USCPAの資格と、しばしば比較される中小企業診断士。
両者は、共に財務経理に関係する資格でありながら、その専門性には大きな違いがあります。
この記事では、USCPAでありながら、中小企業診断士の資格も取得している私の経験に基づき、これら2つの資格の特徴をそれぞれ解説します。
受験資格と試験制度、ライセンスの取得までの流れ、それぞれの資格の難易度や必要なコスト、更には、それぞれの資格に向いている人はどんな人なのかについて、わかりやすく紹介したいと思います。
実際に、USCPAや中小企業診断士の資格取得を検討されている方から、「どういった資格なんだろう?」と興味を持たれた方まで、幅広い方々の参考になれば幸いです。
この記事の著者:Yoshi
仕事で海外の案件に係わったことから、USCPAに興味を持ち、30代後半から受験に挑戦。仕事と4人の育児に追われながらも、通勤等の隙間時間を活用して約2年で合格。その後、米国公認会計士、オーストラリア公認会計士として、複数の国の案件を財務経理の立場から推進。中小企業診断士の資格も取得しており、現在は社外CFOとしてクライアント企業を経営面からサポート中。
目次
USCPAと中小企業診断士は、どんな職業?
USCPAは、世界的な会計のプロフェッショナル
USCPAは、その名のとおり、アメリカの公認会計士の資格です。米国会計基準・IFRSを習得した会計のプロフェッショナルであり、その存在は、アメリカ国内では広く認知されています。
アメリカで公認会計士として働くことはもちろん、相互承認制度を利用する事で、イギリス(スコットランド)、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ等、世界8か国で公認会計士として活躍することができます。世界を舞台に公認会計士として活躍したい人には、うってつけの資格と言えるでしょう。
受験の門戸は広く、アメリカ国内だけでなく、試験センターを通して世界17か国で受験をすることができます。日本においても、東京と大阪の試験会場で受験が可能です。
(参照:「CPA Exam – International Administration」NASBA:https://nasba.org/internationalexam/)
最近は、日本においてもUSCPAの資格は認知されるようになってきました。会計×英語のプロフェッショナルと見做され、企業の財務経理部門や大手会計事務所等における求人の機会も増えています。
中小企業診断士は、経営コンサルタント唯一の国家資格
一方の、中小企業診断士は、経済産業大臣が登録する経営コンサルタントの国家資格です。
中小企業基本法によって定められており、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行うとされています。
企業の現状を分析し、課題を発見し、その解決策を専門的な見地からアドバイスするのが、その仕事の内容です。更に、国や地方自治体、銀行等の金融機関、企業間のパイプ役となり、クライアントの企業の成長を支援します。
なお、「中小企業」と名前はついてはいますが、その専門性を活かし、大企業の経営企画部門や財務経理部門で働く方も多いのが現状です。
徹底比較!受験資格・試験制度・ライセンス取得
ここではまず、USCPA・中小企業診断士それぞれについて、受験資格を得る→試験を受ける→合格後ライセンスを取得し維持する、という全体の流れを解説します。
USCPA(米国公認会計士) | 中小企業診断士 | |
受験資格 | 州ごとに規定(学位要件・単位要件あり) | なし |
試験制度 | 会計に関する4科目(筆記試験・科目合格制) | 【第1次試験】 企業経営に関する7科目(筆記試験・科目合格制) 【第2次試験】 筆記試験と口述試験 |
試験場所・試験頻度 | 東京・大阪 (随時受験可能) | 第1次試験:全国10地区 第2次試験:全国7地区 (年1回) |
資格取得のための実務要件等 | 州ごとの要件に従いライセンス申請 ・各州で定められた倫理試験等の通過 | 以下いずれかを充足 ・中小企業診断士協会が実施する実務補習の受講 |
継続学習 | 3年間で120単位の履修 | 知識の補充要件:5年間で5回以上研修を受講 かつ 実務の従事要件:5年間で30日以上の診断等に従事 |
USCPA(米国公認会計士)
まずは、USCPA(米国公認会計士)です。
- 受験資格
出願する州によって受験資格は異なりますが、原則的に4年制大学を卒業しているか、卒業見込みであることが条件です。
また、大学在学中に、会計やビジネスの単位を一定程度取得していることも求められます。例えば私が取得したニューヨーク州は、最低120単位が必要であり、更にFinancial Accounting、Management Accounting、Auditing、Taxationの4分野から一定の単位数を取得していることが求められました。
単位が足りない場合は、USCPA予備校で学習し、単位を取得することができます。私も文学部出身で単位が足りなかったため、予備校(Abitus)を利用して受験資格を得ることができました。
- 試験制度
科目合格制です。有効期限内に規定の4科目をすべて合格できれば「USCPA試験合格」となります。合格した科目の有効期限は、受験日から18か月後の月の末日です。
例えば、最初の科目を2023年7月に受験して8月に合格が判明した場合、2025年1月末が科目合格の有効期限です。この期限内に残りの3科目をすべて合格する必要があり、もしこの期限を超えた場合、最初の科目の合格は無効となってしまいます。
(2024年1月からの制度変更後)
現時点で確定的ではありませんが、受験日ではなく、「合格日から18か月後の月の末日」「有効期限が24か月or30か月に変更」になる可能性があります。いずれも、現行の制度よりも受験しやすいようになるので、心配はしなくても良いかと思います。
- 試験場所・試験頻度
日本での受験は、東京と大阪のプロメトリックテストセンターで実施されます。
試験日は、年間を通して設定されておりますので、忙しい社会人の方でも、仕事が休みの日に試験の予定を入れることができます。また、オンラインで試験会場の予約・変更・取消ができる等、利便性はかなり高いです。
- ライセンス取得の要件
統一CPA試験に合格後、USCPAとしてのライセンスを正式に得るためには、自分がライセンスを取得したい州の公認会計士協会を通じて、ライセンス取得の申請をする必要があります。
その際に、統一CPA試験の合格に加えて、各州で定められた要件を別途満たすことが求められます。
例えば、私がライセンスを取得したワシントン州では、AICPAが実施する統一倫理試験への合格、監査法人もしくは一般事業会社での2,000時間以上の経理の実務経験、USCPAホルダーによる実務経験の証明等が必要でした。
- 継続学習
資格の維持には、継続学習が必要です。CPEと呼ばれる学習プログラムを、指定された学習機関を通して、3年間で120単位取得し、各州の公認会計士協会で登録をします。
このようにUSCPAの試験は、試験の予約がオンライン化されていたり、試験を1年のうちいつでも受験で来たりと、社会人の私にとっては非常に融通が利く試験でした。
一方で、受験するための要件に大学の単位が入っていたり、ライセンス取得には、USCPAからの認証が必要だったりと、受験やライセンス取得に到達するまでの手続きは、大変だった印象があります。
このような部分は、大手予備校では専用のプログラムを用意してくれており、私も予備校を利用したおかげで、スムースに進めることができました。
中小企業診断士
次に、中小企業診断士です。
- 受験資格
意外かもしれませんが、ありません。学生でも、社会人でも、幅広い年代の方が自由に受験できるようになっています。
- 試験制度
第1次試験と第2次試験があります。
第1次試験は、USCPAと同じく科目合格制です。有効期限内に規定の7科目をすべて合格できれば「1次試験合格」となります。合格した科目の有効期間は3年間で、合格した年度に加え、翌年度と翌々年度の第1次試験を受験する際に免除が認められる仕組みです。
第1次試験に合格した場合、合格した年度と、翌年度に第2次試験(筆記試験と口述試験)を受験する資格が与えられます。
- 試験場所・試験頻度
受験できる会場ですが、第1次試験は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇、金沢、四国の10地区、第2次試験は、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7地区となっています。かなり、色々な場所で受験できるので、USCPAと比較すると、利便性は高いです。
試験頻度は、第1次試験、第2次試験ともに年1回となっています。2023年度の実績では、第1次試験は8月、第2次試験の筆記試験は10月、口述試験は翌年1月というスケジュールです。
- 資格登録の要件
2次試験合格後、中小企業診断士協会が実施する実務補修の受講か、最低15日間の実務従事が必要となります。
なお、第2次試験を受験せず、中小企業基盤整備機構等が実施する中小企業診断士養成課程を経ることで登録する方法もあります。こちらは、中小企業大学校(東京校)で約6か月間にわたって行われるカリキュラムです。
- 資格の維持
こちらもUSCPAと同様に継続学習が必要です。具体的には、「知識の補充要件」として5年間で5回以上研修を受講、「実務の従事要件」として、5年間で30日以上の診断等に従事することが求められ、これら両方を充足させる必要があります。
中小企業診断士の試験は、USCPAの試験と比較して、受験が1年に1回しかできない、という制約があり、想像以上にこの制約がプレッシャーになりました。USCPAと違って、いつでも受験できるわけではないので、科目合格は初めから狙わず、第一次試験は一回で合格することを心がけました。
【USCPA】試験概要・合格難易度・必要コストを深掘り
こちらでは、USCPA試験の難易度や必要なコストについて、簡単に触れてみたいと思います。
試験科目 | (必須3科目) FAR、AUD、REG (選択4科目) BAR、ISC、TCP |
試験時間 | 各科目 4時間 |
合格基準 | 各科目 75点以上 |
言語 | 英語 |
合格率 | 各科目 41~58% ストレート合格の場合、6.5% |
必要とされる勉強時間 | 1,000~1,500時間 |
費用 (予備校を利用した場合) | 100万程度 |
幅広い会計の知識に加えて、英語力も試される
USCPAの学習範囲は、財務経理全般です。
試験科目は、2024年1月からの制度変更後においては、必修3科目と選択3科目です。
選択3科目は、うち1科目のみ選択し、合格すればよいとされています。
- 必修3科目
簿記や財務会計の基本論点を学ぶFAR/監査論であるAUD/アメリカの税法等を学ぶREG - 選択3科目
管理会計・ファイナンス・財務会計の応用論点を学ぶBAR/ITシステムや情報を扱うISC/税のコンプライアンスや計画に関するTCP
試験は、1回で4時間の長丁場となります。1日1科目とした場合、4回の受験が必要で、合計16時間の試験となります。合格基準は各科目75点以上です。
試験は、全て英語で実施されるため、相応の英語力が求められます。但し、主に必要なのは問題文を読み解く力でして、書く力や話す力はほぼ求められません。
(なお、実際にUSCPAの資格を利用して仕事をするとなると、英語でのやりとりが必須になるので、この試験を機に英語の勉強を本格的に始めてみてもいいかもしれませんね。)
私が、USCPAの試験で印象深かったのは、やはりこの試験時間の長さです。特にFARは、4時間あっても足りないほどの問題量であったため、計画的に時間配分を考えて、サクサクと進めていく必要がありました。
疲労と集中力の限界を迎えながらも「問題はまだ残っている」という精神的なプレッシャーもあり、大変困憊しました。
試験の合格率
USCPAの合格率は、2023年第1四半期の実績ベースで41%~58% (科目で合格率に差はあり)、全ての科目を連続して合格する場合の合格率は、6.5%程度となっています。
科目合格なので、比較的簡単と思いがちですが、ストレート合格を目指す場合は相当難関の資格といえるでしょう。
(参照「Learn more about CPA Exam scoring and pass rates」AICPA:https://www.aicpa-cima.com/resources/article/learn-more-about-cpa-exam-scoring-and-pass-rates)
試験合格に必要な勉強時間
試験の合格に必要とされるUSCPAの学習時間は、大手予備校によれば1,000~1,500時間程度(※)となっています。
私は、Abitusを利用し、大体1,000時間程度の勉強時間で合格しました。
(※)「Abitus」1,200~1,500時間、「資格の大原」1,000~1,500時間、「TAC」1,000~1,200時間
試験合格に必要な費用
試験の合格に必要とされるUSCPA関連の費用ですが、大きくは、受験費用と、予備校に通う場合は予備校の費用に分けられます。
受験費用は、統一CPA試験の費用で、30万円~40万円(諸費用込)が目安です(米ドル払いなので、為替によって変動します)。
また、予備校に通う場合は、別途33~66万円が追加で必要(※)になります。
(※)大手のAbitusで62万円(ライトパックの場合)、プロアクティブで約33万円(eラーニングコース)、大原で66万円(フルパック)、TACで52万円(総合本科生Web通信講座)
なお、メルカリ等の通販を通じて大手予備校のテキストを入手する事で、独学での勉強も可能です。
但し、受験資格として定められている大学の単位が足りない場合にアメリカの現地校との単位取得プログラムと提携していたり、ライセンスの取得の際にアメリカのCPAからの推薦レターを斡旋してくれたりと、自力で対応しようとすると却ってコストが高くついてしまうところを、大手予備校は手ごろな値段でカバーしてくれています。
よって、大手予備校を利用したほうがコストパフォーマンスはよいと言えるでしょう。
私の場合は、予備校としてAbitusのeラーニング口座を受講しましたが、こちらが74万円、受験費用・ライセンス取得費用で42万円かかっています。つまり、合計で、116万円かかっており、非常に高額という印象でした。
【中小企業診断士】試験概要・合格難易度・必要コストを深掘り
前章のUSCPAに続いて、こちらでは、中小企業診断士の試験の難易度や必要なコストについて、触れてみたいと思います。
試験科目 | 【第1次試験】 7科目 経済学・経済政策 財務・会計 企業経営理論 運営管理 経営法務 経営情報システム 中小企業経営・中小企業政策 【第2次試験】 筆記試験 口述試験 |
試験時間 | 【第1次試験】 2日間 (各科目60分~90分) 【第2次試験】 筆記試験:320分(各問題80分*4問=320分) 口述試験:10分~20分 |
合格基準 | 【第1次試験】 7科目の合計点が総点数の60%以上かつ1科目でも満点の40%未満のないこと 【第2次試験】 筆記試験:4問の合計点が総点数の60%以上かつ1問でも満点の40%未満のないこと口述試験:評定60%以上 |
言語 | 言語 |
合格率 | 【第1次試験】 28.9% 【第2次試験】 18.7% ストレート合格の場合、5.4% |
必要とされる勉強時間 | 1,000時間 |
費用 (予備校を利用した場合) | 30万程度 |
経営に係る幅広い知識の習得が求められる
中小企業診断士の学習範囲は、企業の経営に関する全範囲です。財務・経理だけでなく、生産管理やIT等の知識も求められます。
試験は全て日本語で行われます。
試験構成は、第1次試験と第2次試験の2部制です。但し、第2次試験には、筆記試験と、その筆記試験に合格した者が受験可能な、口述試験があるため、実質3回試験を突破しなければなりません。
第1次試験は、2日間にわたって実施されます。試験科目は、「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理(オペレーション・マネジメント)」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」の7科目で、マークシート方式です。
第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率となります。
このように、いわゆる「足きり」が合格条件に含まれている点については留意しなければなりません。
第2次試験のうち「筆記試験」は、実際の企業の様子が文章となって提示され、それに対して課題を発見し、解決策を提示し、それを文章で筆記するというものです。
限られた時間の中で、企業の現状を理解し、対案を考えて、わかりやすく説明する、という経営コンサルタントさながらの作業が、試験で求められます。
第2次試験のうち「口述試験」は、面接試験となります。面接会場において、面接官から質問や課題を与えられるので、その場で、自分なりの提案や解決策を考え、口述することが求められます。
私も実際に口述試験を受けましたが、面接ですので、事前の試験対策ができない分、かなり緊張しました。
実際の経営コンサルタントの現場と違って、ざっくばらんに話すような場ではありませんでした。むしろ、就職活動における企業様との面接に近いものがあるかもしれません。
試験の合格率
中小企業診断士の合格率は、2022年の実績ベースで、第1次試験が28.9%、第2次試験(筆記試験・口述試験の両方に合格した人)が18.7%となっています。
第1次試験・第2次試験を連続して合格する場合の合格率は、5.4%程度です。こちらも、ストレートで合格しようとすると、USCPAに負けず劣らず、難関資格であると言えます。
(参照「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」中小企業診断士協会:https://www.j-smeca.jp/attach/test/suii_moushikomisha.pdf)
試験合格に必要な勉強時間
試験の合格に必要とされる中小企業診断士の学習時間は、大手予備校のTAC等によれば、1,000時間の目安が置かれているようです。概ね、USCPAと同程度の勉強時間と考えていいでしょう。
私の場合は、中小企業診断士の前に簿記を勉強していたため「財務・会計」に割く時間が大幅に減り、700時間程度の勉強時間で済みました。
試験合格に必要な費用
試験の合格に必要とされる費用ですが、こちらも、USCPAと同様に、受験費用と予備校に通う費用に分けて説明したいと思います。
受験費用は、第1次試験の受験手数料14,500円、第2次試験の受験手数料17,800円となっています。USCPAと比較すると、かなりリーズナブルですね。
一方の、予備校の費用ですが、こちらは、別途22万円~30万円が目安(※)になりそうです。
(※)大手の大原で30万円(1次・2次合格コース)、TACで29万円(1・2次ストレート本科生Web通信講座)、LECで22万円(1次2次プレミアム1年合格コースWeb通信講座)
また、中小企業診断士は、市販のテキストを購入することで、独学での勉強が可能です。その場合は、第1次試験、第2次試験両方のテキストと問題集を揃えても3万円程度で済みます。
実際、私も、独学で合格しています。仕事が忙しく予備校に通う暇がなかったのと、なによりお小遣いが少なかったので、とても予備校の費用を捻出できなかったからです。
有難い事に、中小企業診断士は、市販のテキストの内容が充実しているので、大きな壁にあたることもなく、合格まで到達できました。USCPAと異なり、試験に合格するだけであれば、独学のほうがコストパフォーマンスがよいと言えるでしょう。
USCPAvs中小企業診断士:仕事内容・キャリアパスを徹底比較
USCPA:大手会計事務所や外資系企業、民間企業での経理部門が一般的
USCPAの強みは、会計の知識だけでなく、英語力も備えていることです。海外とのビジネスが多い日本のグローバル企業、外資系企業、Big4等の大手会計事務所等での活躍が期待されるでしょう。
私自身、現在、USCPAとして、海外との取引が多いグローバル企業で働いています。USCPAを取得したことにより、海外プロジェクトの財務経理を任されました。まさに米国基準やIFRSによる決算や監査が行われていたので、学んだ内容をダイレクトに仕事に活かすことができました。
同じ会社には、他にもUSCPAを取得した同僚が何名かいますが、アメリカか、オーストラリアの現地子会社に駐在するケースが多いです。
このように、大手企業の海外事務所には、たいてい会計に精通した人材の需要があり、定期的に人事異動が行われるため、経理部門にいれば駐在の機会にも恵まれそうです。
また、アメリカのライセンスを取得した州に移住して、監査業務に従事することも可能です。日本企業との取引がある監査法人であれば、英語を母国語とする国において「日本語が使える」という事も強みになると思われます。
中小企業診断士:独立して事務所を開くほか、民間企業の経営企画部門にも
中小企業診断士は、唯一の経営コンサルタントの国家資格である一方、独占業務は有しておりません。よって、独立開業に躊躇される方もいらっしゃるかもしれませんが、実は半数程度の46%の中小企業診断士が、独立して専業の事務所をもっています。
(参照:「「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について」中小企業診断士協会:https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf)
中小企業診断士には、県ごとに協会があり、そこに入会することで色々な情報が得られ、人脈が広がり、仕事の受注に繋がっていくと思われます。ライセンス取得時の実務補修でお世話になった先生から、仕事を紹介してもらうというルートもありそうです。
仕事の舞台は、主として、地元の中小企業になります。地元が好きで、そこの企業の強みを引き出していきたいと考えているのであれば、中小企業診断士はぴったりの職業といえるでしょう。
また、民間企業で働く「企業内中小企業診断士」も多くいます。全体的な割合としては、54%程度です。
私の経験からは、特に銀行に勤めている人が同期には多かった印象です。中小企業等を相手に、与信を検討しなければならない役割だからだろうと思われます。
他にも、経営企画部門、財務経理部門の人もいました。将来的に会社の経営の方向性を決めていく役割を担うため、中小企業診断士の知識が必要になるのだろうと思われます。
私自身は、中小企業診断士取得後、当時勤めていた会社での勤務を続けながら、経営コンサルタントとしても独立しました。ご縁のあったクライアント様と一緒に経営課題に取り組み、事業拡大に奔走する、という貴重な体験をさせていただきました。
一方で、この経営コンサルタントとして働いた経験が、会社側に評価され、今度はそこで子会社の立上げを任されるきっかけになりました。
USCPAと中小企業診断士、どんな人が向いている?
USCPAに向いている人は、こんな人
USCPAに向いている人は、国際的な舞台で活躍したい人ではないかな、と思われます。
自分の英語力を生かして、大手会計事務所、外資系企業、グローバル企業等で働いてみたい、そんな人には、ひとつの選択肢として、USCPAをお勧めします。
また、会計が得意な人で、日本国内の経理よりは、海外案件の経理に係わってみたいと考えている人にも、お勧めできます。
中小企業診断士に向いている人は、こんな人
中小企業診断士に向いている人は、地元の企業を応援したい人、あるいは、地元で働きながら自分の専門性を磨きたい人ではないかな、と思われます。
中小企業診断士の役目は、会社の経営を軌道に乗せることです。そのためであれば、銀行を廻り、取引先を訪問し、自治体や官公庁等に手続きの申請に行くなど、アクティブな動きが求められます。何でも屋さんになれる人が、中小企業診断士には向いています。
また、会計だけでなく、幅広く経営に役立つ知識を取り入れることができる人も、中小企業診断士に向いています。
私の経験からお話させていただきますと、経営コンサルタントの実務では「経営課題に一緒に向き合う専門家を探し出し、その専門家と協力して課題を解決していく」というケースが多い印象です。
その専門家は、公認会計士であったり、弁護士であったり、行政書士であったりするのですが、幅広い知識がなければ、そもそも直面する経営課題に対して、どういった専門家にお願いすればいいのかも、わかりません。
人と人とをつなぐ、潤滑油のような役割が中小企業診断士なのです。
USCPAと中小企業診断士のダブルライセンスという選択肢
最後に「USCPAと中小企業診断士を両方取得する、ダブルライセンスという選択肢」について、触れてみたいと思います。
経営企画部門やCFO等、会計の知識に加えて、事業管理や生産管理等、幅広い経営手法を獲得している事が望まれる役職にあっては、USCPAに加えて、中小企業診断士の知識もあったほうが望ましいと思われます。
私も両方取得しており、このダブルライセンスのおかげで、現在、民間企業のCFOの役職についています。
CFOには、USCPA等の公認会計士の資格から得られる財務経理の知識を活かして、企業の業績を見える化し、銀行やステークホルダーに説明をしていく事が求められます。
更にこれに加えて、企業の業績をあげるために、商流・物流の見直し、生産効率の向上、ローンの見直し等、USCPAだけでは得られない、どちらかといえば中小企業診断士が得意とする経営の知識や経験も必要とされるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
USCPAと、中小企業診断士、似ているような資格でありながらも、試験制度から、将来的なキャリアパスまで、様々な違いを感じられた方も多かったのではないかと思います。
似て非なる資格ではありますが、両者ともに、財務経理の知識をベースにした魅力的な資格です。興味を持たれた方は、ぜひ、その取得に挑戦してみてはいかがでしょうか?