MBAプログラムの合否判定はGMAT / TOEFLのようなテストスコアから、履歴書(大学時代のGPA・職務経験)・志願動機エッセー・推薦状等提出する書類まで、様々な要因を勘案して総合的に判断されるが、さらに「面接」というものがある。
今回は、この面接を乗り越えるための全ての知恵を共有したい。
目次
面接(インタビュー)の重要性
アメリカの大学院(特にMBA)に出願し、書類選考が通ったら、多くの学校は面接が必要。
多くの面接はオンライン(Skypeなど)で行われるが、一部オフライン(キャンパスか申請者の国)で行う場合もある。
面接官もいくつかのパターンがあり、①在校生や卒業生、②アドミッションオフィサー、或いは③インタビュー会社に委託することもある。
面接(インタビュー)はどれほど合否に影響する?
ほとんどの面接は評価型で、学生を評価し合否を決める重要な要素の一つだが、一部、学校情報を提供するための情報型の面接もある。
例えば、アイビーリーグの一校であるコーネル大学(建築・アート・ホテル管理の専攻を除く)。情報型の面接の場合、面接への参加はオプショナルとなることが多い。
今日の話しは、評価型の面接について。
面接官は面接評価レポートを学校に提出し、学校のアドミッション委員会はこの面接評価レポートと他の書類と合わせて、合格・不合格を決める。
面接官は合否を決める権利がないが、申請者の個性・強み・弱み・趣味などへの評価は、アドミッション委員会の決定に影響する。
MBA出願における面接に臨むには
面接の目的は、履歴書・志願動機エッセーを読んだだけでは分からない部分を補完的に質問・確認する、ものと考えられる。また、日本人の学生の場合、英語のオーラル面の力をチェックするということもある。
ただでさえ英語で、電話となると相手の姿が見えず、母国語でもニュアンスが分かりにくいのに非母国語というのは大変だ。なるべくスムーズに大過なく進めるには、履歴書・志願動機エッセーを元に「想定問答集」を作っておく、というのが賢い。
答えを用意しておいた質問が来たら、シメシメと手元に要したカンペでその部分をいい感じに読み上げればいいだけ。流暢な英語でなくとも、はっきり大きな声で喋れば通じる。
但し、向こうも大抵の学生がネイティブですら想定問答集を手元に用意しているのは重々知っているので、いかにも「読み上げている」という感じにならないようには気を付けよう。
面接で見られるポイント
では、面接でどんなところが見られるのだろうか?どのような個性が重要なのか?
MBA申請者は基本どの学校に出願しても、必ずこの三つのコアなことが聞かれる:
Why now? Why you? Why our school/MBA?
つまり、MBAとあなたの将来の目標はどうやってつながるのか、あなたに合格させるべき理由、この大学でないとならない理由を、相手に納得させる。
書類で表したスコアや勤続年数などの数字ではなく、本当のあなたはどんな経験をして、どんな個性の人間か、「この学校と合うかどうか」は面接で一番見られる。
もし普通の人と違う経験や経歴があれば、面接の時アピールすること。もちろん、みんな普通の人だけど、深く掘りだせば、きっと他の人と違う、何かしらの経験があるはずだ。
大事なのは経験そのものではなく、その経験はどのように自分に影響をもたらして、どのように自分になったのか、そこから何を学んだのかを説明すると、人をより説得できる。
MBA申請の面接質問集
下記はアメリカのトップスクールの面接問題をまとめた表。
具体的な質問は学校によって異なるが、頻度の高い質問は下記の通り。
- レジュメに沿って自己紹介して?今の仕事は?
- なんでMBAを目指したの?
- なんでこの学校なの?
- キャリアゴールは?長期と短期的なゴールは何?
- チームワークの経験ある?
- リーダーシップの経験ある?
- チームメートの中にやる気のない人がいたらどうする?
- 人生で一番チャレンジングだったことは何?
- どんな失敗を経験した?
- 強み、弱みは?
- 友達や同僚はあなたのことはなんて言うと思う?
- 興味のあるクラス、クラブ、アクティビティは?
- 学校で何したいの?どうやってこの学校に貢献するの?
- ロールモデルとする人はだれ?
- 何か他に言いたいことある?
- 何か質問ある?
おまけ:キャリアゴールが起業の場合
- ビジネスモデルとターゲットカスタマーは?
- 起業に失敗したらどうする?
- ロールモデルとなるCEOと会社は?
インタビュー回答の作り方
ここでいくつか典型的な質問に対して、回答のポイントを説明していきたい。
Tell me about yourself (自己紹介)
自己紹介は簡単そうに見えるが、多くの人はこの質問を「Walk me through your resume」と混同して、自分の履歴書を軽く話すだけで済ませる。
もちろん自分の職歴を紹介する(=今まで遂げた成績・成果)必要があるが、その中で自分がどのような人(性格)、得意分野はなに(強み)、どんなことを追及している(パッション)も併せて見せたら完璧だ。
下記のキーワードを含めてみよう:
- personal and professional passions,
- career goals
- interesting facts about you,
話の順番とポイントはこんな感じ。具体的な話はこの後聞かれるので、それぞれのポイントは簡単に説明すれば良い。
- 名前、現職
- 簡単な職歴
- これからやり遂げたいこと、なんでその目標を目指している
- なんでいまMBA取ろうとしている
- プライベイト生活の自分
Why this school/program?
正直なところMBAプログラムはなべて同質化しており、特に上位ランクのプログラムはどこも似通っている、あるいは何でも大抵のことは学べる。
なので実際はどこでも良い場合が多く、このような「ユニークネス」を語るのは中々難しい。
「この学校はいい学校だから、トップスクールだから」はもちろん理由になるが、学校の歴史やランキングより、「なんでこの学校は私にとってベストチョイスなのか」ということに重きを置いて説明しよう。
面接官が知りたいのは、あなたの人生の目標を達成するには、なんでこの学校のMBAプログラムに入らなければならない、また、この学校のどの特徴があなたに合っているのか。
学校への興味、「この学校は私のdream schoolだ」のような姿勢が望ましい。ポイントは「Why」を説明すること。なぜこの学校に入りたいか、なぜこの学校は自分とマッチするかを具体的に説明できるように。
面接の前に学校のことをよく調べて、この学校の強みはなに、どんな文化や雰囲気か、志望の研究科や専攻に何か特徴があるか等々を把握しておこう。そして、下記の視点から、学校の特徴を二つ三つ選んで、答えを考えてみよう:
- location,
- school culture,
- faculty, courses,
- the emphasis of school,
- industry connection,
- job placement,
- future goals
Why MBA now?
「何故ここに来てMBA」か「MBAを架け橋として挟むのか」という重要な内容。これまでの職務経験からそう思い至り、将来こうこうしたいため、という「ブリッジ的」な内容にする。
特にポイントになるのは、なんで「いま・NOW」がベストタイミングなの?いまあなたの人生はどんな状況に直面している?なんでいまキャリアを中断してMBA取りに行く?そのモチベーションは何?自分の人生を振り返ってみて、時間軸でストーリーを伝えよう。
回答にこういうキーワードを含めてみよう:
- current job position,
- specific career goals,
- financial circumstances,
- dreams and passions,
- action plan
Leadership(リーダーシップ)のエピソード
MBAはマネージメントを学び経営者を養成する虎の穴なので、インタビューの中で、リーダーシップが最も重要視される能力・資質の一つ。志望動機書で必ずしも述べる内容ではないため、面接でもし聞かれたらアピールするチャンス。
チームをリードして何かの問題や困難を解決した、又は何かの成果を遂げた、チームメンバーをポジティブな方向に感化出来るというような才能をにおわせるエピソードを用意しておこう。
MBAに応募される方は一般に20歳台中盤~30歳台前半ぐらいの方が多く、管理職になって部下がすでにいる又はプロジェクトを完全に「主導」しているような場合は少ないかもしれない。
その場合、大学でクラブの主将を務めた等、趣味やボランティア活動の中で、自分のリーダーシップを表せるようなことも良い。
回答する時、「STAR」アプローチで話してみよう。
- (S/T):チームが直面している状況(SITUATION)又はタスク(TASK)
- (A) どんな方法や行動(APPROACH)を取った
- (R) その行動によってどんな結果(RESULTS)をもたらした
下記のキーワードを含めてみよう:
- the project you were involved with,
- your position,
- duties you took on,
- the outcome of your project,
- lessons you learned
どんな課外活動に参加したか、どんなすごい会社で働いたかは重要ではなく、その活動や働きの中でどんな役を果たしたのか、どのように問題を解決したのか、リーダーシップを発揮したのかなどが重要。
チームを引っ張るだけでなく、人の話を傾聴すること、チームメンバーを励ますこと、疑問や悩みに対して応えてあげること等も全てリーダーシップを体現できるので、エピソードにこういうDetailも含めよう。
また、ストーリーの中、抽象的な言葉よりできるだけ具体的な数値を使って説明しよう。例えば、売上30%増やした、離職率を5%以下に押さえた等。
Short-term and long-term career goals (長期と短期のキャリアゴール)
MBAの直前・現在であり、MBAを検討にするに至った主な経緯を構成するため重要な質問だ。何故MBAか? という含みを持たせて次の何故MBAか・なんでうちの学校かにつながるように論ずるのが賢い。
まず長期目標を述べて、その目標を実現するため、どういう短期目標を持っているを説明。次は短期目標を実現するためどういうアクションプランを考えているかを具体的に説明する。
長期目標に関して、抽象的なことでも構わないが、「将来起業したい」のようなぼんやりしたものではなく、問題意識のあるもの(例えば「日本の英語教育環境を変えたい」)にしよう。
そしてそもそもなんでその目標を立てたのか、個人の経験と感情を入れてストーリーを伝えよう。
Any questions?(逆質問)
最後にそちらから何かあれば、的なもの。「特にない。ありがとう」と言って終わらせても減点されることはないが、せっかくなので、将来の学生生活に関連する逆質問をすることで、自分がこの学校への興味を見せたり、学校のことについてもっと知ったりする機会にしよう。
例えば、面接官がMBA生であれば、この大学の雰囲気や勉強の感触はどう?どの科目・授業がおすすめ?この学校のいいと思うところとあまり望ましくないところは何?等聞いてみよう。面接官は、自分の意見や経験について聞かれたら、いろいろしゃべりだすかもしれない。
面接時のその他注意事項
インタビュー日時を間違えないように
学校からのメールにおいて、インタビュー日時は学校の所在地の現地時間となるので、日本の時間と間違えないように。
ヨーロッパやアジア等の国なら時差の換算はまだ簡単だが、アメリカは4つのタイムゾーンもあり、しかもサマータイムによってさらに時間が変わるので、アメリカの大学とインタビューする際に特に気を付けよう。
おすすめは、Google Calenderで予定を管理すること。タイムゾーンを選んで学校が出したインタビュー日時を入れると、カレンダー上で自動的に日本時間で表示してくれるのでとても助かる。
面接ツール
面接官が日本に来る時ついでにインタビューすることや、学生がわざわざキャンパスに行って対面でインタビューされることもあるが、ほとんどの場合はSkype等のオンラインミーティングツールでインタビューを実施する。
そのため、自宅のインターネット環境とツールの使い方を事前に確認したり、面接中に周りから騒音が出ないように事前にアレンジしたりする必要がある。また、カメラに映る部屋のバックグラウンドに変なものがでないように気を付けよう。
まとめ:インタビュー対策のポイント
面接について説明した。以下、箇条書きでポイントを整理しておこう。
- 面接は履歴書・志望動機エッセーでは全て分からない点をやり取りする、補完的な位置付けである。
- 国際学生の場合、英語のオーラル能力も見られて(聞かれて)いる。
- 近年では必須のところが多く、思ったより重要視されている。らしい。
- 想定問答集を必ず作っておく。大学→職務経験→MBA→将来のキャリアという連鎖を常に意識。
- そうすれば英語の発音面に本番でフォーカス出来る。但し読み上げてる感じにはならないように。ハキハキ話せば流暢でなくも通る。
- 質問にストレートに答える / 簡潔に分かり易く常識的な内容とする。
- 面接で言えばいいや、というのは不可。
大切な点として、質問にストレートに答える / 簡潔に分かり易く常識的な内容とする、ということだ(建前でも)。
MBAは大人の世界。逆に言うと、クリエイティブになったり奥深い人間だと思わせる必要はほとんどない。
また、面接は「補完的」なものだが、面接で説明すればいいという態度はならず、最低特に肝要なことは必ず履歴書・志望動機エッセーに入れておこう。