アメリカの大学に出願したいけど、どんな課外活動に取り組めばよいのか分からない…。何が重視されるのか分からない…。
今回は、そんな方に向けて、課外活動の例と、選び方のポイントについて解説していきます。
この記事の著者:Tani
日本の高校から海外に2年間留学し、アメリカの大学受験を経験。IELTS Academic8.0、SAT 1480点。2022年秋より、全米トップ5のリベラルアーツカレッジに進学。
目次
海外大学進学に必須?課外活動について
課外活動とは
課外活動 (Extracurricular activities)は、アメリカの大学に出願するにあたって最も重要な項目の一つです。
課外活動という言葉は、中学3年生から高校3年生までの4年間で行ってきた全ての活動を含みます。
学術オリンピックやディベート大会などアカデミックなものから、音楽や絵画など芸術関係のもの、スポーツ大会の成績や部活動のことなどスポーツ関係のものなど、自分の情熱をこめて取り組んできた活動であれば、何でも当てはまります。
課外活動は、コモンアップ(Common Applicatoin)と呼ばれる大学出願の共通プラットフォームに入力します。
課外活動は10個まで入力でき、自らの果たした役割などを詳しく説明する必要があります。
課外活動の重要性
大学への合否は課外活動に加えて学校の成績・共通試験の結果・エッセイなど、出願書類の総合的な評価で決まります。
課外活動がどれだけ重要視されるかは大学によって異なりますが、個々の大学の方針を見たければ、Common Data Setと呼ばれるほぼすべての大学の公開しているデータが役に立ちます。
Common Data Setは各大学のホームページで公開されています(「Stanford University Common Data Set」などと検索)。
例えばスタンフォード大学のCommon Data Setを見てみると、課外活動は、GPAやエッセイなどと並んで”Very Imporatnt(非常に重要)”と位置づけされています。
スタンフォード大学であれば、仮にGPAが低くても、突出するような課外活動があれば合格の可能性も大きく高まると予想できます。
これこそが、課外活動が重要とされる理由でしょう。
その一方で、カリフォルニア大学バークレー校のCommon Data Setを見てみると、GPAやエッセイは”Very Ipmortant”とされているのに対して、Extracurricular Activitiesは ”Important(重要)”止まりとなっています。
カリフォルニア大学群をはじめとする州立大学では、課外活動よりも学業成績を重視する傾向が強いことが分かります。
https://opa.berkeley.edu/campus-data/common-data-set
このように、大学によって課外活動の重要性は異なります。
もちろん、最終的には課外活動は受験生がいかに大学にとって魅力的な人材であるかをアピールする一つの材料に過ぎません。
しかし、あなたの合格可能性を一気に上げてくれるかもしれない。そんな可能性を秘めているのが課外活動です。
課外活動の例と選び方
活動の例
ほんの一例に過ぎませんが、よく見られる課外活動を下表にまとめています。どれも非常に一般的で、大学からの印象も良い活動です。
なお、筆者は表の中では部活動(2つ)、国際交流キャンプ、大学での研究活動を書きました。
逆に言えば、それ以外の活動で6つを占めているので、可能性は無限大です。
人気のディベート大会やボランティア活動でなくても、他の活動を通じて自分の興味・関心や特長をアピールすることができれば問題ありません。
生徒会活動 | 部活動 | 留学 | 国際交流キャンプ | インターン・アルバイト |
模擬国連 | ディベート大会 | 英語スピーチ | 研究活動 | 楽器演奏(ピアノなど) |
本の出版 | Webサイト運営 | 地域のごみ拾い | 児童館でのボランティア | 翻訳ボランティア |
芸術制作 | 学生記者 | 学生団体 | ビジネスグランプリ | 家業の手伝い |
生徒会活動・部活動
生徒会活動や部活動はリーダーシップをアピールする良いチャンスです。
生徒会長などの生徒会の重要役職や、図書委員長・保険委員長などの委員会役職はもちろん、会計・監査・書記なども書くことができます。
部活動であれば、部長・副部長・チームリーダー・マネージャーなどの役職についていれば、それも明記します。
仮に役職がなかったとしても、「○○大会で主将を務めた」などと説明することができます。
また、部活動で目に見えるような成績を残したのであれば、さらに強力なアピールポイントになります(「第10回○○大会準優勝」など)。
留学・国際交流キャンプ
国際交流キャンプへの参加や海外留学も、定番の課外活動です。異文化への関心や協調性を示す良いアピールになります。
ボランティア活動
ボランティア活動も人気の課外活動の一つです。
アメリカでは高校でコミュニティ・サービス(Community service)への参加が義務となっていることが多いため、現地の高校生には身近な存在ですが、日本でゼロからボランティア活動を始めるのは簡単なことではありません。
必ず参加しなければいけないわけではないので、もし自分の興味のあるものがあれば、チャレンジしてみるのが良いでしょう。
模擬国連・ディベート・スピーチ・研究活動
文系志望であれば、模擬国連・ディベート・スピーチに、理系志望であれば、大学などで研究活動に取り組むケースが多いという印象です。
プログラムの具体例
具体的に何に取り組んでいけば良いのかわからないという方のために、いくつか有名な高校生向けのプログラムを紹介します。
多くの高校生がこのようなプログラムに参加しているので、他の受験生との差別化はしづらい点に注意。
HLAB
HLABは、国内外の大学生メンターによって運営されている、サマーキャンプです(例年8月に開催)。
国際交流系の課外活動の一つですし、何より海外大学進学を目指すうえでのコネクションやアドバイスが得られるのが魅力です。
筆者も高校生時代にHLABに参加したことがあり、サマーキャンプでの海外大学生との交流がきっかけで海外大学進学を決意しました。
https://h-lab.co/summer-school/
ELCAS(京都大学)
※これは2018年度のポスターです。
研究活動は、最も高く評価される課外活動の一つです。
特に具体的に関心のある学問分野が決まっている場合、その分野の教授と研究活動を行ったり、論文を発表することができれば、その分野に対する熱意だけでなく能力をアピールすることもできます。
ELCASは、高校生理数分野に興味のある学生を対象とした、2008年度に始まった京都大学による研究プログラムです。
現在は文系分野にも範囲を広げており、文理問わず学術研究に興味があるのであれば応募してみましょう。
Stanford e-Japan
Stanford e-Japanは、スタンフォード大学による遠隔教育プログラムです。
日米関係や両国の政治・歴史に特に焦点を当てています(コースは全て英語)。
応募者は年々増加しており、参加したというだけで他の受験生と差別化しようとするのは難しいですが、プログラムでの研究やプレゼンテーションが高く評価され、最優秀賞・優秀賞などを授賞できれば、強力なアピールとなります。
日中青年会議
国際交流系の活動で有名なのは、日中青年会議です。
かつてはUWC香港校での現地開催でしたが、現在はオンライン開催となっています。国際政治・社会や言語・文化への関心がある方におすすめです。
トビタテ!留学JAPAN
トビタテ!留学JAPANは文部科学省による留学支援プログラムです。短期から長期まで、留学先に関係なく一定額を支援してくれます。
私費留学よりも、「国レベルの選抜」「奨学金付」である点でさらに評価されます。
課外活動の検索方法
「そもそもどうやって課外活動を調べればいいのか、わからない・・・」という方もいるはず。
ここでは、おすすめの課外活動の検索方法をご紹介します。
校外プログラム大全
学生が作った、学生のための課外活動情報サイト。
ピックアップされた課外活動を丁寧に解説したり、紹介したりしています。
また、高校生対象のイベントまとめ【⚫︎月版】はイベントがカレンダー上にまとめられています。
Qulii
オンラインイベントや、オフラインイベントの情報が掲載されています。
たくさんのカテゴリーがあるので、「何が好きかわからない・・・」という方にもおすすめです。
登竜門
コンテストや、コンペティションの情報を主に掲載しているサイトです。
たくさんのカテゴリーのコンペティションが掲載されているため、自分の興味にぴったりな情報が見つかります。
課外活動でチェックされるポイント
興味・熱意
大学は課外活動を通じて、受験生の興味と熱意を見ています。
その意味では、「やりたくもないのにやっている課外活動」「大学出願のためだけの課外活動」は評価を低くする一因となってしまいます。
例えば、ボランティア活動は課外活動の中でも典型的なものの一つです。
しかし、だからといって興味のないボランティア活動を出願のためにだけ行う、というのはおすすめしません。
今まで何万もの応募書類を見てきた試験官にとっては、熱意に動かされてのボランティア活動なのか、それとも出願のためだけにその場しのぎで行ったボランティア活動なのか、を見分けるのは難しいことではありません。
一貫性
アメリカの大学出願ではいくつかの「テーマ」を軸にいかに自分を表現できるかが重要になります。
例えば「医療」と「吹奏楽」、「数学」と「ディベート」、「プログラミング」と「国際交流」など。
いくつかの自分のこれまでの人生を表わすようなテーマを選び、出願書類全体でアピールしていきます。
課外活動は、出願書類の一部として、「テーマ」を表現する役割を担っています。
ですので、エッセイの内容と課外活動の内容がかぶったり、同じような課外活動が複数あるのは、全く問題ありません。
むしろ、課外活動やアプリケーション全体を通じて一貫性があり、説得力を増しています。
全体的なバランス
課外活動は、受験生の「テーマ」を表現することができることは触れましたが、同時にアプリケーションの全体的なバランスを整えることもできます。
例えば、エッセイで自分の数学に対する情熱について触れたのであれば、課外活動ではさらに数学に関する課外活動(研究活動・数学オリンピックなど)に触れ、自分がいかに数学という分野で突出しているのかをアピールすることができます。
しかし、課外活動10個すべてを数学関連にするというのも難しいでしょう。
もしもいくつかまだ枠が余っていれば、例えばスポーツ関連の活動に少し言及し、エッセイやその他の課外活動では見せてこなかった、新しいサイドの自分を見せることができます。
全くボランティア活動にこれまで言及してこなかったのであれば、何か一つコミュニティに貢献した活動を(どんなに小さなものでも)加えておくのが良いと思います。
もしくは、これまで全く「日本人っぽさ」がなかったのであれば、少し日本らしい活動に触れる(例:剣道・将棋・茶道など)こともできます。
課外活動の記入方法
記入場所
課外活動は、コモンアップの「Activities」セクションから記入します。
合計で最大10個の課外活動を記入できます。10個以上課外活動がある場合は、コモンアップの補足欄で自由に活動内容を追加して報告することができます。
それぞれの課外活動については、以下の9つの項目を埋める必要があります。
項目 | 例 |
Activity type(活動の種類) | Academic |
Position/Leadership description(リーダーシップ) | Participant |
Organization name(活動名) | XXXX summer science program |
Description(詳細) | Completed the course of university-level biochemistry and physics, received an outstanding award for the final presentation |
Grade levels(学年) | Grade 10 |
Timing of participation(活動期間) | During school break |
Hours per week(週あたり時間) | 50 |
Week per year(年あたり週) | 2 |
I intend to participate in a similar activity in college(同様の活動に大学進学後も参加するか否か) | Yes |
各項目について
Activity type(活動の種類)
活動の種類については、以下の27の選択肢から選びます。
スポーツチームの”Varcity”や軍隊訓練の”Junior R.O.T.C.”などは日本人にはあまりなじみがありませんが、”Academic”, “Foreign Exchange”, “Debate/Speech”などのメジャーどころを抑えておけば、ひとまず問題ありません。
自分の活動がどれにも当てはまらない場合は、”Other Club/Activity”を選ぶことができます。
Academic | 学術 |
Art | 芸術 |
Athletics: Club | スポーツ(クラブ活動) |
Athletics: JV/Varsity | スポーツ(学校代表チーム) |
Career-Oriented | キャリア関連 |
Community Service (Volunteer) | ボランティア活動 |
Computer/Technology | コンピュータ・技術 |
Cultural | 文化 |
Dance | ダンス |
Debate/Speech | ディベート・スピーチ |
Environmental | 環境 |
Family Responsibilities | 家庭関連(介護・子どもの世話など) |
Foreign Exchange | 国際交流 |
Journalism/Publication | ジャーナリズム・出版 |
Junior R.O.T.C. | アメリカの軍隊プログラム |
LGBT | LGBT関連 |
Music: Instrumental | 音楽(楽器) |
Music: Vocal | 音楽(ボーカル) |
Religious | 宗教 |
Research | 研究活動 |
Robotics | ロボット研究 |
School Spirit | 校内活動 |
Science/Math | 数学・科学 |
Student Gov.t./Politics | 生徒会活動 |
Theater/Drama | 演劇 |
Work (paid) | インターン・アルバイト・職歴 |
Other Club/Activity | その他 |
Position/Leadership description(リーダーシップ)
部長・リーダーなどの具体的なポジション名があればベスト。
何も役職についていなかった場合は、”participant”や”member”などと書くことができます。
ただし、その場合でも、具体的なリーダーシップを発揮したエピソードなどに言及するとよいでしょう。
Timing of participation(活動期間), Hours per week(週あたり時間),Week per year(年あたり週)
活動期間については当然長い方が良いですが、あまりに非現実的なスケジュールを長さにしてしまうとすぐに見破られます。
大きな嘘のない範囲で、現実的な長さを書きましょう。
I intend to participate in a similar activity in college(同様の活動に大学進学後も参加するか
否か)
継続して活動に取り組む意思があるかを聞かれています。特段の事情がなければ、参加する(Yes)を選択します。
おわりに
課外活動は、出願前の3か月で一気に仕上げられるようなものではありません。
出願のためだけの課外活動は、一瞬で見破られてしまいます。出願のためにむやみやたらに色々なプログラムに参加する、というのは全くおすすめできません。
中高生活を通じて、自分の興味・関心のある活動(部活・趣味でもOK)に打ち込んでいれば、その気がなくとも、少しずつ「見栄え」の良い課外活動のリストが出来上がってくるはずです。