課程が始まる時点で、学生は大学の専攻を決めなくてはいけない、ということになるのです。
イギリス留学に必要な「ファウンデーションコース」
ここまでの説明でイギリスの教育システムは、日本の教育システムと異なるということが理解できたことと思います。
では、ここからは本題の「ファウンデーションコース」について詳しく説明していきましょう。
「ファウンデーションコース」はなぜ必要?
「ファウンデーションコース」とは冒頭でも説明した通り、日本の高校を卒業後にそのままイギリスの大学へは入学できないため、ほとんどの留学生が必要となる大学進学準備コースのことです。
それではなぜ、日本の高校を卒業後に「ファウンデーションコース」と呼ばれるコースの履修が必要になるのでしょうか。
それは、イギリスの高校にあたる「 Six Form(シックスフォーム)」という課程が、日本の高校とはちょっと違う仕組みになっているところに理由があります。
前述にあるように、現地の学生はこの「 Six Form(シックスフォーム)」の段階で、将来自分が大学で勉強したい専攻を選び、それに合わせて選択した科目に沿った一般教養を勉強することになります。
そのため、このようなコースを受講していない留学生は「ファウンデーションコース」でそれらを学び、大学1年目から始まる専門分野の勉強に備えます。
「ファウンデーションコース」では何を学ぶ?
「ファウンデーションコース」では、希望分野の一般教養課程を学ぶことになるので、日本の大学でいうところの1年目に学ぶ一般教養に近い内容を勉強します。
まずは、自分が学びたい分野が何なのかを考えることが重要。さらにどこの大学へ進学したいのか目標を立てておくのもいいと思います。
自分が学びたい分野が明確になったら、基本的に進学したい学部や専門分野に合わせた「ファウンデーションコース」を受けることになり、その分野により履修する科目も変わってきます。
その他、大学へ進学するために必要となってくる英語力のレベルアップはもちろん、講義の聞き方、ノートのとり方、エッセイの書き方等を学びます。
さらには、海外の大学では欠かせない、セミナーなどでのディスカッションやリサーチの発表など、実際に大学へ通うのと同じ環境でアカデミックなスキルを身につけながら、大学入学への準備を行うことができます。
コースの期間は?
「 Six Form(シックスフォーム)」は2年間のコースですが、留学生が通う「ファウンデーションコース」は、通常9月から6月までの9ヶ月間(3学期制)で終了するように、カリキュラムが組まれています。
ここで考慮した方がよい注意点があります。このコースは留学生のための大学入学準備のコースとはいえ、「ファウンデーションコース」の入学条件の1つにIELTSスコアの提出が求められているように、受講する生徒はある程度の英語力を身に付けている、という前提で授業が進みます。
そのため英語力が足りない場合には、授業についていけなくなってしまう可能性があります。こんな状況を避けるためにも、コースを受講する前にしっかりと英語力を身に付けておくことが大切。
早めに渡英をして、現地の語学学校へ通い集中的に英語力をアップさせたり、「ファウンデーションコース」を実施している学校の語学コースを一緒に受講したりするのもいいかもしれません。
入学に必要な書類、申し込み方法とは?
「ファウンデーションコース」への出願には、下記のような書類が必要となります。
「ファウンデーションコース」の場合は、大学へ出願する際に窓口となるUCASからではなく、直接学校にコースの申し込みをすることになります。
学校によっては、IELTSスコアや高校の成績 など独自の入学条件が決められているところもあるので、事前に各教育機関のホームページなどでよく確認しておきましょう。
特に大学併設のコースの場合には、学部入学と同類のさまざまな書類の提出を求めているところが多いため、準備は余裕を持って進めることをおすすめします。
「ファウンデーションコース」にかかる費用
さて気になる費用ですが、イギリスの「ファウンデーションコース」で必要な学費の目安はおよそ、8,000ポンドから20,000ポンド(約125万円から310万円)となります。(※1ポンド=155円で換算、2022年2月24日現在)
これらは、大学や教育機関などによって違うため、各ホームページで確認し、学費の面も考慮しながら自分に合ったコースを見つけることが大切。
また、文系、理系、医学系など専攻する学部により授業料の差があります。
その他必要な費用としては、住居費や生活費、交通費などが挙げられ、またどの地域に住むかにより物価の違いもあります。
「ファウンデーションコース」とはいえ、大学進学の際に必要となる費用とほとんど同じになります。詳しい費用の例は、海外大学の選び方に掲載されているのでを参考にしてみてください。
奨学金をチェックしてみよう
留学にかかる費用は、授業料だけではなく生活費や渡航費など多くの費用が必要となり、決して安いとは言えませんが、「ファウンデーションコース」を含めたイギリスへ留学するための費用をサポートしてくれる、留学奨学金、補助金などの制度がいくつかあります。
が、ほとんどが公立の大学になっているイギリスでは、外国人、特にEU圏外からの留学生がもらえる奨学金は限られています。
また奨学金の需要は高く、さまざまな書類提出を含めた審査などがあり、応募したら全員が受け取れる、というものでもありません。
しかし、あるチャンスであれば最大限に利用したいもの!
専攻する学部、成績、出願する教育機関などにより該当する奨学金はそれぞれ違うため、まずは興味のある大学の「ファウンデーションコース」のホームページで、どんな奨学金があるのか調べることをおすすめします。
参考までに、イギリス国内のいくつかの都市にある「ファウンデーションコース」INTOで提供されている奨学金の例を掲載しておきます。チェックしてみてくださいね。
どの「ファウンデーションコース」を選ぶ?
「ファウンデーションコース」は、大学に併設されているものと、語学学校などの私立の教育機関で行われているものと、大きく2種類に分かれています。
大学に併設されている多くのコースは、その大学のキャンパス内で「ファウンデーションコース」が行われているため、図書館などの大学施設を利用することもでき、キャンパスの様子を実際に肌で感じることができます。
また一定の成績を収めた学生には、その大学への進学が保証されているケースもあるので、もし行きたい大学が決まっている場合にはその大学の「ファウンデーションコース」を履修するのがいいかもしれません。
専攻したい学部は決まったけど大学まではまで決められないという場合には、私立の教育機関が行う「ファウンデーションコース」を受けるという選択をすることもできます。
私立の教育機関では複数の大学と提携があるため、コースをきちんと終了後には自分の学力に合った進学先を選ぶことができます。
下記は「ファウンデーションコース」を提供している学校一覧の一部です。参考にしてみてください。
INTO
INTOはイギリス各都市にある大学に併設されており、その多くは大学のキャンパス内で大学に進学するためのコースを運営しています。
ONCAMPUS
イギリス国内にある大学、または提携している大学への進学を目的とした「ファウンデーションコース」やイギリス大学院進学を目指すためのコース「マスターファウンデーションコース」などさまざまなプログラムを選択することができます。
https://www.oncampus.global/uk/campuses/oncampus-london/welcome.htm
それぞれの「ファウンデーションコース」では、さまざまな専攻科目が用意されていますが、どの科目を提供しているかは大学、または私立の教育機関により異なります。
そのため「ファウンデーションコース」を選ぶ際には、自分が勉強したい専攻科目があるか、または進学を希望する大学と提携しているかなど、事前にきちんと確認をしておきましょう。
その他、どんな「ファウンデーションコース」があるのか、専攻学部別にリストアップされたこちらのウェブサイトも参考にしてみてください。
「ファウンデーションコース」以外の方法でイギリスの大学へ留学
日本の高校を卒業後、イギリスの大学へ留学するために、ほとんどの学生は「ファウンデーションコース」を終了し学部入学を目指しますが、Secondary Education、またはSixth Formの段階で留学をし、大学受験の条件となる統一試験のAレベル試験のための準備を行う、という方法もあります。
この場合には、18歳までの生徒が学校で生活をしながら勉強をする「ボーディングスクール」と呼ばれる寮付きの学校へ入学することになります。
イギリスには公立と私立の「ボーディングスクール」がありますが、公立はイギリス人とEEA(European Economic Area)からの学生のみを受け入れており、寮の費用はかかりますが授業料は無料となっています。
そのため、日本を含むその他の国からの留学生は、私立のボーディングスクールへ入学することとなります。
この方法では、留学生もGCSEを取りAレベル取得後、そのまま大学へ進学できますが、早い段階からの準備や覚悟が必要になると思います。
親御さんともよく相談して、それぞれの学校の特長などをよく調べて学校を選びましょう。
最後に
いかがでしたか?
ここまで「ファウンデーションコース」に関するあれこれを説明してきましたが、「なんだかやっぱり遠回りな感じがする」や「英語も苦手だし、イギリス留学はやっぱり無理かも」などと思ってしまった人もいるかもしれません。
しかし、せっかくのチャンス、それでもイギリスの大学へ留学したい、という意気込みがあるのであれば留学は現実のものとなるのです。
そして一見、遠回りに思える「ファウンデーションコース」ですが、大学で専攻する科目の基礎知識を身につけることはもちろん、現地での生活に慣れながら大学がどのような場所なのかなど、さまざまな経験を通して大学入学への準備ができる、というメリットがあります。
こう考えてみると「ファウンデーションコース」は、決して遠回りでも無駄なことでもありません。
ただし、何事にも情報を集め、しっかりと準備を進めることは重要なこと。自分に合った「ファウンデーションコース」を見つけ、その後のイギリス大学進学へという目標へ向かってがんばってください!