日本に生まれ日本で育ち日本で教育を受けたのだから、日本の大学に行く。少し勉強ができるから医学部へ行こう、はたまた東大へ行こうという、些か安直な進路選択が近頃では一般的になりつつあるのではないでしょうか。
しかし、世界を見渡せば約23,000もの大学があるこの時代に日本という枠組みに捉われて進路を決めるのはとてももったいないことだと思います。
逆に、「海外大こそ至高!」という風潮が高まるのも筆者が意図していることではありませんが、世界を視野に入れた上で自分の趣向に合った最適な進路選択の手助けをしたいと思っています。
この記事を通して一人でも多くの人の進路選択において「世界から選ぶ」が基準になってくれることを願っています。そこで今回はカナダの大学への留学をテーマに出願までのプロセスを詳しく説明していきたいと思います。
この記事の著者:Philo
高校時代に数々の海外研修プログラムや海外大学の講義を受講し、三カ国のトップ大学に合格。秋から海外の大学へ進学する純ジャパ大学生。
目次
カナダ正規留学をまるッと解説
海外大留学と聞くとアメリカを一番に思い浮かべる人も少なくないと思いますが、カナダにも世界ランキング上位に入る超名門校が数々あります。後ほどいくつか紹介しますが、トロント大学がその名だたる例の一つでしょう。
また、大学卒業後に現地に残って職に就くことを考えると、アメリカよりも利点が多いといった点で人気があるのも事実です。それでは具体的にカナダの大学の仕組みを見ていきましょう。
カナダの大学3種類
カナダには大きく分けて3種類の大学が存在します。
1つ目はUniversity、日本で言う総合大学です。基本的に大学院も併設されていることが多く、学士号、修士号の取得を目的とします。
2つ目はLiberal Arts Collegeと呼ばれる大学で、これは総合大学とは違って大学院などは併設されてないことが多く、特定の分野を勉強するというよりは広く色々な分野に触れて、自分の興味を探索したい人に向いています。
その後に自分の見つけた興味を深掘りするべく、大学院に進学して専門的な勉強をする人がリベラルアーツ出身の学生には多く見受けられます。
3つ目はCommunity College、俗に言う短大のような仕組みです。
2年通って職のスキルを身につけることを目的とする場合もありますが、中には総合大学のように4年通って学位を取得したり、成績優秀であれば他の大学へトランスファー(編入)できるプログラムもあります。
大学出願時に試験のスコアメイクがうまくいかず、希望の大学への出願要件に満たない場合でも、このような短大がオファーするプログラムを調べて編入を目的に進学するのも一つの選択肢でしょう。
日本やアメリカの大学との主な違い
出願プロセス:共通試験がない
日本の大学との違いは何と言っても出願プロセスにあるでしょう。
日本では一次試験、いわゆる共通テストを受けて、各大学の二次試験を受けるのが当たり前ですが、カナダには日本のような共通の試験はありません。
では試験がないから簡単に入れるのかと言ったらそうではありません。
選考基準:アカデミック重視
カナダの大学への入学の肝となってくるのは高校でのGPA、留学生はそれに追加でTOEFLやIELTSのスコアです。どちらもトロント大学のようなトップの大学を目指すには、かなり高水準のスコアが求められます。
高校でのGPAの保ち方や英語試験のスコアメイクについてはまた別の記事で紹介する予定ですので、そちらをご覧ください。
一般に、アメリカの大学はスコアや課外活動、エッセイなど幅広い総合人間評価に基づいて合否を決めると言われていますが、カナダの大学はアカデミック重視な選考基準であると言って良いでしょう。
カリキュラム:リーディングの過酷さ
また、大学そのもののカリキュラムなどの違いとしては、授業のリーディングの過酷さが挙げられます。海外の大学では短期間にかなりの量のリーディングを課せられると言われています。
ハードワークをこなして成長できるような忍耐力も必要になってくるのは間違い無いでしょう。
カナダの大学の選び方
カナダの大学ランキングを紹介しつつ、大学の選び方を紹介していきます。
有名な世界大学ランキング「QS World University Rankings 2021-Top 10 Universities in Canada」によると、2021年のカナダの大学ランキング(上位3位のみ紹介)は、
- 1位 トロント大学(University of Toronto)
- 2位 マギル大学(McGill University)
- 3位 ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)
のようになっています。
筆者が合格したトロント大学は一位にきていますが、それぞれの大学にはそれぞれの強みがあり、分野別で見るとまた順位は変わってきます。
自分の学びたい分野が既にある程度定まっているのであれば、その分野に強いプログラムがある大学を調べてみるのが良いでしょう。
大学ランキングは大学のレベルの大まかな概観を掴むためのマップに過ぎません。自分のニーズに合わせて、徐々に深掘りしていきましょう。
例えば、コンピュータサイエンス(以下CS)の分野で言えばトロントは言わずもがなトップにきますが、それと双肩するのがウォータールー大学です。
カナダのMIT(マサチューセッツ工科大学)と言われるほど、CSの分野では優れており、シリコンバレーのI T系のスタートアップからも引く手数多だと言われているほどです。
この例からも分かる通り、ランキングだけにとらわれず、分野ごとに詳しくリサーチして主体的な大学選択をしていきましょう。
大学留学費用
カナダの大学への費用は一概には言えませんが、およそ350〜700万/年といったところでしょう。
日本の大学と比べると高いと感じるかもしれませんが、国内の財団の奨学金や大学の奨学金を獲得することで留学は現実的なものになるでしょう。
例えば、国内の財団の奨学金としてはユニクロの柳井正財団やJASSOの奨学金などが挙げられます。
また、筆者はトロント大学からUniversity of Toronto Entrance Award Scholarという奨学金をもらいました。
色々な奨学金についてもお話しできることがあるので、また別記事でご紹介することとします。
» 3,000万が返済不要!?海外正規留学の奨学金制度を徹底解説
カナダがおすすめの理由
カナダに出願した大きな理由は、大学在学中に有給インターンシップに参加できるプログラムが大学にあったことや、卒業後にカナダで最長3年間の就労経験を積むことができるということです。
やはり海外の大学を目指す人にとって、海外に留まって向こうで仕事をすることが夢である人も多いことでしょう。そんな人にとって、カナダは絶好の国であると言えます。
また、もう一つのちょっとした利点として、英語の発音がかなりクリアであることも挙げられます。
筆者自身も英会話の先生がカナダ出身の方だったことからも分かるのですが、綺麗な発音を身に付けたい人にとってカナダ英語はおすすめできます。
合格を勝ち取る出願スケジュール
出願時期
出願校によって、出願方法も異なるため一概には言えません。
筆者が出願したトロント大学は、オンタリオ州の出願方法に則るので2月下旬が締め切りですが、他の州は別の締め切りが設定されています。
一貫して言えることは、年末までに出願を終えるのが良いということです。
筆者の場合は、出願ポータルがオープンした秋頃にすぐに出願をして、12月にはトロント大学からオファーをもらいました。
自分の出願する大学の出願締め切りから逆算して、計画的に準備を進めましょう。
また、日本と海外の大学を併願する場合を考えても、年内に海外大学への出願に蹴りをつけて、年明けには日本の大学受験に集中できるような状況にしていくのが得策だと思います。
出願に必要なもの
自分で用意するもの
- 英語力を証明するもの(TOEFL iBT or IELTS、大学によってはDuolingoが認められることもあります)
スコアの目安は大学によって異なりますが、総合大学に出願するのであれば少なくとも TOEFL iBTで80〜が望ましいところです。トロントなどのトップ大を目指す場合はTOEFL iBT 100以上が求められます。
TOEFL iBTはインターネットベースのため、コンピューターに向かって話すのが苦手な人がスコアを伸ばしにくいという話を聞きますが、その場合はスピーキングが対人のテストであるIELTS に切り替えるのも一つの戦略でしょう。
必要なスコアメイクについてはまた別記事でご紹介します。
- 州ごとに願書もしくは大学ごとの願書
- エッセイ
これも出願する大学によってエッセイの有無が分かれますが、先ほど紹介したブリティッシュコロンビア大学などはエッセイが出願の中で重要な役割を占めることになってきます。
大学選びをする際に、自分の出願したい大学はエッセイが必要なのか否かをしっかりと調べてから(エッセイがあるか否かで準備に必要な時間がかなり変わってくるため)、出願の用意をするようにしましょう。
» 大学院留学に必須!スタンフォード大学が定義する良いエッセイとは?
» 海外大学院出願のエッセイとは?情報収集・構成から書き方まで
- 奨学金申請(必要であれば)
高校での成績が優秀であれば、大学から奨学金をもらえることがあります。筆者の場合は高校のGPAが4.95/5.00で、トロント大学から二つの奨学金をもらうことができました。
GPAのみが起因するとは言えませんが、9割5分以上の成績をできるだけ保てるようにするのが良いでしょう。
学校の先生に用意してもらうもの
- 成績表
前述の通り、カナダの大学の出願では高校での成績表が最も重要視されます。したがって、普段の高校での学習から学校の先生に書類作成をお願いするところまで念入りに行わなければなりません。
当然書類は英語で作成しなければならないので、英語科の先生も交えて複数人の先生にお願いする必要が出てくるものと思われます。
また、出願時期が年内ということもあり、高校3年の一学期までの成績を暫定として提出することになりますが、それに加えて卒業見込み証明書なども用意してもらう場合もあります。
- 卒業証明書
これは年内にオファーをもらっていれば、オファーをもらって卒業後に追加の資料として大学に提出することになります。
この提出を忘れるとオファー取り消しとなる大学もありますので、最後まで手抜かりなく念入りにオファーをゲットしましょう。
- 先生からの推薦状
これは大学によって必要とされる数が異なりますが、カウンセラー(担任など)から1通、教科の先生から1通などの場合が多いです。自分のことをよく知ってくれている先生に頼むのが良いでしょう。
また、「推薦状をお願いします」と投げやりに頼むのではなく、自分が盛り込んで欲しい内容をまとめたドラフトなどを作って先生にお願いするのが丁寧だと思います。
これも準備にかかる時間を逆算して、前もって先生にお願いするようにしましょう。
» 海外大学・大学院留学に必要な推薦状 作成依頼から提出まで
その他
- 課外活動や受賞歴
州や大学の出願形式によっては自分の今までの活動をアピールする項目があります。
自分のスポーツでの活躍などをアピールすることで、スポーツスカラーシップなどをもらえる場合もありますので、勉強だけでなく色々な活動でも成果を残しておけると良いでしょう。
ただし、出願のために行う課外活動はあまりお勧めしません。自分の興味の延長線上にある活動に、余裕があれば取り組んでみましょう。
合格発表時期とその後の流れ
合格は出願時期が早ければ早いほど、オファーをもらえる確率が上がると言われています。目安としては、出願を完了してから2ヶ月ほどで合格通知がきます。
筆者の場合は幸いなことにかなり成績上位で合格したため、合格発表が公開された12月上旬の初日にオファーが来ました。
一方で、競争率がとても高いところなどでは、年明けの5月、6月などのオファーが来ることもありますので、注意が必要です。
評定が4.5くらいなのですが、不利になりますか…?