



海外でのMBA取得を検討している方に向けて、各国のMBAプログラムの特徴を紹介するシリーズ。今回は「カナダのMBA」についてご紹介します。
日本ではあまり知られていないものの、カナダの高等教育システムは国際的にも高く評価されており、多くのビジネススクールがAACSBやEQUISなどの国際認証を取得しています。
代表的なスクールには、トロント大学のロットマン・スクール・オブ・マネジメント、ウエスタン大学のIveyビジネススクール、マギル大学のMBAなどがあります。
フランス語圏にあるビジネススクールでも、基本的に授業は英語で行われています。
カナダMBAの最大の魅力は、卒業後に現地で就労し、将来的に移住できる可能性が高いことです。
MBAを卒業すると自動的に3年間の就労ビザを取得できるため、カナダでの就職や永住権の申請がしやすくなるのです。
今回は、カナダのMBAの特徴から、ランキング、学費、入学基準まで、詳しく解説していきたいと思います!
カナダMBAの特徴・メリット
アメリカやヨーロッパのMBAと比べて、日本ではあまり知られていないカナダのMBA。
しかし、教育の質や就職・移住のしやすさ、費用面のバランスなど、注目すべき魅力が数多くあります。
ここでは、そんなカナダMBAの特徴とメリットを紹介します。
カナダMBAは卒業後に就職・移住しやすい【就労ビザ&永住権に有利】
カナダの労働市場は比較的開かれており、MBAを卒業すると自動的に3年間の就労ビザが取得できます。
この期間は職が決まっていなくても滞在可能で、永住権の申請も視野に入れられます。
通常、永住権の承認には3〜4年かかると言われていますが、カナダの大学で学んだ留学生は審査が優遇される傾向があり、1年程度で取得できるケースもあります。
さらに、カナダには配偶者向けの就労支援制度もあり、MBA在学中は就職の内定がなくても配偶者が就労ビザを取得できます。
卒業後も就労ビザの延長が可能なため、夫婦での渡航や滞在もしやすい環境が整っています。


国際認証付きの質の高い教育をアメリカより低コストで受けられる
カナダには、AACSBやEQUISなどの国際認証を取得し、世界的に評価されているビジネススクールが多数あります。
例えば、トロント大学のロットマン・スクール・オブ・マネジメントはAACSBとEQUIS、マギル大学のMBAプログラムやアイビー・ビジネス・スクールはEQUISを取得しており、高い教育水準が保証されています。
こうした国際的に評価の高い英語プログラムを、アメリカの約半額(アメリカ:約2,400万〜4,000万円、カナダ:約1,400万〜2,200万円)で受けられる点も、大きな魅力です。
実践力が身につくインターン制度が充実
カナダのMBAプログラムには、カリキュラムにインターンシップが組み込まれていることが多く(※一部例外あり)、実務経験を積めるのが特徴です。
現地には、生命保険会社のマニュライフや化学メーカーのノバ・ケミカルズをはじめ、グローバルIT企業の開発拠点も多く、留学生がインターンシップを通じてカナダ企業で働くチャンスがあります。
たとえば、トロント大学では20ヶ月のプログラムのうち4ヶ月がインターンシップ、マギル大学では16ヶ月または20ヶ月のプログラムで4ヶ月のインターンが必修です。
こうした経験は、卒業後に就労ビザを活用して現地でキャリアを築くうえで大きな強みとなり、学んだ知識やスキル、人脈を実践的に活かす足がかりとなります。


豊富な奨学金制度で経済的なハードルが下がる
カナダの大学は奨学金制度が充実しており、MBAプログラムでも多くの支援が用意されています。
たとえば、トロント大学のロットマン・スクール・オブ・マネジメントは2年制で費用は高めですが、年間最大CA$600万の奨学金が提供されており、経済的負担を大きく軽減できます。
ウエスタン大学のIveyビジネススクールでは、新入生の約80%がCA$10,000〜70,000の奨学金を受給しています。
また、クイーンズ大学のスミス・スクール・オブ・ビジネスでは、年間CA$160万の奨学金枠があり、70%の新入生が同様にCA$10,000〜70,000を受給しています。
基礎から応用まで段階的に学べる
カナダのMBAは、1年から2年までコース期間に幅がありますが、いずれも会計学や財務学などの基礎科目をしっかり学べるのが特徴です。
そのため、大学時代にビジネスを専攻していなかった方でも無理なく授業に取り組めます。
また、非ビジネス専攻の学生向けに、授業開始の2〜4週間前からMBA準備コースを提供している学校も多く、Iveyやスミスなどがその代表例です。
プログラム後半には副専攻を選ぶことができ、会計学、ファイナンス、国際ビジネスなど、自分の関心や将来のキャリアに合わせて専門性を深めることができます。
カナダMBAのランキングトップ校と入学の難易度
ここからは、主要6校の入学要件やランキングをもとに、カナダMBAの難易度を詳しく見ていきましょう。
カナダMBA大学別の難易比較表
以下の表は、QSグローバルMBAランキング(2025年版)およびFinancial Times MBAランキング(2024年版)を基に、カナダのMBA上位校6校をピックアップし、それぞれの入学要件(英語スコア、GMAT、GPA、職務経験など)を比較したものです。
QS ランキング(2025) | FT ランキング(2024) | 平均GMAT (最低) | 最低TOEFL iBT | 最低IELTS | 最低GPA | 最低就労経験 | |
Rotman (トロント大学) | 1(39) | 1(76) | 672 | 100 | 7.0 | 3.0 | 2年 |
Desautels (マギル大学 ) | 2 (66) | 4(94) | 650 | 100 | 7.0 | 3.0 | 2年 |
Ivey (ウエスタン大学) | 3 (76) | 3(86) | 665 | 100 | 7.0 | NA | 2年 |
Smith (クイーンズ大学) | 4 (91) | 2(79) | 650 | 100 | 7.0 | 3.3 (B+) | 2年 |
UBC Sauder (ブリティッシュコロンビア大学) | 5 (101-110) | 5(95) | 658 (515) | 100 | 7.0 | 3.3 (B+) | 2年 |
Schulich (ヨーク大学) | 5 (101-110) | 660 | 100 | 7.0 | 3.0(B) | 2年 |
《参照 QS グローバル MBA 2025年ランキング》
《参照 FT MBA 2025年ランキング》


カナダMBAの入学要件まとめ:英語力・GMAT・職歴など
カナダのMBAに出願する際には、英語スコアやGMATだけでなく、いくつかの基本書類が必要になります。
以下は、多くのビジネススクールで共通して求められる書類です。
- 履歴書(CV/レジュメ)
- 大学の成績証明書(GPA)
- GMATまたはGREのスコア
- 英語スコア(TOEFLまたはIELTS)
- 推薦状(通常2通)
- 志望動機書(エッセイ)
- 面接(通過後に実施)
各大学が求めるスコアの目安や入学条件は以下のとおりです。
英語要件 (TOEFL/ IELTS)
カナダMBA上位校の英語要件は、TOEFL iBTスコア100点、IELTS 7.0が標準。どの大学も比較的高い英語力を求めています。
GMAT
平均GMATスコアは650〜672点。欧米のトップ校(700点以上)に比べると、やや入りやすい傾向にあります。
GPA
GPAは3.0〜3.3程度が目安。これは世界のトップMBA校と比べると、比較的緩やかな基準といえます。
就労経験
カナダのMBAでは、最低2年のフルタイム職務経験が必要とされています。実務能力が重視される傾向があります。
面接(インタビュー)
願書審査を通過した後、個別面接(インタビュー)が課されます。コミュニケーション能力や論理的思考力などが評価される重要なプロセスです。



カナダMBAの出願スケジュールと準備の進め方
カナダのMBAプログラムは、大学によって入学時期が1月・3月・8月・9月など多様であり、それに応じて出願締切も大きく異なります。
また、ほとんどのビジネススクールでラウンド制(複数回の出願締切)が採用されているため、スケジュールの把握と早めの準備が欠かせません。
出願までには、スコアメイク(GMAT・TOEFL/IELTS)やエッセイ、推薦状、面接対策などのプロセスを計画的に進める必要があります。
特に留学生の場合はビザ申請や渡航準備も必要なため、1年前から逆算して動き出すのが理想的です。
出願準備のスケジュール感
以下は、カナダMBA出願に向けた一般的な準備スケジュールの一例です。出願時期に間に合うよう、少なくとも1年前からの計画をおすすめします。
時期の目安 | 準備項目 | 詳細 |
出願の12〜10ヶ月前 | 学校選定・戦略の策定 | 各MBAプログラムの入学時期・締切・奨学金情報をリサーチ。複数校受験を想定して優先順位を整理。 |
出願の12〜8ヶ月前 | スコアメイク(GMAT/GRE、TOEFL/IELTS) | 模試を受けて現状把握。学習計画を立て、複数回の受験も見据えて早めに対策をスタート。 |
出願の9〜6ヶ月前 | エッセイ構成・自己分析 | 志望動機や将来のビジョンを整理し、各校のテーマに合わせたストーリーを準備。 |
出願の8〜5ヶ月前 | 推薦状準備・推薦者への相談 | 上司や同僚に推薦状の依頼をし、必要な情報(実績・経歴)を共有しておく。 |
出願の6〜3ヶ月前 | 出願書類の完成・提出 | エッセイや履歴書を仕上げ、オンライン出願システムに入力。書類の最終チェックと提出。 |
出願後〜入学前 | 面接準備・ビザ申請・生活準備 | インタビュー対策を進め、合格後はビザ取得や渡航準備、住居の確保を行う。 |
主要なカナダMBA校の入学時期と出願締切
カナダの主要MBA校の入学時期と出願締切日は以下の通りです。大学によっては1月入学や春入学(3月)も選べるため、志望校ごとの確認が不可欠です。
大学名 | 入学開始時期 | 留学生用 出願締切日 | 注意事項 |
Rotman(トロント大学) | 9月 | 2025年3月5日 | – |
Desautels(マギル大学) | 8月 | 2025年3月15日 | – |
Ivey(ウエスタン大学) | 3月 | 2024年9月22日 | 他校より半年以上早い |
Smith(クイーンズ大学) | 1月 | 公式サイトに明記なし | |
UBC Sauder(ブリティッシュコロンビア大学) | 9月 | 2025年3月11日 | – |
Schulich(ヨーク大学) | 9月 | 2025年2月19日 | 1月入学も選択可能 |
ラウンド制出願の特徴と早期出願のメリット
カナダMBAもイギリスやアメリカと同様、ラウンド制(Round 1〜3)の出願方式を採用しています。
ラウンド制においては、早いラウンドでの出願には以下のようなメリットがあります。
- 奨学金のチャンスが増える
早いラウンドほど奨学金枠が多く、競争も緩やか。 - 合格率が高くなる
定員に余裕がある初期ラウンドでは、合格の可能性が高くなります。 - ビザや渡航準備の時間が確保できる
早めの出願により、合格後のビザ取得や生活準備にも余裕が生まれます。


カナダMBA取得に必要な費用
カナダMBAの費用はどのくらいかかるのでしょうか?
本章では、主要校の学費・生活費の総額と、利用可能な奨学金情報をわかりやすくまとめています。
カナダMBA取得に必要の目安は1,400万円~2,200万円
カナダMBAにかかる総費用は、約1,400万円〜2,200万円が一般的です(※CA$1=105円)。
学費だけでなく、教材費・生活費・保険・交通費などを含めると、プログラムの期間や都市によって金額に差が出ます。
以下は、カナダのランキング上位6校について、2025年入学時点の費用内訳と総額をまとめた一覧です。
期間 | 学費(2025年入学) | 保険 | 教材・施設費 | 家賃・食費 | 生活費・交通費 | 合計 | |
Rotman (トロント大学) | 20ヶ月 | CA$139,140 | CA$1,512 | CA$4,000 | CA$61,000 | CA$7,000 | CA$212,652 |
Desautels (マギル大学 ) | 12,16,20ヶ月 | CA$105,500 | CA$2,494 | CA$14,000 | CA$27,600 | CA$4,296 | CA$153,890 ※2年で試算 |
Ivey (ウエスタン大学) | 12ヶ月 | CA$132,994 | CA$1,900 | CA$4,800 | CA$23,640 | CA$7,260 | CA$170,594 |
Smith (クイーンズ大学) | 12ヶ月 | CA$110,000 | CA$756 | CA$1,600 | CA$16,800 | CA$6,000 | CA$135,156 |
UBC Sauder (ブリティッシュコロンビア大学) | 16ヶ月 | CA$104,251 | CA$1,437 | CA$14,159 | CA$40,000 | CA$3,440 | CA$163,287 |
Schulich (ヨーク大学) | 16-20ヶ月 | CA$123,732 | CA$1,488 | CA$3,000 | CA$26,400 | CA$11,432 | CA$166,052 ※16ヶ月で試算 |
《参照:各大学のHPより抜粋》
費用を安く抑えたいならオンラインMBAという選択肢も
カナダ国内でも、オンラインMBAプログラムを提供している大学は増えています。
ただし、今回紹介しているようなトップランキング校にはオンラインMBAは存在しないのが現状です。
コストを抑えつつカナダ式MBA教育を受けたい方には、中堅校や短期オンラインプログラムを検討するのも一案です。
カナダのMBAの奨学金について
カナダのビジネススクールでは、留学生を含む全MBA志願者が奨学金の対象となることが多く、出願時点で自動的に選考対象とされるケースが一般的です。
ここでは、代表的な上位3校(Rotman、Ivey、Smith)の奨学金制度と金額の一部を紹介します。
■Rotman School of Management (トロント大学)
ロットマンでは、年間最大CA$600万規模の奨学金制度を運用しており、多様なバックグラウンドの学生が受給対象になります。
奨学金名 | 金額 | 数量 | |
Joseph L. Rotman Scholarship | ビジネススクールによって支給される奨学金 | 100%授業料 | 1名 |
Entrance Awards | 全MBA生徒対象 | CA$10,000-CA$90,000 | 1/3の学生 |
Dean’s Scholarship | 全MBA生徒対象 | 明示なし | 5名 |
Awards for In-Program students | 2年生対象 | 明示なし | 複数 |
Jeffrey Skoll Schoarship | エンジニアリング卒業生 | 明示なし | 複数 |
Women in Leadership Award | 女性への奨学金 | 明示なし | 複数 |
FORTÉ MBA Fellowship | 女性への奨学金 | 明示なし | 複数 |
CDL Student Fellowship Program | 起業家への奨学金 | CA$20,000 | 20名 |
《参照:ロットマン奨学金》
■Ivey Business School (ウエスタン大学)
ウエスタン大学のIveyビジネススクールは、入学時の新入生の約80%が何らかの奨学金を受給しています。最大額はCA$70,000に上ります。
奨学金は、入学時・在学中・年度末と複数のタイミングで授与される制度があり、その中から代表的な高額支給例をいくつか紹介します。
奨学金名 | 金額 | 数量 | |
Barbara Mary McLintrye Award | 女性が有利 | CA$27,000 | 1名 |
Beacon Securities MBA Award | 成績優秀な留学生、女性が有利 | CA$15,000 | 1名 |
CB Johnson MBA Scholarship | 成績優秀者 | CA$15,000 | 2名 |
Canada Life MBA Scholarship | 成績優秀者 | CA$16,000 | 1名 |
Claude Lamoureux MBA Health Sector Award | 成績優秀者 | CA$23,000 | 2名 |
David Leighton MBA Leaders Scholarship | 成績優秀者とコミュニティリーダーシップ | CA$70,000 | 2名 |
Donald K. Johnson MBA Scholarship | 成績優秀者とコミュニティリーダーシップ | CA$31,250 | 4名 |
Ivey Business Leader Award recipients | 成績優秀者とコミュニティリーダーシップ | CA$64,000 | 1名 |
■Smith School of Business (クイーンズ大学)
クイーンズ大学のスミス・スクールオブビジネスでは、年間CA$160万の奨学金枠があり、新入生の約70%がCA$10,000〜70,000の範囲で受給しています。
奨学金名 | 金額 | 数量 | |
Dean’s MBA Admission Scholarships | ビジネススクールによって支給される奨学金 | 明示なし | 複数 |
Stephen J.R. Smith MBA Scholarships | 成績優秀者 | 明示なし | 複数 |
Ian and Maureen Dawson MBA Scholarship | 成績優秀者 | 明示なし | 1名 |
Jin Leech MBA Scholarship | 2年生対象 | 明示なし | 1名 |
MBA 1981 Entrance Scholarships | エンジニアリング卒業生成績優秀者とコミュニーティリーダーシップ | 明示なし | 2名 |
MBA 1980 Class Scholarship | 成績優秀者 | 明示なし | 1名 |
MBA1988 and MBA 1972 Scholarship | 成績優秀者 | 明示なし | 1名 |
General Entrance Scholarships | 全MBA生徒対象 | 明示なし | 複数 |
《参照:スミス奨学金》

まとめ
本記事では、カナダMBAの特徴、メリット、ランキング、学費、入学要件、奨学金情報までを網羅的に紹介しました。
カナダのMBAは、アメリカ式の高品質なビジネス教育を比較的低コストで受けられる点が魅力で、豊富な奨学金制度により経済的な負担も軽減できます。
さらに、卒業後は自動的に3年間の就労ビザが付与されるため、現地でのキャリア形成や移住のチャンスも広がります。
カナダでのMBA取得を検討されている方にとって、本記事が進路選びの一助となれば幸いです。



