アメリカの大学を受験する場合、絶対に意識しなければならないのが、「受賞歴」です。
今回は、アメリカの大学に出願する場合の「受賞歴」の重要性と効果的な選び方・書き方を、実際にアメリカ大学受験を経験した筆者の立場から詳しく解説します。
この記事の著者:Tani
日本の高校から海外に2年間留学し、アメリカの大学受験を経験。IELTS Academic8.0、SAT 1480点。2022年秋より、全米トップ5のリベラルアーツカレッジに進学。
目次
アメリカ大学受験の概要
アメリカ大学受験は、MITやカリフォルニア大学群などを除くほとんどの学校で「Common Application (CommonApp)という全米共通の出願システムを通して出願します。
CommonAppではSAT・ACTや学校の成績を記入する必要が当然あり、テストの数値で合否が判断される側面も一部ありますが、それと同等、もしくはそれ以上に重要とされているのが、エッセイ・課外活動・受賞歴など、容易に数値化できない要素です。
評価される要素
大学受験で合否を決めるのに考慮される要素には、大きく以下の7つがあります。
- 人口統計
- SAT/ACT スコア
- 高校での成績
- エッセイ
- 課外活動
- 受賞歴
- 推薦状
SATのスコアや高校の成績は、どちらかというと足切りのための要素。SATのスコアが良いだけでは、大学に合格とはなりません。
また、アメリカの多くの大学では「Affirmative Action」と呼ばれる、人種・所得を考慮して合否を判断する政策が取られているので、人口統計も合否を分ける要素の一つとなりえます。
ただし、人口統計に関しては自分でコントロールすることは基本的にはできません。
これらを除いた要素として重要になってくるのが、エッセイ・課外活動・受賞歴です。今回は、特にアメリカ大学受験対策の受賞歴の書き方について、紹介していきます。
海外大学進学における、受賞歴と課外活動の違い
受賞歴の具体的な書き方について紹介していく前に、勘違いされることの多い「受賞歴」と「課外活動」の違いについて触れておきましょう。
課外活動と受賞歴はどちらも自分のこれまでの活動をアピールする場所という意味では類似していますが、実際には少し違いがあります。
課外活動
課外活動は、文字通り、学業以外の時間にどのような活動に参加し、何を学び、どのような成果を上げたかを示すものです。スポーツ、クラブ、ボランティア活動などが一例で、必ずしも賞として残らない活動を書くことができます。
学業実績ではなく、リーダーシップ・コミュニケーション能力・学業以外の興味関心などをアピールすることができます。
受賞歴
受賞歴には賞として形に残るような活動、特に学業分野での優れた成果を書きます。科学オリンピックでの入賞歴や作文コンクールでの入賞歴などがこれに当たります。
課外活動が、生徒の学業以外の活動をアピールするために主に用いられるのに対して、受賞歴は生徒の特定の分野への関心や実績をアピールするために特に使われます。
また、”Honours”(名誉)という形で、必ずしも「賞」という形でなくても、何らかの形で選抜された経験がある場合はそれも受賞歴に加えることができます。
例えば何らかの活動の日本代表に選ばれた場合、奨学金団体の奨学生に選ばれた場合、などが一例です。
こんなケースは?
受賞歴として典型的なのは、数学オリンピックなど科学オリンピック(学術大会)での受賞歴です。
数学オリンピックは、課外活動としても受賞歴としてもカウントされますが、ここでは具体的な形が残っている以上、受賞歴として書くのがよいでしょう。
ほとんどの場合で受賞歴に書くことのできるものは課外活動として書いても問題がありませんが、課外活動して書いたものが必ずしも受賞歴にも書くことができるとは限りません。
また、課外活動と同じような内容を受賞歴にも重ねて記入することは、一般的には避けるべきとされています。同じような活動ばかりアピールしていると、自分の経験や興味・関心が狭いと捉えられてしまう可能性があります。
しかし、受賞歴が課外活動と重複していたとしても、課外活動とは異なるまた別の側面をアピールすることができている場合には、重複することがメリットになる可能性もあるのも事実。
例えば、数学クラブの部長としての活動と、数学オリンピックでの受賞歴は、両者とも生徒の数学への興味・関心をアピールしているものですが、特に前者はリーダーシップやチームワークを、後者は数学的な才能や学業実績をアピールしています。
こういった場合には、受賞歴と課外活動の重複は必ずしもデメリットとはならないでしょう。
アメリカ大学受験に重要な受賞歴とは?
受賞歴の役割と重要性
アメリカの大学受験は近年競争が激化しています。多くのトップ校では合格率が10%を切り、5%に満たないという学校も少なくありません。
アメリカの大学受験での合否はテストスコア、課外活動、エッセイ、受賞歴など様々な要素を総合的に見て判断されます。アメリカの大学受験制度そのものがブラックボックスですので、受賞歴がどれほど合否に影響するかはとても評価が難しいところです。
ただし、国際レベル・全国レベルでの賞(特に数学オリンピックや物理オリンピックなど学術オリンピックの入賞歴)は所謂「類稀な実績」ですので、AO受けが非常に良いとされています。
受賞歴の種類と例
受賞歴には、学校レベル・地域レベル・全国レベル・国際レベルの4種類があります。
学校レベルの受賞歴
学校レベルの受賞歴には、学校内のコンテストや学期末の成績評価での表彰などが含まれます。学校コミュニティでのリーダーシップや貢献をアピールすることができます。
例:
- 学校レベルのポスターコンテストでの入賞
- 成績表彰(優秀生徒賞など)
- 学校のディベートコンテストでの入賞
地域レベルの受賞歴
地域レベルの受賞歴は、地域・地方レベルで獲得した賞のことを指します。地方の科学フェア、地元の音楽コンテスト、地方のスポーツイベントなど、市区町村・都道府県レベルで開催されている大会での表彰が含まれます。
例:
- 地域の科学フェアでの入賞
- 地元の音楽コンクールでの優勝
- 地方のスポーツイベント(例えば、地元のマラソン)での入賞
全国レベルの受賞歴
全国レベルの受賞歴は、学術オリンピックの全国大会や全国規模の音楽コンクールなどでの表彰が対象となります。
例:
- 学術オリンピック(例:数学オリンピック)入賞
- 全国規模の音楽コンクールでの優勝
- 日本政府エッセイコンテスト入賞
国際レベルの受賞歴
国際レベルの受賞歴は、日本国内にとどまらず、国際レベルで受賞とした賞のことです。国際数学オリンピック、国際物理学オリンピックなどが有名です。
例:
- 国際数学オリンピック入賞
- 国際生物学オリンピック日本代表(必ずしも入賞していなくても「日本代表」として記入可能)
- 国連エッセイコンテスト入賞
効果的な受賞歴とは
受賞歴は、当然のことながら国際レベルの受賞歴が最も効果的です。
複数の受賞歴がある場合は、なるべく規模の大きいものから順に書き、もし学校・地域レベルの受賞歴で書ききれない部分がある場合にはCommon AppのAdditional Informationセクションにいくらでも記入できます。
一例として、例えば生物学を専攻する場合、「モデル」としての受賞歴はこのような感じになります。
- 国際生物学オリンピック2022 日本代表(国際レベル)
- 日本生物学オリンピック2021 金賞(全国レベル)
- 日本化学オリンピック2020 努力賞(全国レベル)
- 〇〇生物学会 研究奨励賞(全国レベル)
- 〇〇奨学金
上記の例はかなり極端な例で、もちろんこのような輝かしい受賞歴がある生徒はなかなかいませんが、一例として、自分の興味関心に関係のある全国・国際レベルの受賞歴を2つから3つ(専攻予定の生物学と関連分野の化学など)、そして自分の学術的関心とは異なる受賞歴をいくつか(例:奨学金の受賞歴、または音楽・芸術関連の受賞歴など)、というのがよくある例です。
受賞歴がない場合
課外活動と異なり、意識的に様々な大会に参加しないと受賞歴は手に入りづらいです。
ただし、近年では高校生向けの学術大会・オリンピック・ポスターセッションなどの機会も多く、特に理系であれば受賞歴にカウントすることができるような活動が多く見つかるはず。
一例として、国内向けであれば
- 学術オリンピック(数学・化学・物理学・生物学・地学・言語学・哲学・脳科学など)
- 高校生向け学会ポスターセッション(地理学会ポスターセッション・考古学会ポスターセッションなど)
- エッセイコンテスト(JICA・UNICEFなど)
などが挙げられます。
そもそも日本の受験システムはアメリカとは大きく異なりますので、アメリカ人の受験生と比べるとやはり目にみえる受賞歴を手に入れづらいのは事実。
しかし、実際には日本でも高校生向けの学術コンクールは多く開催されていますし、もちろん海外の大会に直接応募することも可能です。College Confidentialなどを利用して、受験生の出願データを調べてみるのがおすすめです。
また、上記で紹介したような学術コンクールはレベルが高すぎると思われるかもしれませんが、実際はそんなことは全くありません。受賞歴・課外活動は結局は言い様。
例えば受賞歴を書く時に、Gold/Silver/Bronse Award などの代わりに「Finalist」や「Semi-finalist」といった言い方をすることもできます。
例えばある学術オリンピックで実際に金賞を受賞した場合はもちろん「Gold Awards」ですが、仮に受賞できなかったとしても、最終ラウンドまで行った場合は立派な「Finalist」ですし、その前のラウンドまで進むことができた場合でも「Semi-finalist」です。
極端な例ではありますが、一次ラウンドしかない大会の場合は参加しただけで「Semi-finalist」です。入賞は無理でも、一次ラウンドを突破するくらいなら、可能性は見えてきます。
ただし、受賞歴は多くある入試の評価項目のうちの一つにすぎません。何か輝かしい受賞歴があればあるに越したことはもちろんありませんが、仮になかったとしても、課外活動やエッセイで補うことは十分可能です。
逆に、自分の興味のない大会にむやみやたらに参加しても、良い印象を残すことはないでしょう。自分の出たい大会に出て、成果を出すのが一番です。
受賞歴の効果的な書き方
記入場所
Common App を開いて、Educationのセクション(Profile、 Familyの下)を選択します。Activitiesとは異なるセクションなので注意。
6番目の項目にHonorsとありますので、”Do you wish to report any honors related to your academic achievements beginning with the ninth grade oir international equivalent?” にYesを選択。Honorsの入力欄が現れ、5つまで申告できます。
書き方のフォーマット
課外活動とは異なり、受賞歴は長々としたDescriptionを書く必要はありません。自分のアピールに使用できるのは、受賞歴のタイトル(100文字)だけです。
ですから、受賞歴をリストする際には、この100文字をできる限りうまく活用する必要があります。
例えば、「数学オリンピック 銀メダル」という実績を書くときは
- Bronze Award, Japan Mathmatical Olympiad 2022
だけではなく
- Bronze Award, Japan Mathematical Olympiad 2022, Top 15 % score, received best solution award
などと、自分の実績をできるだけアピールするために、詰め込むことのできる情報はなるべく詰め込むのがおすすめ。
その一方で、「Bronze Award, Japan Mathematical Olympiad 2022」という一番重要な情報に関してはしっかりと一番最初に書いておくことで、分かりやすさと情報の網羅性を両立できます。
受賞歴欄でもそれ以外の欄でも、CommonAppにおいては「自分を如何にアピールできるか」が重要です。
特に海外ではあまり名の知られていない日本国内の学術コンテストの場合、「Top 15% score」「82th place out of 3000+ participants」のように具体的な数字を用いてレベル感・規模感をアピールするのがおすすめ。
もちろん小規模の学術コンテストの場合はそのことをわざわざ言及する必要はありませんが、自分に有利になるような情報はなるべく記載するようにしましょう。
また、前述のように「School」「State/Regional」「National」「International」の4つのカテゴリの中から、受賞歴の該当するものを選ぶ必要があります。
前述のように、もちろん「School」や「Regional」よりも「International」や「National」の方が好印象です。
全国から参加者が集まっている場合には「National」を、海外からの参加者もいる場合は「International」を選びましょう。
まとめ
今回紹介してきたように、課外活動と同様、受賞歴はバラエティに非常に富んでいます。
目にみえるわかりやすい実績をアピールする場として、受賞歴欄を有効的に活用していきましょう!